レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第3章 エルフの国にて

第21話 旅立ち

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「よし、準備は整ったな」

 俺は荷物なんてほとんど持っていなかった。

 だが、冒険者を長いことやっているミーナは野営道具だけでなく、武器や防具まで準備してくれた。

 ま、俺には武器も防具も使い方すらわからないので、完全にお飾りなのだが……、

「ソウ? どうしたの? 防具をじっと見て」

「え? いや、これの使い方がわからなくて。腕につけるのかな?」

「それは膝から足首までつけるのよ。厚い皮で出来ていて、丈夫で軽いのよ?」

 そんなことを言いながらミーナは取り付けを手伝ってくれた。

 ミーナが屈み込むと胸元がチラチラと見えてしまい、今朝の薄いシーツ一枚で肌を隠していたミーナを思い出してしまう。

 はぁ、可愛かったなぁ。

「ねぇ? 聞いてるのかしら? キツかったら調整しなきゃいけないのよ?」

「あ、あぁ、大丈夫そうだ。あとは歩いてみてから微調整だな」

「ならよしっと!」

 ミーナは立ち上がった。いつもとは違って防具を身にまとい、背中には大きなリュックを背負う。そのどれもが似合っていた。

 すごいこれが冒険者か!

 一方、俺は自分の体を眺めた。

 スーツの上から強引に皮の防具を一部だけつけた格好で、とても旅をするようには見えない。

 くっ、俺は形から入るタイプだというのに……。

 一言で言うと、俺はこの世界のお金がなかった。

 まともな防具一つ買えなかったのだ。

 ミーナが手持ちの物から少しだけ分けてくれたのだが、これがなんとも似合わない。

「うーん。ミーナ、悪いけど、防具を外してくれないかな?」

「え? やっぱりキツかった?」

「うん、俺には使えそうになくて……。気持ちだけもらっておくね」

「うぅん。ま、私が使っていた物だし、男のアナタが使うには小さいかなって思ったんだけどね」

 ふぅ、と一息ついた。

 やっぱり俺には着慣れたこのスーツがちょうどいいな。

 キュアーでスーツの皺もあっという間に伸ばして準備完了っと。

「あっ、私の防具が!」

「あぁ、キュアーをかけておいたよ。綺麗になった?」

「綺麗になったどころじゃないわよ! まるで新品じゃない!」

「そいつは良かったじゃないか」

「はぁ、アナタと話してると本当に感覚が狂っちゃうわ。でも過ぎた力は権力闘争に巻き込まれるわよ? 大丈夫なの?」

「うーん、そういうのは嫌なんだよなぁ。俺にはやりたいことがあるし」

「やりたいこと?」

「あぁ、俺はこの世界のあらゆるモノを極めたいんだ」

「はぁ? そんなの無理に決まってるじゃない! レベルだって素質があるものだけしか伸ばせないのよ?」

「あぁ、それはなんとなくだけど俺も知ってる」

「だったら……」

「だから加護をもらえばいいんだよ」

「はぁ? 加護をもらう?」

 ミーナは驚きを通り越して、あきれるような顔つきだ。

 うーん、もうちょっと信用してくれてもいいと思うんだけどなぁ。

「まぁ、詳しいことは後からわかるよ。あ、これからミーナとはパーティーを組むことになるんだけれど、レベルって教えてもらえる?」

「えぇ、それくらいならいいわよ。私のレベルは90って所よ。この辺りじゃ高いほうじゃないかしら」

「えっ! たったの90?」

 絶句ものだ。そりゃオークにも攫われるよな。

「ちょっと、これでも高いほうなのよ?大体、オークを魔法一発で倒しちゃうアナタのほうが異常なんだから!」

「うぅむ。そう……なのか」

「えぇ、そうよ」

 ミーナは胸を張って答えた。

 これだけ自信満々に言うってことはミーナの言ってることが常識なんだろうな。

「わかった! じゃこれからエルフの国まで行くんだが、その道中でミーナのレベルを上げていこう!」

「上げていこうって、そう思ってくれるのは嬉しいけれど、って私の国へ行くの?」

「あぁ、そうなんだ。お次のイベントがそちらのようでね。ほら、レッツパーティー! ってやつさ」

「全く意味わかんないんだけど……。あ、馬はどうするの? アナタ、お金もってないんでしょ?」

「あぁ、走って行くよ。ミーナには悪いんだけど、また背負って行くってことでいいかな?」

「……いいけど」

 ミーナは顔を赤くして俯いた。

「よし、なら出かけますか!」



 最後にエリザさんに挨拶しに行くと、

「ミーナをよろしくね!」

 と笑顔で言われた。

 ポーションについては、大樽に五本ほど詰めてあげたら歓喜の声を上げて喜んでくれていたし、問題ないだろう。

 かくして、俺とミーナはエルフの国を目指し、旅に出るのであった。


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