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第7話 村の祭りと手を取って
〇
夏の訪れを告げる祭りの日、村の広場は朝からにぎやかだった。色とりどりの布が張られ、子どもたちが走り回り、屋台からは甘い焼き菓子の匂いが漂っている。私は小さな籠に束ねた薬草を入れ、広場の一角に腰を下ろした。祭りの日には、薬草を飾りに使ったり、茶にして振る舞ったりするのが恒例だ。胸の奥でどきどきと高鳴る鼓動は、祭りの熱気だけのせいではなかった。
人々に挨拶を返しながら、私は広場の入口を何度も振り返った。あの灰色の瞳を探してしまう。祭りという人の集まりに、彼が本当に姿を現すのか――心配と期待が入り混じり、落ち着かない。そんなとき、不意に周囲のざわめきが変わった。人々が道を開け、青い外套の人影が現れたのだ。
アルディスだった。いつもと違い、今日は外套の下に白のシャツをまとい、胸元には小さな草花を飾っている。村人たちは驚きと戸惑いを隠せずに目を見張っていた。公爵が祭りに現れるなど、誰も予想していなかったのだ。彼は迷うことなく私の方へ歩いてきた。
「リオナ。来ていたのだな」
名前を呼ばれただけで、胸の奥が熱く震えた。
「はい。……でも、こんなところにいらして大丈夫なんですか?」
「君と祭りを共にしたかった。それだけだ」
静かに告げられると、頬が熱くなり、視線を逸らした。
彼は私の籠の中を覗き込み、束ねたラベンダーを手に取った。
「これは祭りにふさわしい香りだ。……君と一緒に歩いてもいいか?」
その言葉に一瞬、周囲の視線が突き刺さるように感じた。けれど私は深く息を吸い、頷いた。
「ええ、喜んで」
広場を歩くと、子どもたちが駆け寄り、草を差し出してきた。アルディスは丁寧に受け取り、ひとりひとりに微笑みを返す。その姿に、緊張していた空気が少しずつ和らいでいった。私は隣を歩きながら、彼の存在の大きさを改めて感じた。灰色の瞳が時折こちらを向き、そのたびに胸が高鳴る。
やがて、音楽が鳴り響いた。太鼓と笛の音に合わせ、村人たちが輪を作り踊り始める。私は立ち止まり、戸惑った。今まで祭りで踊りに加わったことなど一度もなかったからだ。けれどアルディスは私の手を取り、穏やかな声で言った。
「一緒にどうだ? 手を取れば怖くない」
温かな掌が私の手を包み込む。心臓が大きく跳ねた。
音楽に導かれ、輪の中へと踏み出す。足取りはぎこちなかったが、アルディスがリズムを合わせてくれる。周囲の人々が笑顔で見守る中、私は次第に不安を忘れていった。草の香りと音楽に包まれ、彼の手の温もりだけが確かだった。
夜が近づき、空に灯籠が揺れ始めた。橙の光が二人の影を重ね、祭りの喧騒の中でひときわ静かな瞬間が訪れた。私は胸の奥でひとつの確信を得た。――この人となら、どんな未来でも歩いていける、と。
△
踊りの輪の中で、私は夢の中にいるような気持ちだった。太鼓の音が胸を打ち、笛の旋律が夜空に溶けていく。周囲の村人たちは笑顔で踊り、手を取り合い、草花の冠を頭に載せていた。私はぎこちなく足を動かしていたが、隣にアルディスの姿があるだけで、不思議と心が軽くなっていった。
「ほら、もっと肩の力を抜いて」
アルディスが囁き、私の腰に軽く手を添えた。灰色の瞳が月明かりを受けて輝き、笑みが浮かぶ。その瞬間、胸が大きく跳ねた。私の足取りは自然に音楽に合い、輪の中に溶け込んでいった。
村人たちは、公爵が自分たちと同じように踊っている姿に目を丸くしていた。だが驚きはすぐに和らぎ、やがて誰もが笑顔になった。小さな子どもが彼の手を引き、年配の男が背中を叩いて笑う。アルディスは一人ひとりに穏やかな視線を返し、同じ輪の中で共に笑っていた。
その姿を見て、胸の奥が熱くなった。彼はただの貴族ではなく、この村をも自分の居場所のように思ってくれている。そんな彼の隣にいられることが、信じられないほど嬉しかった。
やがて音楽が一区切りし、踊りの輪が解ける。人々は汗を拭いながら笑い声を上げ、焚き火の周りに集まった。私は胸の高鳴りを抑えきれずに立ち尽くしていたが、アルディスがそっと手を握り直した。
「どうだった?」
「……楽しかったです。こんなに心が自由になるなんて」
「君が笑ってくれたから、私も楽しめた」
短い言葉に頬が熱くなり、視線を逸らした。
広場の片隅では、屋台から甘い菓子が振る舞われていた。蜂蜜を絡めた焼き菓子に、ハーブを混ぜた冷たい飲み物。子どもたちが歓声を上げ、大人たちも笑顔で杯を掲げている。アルディスは私の肩を軽く叩いた。
「少し休もう。君にも菓子を」
「いえ、私は……」
言いかけたところで、すでに彼が菓子を二つ受け取り、私の手に押し込んでいた。
「遠慮は不要だ。今日は祭りだろう」
その強引さに思わず笑ってしまい、私は菓子を口に運んだ。甘さと草の香りが広がり、心がじんわりとほどけていく。
焚き火の炎が高く揺れ、夜空を朱に染めていた。アルディスの横顔は炎に照らされ、灰色の瞳が煌めきを帯びている。私はその姿を見つめながら、胸の奥で小さく誓った。――この人の隣に立ち続けたい、と。
遠くで鐘が鳴り、祭りはさらに盛り上がりを見せていた。人々の笑い声が響く中で、私たちは焚き火のそばに腰を下ろし、静かに同じ茶の香りを味わっていた。
◇
夜も更け、祭りの熱気はなお衰えなかった。焚き火の炎が高く燃え上がり、空へと舞い上がる火の粉が星々と交わるように散っていく。人々は歌い、踊り、笑い声を絶やさない。私はその賑わいを眺めながら、隣に座るアルディスの横顔に目を奪われていた。炎に照らされた瞳は鋭さを失い、静かな温もりを湛えていた。
彼は木杯に注がれた草の酒をひと口含み、私の方へ差し出した。
「少しだけ試してみるか?」
「……お酒は弱いんです」
「なら、ほんのひと口で」
すすめられるまま唇を触れさせると、草の香りと蜂蜜の甘みが広がった。喉の奥に熱が落ちていき、頬がすぐに火照った。私は慌てて首を振ったが、アルディスは穏やかに笑っていた。
「顔に出やすいな。だが、それもまた君らしい」
「からかわないでください……」
小さな抗議は、すぐに笑いへと変わった。
やがて楽師たちが再び笛を吹き始め、人々は次の踊りの輪を作り出した。子どもたちが私の手を引き、笑いながら誘ってくる。私は戸惑ったが、アルディスがすっと立ち上がり、私の手を取った。
「また一緒に踊ろう。今度は、もっと自然に」
その声に導かれるように、私は立ち上がった。
音楽が始まり、足取りが輪に加わる。初めは緊張していたが、アルディスの掌が私の手をしっかりと支えてくれる。その温かさに安心し、次第に体が音に溶けていった。月明かりと炎の光が交わる広場で、私たちは何度も視線を合わせ、笑みを交わした。
曲が終わるころ、周囲の拍手と歓声が響いた。私は息を弾ませながら立ち止まり、アルディスに支えられて笑った。
「……楽しかったです。本当に」
「君の笑顔を見られたから、来た甲斐があった」
その一言に、胸が熱くなった。
祭りの終盤、人々は灯籠を手に川へ向かっていった。小さな火が水面に浮かび、流れに乗って揺れながら遠ざかる。私は手にした灯籠を静かに水へ置いた。アルディスも隣で灯籠を流し、灰色の瞳を川面に落とした。
「願い事をするんです。村では昔からの習わしで」
「君は、何を願った?」
「……内緒です」
そう答えると、彼は穏やかに笑った。
「ならば私の願いも、君にはまだ秘密にしておこう」
川面に揺れる灯籠の光が、彼の微笑を幻想的に照らしていた。
やがて祭りが終わりに近づき、人々は家々へ帰っていった。広場に残るのは焚き火の残り火と、静かな余韻。私は胸いっぱいに広がる幸福を抱きながら、アルディスの手を取り、小屋へ向かって歩き出した。夜の森は静まり返っていたが、ふたりの歩調は揃い、未来へと続く道を示すように響いていた。
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夏の訪れを告げる祭りの日、村の広場は朝からにぎやかだった。色とりどりの布が張られ、子どもたちが走り回り、屋台からは甘い焼き菓子の匂いが漂っている。私は小さな籠に束ねた薬草を入れ、広場の一角に腰を下ろした。祭りの日には、薬草を飾りに使ったり、茶にして振る舞ったりするのが恒例だ。胸の奥でどきどきと高鳴る鼓動は、祭りの熱気だけのせいではなかった。
人々に挨拶を返しながら、私は広場の入口を何度も振り返った。あの灰色の瞳を探してしまう。祭りという人の集まりに、彼が本当に姿を現すのか――心配と期待が入り混じり、落ち着かない。そんなとき、不意に周囲のざわめきが変わった。人々が道を開け、青い外套の人影が現れたのだ。
アルディスだった。いつもと違い、今日は外套の下に白のシャツをまとい、胸元には小さな草花を飾っている。村人たちは驚きと戸惑いを隠せずに目を見張っていた。公爵が祭りに現れるなど、誰も予想していなかったのだ。彼は迷うことなく私の方へ歩いてきた。
「リオナ。来ていたのだな」
名前を呼ばれただけで、胸の奥が熱く震えた。
「はい。……でも、こんなところにいらして大丈夫なんですか?」
「君と祭りを共にしたかった。それだけだ」
静かに告げられると、頬が熱くなり、視線を逸らした。
彼は私の籠の中を覗き込み、束ねたラベンダーを手に取った。
「これは祭りにふさわしい香りだ。……君と一緒に歩いてもいいか?」
その言葉に一瞬、周囲の視線が突き刺さるように感じた。けれど私は深く息を吸い、頷いた。
「ええ、喜んで」
広場を歩くと、子どもたちが駆け寄り、草を差し出してきた。アルディスは丁寧に受け取り、ひとりひとりに微笑みを返す。その姿に、緊張していた空気が少しずつ和らいでいった。私は隣を歩きながら、彼の存在の大きさを改めて感じた。灰色の瞳が時折こちらを向き、そのたびに胸が高鳴る。
やがて、音楽が鳴り響いた。太鼓と笛の音に合わせ、村人たちが輪を作り踊り始める。私は立ち止まり、戸惑った。今まで祭りで踊りに加わったことなど一度もなかったからだ。けれどアルディスは私の手を取り、穏やかな声で言った。
「一緒にどうだ? 手を取れば怖くない」
温かな掌が私の手を包み込む。心臓が大きく跳ねた。
音楽に導かれ、輪の中へと踏み出す。足取りはぎこちなかったが、アルディスがリズムを合わせてくれる。周囲の人々が笑顔で見守る中、私は次第に不安を忘れていった。草の香りと音楽に包まれ、彼の手の温もりだけが確かだった。
夜が近づき、空に灯籠が揺れ始めた。橙の光が二人の影を重ね、祭りの喧騒の中でひときわ静かな瞬間が訪れた。私は胸の奥でひとつの確信を得た。――この人となら、どんな未来でも歩いていける、と。
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踊りの輪の中で、私は夢の中にいるような気持ちだった。太鼓の音が胸を打ち、笛の旋律が夜空に溶けていく。周囲の村人たちは笑顔で踊り、手を取り合い、草花の冠を頭に載せていた。私はぎこちなく足を動かしていたが、隣にアルディスの姿があるだけで、不思議と心が軽くなっていった。
「ほら、もっと肩の力を抜いて」
アルディスが囁き、私の腰に軽く手を添えた。灰色の瞳が月明かりを受けて輝き、笑みが浮かぶ。その瞬間、胸が大きく跳ねた。私の足取りは自然に音楽に合い、輪の中に溶け込んでいった。
村人たちは、公爵が自分たちと同じように踊っている姿に目を丸くしていた。だが驚きはすぐに和らぎ、やがて誰もが笑顔になった。小さな子どもが彼の手を引き、年配の男が背中を叩いて笑う。アルディスは一人ひとりに穏やかな視線を返し、同じ輪の中で共に笑っていた。
その姿を見て、胸の奥が熱くなった。彼はただの貴族ではなく、この村をも自分の居場所のように思ってくれている。そんな彼の隣にいられることが、信じられないほど嬉しかった。
やがて音楽が一区切りし、踊りの輪が解ける。人々は汗を拭いながら笑い声を上げ、焚き火の周りに集まった。私は胸の高鳴りを抑えきれずに立ち尽くしていたが、アルディスがそっと手を握り直した。
「どうだった?」
「……楽しかったです。こんなに心が自由になるなんて」
「君が笑ってくれたから、私も楽しめた」
短い言葉に頬が熱くなり、視線を逸らした。
広場の片隅では、屋台から甘い菓子が振る舞われていた。蜂蜜を絡めた焼き菓子に、ハーブを混ぜた冷たい飲み物。子どもたちが歓声を上げ、大人たちも笑顔で杯を掲げている。アルディスは私の肩を軽く叩いた。
「少し休もう。君にも菓子を」
「いえ、私は……」
言いかけたところで、すでに彼が菓子を二つ受け取り、私の手に押し込んでいた。
「遠慮は不要だ。今日は祭りだろう」
その強引さに思わず笑ってしまい、私は菓子を口に運んだ。甘さと草の香りが広がり、心がじんわりとほどけていく。
焚き火の炎が高く揺れ、夜空を朱に染めていた。アルディスの横顔は炎に照らされ、灰色の瞳が煌めきを帯びている。私はその姿を見つめながら、胸の奥で小さく誓った。――この人の隣に立ち続けたい、と。
遠くで鐘が鳴り、祭りはさらに盛り上がりを見せていた。人々の笑い声が響く中で、私たちは焚き火のそばに腰を下ろし、静かに同じ茶の香りを味わっていた。
◇
夜も更け、祭りの熱気はなお衰えなかった。焚き火の炎が高く燃え上がり、空へと舞い上がる火の粉が星々と交わるように散っていく。人々は歌い、踊り、笑い声を絶やさない。私はその賑わいを眺めながら、隣に座るアルディスの横顔に目を奪われていた。炎に照らされた瞳は鋭さを失い、静かな温もりを湛えていた。
彼は木杯に注がれた草の酒をひと口含み、私の方へ差し出した。
「少しだけ試してみるか?」
「……お酒は弱いんです」
「なら、ほんのひと口で」
すすめられるまま唇を触れさせると、草の香りと蜂蜜の甘みが広がった。喉の奥に熱が落ちていき、頬がすぐに火照った。私は慌てて首を振ったが、アルディスは穏やかに笑っていた。
「顔に出やすいな。だが、それもまた君らしい」
「からかわないでください……」
小さな抗議は、すぐに笑いへと変わった。
やがて楽師たちが再び笛を吹き始め、人々は次の踊りの輪を作り出した。子どもたちが私の手を引き、笑いながら誘ってくる。私は戸惑ったが、アルディスがすっと立ち上がり、私の手を取った。
「また一緒に踊ろう。今度は、もっと自然に」
その声に導かれるように、私は立ち上がった。
音楽が始まり、足取りが輪に加わる。初めは緊張していたが、アルディスの掌が私の手をしっかりと支えてくれる。その温かさに安心し、次第に体が音に溶けていった。月明かりと炎の光が交わる広場で、私たちは何度も視線を合わせ、笑みを交わした。
曲が終わるころ、周囲の拍手と歓声が響いた。私は息を弾ませながら立ち止まり、アルディスに支えられて笑った。
「……楽しかったです。本当に」
「君の笑顔を見られたから、来た甲斐があった」
その一言に、胸が熱くなった。
祭りの終盤、人々は灯籠を手に川へ向かっていった。小さな火が水面に浮かび、流れに乗って揺れながら遠ざかる。私は手にした灯籠を静かに水へ置いた。アルディスも隣で灯籠を流し、灰色の瞳を川面に落とした。
「願い事をするんです。村では昔からの習わしで」
「君は、何を願った?」
「……内緒です」
そう答えると、彼は穏やかに笑った。
「ならば私の願いも、君にはまだ秘密にしておこう」
川面に揺れる灯籠の光が、彼の微笑を幻想的に照らしていた。
やがて祭りが終わりに近づき、人々は家々へ帰っていった。広場に残るのは焚き火の残り火と、静かな余韻。私は胸いっぱいに広がる幸福を抱きながら、アルディスの手を取り、小屋へ向かって歩き出した。夜の森は静まり返っていたが、ふたりの歩調は揃い、未来へと続く道を示すように響いていた。
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