落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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六章

危ないのは

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「それでどうする?この町をもう少し見て回るのか?」

「うーん…?目ぼしい場所は行ったけど、大して面白そうな物もなかったからなぁ…」

短い時間ではあったけれど、町がそれほど大きくないことや、男の子がしっかりと町を案内してくれたのもあり、目ぼしい場所は見終わってしまった。それに、本人を前にしては言えないけれど、崇めてもいない人の話をずっと聞かされるのは少し辛い。

「他の町にでも行くかぁ…?」

「ねぇ?自分で行くわけでもないのに、簡単に言わないでくれる?」

「それに、今から移動したとしても、夕方には戻らなければならないので、見て回る事は出来ないと思いますよ?」

「そうなんだよなぁ…」

2人からも肯定的な返事が返ってこなかったからか、少し落ち込んだような声を出す。既に昼間過ぎているけれど、御者が迎えに来る夕方までにはまだ少し早く、かといって帰るにしても早すぎる。中途半端に残ってしまった時間をどうしようかと考えていると、それまで静かに付いて来ていたネアが口を開いた。

「それならさっさと帰るぞ。俺はお前らを安全に返す義務みたいなものがあるからな」

「保護者みたいなこと言うなよ!?お前は俺の母親か何かか!?」

「そんなわけないだろう。ここまで水を差さなかっただけでもありがたいと思え。それに、気付かれたら元も子もないだから、速めに帰っておいた方が良いだろうが」

「それは…そうなんだけどよ…」

子供の子守でもしているかのような言い草が不本意であるかのように叫ぶと、ネアは不機嫌そうに正論を返してくる。そのせいで、多少はたじろぐけれど、まだ帰りたくないバルドは、帰らなくても良い理由でも探すかのように視線を巡らせる。

「じゃ、じゃあ、教会の中だけ見てから帰るか…?」

「でも、立ち入り禁止の場所が多いって言ってたよ?」

「そんな場所になんか行ったら、熱心な信者に勧誘されるのがオチだぞ」

「あぁ…捕まったら話が長そうだなぁ…」

案内してくれた時に男の子が見せていた熱量を思い出し、永遠と教義の話をされるところでも想像したのか、苦い顔を浮かべながら言葉を濁す。それに、本人も僕と同じで特に興味がないのか、教会の見物に拘る事もなければ、ネアの言葉に反論する様子もない。そんな僕達の煮え切らない様子に、そんな時間すらも焦れったいとでもいうような態度をネアは見せる。

「見る場所もないなら、もう帰っても良いだろう?」

「ネア?お前、何でそんなに焦ってるんだ?」

ネアの態度は帰りたがっているというよりも、どこか焦っているかのようだった。今回の事が父様達に知られたら不味いとはいっても、ネアには被害はなさそうなのに何でそんなに焦るのかと、バルドは不可解そうな顔をしながら問い掛けると、何で気付かないんだとでも言いたそうな、少し苛立った様子で答えた。

「コイツが不用意に金貨なんて出したから、さらに周囲から見られているんだよ」

「見られているのなんて最初からだし、今さらだろ?」

目立つ容姿の人と一緒にいるから、僕達が町に入った時から注目の的だった。だから、何でそんな事を今さら気にするのかと首を傾げると、責めるような視線をグレイに向けていたネアの目線が、キッとこちらを向いた。

「こんな人が集まるような場所で大金なんて出したら、金を持っていると良からぬ奴等に知られて、無駄に狙われるに決まっているだろうが!」

「あぁ!」

王都はここよりも人が多いけれど、騎士団が常に目を光らせていて治安も良く、それなりに僕達の顔を知られているから、衛兵達も僕達の動向を気にして周囲を警戒してくれる。だから、普段よりも治安が良くなると街の人達から感謝される事もあるくらいだから、そんな風に狙われるなんて考えたこともない。だからこそ、ようやくネアが無駄にピリピリしていた事に合点がいったと声を上げると、その呑気な様子に脱力でもしたかのように、ため息でもこぼすかのように言葉を発する。

