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言い聞かせてる時点で恋だった
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しおりを挟む「おい」
地を這うように低い声が聞こえて目を開ければ、酔っ払いの手を鷲掴みにしている翠がいた。血管が浮き出るほど、力が込められているのが分かる。
おじさんは「痛い痛い」と大袈裟なまでに喚いているが、無表情の翠は力を弱めようとはしなかった。
「失せな」
あっさりとおじさんを僕から引き剥がした翠は、そのまま首根っこを掴んで、まるでゴミでも捨てるかのようにぺいっと外に投げ捨てた。
ぶわりと威圧するオーラを纏ったまま、瞳に光の戻らない翠が戻ってくる。
自分に向けられたものではないと分かってはいてもまざまざと力の差を見せつけられて、目の前のアルファとの壁を感じてしまう。
これが人類の頂点に君臨するアルファ様。
平凡な僕とは大違い。どう頑張ったって相容れない。
酔っ払いから解放されたからか、アルファに圧倒されたからか、はたまたそのどちらもか。急に力が抜けてしまって、僕はその場にへなへなとしゃがみこんだ。
膝に顔を埋めれば、自分の体が震えていることに気がついた。
「陽?」
「…………」
声をかけられて、体がびくりと反応する。
恐る恐る顔を上げれば、心配の色を滲ませている翠が僕の前に跪いていた。慰めるようにくしゃりと髪を撫でられる。
「大丈夫?」
「……はい」
こくりと頷けば、翠がほっと胸を撫で下ろす。
もう威圧的なオーラはなくなっていて、焦っていたのがよく分かる。僕も少し息がしやすくなった。
手を引っ張られて立ち上がると、濁りのない綺麗な瞳が僕だけを見つめてる。
翠に触れられるのは全然平気なのに、むしろ嬉しいと思ってしまうぐらいなのに。他の人にはどうしてこんなに嫌悪感を抱くのだろう。
「……よかった」
「ありがとうございました」
安心したように笑みを浮かべる翠の顔をまっすぐ見れない。小さな声でお礼を言うと、再びぽんぽんと頭を撫でられた。
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