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第7章 聖魔大戦編
第100話 聖神イクス戦 1
しおりを挟む「控えよ。我は聖神 イクスなり」
出現したのは見上げるほどもある大きさの神だった。
この大きい神は真っ白な鎧に身を包み、あちこちが七色に光り輝いている。腰には勇者の持っていた聖剣にも似た形の巨大な剣を帯刀している。フルフェイスの兜から赤く光る目が俺を捉えたまま睨んでいた。
聖教国で崇められていた神がたしか……イクス、そういう名前だったはずだ。ならば奴こそがあの聖教国を支配する神ということなのだろう。
「たったの四人で我の前に立とうとは、図が高いわ! 下郎共が!」
随分と我の強い神が現れたものだ。ふぅ、と深いため息が漏れる。
「一つ聞きたいんだがね? 人間達に魔界を攻めるように仕向けたのはお前かね?」
これだけは聞いて起きたかった。 今まで現れた神々には人々を扇動し、争うように仕向ける輩もいたからだ。そうであるならば捕まえた王たちの処遇も少しは考えるつもりなのだ。
「下郎共の分際で我に口を訊くとは……、愚かなる者共よ。だが冥土の土産に教えてやろう。我は人間共の欲望より生まれし神。だが、人間共は争わねば神を忘れ信仰を捨てようとする。それは許し難きことなのだ。神を生み出しておいて、捨て去ろうとは……、なんと愚かなる連中だろうか。それならば神が人間共を導いてやらねばならんのだ。これで答えになったであろう?」
「ご親切な説明傷み入る。とか思うわけないだろ! お前等のせいで俺がどれだけ苦労してると思ってるんだ! 今回だって凄まじい犠牲者をだしやがって!」
「だからこそ我が現界したのだ。矮小なる人間共の願いを直接叶えるために。貴様等を倒し、魔界諸共、我が自ら滅ぼしてやろう。」
やれやれ、神ってのは傲慢な奴が多いがコイツも相当だな。
他の皆を見ても、その表情には呆れの色が見える。
しかし、奴らは信仰によって生まれる。元を辿れば原因は人間の方なのだろうが、どうして神ってやつはこうも暴走しやすいのだろうか?
今度、俺をこの世界に送り込んだ創造神に会ったら神界のことを聞いてみたいものだ。
だけど、その前にやることを終わらせなきゃな。
イクスは腰に挿していた剣を抜きはなった。七色に光る刀身はいかにも切れ味が鋭そうだ。それだけでなく、分厚く、太い剣は俺達の刀がいかに業物であろうとも打ち合うことは難しそうなほどに大きい。
基本的にコイツの攻撃は躱すしかないだろうな……。
「くだらん話もこれまでだ。貴様等をこの世界から消滅させてやるわ!」
イクスはその長大な剣を横薙に振り回す。轟音を伴って振り回される剣は、一振りで俺たち全員を攻撃対象に捉えている。
初撃をしゃがんで躱すが、巨大な剣ゆえ、振り回した後には暴風ともいえる風が吹き荒れ、次への挙動を遅らせる。
その間にまたイクスは反対側から聖剣をブン回してくるのだった。
「俺がやってみる!」
イクスの攻撃を防ぐべく、バリヤーの多重展開をする。それに加え、両手にホーリーソードを出し、防御を試みる。だが、俺のバリヤーは次々と瞬く間に叩き割られ、頼みの綱のホーリーソードも容易く切り裂かれた。
だが、バリヤーや、ホーリーソードにぶつかった際、僅かだが剣の動きが鈍った。
ここにいるメンバーであれば、このほんのわずかな隙さえあれば攻撃を仕掛けるには充分なはずだ。
霞さんの風魔法、リーダーの刀、エルガの拳がイクスに炸裂する。
「んっ? 効いてないのか?」
リーダーが眉をひそめた。
イクスは皆の攻撃をものともせずに自分の剣を振り抜いていく。
その剣をジャンプしながら躱しきったが、皆の攻撃がこれほどまでに効かないとは!
「グハハハ! 貴様等の攻撃などこの聖鎧の前では無力! 諦めて我が剣の前に塵と消えるがいい!」
イクスは得意げに笑いながら、またバカでかい聖剣を横薙ぎに振ってくる。
だが、ここでリーダーの目が光る。
「ソウ、また頼むよ!」
さすがリーダーだ。先程の攻撃で思うところがあったんだな。
「任せてくれ! バリヤー!」
あっさり切られたホーリーソードは辞めて、バリヤーを先程の倍の数を展開した。これで、僅かだけど時間が稼げるはず!
イクスの剣とバリヤーがぶつかり、激しく火花を散らす。だが、それも一瞬のことだ。奴の剣はすぐにバリヤーを打ち破って突き進んでくる。
「リーダー!」
「あぁ、任せて!」
リーダーは懐から青い小瓶を取り出し、イクスになげた。その小瓶はイクスの胸の真ん中に当たると砕け散り、中の液体が鎧を水浸しにした。
「そんなモノ、このワシには効かぬ! 小賢しいわ!」
イクスはすっかり調子に乗ったようで、マスクの上に見える目が笑っているように曲がっていた。
「みんな! あのポイントを集中攻撃してくれ!」
リーダーの激が飛ぶ。
さらに迫るイクスの攻撃。俺のバリヤーなど、問題にしない怪力による攻撃は狂風を伴い襲いかかってくる。
相変わらずバリヤーをいとも簡単に叩きわられるが、皆の攻撃は一点に集中し次々と放たれていく。
「ライトニングストーム!」
霞さんの放つ魔法は雷魔法と風魔法の合成術だ。発生した、強力な雷が暴風に乗ってイクスの胸へ飛んでいく。
「ぬりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」
エルガの怒涛の連撃が放たれる。拳から放たれる衝撃波はまるで一筋の光になり、イクスの胸へ全て命中していく。
「よし、霞はこのポーション、エルガはこいつで!」
リーダーはポーションをいくつも取り出し、霞さんとエルガになげつける。
「ついでにソウにもコイツをブレゼントだ!」
リーダーが投げつけたポーションが俺の体に当たり、砕けると、中からドロリとした液体が服に染み込んできた。
「こ、これは……?」
一体どんな効果があるのかわからないが、考えている間にまたイクスの攻撃が迫ってくる。
「くっ、バリヤーだ!」
バリヤーの多重展開を張ると同時に、イクスの剣がぶつかる。そして、火花を散らすのだか、今までよりもバリヤーの一枚一枚が長持ちしていた。
「おお!? 持ちこたえてる……のか!」
俺が驚いていると、
「ソウ君のために光属性の魔法を強化するポーションを作っておいたのさ。どうだい?」
リーダーは得意げに言う。今が戦闘中でなければ、無い胸を張って高笑いしていたことだろう。
「凄い効果だ! いつの間にこれほどのものを!」
これには本当に驚いた。イクスの剣はバリヤーを突き破るのに、時間がかかっており、大きな隙を見せることになった。
「ぬうっ! き、貴様。一体なにをしたのだ!」
イクスがバリヤーを壊しきれず、剣とバリヤーの間では、ギャリギャリ! と音がなり、火花も今までにないくらいに激しく飛び散っている。
ここぞとばかりに霞さんの魔法とエルガの拳撃が、イクスの胸を目がけて放たれた。
「ライトニングストーム!」
「ぬうりゃあ~~~!!!」
二人の攻撃がイクスの胸に命中する。
「ぐうお?!」
当たった瞬間、イクスの巨大な体が宙に浮いた。イクスは態勢を崩さず、何とか足で踏ん張るように膝を曲げた状態で堪えた。
「き、貴様等~っ! 一体何をした!」
イクスの目は驚愕に見開いている。
「なあに、アンタの鎧を浸蝕し、劣化させるポーションを塗ったのさ。アンタのご自慢の鎧はもう使い物にならないってわけ。それに合わせてみんなの攻撃力を増やせば、ダメージが通るってワケさ」
「リーダーかっこよすぎ!」
俺は猛烈に感動してる! 以前は一人で神と戦っていたため、倒すのに一日がかりだったりしたのだ。こんなに早くダメージに繋がるなんて……、流石はリーダーだ! マジ尊敬!
「ふふっ、姉さんってば、相変わらずバフの研究に余念がないんだから」
霞さんも納得の笑顔を浮かべている。
「認めざるを得んな。俺の拳がこれほど強化されるとは……」
エルガも少し驚いているふうに見える。自分の拳を見ながら嬉しそうにニヤニヤしていた。
ここまでバリヤーが強化されたんならホーリーソードでも防げるかもしれないな。よし、次は俺も攻撃に参加するぞ!
興奮が高まり闘いは次のステージへと移っていくのであった。
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