37 / 219
第4章 突撃! 魔界統一編 前編
第37話 いざ魔界へ!
しおりを挟む「ここが、砂漠のダンジョンか……。」
俺はエルフの国を出て、幾日もひたすらに走りまくり、砂漠のど真ん中にあるダンジョンの前にいた。
近くに町もなく、ダンジョンからは魔物が溢れ出し、辺りをウヨウヨと徘徊している。
「邪魔だっ!」
大サソリやら、竜のような大きさのデザート大トカゲを一閃し、ダンジョンへ突き進んでいく。
ダンジョン内部も敵で溢れていた。
「こりゃ都合がいいな。手っ取り早く深層までいくぞっ」
さらに走る速度をあげ、一気にダンジョンの最深部まで駆け抜けた。
最深部。
そこはまだ未踏の地であり、モンスターの楽園でもあった。
最深部では本物の竜である、デザートドラゴンが群れを為していた。
俺は舌舐めずりをして、狙いを定める。
「そらっ、ドラゴン狩りだっ! 全部俺の経験値にしてやるぜっ!」
吹き荒れるブレスを躱し、一気に近づいてカマイタチの魔法で首を刎ねる。
再生能力に乏しいデザートドラゴンは一発で沈んでいく。
俺の風魔法はレベル7505だ。デザートドラゴンでは最早俺を止めることは出来なかった。
積み上がるドラゴンの死体。
そして、来る黒い霧。
「今だっ! この黒い霧こそ、魔界へ通じる唯一の通路! ならば……」
巨大なドラゴンの足見えた所でそれをたたっ切り、黒い霧へタックルするように突っ込んだ。
視界が歪み、無重力の状態で浮かび上がったあと、急に俺の身体は空から落ちていくのであった。
*
(ノーラ視点)
「レイ様、水です。お飲みください」
「あぁ、ノーラ。ありがとう。……んっ、ごくっ」
魔王城の襲撃から二週間が経っていた。元魔王レイと元六大将ノーラはこの辺境の地まで逃げ、そこにある小さな村にかくまって貰っているのだった。
魔王城を出てからというもの、追っ手の相手をしながらひたすらに逃げ、ケガも疲れも癒やせぬまま、この辺境まで落ち延びていたのだ。
「失礼します。食事をお持ちしました」
小屋の外から声がかかる。村の者が食事を持ってきてくれたのだ。ありがたい。この村は私の生まれた故郷。魔王様に取り立ててもらってから、何かと便宜を図ってきたおかげもあり、村人達は協力的だった。
「あぁ、本当にありがとう。レイ様には私から渡しておくよ」
「はっ、お薬も用意出来ず、申し訳ありません。せめて、栄養があるものを提供出来れば良いのですが……」
「その心だけでも嬉しい。本当にありがとう」
お盆を受け取ると、お椀が二つ。中には半分ほどの量のお粥が入っていた。
このような食事が続くのでは、レイ様の体調が心配だ。しかし、村人たちの精一杯なのだ。文句なんて言えない。
どうしたらいいんだ……。
「ノーラ、食事……ですか……」
「はっ、レイ様。またお口まで運びますね」
「ありがとう……」
レイ様は見る影もなく弱ってしまった。宰相の案で脱出を図ったが、果たしてこれで正解だったのだろうか? 魔王城で徹底抗戦する道もあったのだが……、今となってはもう遅いか。
不意に村の外が騒がしくなった。八本足の軍馬が次々と村の中を走り回る音が響いてくる。
「しまった。もうここまで来てしまったのか!」
後悔したがもう遅い。あっという間に小屋の周りを囲まれてしまう。
「かくなる上は……、レイ様。こちらでお待ちを」
「まって、ノーラ。アナタだって怪我をしているじゃない。そんな状態で戦ったら……」
「私はレイ様の影でございます。私が引き付けます。どうか、お逃げを……」
「ノーラ……」
レイの目には涙が浮かぶ。
「では、行って参ります」
ドアを勢いよく開け、闇魔術のダーククラウドを使い、視界を悪くした。
後は私が盾となってレイ様が逃げる時間を稼ぐだけだ……。
ドアの一番近くにいた、軍馬に跨がった精鋭の兵士達に襲いかかり、背後から首を一閃した。
首なしになった身体を落とし、軍馬を操って次の兵に向かっていく。
だが、奴らも精鋭部隊。向かっていった所で、馬はアースジャベリンに貫かれ、馬から落ちると、あっというまに周りを囲まれてしまった。
「おやおや、これはノーラ様ではありませんか」
軍馬に乗った精鋭の一人がヘルメットを外しながら声をかけてきた。その青年は金色の髪の毛の間から大きな角を生やしており、青い目で私を睨み付けてきた。
「くっ、モートンっ。裏切ったのか!」
モートンは元私の部下だった男だった。
「裏切った? それはアナタでしょう? 私たち部下を置き去りにして、逃げたのはアナタですよ? おかげで出世するのが大変になっちゃったじゃないですか。ま、私は門を開けた功績が認められましてね。いまや、中将ですよ」
「くっ、貴様っ。奴らと内通していたのか!」
「えぇ、それに、ノーラ様と元魔王様の首を持ち帰れば、空いた六大将の座を約束していただきましてね。アナタには死んでもらわねばならないのですよ。くっくくく」
「外道がっ!」
「ん~、まだ立場がおわかりでないようですね。やれっ!」
モートンの合図と供に、アースジャベリンが襲いかかってくる。それも一つ二つではない。数十にも及ぶ数が一気に飛来する。
「舐めるなっ!」
剣を振るい、躱し、同じ魔法で相殺していくが、多勢に無勢。
「くあっ、ぐぅぅっ!」
体の手足に次々と石の槍が刺さり、小屋の壁に磔になってしまった。
「ぐああああっっっ……」
痛い、しかし、怒りが治まらない。この外道をせめて道連れに……。
「もうやめるのじゃ!」
後ろから聞こえたのは我が主の声。
「レイ様っ!」
「モートンだな。妾の首をそなたにやろう。じゃがノーラは許してやって欲しい。どうじゃ。お主の本命は妾の首。そうじゃろ?」
「なりません! レイ様! お逃げください!」
「くっくっく、これはこれは魔王様。いえ、元魔王でしたな。お前の首とノーラを連れて帰れば、俺は六大将だ。わざわざそちらから出てきてくれるとは。笑いが止まらないとはこのことでしょうな!ぎゃ~ははは!!!」
「やはり、外道は外道か」
「レイ様、なぜ?」
「なぁに、お主と死ぬのも悪くないと思うての」
「レイ……様……」
「では、死んでいただくとしますか! おいっ! 二人ともやってしまえっ!」
死を覚悟した。するとまるで周りがスローモーションになったかのようにゆっくりと動いているように見える。
モートンと周りの兵達の上に土の槍がいくつも浮かび上がっていき、そして発射された。
壁に磔になって動けない私にレイ様が抱きついてきた。
「ノーラ、ごめんなさい。そして、ありがとう」
涙を浮かべながら私に微笑んでくれた。
私も目を瞑った。
怖かったのだ。敬愛するレイ様が死ぬ姿を見るのが。
アースジャベリンが雨のように降り注ぎ、小屋ごと破壊し尽くす音が聞こえてくる。
……??? なぜだろうか? 何も感じない。痛みが大きすぎて、怒りが大きすぎて感じないのだろうか?
恐る恐る目を開けてみると、私とレイ様を囲むように白い膜のようなものが、私たちを護ってくれているのだった。
32
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる