異世界転移しても無能力者なオレだけど無双ハーレムするぜ

訳注:

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第三話

辰狐女将という存在

 辰狐女将

 先にも言及したが、彼女は、この国の長たるデュークofヘルその人と最も古くからの付き合い、腐れ縁的な人物である。共に幾多の苦難を乗り越え、この「永久なる刹那」国をこれほどの大国家にのし上げた立役者の一人。
 とはいえ、それも今となっては伝説の彼方の話。現代日本の感覚で言うなら、歴史の授業などで「そういう時代があった」と習う程度のスケールの話である。

 それ程の存在が、いかに本城からほど近いとはいえ、まさかこんな市井の一角で店舗を構えているなどとは誰も思わないだろう。それほどの存在であれば、普通は、本城で祭り事を担うか、権勢を欲しいままに豪勢を極めるか、完全に天上人、一般人には全く関係のない雲の上の存在になっていると考える。

 しかし、彼女もデュークも知っている。その何の変哲もない一般人の日々の営みの集合体こそが国であり、たとえ世界を作り変える程の力を振るえるとしても、顔も名前も知らないかもしれないけど、確かにそこで生きる者達を軽んじてはならない事を。

 だからこそ、彼女は市井の一角でいる事にこだわるのだ。これから実例を挙げて説明する事となるが、彼女自身がこの店を通じて、直接的、間接的に、築き上げた様々な人脈。その人脈からもたらされる有形、無形の恩恵。これこそが、この辰狐女将の何者にも代えられない、真なる力なのである。

 その一例として、今、闇バイト強盗対策の会場となっているニート厚生施設を取り上げてみる。


ニート厚生施設

 大変困った事に、国が富むと、ニート志望者のような存在がどうしても一定数発生する。そんなのでも浮浪者のように、自分の裁量で行動し、曲がりなりにも自活しているのであればさほど問題にはならないのだが、残念ながら1~10まで誰かに頼りっぱなし。全てを丸投げにしているがゆえに、頼る者がいなくなったら最後、野垂れ死ぬ。もしくはもっと悪い方向に行くなら、ごく当たり前のように犯罪に走る事となる。

 そのような者達が道を踏み外す前に、ここに放り込み、自立できるようになるまで徹底的に育て直す。ここはそういう施設である。そういう意味ではニート更生+少年院+専業主婦希望の嫁修行場ぐらいを兼任しているといえる。

 いくつか約束事があるが、どれもこれも社会生活を営むのであれば当たり前に守らなければならないルールであり、かつ、実にシンプルなものしかない。


1:自分の面倒ぐらい、自分で見られるようになれ。野生動物でもできるような事ぐらいできないなら、死ね。

2:犯罪行為及び、それに類する行為の禁止。悪魔の世界なので多少のケンカ程度であれば大目に見られる時もあるが、明らかに重傷を負わせたりあまつさえ殺しまでやってしまったら最後、普通に煉獄から地獄へ堕とされる。
もっとも、基本的には元ニートの集団なので、殺しのような重篤犯罪にまではまず至らない。なので、大抵の場合は「タルタロス房」にその腐れた根性が破壊されるまで叩き込まれる事になる。
しかしながら面白いもので、そのような絶対的に不可能な状況下において、ごくまれ、千年以上運用して本当に数例程ではあるが、千日解放業を成功させ「我、悟りを得たり」となって卒業する者もいたりする。

3:この敷地内に存在する共用してよい施設、道具類は使いたければ自由に使用して構わない。故意に壊した場合は弁償する事。

4:基本的には1日1gp支給。実運用上、金貨1枚では使いにくいので、銀貨や銅貨を織り交ぜて1gp相当にして支給される。これでやりくりする事。ちなみに、かけそば(うどん)1杯銅貨3枚程度。揚げとか天ぷらとか乗せだすともっと高くなるが、それでも1杯銀貨1枚程。家賃が1月10gp、税金が例によって例の如く10分の1税により3gp、共益費2gpがかかる事をお忘れなく。
なお金の貸し借りは基本的にはできない。特に、ニート同士はトラブルの元になる要因になるので厳禁。

5:身を持ち崩さない程度であれば、賭場、酒、タバコ等も許されてはいる。が、仮に、それで資金を使いつくしたとしても、先の規定により追加資金を借りる等は一切できない。

6:脱走するのは自由だが、元よりニートやってたような奴らが、ここから脱走した所で何もできない事を知れ。

7:こちらの監視者が自立して生活できると判断した場合、晴れて卒業となる。なお、この監視者は、辰狐女将が魔法で作り出す分身体である。本体と比べると戦闘力は1万分の1もあるかどうかだが、それでも、何の戦闘訓練も受けていないようなニートに負ける事は-たとえ寝込みを襲われたとしても-ない。


第一段階

 まず、屋外に放り出される。目の前にはこれから先、暮らす事となる長屋。第一段階はその扉を自分で開けて中に入る所からになる。
 大抵のニートは、自身の置かれた立場を正しく認識できず、地面を転がって幼児のようにダダを捏ねたり、悪態をついたり、暴れたりする。
 突然の環境の激変により気持ちの整理がつかないというのも分かるが、大抵のニートは、そんな事をやっても誰も絶対に助けてくれないというのを悟り、一晩もすると、それしか道がないというのを思い知らされ、内情はどうあれ、長屋の扉を開け、中に入る事となる。

 それでも中に入ろうとしない者でも、

「アンタがそこでグズグズダダ捏ねるのは自由だけどね、2,3日もすりゃあ、まともに動く力もなくなるだろう。そうなったら・・・」

 と、大八車に乗せられたゴミの塊を指し示し

「アンタもアレの仲間入りだ。できなければ死ね。実に簡単な理屈だろう」

 結局は、自分でどうにかしない限り、死ぬ。という危機感の欠如。死ぬ、という事実を強制的に突きつけられたら、ADHDだろうが鬱だろうが人が怖いとか、そんな悠長な事なんか言ってられない。
 仮にそこで死を選べる豪胆さを持っているなら、そもそもがニートになんかならない。
 仮に、最初はこんな所で更生させられるぐらいなら、死んだ方がいいなんぞ思っていても、餓死というのは最も厳しい死に方なので、それに耐えられるような根性なんかあろうはずもなく。
 と言う事で、好む好まざるに関わらず、最終的にはほとんどの者が、扉を開けるしかなくなる。

 ごくまれに(概ね、1万分の1ぐらいの確立だが)、そこに至るのがあまりにも遅すぎたせいで、本当に野垂れ死ぬ者がいるが、それはもう、自然淘汰されて死んだとしか言いようがない。たとえ、超すごい英雄が彼を助ける為に手を差し伸べたとしても、それを自分から払いのけ、あまつさえ暴言を吐くような、助かる事を拒否しているとしか思えない者を救う事などできないのだ。

 すごく簡単な事に思うかもしれないが、自分の足で歩かさせ、自分の手で扉を開けさせる、これが非常に重要なのだ。それが例え、どれだけ小さな1歩であったとしても、自分の意思で、自分の力でそれをやる、やらせる、という所に意味がある。
 結局の所、自分で判断し行動する事から逃げ続け、周りの者に全てをやらせて、自分では何一つ動かない。そのような行動、認知のゆがみが積み重なった結果、ニートなんぞやり続ける事に何の疑問も持たなくなる訳で。だからこそ、本当にほんの僅か、それだけの事であったとしても、自力で行動させるという条件付けを行う必要があるのだ。


第二段階

 ここから本格的に更生プログラムが始まる。

 まず、やらなければならない事は「水汲み」。ここ「悠久たる砂上の楼閣」もローマ帝国のように上下水道完備である。とはいえ現代のそれとは違い、水道が通っているのは近場の井戸のような場所までであり、そこからは人力で水を汲みに行き、家の中にある水がめの中に必要なだけ運んで入れる必要があるのだ。
 水を汲んで運ぶための甕は空の状態で約3kg。最大で20ℓ程入るので、全備重量23kg程になる。1日2ℓ程度は水を飲まないといけないし、料理をしたり、洗い物をしたりすると当然、それ以上使う事となる。
 そのように自身が使うのに必要な水を運んで水がめに移す所からスタートとなる。

 ここまで読んだ者で「23kgの重量物を井戸から運んで来るとか、どんだけ重労働なんだ」と思った人。残念ながら貴方は、この第二段階でいきなり詰まる愚鈍なニートと思考力の点で大差ない人である。
 例えばこれがインドやアフリカの奥地でまともな水源まで数十kmも歩かなければならないような場所であれば、満載重量である23kg限界ギリギリまで入れて歩く方が効率が良いだろう。
 しかしここは、多くても100m程度も移動すれば水源までたどり着けるのだ。なら、わざわざ満載まで水を入れなくとも、5ℓ=5kg程度、身体の負担が少なくすむだけ入れて、数を往復すれば事が足りる。
 もう少し思考を巡らせるのであれば、ゴミを運んでいた大八車があるのだから、他にも大八車があるだろうというのが容易に想像できる。ので、そのような
道具を借りるなり、共用で使えるのであればそのような道具を使ってやれば、単にバカ正直に23kgの重量物を抱えてヨタヨタする必要などどこにもない。
 こういうのは仮に自力で思いつかなかったとしても、周りをちょっと見て他の人がどうやってるのかを少し観察するだけでも、自然にできるようになるもの・・・の筈なのだが、この程度の事でもいつまでたってもできない「びっくりするほどの情弱、正にバカとしか言いようのない」と表現するしかない人がいるのもまた事実。こういう人は本当に自分の力で物を考えたことがないのだろうというのが容易に想像がつく。
 ただ、そのような経験を通す事で、少しづつでも、自力で物を考え問題を解決する、という思考の回路のようなものを1から作る為に必要なプロセスとなるのだ。

 ともあれ、ここまでできて及第点。

 ここから先は本当に「できる」人の行動。ネット上でよくいる「本気出したらオレでもできる」とか「それぐらいオレでもできる」みたいな優秀エアプではできない。

 例えばこの「水汲み」の場合。先のような手段で自分の分は省力化しさっさと終了させられる。で、周りを見たら愚鈍な奴らがヨタヨタ水を運んでいる。ならどうすればいいのか? 答えは簡単。そういう奴らにこう持ち掛ければよい。

「もし、オレに銀貨1枚もくれるんだったら、代わりにその仕事、オレがやってやろうか?」

 ルールの所にも書いてあるが、みんな1日1gpは支給される。銀貨1枚なのでその収入のうちの10分の1を渡す事になるが、まだ暮らせない訳ではない。そして、別に犯罪行為ではない。むしろ、労働力を対価に正当な賃金をもらうという行為であるので、止められるどころか推奨される行為である。そして、愚鈍な者にとっては重労働でも、できる者からしたら、大した労力ではない(ここ重要)。
 愚鈍な者(しかもつい最近までニートやってたような怠け者)は、その条件であれば商談が成立する確率が高い。そのような形で適当にカモを何人か引っかけてやるだけで、他の連中より1歩先んじる事ができるだろう。

 更に、この世界では魔法が存在し、やろうと思えば(よっぽど才能が欠如しているような者でもない限り。大雑把に、どんな魔法でもいいから魔法が使えるようになる、というのであれば、このゼロセンチュリーワールドの住人であれば概ね7割の者が何らかの魔法を使えるだけの潜在能力がある)簡単な生活魔法程度であれば、寺子屋で聞きかじって自分で勉強するだけでも覚えられる。そのような形で水を出す魔法「クリエイトウォーター」の1つでも覚えてしまえば、水汲みなどというどうでもいい労働から解放されるだけでなく、それこそ稼ぎ放題となる。水売りというのは立派な商売なのだ。

 そこまで「できる」ような逸材はなかなかいないものの、仮に、そこまでできるようになったのであれば、もうその時点で晴れて卒業となる。そいつは実際、ちょっといろんな歯車がかみ合わなかったせいで取り残された、かわいそうな人だったのだろう。後は、ここの紹介で、水売り組合に顔をつなげてやるだけである。

 とまぁ、ただの「水汲み」程度の仕事であったとしても、本当に優秀な者と愚鈍な者とではここまで差がでるものなのだ。


 このような感じで「自炊」「トイレ掃除」「家の清掃」「洗濯」のような、生活するにあたり、できなければならない事を1からやらされて、好む好まざるに関わらず叩き込まれる事となる。できなければ死ね。実に簡単な話である。


 例えば、愚鈍な者が考えなしに金を使い、本来、自分でやらなければならない作業を先のように外注し続けた場合、どうなるのか? 家賃、税金等、確実に支払わなければならない部分にまで手を付ける前の段階で強制的にストップがかかる。
 そうなった場合、恐らく、1か月30gp支給の所、残り15gpになっており、(あくまで1日1gp支給なので)約2週間、完全に金なしで生活しなければならなくなる。

 しかし、この段階に至っても、どうにかしようとあがくのであれば、まだ何とかならないわけではない。思いつくかどうか、思いついたとして実行するかどうかはともかく、いくつか方法論は残っている。

1:ここの料亭等から出る、廃棄の食い物をもらう。言うてもかなり繁盛しているので、まぁまぁの量で、使い物にならないクズ肉とか菜っ葉のきれっぱしのような物は出る。そういう物をもらって来るのであれば、糊口を凌ぐぐらいはできるかもしれない。ただ、同類もそれなりにいるので、そういう者達と争奪戦となる。

2:時折、偶然にも大当たりした冒険者が御大尽な遊びをするので、そのおこぼれをもらう。まぁ~、財宝をため込むタイプの敵の巣を攻略した時に銅貨とか銀貨とか、アホ程出るけど、金貨100枚=銅貨1万枚。どれだけホールディングディバイスとかを駆使したとしても、無限に物が持てる訳ではないので、必然として、もう銅貨とか銀貨とかどうでもいいわとなって、テキトーにバラまいて群がる奴らを見て遊ぶやつとかいるんで、そういうのを狙う。

3:それと似ているが、落ちている金を拾う。基本的に、落としてすぐでもない限り、落とし主が分かる事の方が稀なので、そういうのを拾って自分の物にする分にはグレーではあるが犯罪ではない。これをもう少し拡張すると、例えばどぶさらいするとか、下水の掃除をする等により、偶然ではなく必然に変える事もできるだろう。

4:巻き割り、掃除、皿洗い、洗濯等、何でもいいのだが、できそうな(そして日払いで貰える)仕事をする。ここはニート更生施設以外にもいろいろと施設はあるので、そのような場所で、日雇い仕事で雇ってもらえるなら、まだ十分挽回できる可能性は残されている。

5:近場の川等に出かけていき、自力調達。明確に脱走するのでない限り、それぐらいまでの行動は許容される。現代日本より獲物自体は豊富にいるものの、もちろん採れない可能性もある。しかも採れるのが普通の魚ぐらいまでの獲物であればよいのだが、ここは煉獄。とんでもない魔界の魚が引っかかる可能性もあるので、そのような場合、自力で切り抜けないとならない。野生動物は十分に脅威となりえるのだ。


第三段階

 このような形で、好む好まざるに関わらず、自分の意思で働く(最悪でも自分の食い扶持ぐらいは何らかの手段で確保できる)ようになっていくのであれば、社会復帰まで後少しである。

 基本的には、彼らが自ら選んだ作業をそのままやらせる形をとる。例えば、どぶさらいや下水の掃除をするのであれば、それは立派な仕事だし、日雇いで何かやりだしたのであれば、それでもいいだろう。近場の山野で獲物を自力調達する道を選んだのであればそれもありだろう。何も誰もかれもが社畜になる必要はない。それで生きていけるのであれば、十分、自立して生活できている事になる。

 後は、金の管理ができるようになったと判断された段階で、各々の組合に紹介し、晴れて卒業となる。

 この頃には、最初の頃の幼児のようにダダを捏ね、自分の思い通りにならない事に対して、とにかく攻撃する、ような行動が実に恥ずかしい行為であったと反省し、ここまで厳しいながらも根気強く育て直しをしてくれた女将とここの者達に感謝の念が自然と湧き出るようになっているだろう。

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デザイナーズメモ

 まぁ~、何もこのタイミングで、別にニートの話を入れなくても、と思う人もいるかも、ですが。あえてこの話を入れました。
 それもこれも、つい最近「リアル美緒48歳」を観察する機会があってしまったもので、アレの挙動を直で観察してしまうと、どうしても、何かの形で残しておきたかった。

 正月、深夜の3時ぐらいにコンビニに両親同伴で入店。見た目、いはいる8050問題っぽい3人組で、娘の方は正に「美緒48歳(まぁ、元ネタの漫画の方はかなり誇張されているんで、あそこまでではなかったにしても、だ)」。
 とはいえ、入店時は(まぁ正月やしなぁ。そういう組み合わせもあるんかなぁ)ぐらいに思っていた。が、明らかに娘側の挙動がおかしい。ガチの幼稚園児のように走り回ったりまではしないものの、物を買うわけではないが、棚の物を物欲しそうに眺めていたり、フラフラキョロキョロと店を徘徊する動きは正に幼稚園児。

 (いや、何か買うんだったらさっさと買えよ、そんなチャリ銭で買える程度の品物ぐらい悩むほどとちゃうやろ)

 丁度、レジの所に一番くじの商品を飾っており、それをジーっと物欲しそうに眺め、親に対して「察しろ」みたいな圧を掛けてる所とか、はっきり言って不気味なレベル。
 最終的に、48歳が「やりたい」と親に言い出して、父親が「お母さんに言いなさい」、で母親が難色を示したので結局、クジは引かずに帰っていった。
 その時、ラス1まで残り12。1回700円なので、トータル8400円も出せばラス1賞まで一気に終わる。まぁ控え目に言って、そのレベルの金が自力で出せないとは考えられない。どころか、財布の紐を握っている母親にそれを言わなければならない、とか、ああ、コイツニートか、と。

 それで全て合点がいった。と同時に、ネット上で時折見られる婚活アカとかで結婚コンサルを悩ましているのはこういう連中か、と。

 実物を実際に観察させてもらっての素直な感想として、これは無理。
 親としては、せめて結婚させて安心したい、という理屈は分かるよ。でも、こんなのを結婚させるとかどんな奇跡が起こってもありえん。結婚なんて、他人同士が共同生活を行い続けるんだから、こんな、本当に何もできない人間が真面目に働いている人間の近くにただいるだけでもストレスの元にしかならん。仮に、何かの間違いで結婚できたとしても、間違いなく殴り飛ばされるだろうし、そうでなかったら、離婚一択。
 そもそもが結婚のような共同生活の極致のような生活なんて、1人で最低限の生活すらできない、全部、他人に丸投げ、1~100までお世話してくれる人がいないと1週間すら持たないような生活力しかない人間が、そんなのできる訳ねぇじゃん。

 こういう人に必要なのは、最低限、自分で自分の生活ぐらい何とかできるだけの力をつけさせることであって、結婚とか、生保とか、そういう類のものではない。そういう力を身につけさせられないなら、大変申し訳ないが、最大でも、両親がいなくなった時、間違いなく、娘の寿命も終わる。
 ナマポナマポなんて簡単に言うけど、この手の行政手続きはおろかまともに公共料金すら払った事のないような人では、まずもって、行政に対して何かアクションを起こす事自体がハードルが高すぎる。

 そもそもが生保を受ける、という発想自体が出てこない。そして、何らかでそこに至ったとしても、それを受ける為の手続きをどうすればいいのかが分からない。何かの奇跡が起こって市役所なり区役所なりまで行けたとしても、公共料金すらまともに払った事がないような人が、行政手続きなんて、説明されたとしても何言ってるか理解できないというのが容易に想像ができる。印鑑証明用のハンコ、住民票、銀行口座、手続きに必要な書類に記入する必要事項、身分証明書、等々。日本人というのはただでさえこの手の行政手続きを嫌がる傾向にある(とはいえ、水道料金とかの手続きを自分でやった事がある程度の事をやった事があるなら、職員が説明もしてくれるのでまぁできるぐらいの難易度だが)。なので、何を言っているかサッパリ、で、必要書類を揃えるだけであっち行ってこっち行ってとやらされるので、まぁ~、できずに諦めて帰ることになるだろう。

 一応、ナマポビジネスな人らに発見されるのであれば、彼らが勝手に全部やってくれるし、とりあえずでも食と住は確保できるから、それであるいは生きていくぐらいはできるのかもしれない。しかし、その生にどれだけの意味があるのか? とは思うが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

例えば動物と戯れるのが得意な者であれば、上様の猫の散歩係のような役職につけるかもしれない。

例えば食費を浮かせるために、自力で、粉を練る所からやるような者であれば、そのまま屋台を引くようになれるかもしれない。

例えば誰もが嫌がるトイレ掃除を、マジックハンドのような魔法を修得する事によって(特に、このぐらいの世界のトイレは、便を溜めておくツボのようなものが下に埋まっており、適宜それを取り換えなければならない)、それを容易にできる者であれば、下水処理系の仕事から引く手あまたになるだろう。

例えば自力で山菜採りやイノシシ狩りのような事をやるようになり、施設に帰るより、山に籠る時間の方が長くなるようになるのなら、マタギのような事ができるようになるだろう。

土器作りやガラス細工作りにはまるのなら、そういう道に進むのもいい。

絵なり文才のようなものに目覚めるのであれば、ここには和紙に相当するものもあれば「かわら版」のような物を作る場所へ行くなり、浮世絵のような物を作って売るのもありだろう。

それと似た方向になるが、歌とか楽器の才があるのなら、吟遊詩人のような生き方もできる。

ありきたりではあるが、鉄車の現場作業員、料理人、つぼ振り、倉庫の人足、各種職人、農林畜産業、等々、現実に存在する仕事であれば大体存在する。

もう、どうにもならない無能であったとしても、例えば、松明持ち(門の前とかで松明を持って立っておくだけの仕事。警備の立哨に相当する。1時間半立哨で30分休み。これを4セットで1日分の仕事)とか、使わなくなった公文書に黒塗りをして適度な大きさに切りそろえて便所紙として最終利用できるようにする仕事、とか、最悪、新魔法の実験体まで。

 別に世の中、現代日本で言う所の「いい学校に入っていい成績を残し大企業に入って」のような道こそが至高、みたいな事はない。こう言ってはなんだが現代日本ですら「いい学校」に入って「いい成績」を残した所で。いはいる「新卒カード」の時にちょっといい会社に入れるかも、ぐらいの意味合いしかない。
 しかも「大企業」に入った所で。そこは今は大企業かもしらんけど「ビグモ」「フジ」「吉本」「三菱UFJ」「日産」のような押しも押されぬ大企業様がどうなっているのか。特に「フジ」の社員は、ツブシが効かんから、下手な無職ニートより厳しいんじゃないんだろうかな~と。
 そしてあの手の問題は、日本という土壌が長年溜めてきた負債のようなもので、多かれ少なかれどこもここも持っている問題なのは誰の目から見ても明らかなので、大企業に所属できたからといって胡坐をかいていていい立場ではないよなぁと。

 最後の事例として、かなり特殊な事例となるが、この世界はいはいるファンタジー世界(俗称で言うなら「ナーロッパ世界」「西洋チャンバラ」など)なので、当然、例の職業「冒険者」についても言及せねばならない。

 それになろうと思ったら、普通の生活の延長線上にはないので、特別な訓練を追加で受ける(ここ重要)事となる。
 なぜ、追加で受けなければならないのか? 理由は簡単。まずもって自活能力がなければ、冒険者としての生活が成立しないからである。
 例えば、自炊できない場合、野外で獲物を捕らえたとしても、それらを食料として利用できる形にできない。魚が切り身で泳いでいるような事はないのだ。例えば、野草などを食する場合でも、毒草かどうか? どうやったら食えるようになるのか? 農業で育てている野菜などは野生のそれと違って、より食用に適するように品種改良されれいる場合がほとんどなので、野生に、水々としたニンジンやダイコンは存在しないのだ。(何か、江戸時代だかの書物の中に、飢饉の際、野草などを煮込んで食う時、塩を少々加えて煮込むなら大体いける、みたいな記述は見たような気がする)
 ゆえに、最低でも野外で実際に生活できるだけの能力もないような状態で「ぼうけんしゃになるぅ~」とか言いだすなど、狂気の沙汰に等しい。

 そして次に基礎体力。この世界は魔法の品がそこらのファンタジー世界など問題にならないぐらい多数存在し、利用できる・・・金があるなら・・・。当たり前の話として、そんな金がどっかから湧いて出て来る訳はなく。ゆえに、ごく初期~成功者として身を立てられるぐらいになるまでは、自分の荷物は自力でなんとかしなければならない。ざっと書き出すだけでも

 バックパック、携帯用寝具、ある程度の長さのロープ、携帯用食料1~2週間分、水袋(この地域だけで言うなら、竹筒という素晴らしいものが利用できるので、いはいる西洋世界より幾分有利である)、ハーケン、ピトン、ひっかけ鉤、松明数本、携帯用調理器具、簡易テント、魚を採るなら釣り具、寒冷地に行くなら防寒具、投光用ランタン(暗視があるからといっても明かりが不要なわけではない。ライト系の魔法は当たり前のように利用できるものの、明かりを無意味にまき散らさないようにしようと思うなら、ランタンのような道具が必須となる)、ひも適量(ロープでは太すぎる時とか、細かなトラップを仕掛ける時など)、シャベル、小型ハンマー、油ビン、呼子、石鹸、チョーク、等々

 冒険の出先で「あれがない」「これがない」は命に直結する。これらの装備を自力で担いで歩き続け、目的を達成して戻って来られるだけの基礎体力が-たとえ体力仕事に不得手なスペルキャスターであったとしても-要求される。これに加えて、前線で戦う者達は武具の重さが加わる。
 それらの事を考慮して、基礎体力作りとして、全備重量15~20kgの装備を背負って毎日20km程の行軍訓練が課される。

 この段階で「もう無理」と悟った者は早々に脱落する。とはいえ、この場所は「成功者」が普通に訪れるので、そのような「キラキラしたもの」に対する憧れを掻き立てられるのも事実。
 物語的には「何か大いなる使命を果たす為」とか「正義を執行する」とか「英雄的な者になりたい」などあるのだろう。間近にいる「成功者」に看過されてその道を選ぶ、というのも理由としては十分なのだが、そこにたどり着こうと思うなら、「成功者」達もそのような基礎的な鍛錬を疎かにしないという部分から目をそらす事はできない。

 冒険者は決してニートを続けるための「逃げ道」ではないのだ。

 これらを乗り越えた先に迎える、戦闘訓練なり魔法なりに関しては、その道のスペシャリスト(それこそ世界最強、絶対無敵な方々までいてしまう場所だ。師匠はよりどりみどり)はたくさんいるので、さほど問題はない。ただ、スポーツの世界でも「名プレイヤー=名監督」にはなれないように、教えるというのは別の能力が必要となる。単に「強いから」という理由で師事する人間を間違えた場合、いらない苦労をしょい込む事となるのには注意が必要。

 そのように基礎的な訓練を終え、まぁ大丈夫だろうという者達が一定数揃ったら、最後に、卒業試験的な意味合いで、首都郊外の適当な山なり海なりに1か月程、実際に冒険を行わさせ、生き残ったら晴れて合格となる。

 以後、例えば、そこらの野良ケルベロスとか煉獄カラスとか煉獄ヒグマとかを全部国軍だけで対処するには限界があるので、そういうのは民間に丸投げになる。ので、仕事自体は困る事はない。


 ともあれ、元ニート達はこのような感じで卒業して、以後、各々の道をいく事となる。もちろん、卒業後、様々な世話を焼いてもらい、一人前になるまで育て直してくれたこの組織に対し、有形、無形の恩義を返す事となる。

 人脈とはこのように構築されていくのだ。
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