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09話 誤解の理由
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「……貴族って……爛れてる……」
「……」
デイジーとカトレア夫人はショックを受けたようで、顔色を悪くしていました。
平民は愛人を作らないのでしょうか。
まあ、愛人って、お金がかかりますものね。
平民は愛人を持つ金銭的な余裕がないのかもしれません。
「お父様が……そんな人だったなんて……」
「そんなこと、聞いてない……」
独り言のようにそう呟いた二人に、私は教えてあげました。
「聞いていないのは、聞かなかったからではありませんか? どうして黙っていたのかと問えば、父は大抵『聞かれなかったから』と答えます。でも聞けば答えますよ」
◆
私は、私がデイジーやカトレア夫人を恨んでいないことを説明するために、父の愛人についての話をしたのですが、予想外に二人にショックを与えてしまったようでした。
デイジーは私より年下の娘ですから、こういう話を苦手に思うのは解らないでもないです。
ですがカトレア夫人までショックを受けているようだったことを、そのときは不思議に思いました。
カトレア夫人は父の愛人で、父に妻がいると知っていて付き合っていた人ですから。
しかし後日、理由が解りました。
父はカトレア夫人に「妻は政略結婚の相手。愛はない」「本当に愛しているのは君だけ」と言っていたようです。
カトレア夫人はその言葉を真に受けてしまっていたとの事でした。
それは父の、愛人たちへの挨拶のような言葉で、パンジーさんもジャスミンさんもオリーブ夫人も、同じセリフを父に聞かされたと言って笑っていました。
パンジーさんたちは父の軽薄な言葉を信じたりせず、むしろ「よく言うわ」などと思っていたようですが、カトレア夫人は父の戯言を真っ直ぐに受け止めていたようです。
デイジーが最初、私に「私はお父様に愛されてますよーだ。お姉様と違って」などと言っていたのも、父の戯言が原因でした。
父はデイジーに「最愛の娘」だの「正妻の子とは顔を合わせていない」だのと言っていたので、それを変に誤解したようです。
そのうえ、父は「望まない政略結婚で」などと悲劇ぶっていたので、デイジーの中では私や母が、父を苦しめる敵のように思えていたらしいです。
私と父がほとんど顔を合わせないのは事実です。
貴族は、子育ては乳母や家庭教師に任せるものなので、親子はあまり顔を合わせないのが普通です。
貴族の屋敷では、子供は子供部屋にいるもので、大人たちとは生活圏が違いますから、何かの用事でもなければ顔を合わせる機会がないのです。
貴族なら普通のことです。
◆
父の愛人関係の話は、デイジーの心に深く傷をつけてしまったようでした。
デイジーは後日、婚約者がいながらデイジーに心を奪われた王太子を「爛れてる」と汚物のように言いますが、それはおそらく父の愛人の話がトラウマになっていたからだと思います。
「……」
デイジーとカトレア夫人はショックを受けたようで、顔色を悪くしていました。
平民は愛人を作らないのでしょうか。
まあ、愛人って、お金がかかりますものね。
平民は愛人を持つ金銭的な余裕がないのかもしれません。
「お父様が……そんな人だったなんて……」
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独り言のようにそう呟いた二人に、私は教えてあげました。
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◆
私は、私がデイジーやカトレア夫人を恨んでいないことを説明するために、父の愛人についての話をしたのですが、予想外に二人にショックを与えてしまったようでした。
デイジーは私より年下の娘ですから、こういう話を苦手に思うのは解らないでもないです。
ですがカトレア夫人までショックを受けているようだったことを、そのときは不思議に思いました。
カトレア夫人は父の愛人で、父に妻がいると知っていて付き合っていた人ですから。
しかし後日、理由が解りました。
父はカトレア夫人に「妻は政略結婚の相手。愛はない」「本当に愛しているのは君だけ」と言っていたようです。
カトレア夫人はその言葉を真に受けてしまっていたとの事でした。
それは父の、愛人たちへの挨拶のような言葉で、パンジーさんもジャスミンさんもオリーブ夫人も、同じセリフを父に聞かされたと言って笑っていました。
パンジーさんたちは父の軽薄な言葉を信じたりせず、むしろ「よく言うわ」などと思っていたようですが、カトレア夫人は父の戯言を真っ直ぐに受け止めていたようです。
デイジーが最初、私に「私はお父様に愛されてますよーだ。お姉様と違って」などと言っていたのも、父の戯言が原因でした。
父はデイジーに「最愛の娘」だの「正妻の子とは顔を合わせていない」だのと言っていたので、それを変に誤解したようです。
そのうえ、父は「望まない政略結婚で」などと悲劇ぶっていたので、デイジーの中では私や母が、父を苦しめる敵のように思えていたらしいです。
私と父がほとんど顔を合わせないのは事実です。
貴族は、子育ては乳母や家庭教師に任せるものなので、親子はあまり顔を合わせないのが普通です。
貴族の屋敷では、子供は子供部屋にいるもので、大人たちとは生活圏が違いますから、何かの用事でもなければ顔を合わせる機会がないのです。
貴族なら普通のことです。
◆
父の愛人関係の話は、デイジーの心に深く傷をつけてしまったようでした。
デイジーは後日、婚約者がいながらデイジーに心を奪われた王太子を「爛れてる」と汚物のように言いますが、それはおそらく父の愛人の話がトラウマになっていたからだと思います。
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