70 / 70
と言うことで
しおりを挟む
「ということは・・・」
ローゼリアは気付いたらしい。ここが食堂だというのは嘘だとサディアンは言った。ローゼリアに出会うきっかけがなかったとも。ここを食堂だと偽ってまで出会うきっかけを作ったという事になる。だが疑問も浮かぶ。
「で、ですが、殿下・・・お料理は・・・」
「ん?あぁ、ルカスが作った」
「ル・・・カス様?」
「あぁ、さっき話した部下だ」
「お料理もなされるのですね」
「まぁな、影はいろいろな役割を持った人間の集まりだ。情報収集が任務の奴もいれば、戦闘が任務の奴もいる。ルカスのように、潜入が任務の奴は、長期に渡って敵地に潜ることもある。おいそれと安心して食事に手をつけれない事も多い。敵だとバレれば、毒を盛られたりする事だってあるのだからな。自分の身を守る術として、料理が必要になることも多々ある」
「そういうご事情が・・・」
「まぁ、ルカスの場合は、敵国の料理が不味かったというのがトラウマらしい」
クツクツと笑うサディアンの後ろで、ルカスが眉間にシワを寄せて天井を仰いでいる。そうとう口にあわなかったのだろう。
「まぁ、そういう事だ。君を騙したような真似をしたことは謝る。申し訳ない」
サディアンが姿勢を整え、ガバッと頭を下げると、ローゼリアは慌てた。
「で、殿下!頭をあげてください」
「許してくれるということでいいのか?」
サディアンはゆるゆるっと顔をあげると、上目遣いにローゼリアを見る。
「許すも何も、確かに騙されはしましたけれども、私は何も陥れられたり、悪いようにはされておりません。なんなら美味しい食事を頂いて楽しい時間も過ごせました。なので、感謝こそすれ、怒る理由はございませんわ」
ニコリとほほ笑むローゼリア。
「やはり欲しいな・・・」
「はい?」
「いや、何でもない。という事で、俺はローゼリア嬢に興味を持った。なので、領地まで同行したい」
「という事でと言われましても・・・」
そのやり取りを見ていたララが、横からそっと話しかける。
「お嬢様、一度旦那様にご報告されてからがよくありませんか?国同士のトラブルにも発展しかねません」
「そうね」
こそこそと話す二人を不思議そうな顔で見ているサディアン。
「何か問題があるのか?」
「問題はございませんが、殿下をお迎えする準備等何もできておりませんし、私も領地へ行くのは久しぶりです。それに、何も伝えていないのに、突然殿下が領地の邸に訪れると、邸の使用人達が驚きますわ」
苦笑いしながら説明するローゼリアに、サディアンもそれもそうかと納得する。
「殿下、少しお時間を頂けますか?」
「というと?」
「お父様に一度話を通させてください。私の判断では何とも」
「わかった、よい返事を期待している」
その場としては丸く収まったとローゼリアはホッとしていた。
ローゼリアは気付いたらしい。ここが食堂だというのは嘘だとサディアンは言った。ローゼリアに出会うきっかけがなかったとも。ここを食堂だと偽ってまで出会うきっかけを作ったという事になる。だが疑問も浮かぶ。
「で、ですが、殿下・・・お料理は・・・」
「ん?あぁ、ルカスが作った」
「ル・・・カス様?」
「あぁ、さっき話した部下だ」
「お料理もなされるのですね」
「まぁな、影はいろいろな役割を持った人間の集まりだ。情報収集が任務の奴もいれば、戦闘が任務の奴もいる。ルカスのように、潜入が任務の奴は、長期に渡って敵地に潜ることもある。おいそれと安心して食事に手をつけれない事も多い。敵だとバレれば、毒を盛られたりする事だってあるのだからな。自分の身を守る術として、料理が必要になることも多々ある」
「そういうご事情が・・・」
「まぁ、ルカスの場合は、敵国の料理が不味かったというのがトラウマらしい」
クツクツと笑うサディアンの後ろで、ルカスが眉間にシワを寄せて天井を仰いでいる。そうとう口にあわなかったのだろう。
「まぁ、そういう事だ。君を騙したような真似をしたことは謝る。申し訳ない」
サディアンが姿勢を整え、ガバッと頭を下げると、ローゼリアは慌てた。
「で、殿下!頭をあげてください」
「許してくれるということでいいのか?」
サディアンはゆるゆるっと顔をあげると、上目遣いにローゼリアを見る。
「許すも何も、確かに騙されはしましたけれども、私は何も陥れられたり、悪いようにはされておりません。なんなら美味しい食事を頂いて楽しい時間も過ごせました。なので、感謝こそすれ、怒る理由はございませんわ」
ニコリとほほ笑むローゼリア。
「やはり欲しいな・・・」
「はい?」
「いや、何でもない。という事で、俺はローゼリア嬢に興味を持った。なので、領地まで同行したい」
「という事でと言われましても・・・」
そのやり取りを見ていたララが、横からそっと話しかける。
「お嬢様、一度旦那様にご報告されてからがよくありませんか?国同士のトラブルにも発展しかねません」
「そうね」
こそこそと話す二人を不思議そうな顔で見ているサディアン。
「何か問題があるのか?」
「問題はございませんが、殿下をお迎えする準備等何もできておりませんし、私も領地へ行くのは久しぶりです。それに、何も伝えていないのに、突然殿下が領地の邸に訪れると、邸の使用人達が驚きますわ」
苦笑いしながら説明するローゼリアに、サディアンもそれもそうかと納得する。
「殿下、少しお時間を頂けますか?」
「というと?」
「お父様に一度話を通させてください。私の判断では何とも」
「わかった、よい返事を期待している」
その場としては丸く収まったとローゼリアはホッとしていた。
21
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(40件)
あなたにおすすめの小説
人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない
望月 或
恋愛
◆第18回恋愛小説大賞で【優秀賞】を戴きました。
ありがとうございました!
「どちらかが“過ち”を犯した場合、相手の伴侶に“人”を損なう程の神の『呪い』が下されよう――」
ファローダ王国の国王と王妃が事故で急逝し、急遽王太子であるリオーシュが王に即位する事となった。
まだ齢二十三の王を支える存在として早急に王妃を決める事となり、リオーシュは同い年のシルヴィス侯爵家の長女、エウロペアを指名する。
彼女はそれを承諾し、二人は若き王と王妃として助け合って支え合い、少しずつ絆を育んでいった。
そんなある日、エウロペアの妹のカトレーダが頻繁にリオーシュに会いに来るようになった。
仲睦まじい二人を遠目に眺め、心を痛めるエウロペア。
そして彼女は、リオーシュがカトレーダの肩を抱いて自分の部屋に入る姿を目撃してしまう。
神の『呪い』が発動し、エウロペアの中から、五感が、感情が、思考が次々と失われていく。
そして彼女は、動かぬ、物言わぬ“人形”となった――
※視点の切り替わりがあります。タイトルの後ろに◇は、??視点です。
※Rシーンがあるお話はタイトルの後ろに*を付けています。
私から何でも奪い取る妹は、夫でさえも奪い取る ―妹の身代わり嫁の私、離縁させて頂きます―
望月 或
恋愛
「イヤよっ! あたし、大好きな人がいるんだもの。その人と結婚するの。お父様の言う何たらって人と絶対に結婚なんてしないわっ!」
また始まった、妹のワガママ。彼女に届いた縁談なのに。男爵家という貴族の立場なのに。
両親はいつも、昔から可愛がっていた妹の味方だった。
「フィンリー。お前がプリヴィの代わりにルバロ子爵家に嫁ぐんだ。分かったな?」
私には決定権なんてない。家族の中で私だけがずっとそうだった。
「お前みたいな地味で陰気臭い年増なんて全く呼んでないんだよ! ボクの邪魔だけはするなよ? ワガママも口答えも許さない。ボクに従順で大人しくしてろよ」
“初夜”に告げられた、夫となったルバロ子爵の自分勝手な言葉。それにめげず、私は子爵夫人の仕事と子爵代理を務めていった。
すると夫の態度が軟化していき、この場所で上手くやっていけると思った、ある日の夕方。
夫と妹が腕を組んでキスをし、主に密会に使われる宿屋がある路地裏に入っていくのを目撃してしまう。
その日から連日帰りが遅くなる夫。
そしてある衝撃的な場面を目撃してしまい、私は――
※独自の世界観です。ツッコミはそっと心の中でお願い致します。
※お読みになって不快に思われた方は、舌打ちしつつそっと引き返しをお願い致します。
※Rシーンは「*」を、ヒロイン以外のRシーンは「#」をタイトルの後ろに付けています。
初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~
如月あこ
恋愛
宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。
ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。
懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。
メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。
騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)
ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。
※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
【完結】妻至上主義
Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。
この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。
本編11話+番外編数話
[作者よりご挨拶]
未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。
現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。
お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。
(╥﹏╥)
お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
先が気になり、1日で一気に最後まで読んでしまいました。
第3の男、隣国王子まで出てきましたね。このあとの展開気になります。
ローゼリアの気持ちが早く癒えますように。
国王は、いつ女の影をローゼリアに勘違いされてるのに気づくかな…
次回の更新楽しみにしてます。
なんでローゼリアが、あの2人の不貞の尻拭いをしなきゃいけないのよ。
ローゼリアが美人で素敵な女性だからサディアス殿下は、あの阿呆女の代わりとしてでも連れ帰りたいのは分かるけど、不貞の傷が大きいローゼリアへの提案としては、最低だなと思いました。
彼女は素晴らしい淑女であり貴族令嬢。貴族令嬢としての矜持をもつ彼女は、隣国との友好の為ならと政略結婚を受け入れるとは思いますが、あのクソ共への厳罰は必須だよね。ライモンドは廃嫡。阿呆女とその家は、貴族の義務を果たさなかった事への罰として、阿呆女の貴族籍剥奪と賠償金、そして公爵家の3階級降格処分と領地の3分の2没収が妥当かと。
「貴族の義務を蔑ろにするなら、貴族でいる必要ないよね?」って感じ。
コメントありがとうございますL(´▽`L )
参考になります笑
ローゼリアにはハッピーエンドを迎えてもらわねば!と気合い入っています(^^)
早く陛下に会いたい!!