陽キャと陰キャの恋の育て方

金色葵

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そして文化祭当日――

 結月は客席で陽太の演技を見ていた。
 かっこよく華がある陽太は、誰よりも目を引いて、結月はうっとりと瞳を蕩けさせていた。
 劇も終盤にさしかかり、もう少しで件のシーンがやってくる。結月の中に少しだけ、もやもやが浮かんできて、結月は首を振った。
(朝日くんが、ああ言ってくれたんだし、大丈夫)
 陽太がくれた言葉を思い出し、結月は視線を舞台に戻した。
「白石……白石っ!」
「?」
 すると、どこからか結月を呼ぶ声が聞こえた。
 きょろきょろと見渡すと、パイプ椅子の後ろにしゃがんでいる山田がいた。
「来て! 早く」
「えっ……ちょ、待って、山田く……」
 意味が分からず慌てる結月に構わず、山田は結月の腕を掴んで連れ出した。


 劇の終盤。舞台はまさにクライマックスを迎えていた。
「ああ、我が愛しのジュリエット……死してもなお美しい……」
 陽太の白熱した演技に、会場は息を飲んでその姿を見つめていた。棺の中には毒りんごを食べたジュリエットがいる。
「このくちづけとともに、一緒に天国で永遠に愛し合おう!」
 そっと棺に顔を近づけて、陽太扮するロミオがジュリエットの顔にかかるレースをめくる――

 結月は口から心臓が出そうなほどドキドキしていた。陽太の熱がこもったセリフが、さらにそれを加速させる。
 陽太が棺に顔を近づける気配に、緊張は最高潮を迎える。
 結月はギュッと強く瞼を閉じた。
 だけど、思っていた反応が来なくて、閉じた瞳をおずおずと開いた。
「っ……」
 目を開けた結月の目の前には、驚いて動きを止めた――陽太がいた。
 だけど、棺の中にいるのが結月だと理解した瞬間。みるみるうちに、嬉しさが陽太の顔に広がった。
 端正な顔が、愛しげに綻ぶ。目の前にある、陽太の甘い瞳に、結月はまるで時が止まったように吸い込まれる。
「愛してる……」
 台本にないセリフを、蕩けるような声で囁いて、陽太が棺の中に顔を伏せた。
 そして、本来ならフリだけで終わるはずの口付けを、結月の唇に捧げた。
 結月は深くて熱い陽太のキスに、うっとりと目を閉じた。


「やっぱ、ラブストーリーはハピエンじゃないとね~」
 舞台袖では、興奮気味に脚本を握りしめる小宮と、ガッツポーズをする山田と中村がいた。
 

  劇は滞りなく終幕を迎え、舞台『現代版ロミジュリ~ハピエンしか勝たん!』は、観客から惜しみない拍手を送られた。

 衣装合わせでの結月の様子に、キスシーンの時は結月をジュリエットと入れ替えようと画策していたみんなの協力のおかげで、舞台、そして陽太と結月、二つのラブスートリーはこれ以上のないハッピーエンドを迎えた。




 のちに、キスシーンにおける、陽太の慈愛に満ちた表情と演技が好評を博し、この舞台はその年の最優秀演目賞に選ばれたのだった。  
                                    





♡終♡
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