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第6章 アナザージャパン編
第76話 潜入
しおりを挟む「さてと、これからが大変だな」
「ワン!」
俺とコンは日本に降り立った。
コンの尻尾は目立つため、認識阻害の魔法を開発し、尻尾が一本に見えるよう調整してみたか、うまくいったようだ。
町ゆく人々はコンをただの白い犬に見てるのだろう。
とりあえず、日本に魔物が大勢で攻めてくることはないだろう。今のうちにこの世界と黄泉の環境を繋げているモノを探さなくてはならない。
「やっぱり、あの警察しかないのかなぁ?」
正直、気が進まない。あまりお世話になりたくないし。警察だって忙しいだろう。こちらの事情に付き合う暇なんてないだろうしな。
「しかたがない。潜伏だな」
「ワンッ」
どうやらコンもついてきたいようだ。
「静かにできるか? 潜入するからしゃべれないんだぞ?」
「ワン!」
「よし、いい返事だ。じゃ一緒にいこう!」
俺は自らに認識阻害の魔法をかけた。ビルのガラスに映っているはずの自分すら見えなくなる。
「これでよし、と」
「じゃ、行くか、コン!」
「ワンワンッ!」
俺は東京の警察本部へ潜入しに向かうのであった。
*
「魔物の回収は終わったのか?」
警視庁の一番奥まった箇所には魔物の体のパーツがいくつも並んでいる。それを見下ろしながら、腹の出た警官が部下に問うた。
「はっ、全ての死骸を回収、撤去が完了しております。」
「しかし、なんだってこんなモノを欲しがるんだ? 研究にしては多すぎるだろうに」
腹の出た警官は忌々しそうに呟く。
「よし、では予定通り、回収業者が来たら渡すことになっている。それまでは待機していてくれ」
「はっ!」
腹の出た警官はそう言い残して部屋を後にした。
その部屋の隅には、認識阻害の魔法のかかった男ときつねが一匹いた。
「きいたか? コン。この魔物の死骸だが、何処かに運ぶらしい」
「ヮゥ」
賢いコンは声を上手く抑えてくれている。
問題は何処に運んでいくのか? 何が目的なのか? それを知るにはこいつらに着いていくのが一番だろう。
やがてドアが開き、白い防護服を着込んだ一団が入ってきた。ひい、ふう、みぃ、……全部で十人もいる。彼らは警官と少し話をしたあと、その死骸をゆっくり、丁寧に運び出した。
多数ある腕やら脚やらを二人、三人がかりで慎重に運んでいる。俺とコンは足音を立てないようにこっそり後をつけ、死骸を積み込んでいる大型のトラックに忍び込んだ。
「よし、いい調子だ。コン、大丈夫か?」
「ヮゥゥ……」
「ん? そうか、お前は鼻が効きすぎるからこのにおいがキツイのか? 気が付かなくてすまん。よし、バリヤーで囲って空気を風魔法で入れ替えて、と。どうだ?」
「ワン」
「うん、大丈夫そうだな」
トラックは三十分ほど揺れたあと、停車した。
「着いたか。行こう、コン」
「ワン!」
俺とコンはすぐに荷台から飛び降りた。
辺りはすでに暗くなっており、ここがどこなのかははっきりしない。
だが、目の前にそびえ立つ工場が目的地なのは間違いなさそうだ。
素早くドアまで移動し、スキを伺った。やがて、ドアが開き、中から防護服を着込んだ作業員がぞろぞろと出て、トラックの荷台から魔物の死骸を運び出していく。
俺達は作業員と入れ替わるようにドアの中へ侵入することに成功した。
「この強烈なニオイ……、間違いない。奴らはここで何かをしているな」
コンは建物の内のニオイが苦手のようだったのでバリヤーでニオイをカットし、さらに闇魔法と風魔法を融合して、外の空気と換気出来る魔法を開発した。これにより、コンも快適に捜査できるというものだ。
工場内にはところ狭しと魔物のしが並べられ
作業員がパーツごとに分けていた。その奥ではさらに細かく切断している。
そして、そのさらに奥では部屋が区切られており、ガラス窓から研究者たちが並んで魔物の研究をしているのだった。
「魔物の研究か……、弱点でも探しているのだろうか?」
「ワン!」
コンが鳴いた方向には、黒いスーツに身を包んだ男たちが部屋の前で立っていた。
「あの部屋が怪しいのか。コン、よく教えてくれた。よし、行ってみよう」
だが、黒いスーツの男たちが邪魔でその部屋に近づけない。うぅむ、どうしたものか……。
悩んでいると、コンが何やら魔力を溜め、魔法を男たちに飛ばした。
「うん? な、なんだ? これは? う……、か、体が……」
ドサリと倒れ込む男たち。
「何をしたんだ? コン、凄いじゃないか!」
「ワフ!」
もっと褒めてと言わんばかりに俺の脚にからみついてくる。
近くに寄ってみると、男たちは全員、眠っているのだった。
「コンの魔法にこんな凄いのがあったのか」
俺はその扉に近づいた。中から話し声が聞こえてくる。
「……、……、」
うぅむ、これじゃ何言ってるのか全くわからんな。どうしたものか……。
「ワンッ!」
「ん? 強引にやってしまえ? そうだな、そのほうが俺らしいしな。難しいことは考えるのやめよう、よし!」
俺はドアを開け放つ。
「誰だ!?」
中にいた人達の視線が一斉にコチラを向く。
「さ、話は後でジックリと聞かせてもらおう。さ、コン! やってしまえ!」
「ワンッ!」
コンの睡眠魔法があたりを包み込み、中にいた人間はパタパタと倒れ込み、眠っていく。
「さ、黒い霧を作って、と、全員ここに投げ入れるぞ!」
「ワンッ!」
謎の大量失踪事件とか、騒がれる前に何とかしなきゃな。
こうして、俺は尋問するべく、研究者達を黄泉へ案内するのであった。
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