家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら

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第19話 初めての甘い朝

 口づけを交わした翌朝、私は胸の鼓動で目を覚ました。窓から差し込む朝の光が白いカーテンを透かし、部屋をやわらかな色で満たしている。けれど昨夜の余韻がまだ唇に残り、布団の中で身を丸めても熱は引かなかった。

 扉が軽く叩かれ、執事の声が響く。
「奥様、朝食のご準備が整いました」
 私は返事をして立ち上がり、鏡の前に座った。頬は赤く、目尻は潤んでいる。いつもの自分ではない顔を見て、思わず指で唇をなぞる。

 食堂に入ると、アルベルトがすでに席についていた。灰色の瞳が私を捉え、わずかに柔らかくなる。その視線だけで胸が震える。
「おはよう」
「……おはようございます」
 声が震え、パンを取る手がぎこちなくなる。彼は無言で私の皿に果物を添え、カップに紅茶を注いだ。

「顔色が赤いな」
「えっ、そ、それは……」
 言葉に詰まる私を見て、彼の口元がかすかに上がった。


 食後、私は庭に出て新鮮な空気を吸い込んだ。薔薇の花弁に朝露がきらめき、空は雲ひとつない。けれど胸は落ち着かず、昨日の感触を思い出しては頬を押さえてしまう。

 そこへ足音が近づき、彼が現れた。
「逃げるように外へ出たな」
「ち、違います。ただ……空気を吸いたくて」
「そうか」
 隣に並んで歩き、彼は花を手折って私に差し出した。真紅の薔薇。

「薔薇は君に似合う」
「……からかわないでください」
「からかってはいない。事実だ」
 灰色の瞳が真っ直ぐに射抜き、胸が甘く痺れる。

 ベンチに並んで座ると、彼は静かに告げた。
「昨日のことを後悔してはいない」
「私も……」
 言葉を重ねると、再び鼓動が早まった。視線を落とすと、彼の手が私の指を包み、温もりが伝わる。


 昼下がり、居間で紅茶を飲んでいると、アルベルトが不意に言った。
「今日は政務を早く切り上げる。君と過ごす時間を増やすために」
「え……?」
 驚きに声が裏返る。彼は淡々とカップを傾けた。
「政務より優先すべきものがあると気づいた」
 その一言に、胸が震えた。

 夕暮れ、書庫で並んで本を読む時間は、不思議なほど穏やかだった。沈黙すら心地よく、ふと視線が合うだけで頬が熱くなる。

 夜、寝室に戻る前、彼が廊下で立ち止まり、低く囁いた。
「今夜はよく眠れ。昨日よりも、君は私のものだ」
 その言葉に足がすくみ、返事ができなかった。けれど胸の奥で甘い熱が広がり、眠りに落ちるまで彼の声が何度も反響した。

 ――これはもう契約ではなく、確かな愛の日々。
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