18 / 81
天を仰ぐ
1
しおりを挟む一年生の頃の、あの自由のない時間割って何だったんだろうと思う今日この頃。必修科目を落とすわけにはいかないと躍起になっていたっけと、思い出せば遠い記憶のようだ。
三年生にもなれば、わざわざ大学に毎日通わなくて済む。イメージしていた大学生活をようやく満喫できると思っていたけれど、現実は僕の想像を遥かに超えていた。
トップアイドルの家政夫になって、早一ヶ月。同じ時を過ごすにつれて、どんどん翠から離れがたくなっている事実には蓋をしたままだ。
この気持ちに真正面から向き合うつもりはなかった。望んでも叶わない恋なんて、早く消してしまいたい。
しゃぼん玉のようにどんどん膨らんでいくこの想いは、いつか本当にぱちんと消えてなくなってしまうのだろうか。
週の真ん中、水曜日。そんなことを考えているなんて微塵も思っていない様子のアルファ様は、ご機嫌に膝の上に寝転んで僕の髪を指先でいじって遊んでいる。
「んふふ」
「楽しい?」
「そりゃあもう、すごく」
ケアのされていない、少しパサついた髪の何がそんなに翠を夢中にさせるのか。アルファ様独特の感性は何時だって不思議だ。
やめてと拒否するのも違う気がして、翠の好きなようにさせてしまう。結局、いつもこうだ。翠からのスキンシップが嬉しくて、もっとと望んでいる自分がいる。
「陽は大学卒業したらどうするの?」
「うーん……まだ悩み中かな」
翠に言われてから自然ととれていった敬語が、僕らの心の距離が少し近づいたことを表している。
周りが始めているからと、やりたいことも見つけられないままなんとなくでやり過ごしている就職活動の話に、自然と表情が暗くなる。それを目にした翠の手が伸びてきて、僕の頬を擽る。
「そっかぁ」
「…………」
「行きたいところがないなら、俺がスカウトしちゃおうかな」
「え?」
「卒業しても、ずっと俺の傍にいてよ」
「っ、そんなの、」
「今は頭に入れておくだけでいいから。もし就活が上手くいかなくてもその選択肢があるって思えば、気は楽でしょ」
そう言って笑う翠は、狡い男だ。
貴方に恋をしている人に、なんて残酷なことを言うのだろう。
たとえ今、翠に恋人がいなくても、こんなにいいアルファなのだ、いつかは彼の特別が現れる。仲睦まじい二人を一番近くで見ていろと言うのか。
想像しただけで何かが失われたみたいにこんなにも胸が苦しくなるのに、僕はそんな未来を耐えられるわけがない。
154
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
親に虐げられてきたβが、Ωと偽ってαと婚約してしまった話
さるやま
BL
◆瑞希(受け)語り
□アキ(攻め)語り
攻め→→→→←←受け
眞鍋秋人(攻め)
優秀なα。真鍋家の次期当主。本質は狡くて狡猾だが、それを上手く隠して好青年を演じている。瑞希にはアキさんと呼ばれている。
高宮瑞希(受け)
Ωと偽っている平凡なβ。幼少期の経験からか自己肯定感が低く、自分に自信がない。自己犠牲的。
有栖蕾
花の精のように美しいと名高い美少年のΩ。アキさんの元婚約者(と言っても、正式な婚約関係になく、幼少期の口約束程度)であり、アキさんのことをまだ好いている。瑞希のことを秋人の婚約者として紹介され、許せない相手になった。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる