111 / 219
第8章 聖教国にて
第110話 救出
しおりを挟む「ん? あれは……、オークジェネラルか! こんな場所にいるなんて。奥にいる人は……、まだ生存者がいるみたいだ!」
俺はホーリーソードでオーク達をすれ違いざまに細切れにしていく。
ジェネラルが俺に気付いた。
「グモオオオォォォ!!!」
雄叫びによる威圧だろうが、バリヤーを薄く張っている俺には全く効果がない。それよりも奥にいる人のほうが気になる。早く助けなければ。
「オオオォォォッ!」
俺は魔力を手に集め、ホーリーソードを長く変形させていく。
「喰らいやがれっ!」
ジェネラルも上から巨大な岩斧を振りかぶった。だが、俺のホーリーソードはその岩斧ごと真っ二つに切り裂いた。
縦に走った赤い線から血を噴き出しドドォ! っと倒れ込むジェネラル。
俺は奥にいた人へ手を伸ばした。
「おい、大丈夫か?」
その人は女性だった。長いブロンドの髪は腰まで伸びており、泥に濡れているが、整った顔立ちに見える。恐らくは高貴な人なのだろうか? やぶれて泥だらけになっている服だが、上質な生地で煌びやかさを感じるものだったのだ。
だが、俺が手を伸ばした瞬間、その女性は気を失って倒れ込んでしまうのであった。
***
俺はその女性をかつぎ、森から街道へ真っ直ぐに走った。
すると行く手には盗賊らしき格好の者たちが森の中を必死になって探し回っていた。
さっきのオーク達に紛れて盗賊らしき奴たちも死んでいたが……、なるほど、この女性を探してるって所か。
どうみても襲っているのは奴らのほうだろう。容赦する必要もないか。
すれ違う盗賊達を全て切り捨てていく。そのまま走り抜けていくと、やがて視界が開け、街道に抜けた。
そこには盗賊の親玉らしき人物と騎士風の男が並んで立っていた。
奴らは俺の背負っている女の存在に気付くとすぐに近づいてきた。
「げっへっへ、その女をこっちによこしな!」
汚い舌を伸ばしながらサーベルの刃をなめ回し、威嚇しているつもりなのだろう。
「悪いことは言わん。その女性を置いて立ち去るがいい。そうすればお前の命だけは見逃してやろう」
騎士の男はそれなりの貴族なのだろうか? 立ち居振る舞いが隣の盗賊とは段違いだ。
「残念だが……、この人を渡すつもりはない。お前等こそすぐににげるんなら見逃してやってもいいぞ?」
「なっ、なんだとぉ!」
盗賊は指笛をピィーーーっと吹いた。集まる合図なのだろう。
「ひゃひゃひゃ、これでお前も終わりだ。囲んでリンチしてやるぜぇ!」
盗賊の顔がますます下品になっていく。もう見ていられんな。
「ふぅ、では後は頼みますよ」
騎士の男は剣を鞘に収め、後ろに下がっていく。
俺もまとめて相手してやるほうが楽なので少し待ってやることにしたのだが……、
「ん? なぜだ? どうして誰も来ない?」
盗賊は焦りだしたように首を左右に振って周りを見るが、だれもやって来る気配はない。
「あぁ、来る途中にゴミを切り捨てたんだが、あれで全部だったか。じゃ、待つ意味もないな」
俺はホーリーソードを伸ばし、その場から一歩も動かずに盗賊の心臓を一付きする。
「ぐあっ! ば、ばかな……」
その場にドサリと倒れ込む盗賊を騎士は驚いた顔で見た。
「むっ? 今なにをした? 貴様は一体っ?」
騎士が剣を抜こうとするが、もう遅い。俺の剣はすでに奴を切った後なのだ。騎士の腕が落ちる。
「な、なんだというのだ!」
体中に赤い線が走って行く。そして、騎士の体は崩れ落ちるのだった。
***
「んっ、こ……ここは……」
ようやく目を覚ましてくれたか。取りあえずヒールとキュアーをかけ、体の傷と服は元に戻しておいた。その状態で壊れた馬車の座席部に寝ていてもらっていた。
俺はその間に、盗賊達の遺体をヘルファイヤーで燃やし、また、彼女の騎士と思わしき服装の人たちは並べておいたのだ。
「やぁ。俺はソウ。冒険者だ」
俺は発行してもらった冒険者プレートを見せた。
それを見た女は少し安心したようだ。
「わ、私を助けてくださって、本当にありがとうございました」
その女は優雅に頭を下げた。やはり貴族でもやっているんだろうな。振る舞いというものが今まで出会った人たちとはまるで違っている。
「私の名前はメティ。メティ・ヴァン・シュヴァルツヴァインと申します。貴方には本当に、感謝してもしきれません」
「あぁ、挨拶はそこまでにしよう。不躾かもしれないが、急がないと魂が離れてしまうんだ」
「魂が? 離れる? ですか?」
俺の言葉に顔中でハテナマークを浮かべているようだ。
「俺には見分けが難しい者もいる。なにせ、山賊の隠れ蓑を被った騎士もいたようだんでな。君の目で一人ずつ確認してもらえないか?」
「……は? え……えぇ、それは構いませんが……。この者達は私を守るために死んでくれた忠義の士。手厚く葬らなければなりません」
「あぁ、頼む」
メティは一人ずつ、その顔を確認していきながら、涙を流していった。
「この者達だけで問題ないようです。ここに並べられた10人はいずれも私の家の騎士です」
メティは確認を終えると泣きながら俯いてしまった。
「よし、では始めるか、エリアリザレクション!」
俺の体内から放出される膨大な魔力が白い光となって辺りを包み込んでいく。
「きゃっ、な、何が起こっているの?」
メティもあまりの光に目を覆っていた。
「うん、なんとかなったようだ」
俺の魔法が終わる頃には並べられた遺体たちに魂が戻り、息を吹き返していくのであった。
10
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる