料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました

さら

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第六話 冷徹団長の溺愛

 王城での晩餐から数日後、クラリッサは再び大広間に立っていた。豪奢な絨毯の上、燭台の灯りが揺れ、色とりどりの衣をまとった貴族たちが囁き合っている。そこに現れたのは、かつて婚約を破棄した元婚約者エドモンドだった。彼は皮肉げな笑みを浮かべ、わざとらしく声を張り上げる。

「やあ、クラリッサ嬢。辺境に追いやられたかと思えば、料理番として這い上がってきたとは。実に滑稽だ」

 周囲の視線が突き刺さる。クラリッサの手は一瞬強ばったが、すぐに胸を張った。返す言葉を探すより早く、重い足音が響いた。

「――黙れ」

 レオンハルトが歩み寄り、冷徹な瞳でエドモンドを射抜いた。

「彼女は国一番の料理姫であり、俺の妻だ。侮辱は許さない」

 その声は広間全体に響き渡り、空気を震わせた。貴族たちは息を呑み、エドモンドの顔から血の気が引く。

「な、なんだと……!」

「聞こえなかったか。クラリッサは俺の誇りであり、唯一の伴侶だ」

 レオンハルトはクラリッサの手を取り、その指を固く握りしめた。冷たい鎧越しにも伝わる熱が、彼女の胸を打つ。

「……団長が……笑った……?」

 誰かが驚きの声を漏らす。灰色の瞳がわずかに緩み、口元が確かに微笑んでいたのだ。兵士たちの間から歓声が上がり、貴族たちも圧倒されるように拍手を送る。

 クラリッサの目に涙が滲む。婚約破棄で捨てられ、家から疎まれ、唯一の取り柄は料理だけ。けれど、その料理が彼の心を動かし、自分の居場所を与えてくれた。

「レオンハルト様……私、本当に……?」

「お前は俺の妻だ。これから先、毎日、お前の料理を食べ続ける」

 その言葉に、涙は堰を切って溢れ出した。クラリッサは震える声で答える。

「はい……! 必ず、毎日、心を込めてお作りします」

 彼女の瞳に映るのは、冷徹と呼ばれた男の優しい横顔。料理しか取り柄がなかった令嬢は、今や国一番に愛される寵姫となったのだ。

 拍手と歓声に包まれる中、二人は強く手を結び合った。

終わり
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