「本当に気楽な奴等だなぁ…」

安全面を全く考えていない様子に、呆れるのを通り越して感心でもしているかのような雰囲気もあったけど、グレイ達も僕達と似たような反応だった。

「襲われるといっても…ねぇ…?」

「たかが知れている」

「確かに…相手側が可哀想な気がするな…」

グレイが流し目のようなものを送れば、その言葉の続きを紡ぐようにキールが答える。でも、お爺さんはともかく、グレイ達2人なら、町のゴロツキ程度に遅れを取ることはなさそうだし、返り討ちにしている姿しか想像する事が出来ない。

「まぁ、素人相手になら俺やネアでも勝てるし、コイツ等もいれば何かあっても大丈夫そう……なぁ…?それなら、さっきの子も危ないんじゃないか…?」

剣の腕にはある程度の覚えがあるからか、バルドが少し自信を滲ませるけれど、途中であることに気付いたように、金貨を持って去っていた男の子の事を心配するような声を上げる。すると、キールも今思い出したかのように呟いた。

「そういえば、何人かが後を追って行くような行動をしていた奴がいたな?」

「はぁっ!?何でそれを早く言わないんだよ!?」

危ないかもしれないという話をしていても、それでも興味もなさそうに言うキールの言葉に、バルドが怒りをあらわにするけど、向こうは怒っている意味すら分かっていないようだった。

「教えろと言われていなかったからな。それに、自身と関係ない人間をいちいち気にしてやる必要がどこにある?」

「此処まで案内してくれたんだから、関係なくないだろう!」

「それだけの関係だろう?」

「そ、それだけって……!」

あまりにも冷たい態度に、バルドが絶句したように言葉をつまらせるけど、こちらの態度を見ても顔色一つ変えないどころか、さらに理解できないとでもいうような顔をする。そんな何も響いていない様子に、ここで議論していても埒が明かないと思ったのか、男の子の後を追いかけようとバルドが背を向ければ、引き止めるように声を掛けた。

「居場所すらも分からないに追いかけるのか?」

「だからって、放ってなんておけないだろう!?」

僅かな時間しか過ごしていない相手のために、何故そこまで熱心になれるのかという顔で尋ねるキールに、このまま知らない振りをして見過ごすのは騎士道精神に反すると言わんばかりの様子で、バルドは声を荒げながら答える。

「まぁ、まぁ、良いではないですか。ちょうど時間も持て余していたところなんですから、少しくらい付き合ってあげましょう」

「お前らは、もうちょっと他人を気に掛けるとかないのか!?」

「もう顔すら覚えていない人間相手に、そこまでは感情移入は出来ないかな?」

「記憶力悪すぎだろ!?」

仲裁に入ってくれたと思ったのに、まるで暇つぶしの一つでもあるかのような事を言って火に油を注いでいた。いくら人に興味がないといっても、さっき別れたばかりの子の顔すら覚えていないというグレイに、バルドはあり得ないとばかりに叫ぶ。すると、ティが訝しげな声を上げる。

「人間に興味がなさすぎて、顔の見分けも付いてないじゃないの?」

「まさか、そこまでは…」

「まぁ、みんな同じ顔に見えますけど、男女の区別くらいは付きますよ」

「いや!それは分かって当然だからな!?」

流石にそこまで酷くないだろうと少しだけ擁護しようとすれば、そのティの言葉に堂々と答えていて、信じられなさすぎてバルドが怒りも忘れるくらい驚愕していた。だけど、男女の区別しか付かないとなると、僕達の見分けが付いているのかさえも少し不安になってくる。

「ねぇ…?僕達の見分けとかついてる…?」

「まぁ、流石に家主になっている者を見分けられないのは失礼とは思っていますからね。なので、他ではあまり見ない髪色で助かります」

「でも…父様達と僕も同じだよ?」

「大、中、小で区別しています」

「大きさなの!?」

父様と兄様は雰囲気が似ている所があるから間違えられる事もあるかもしれないけれど、そんな認識の仕方をする人なんていないだけに、衝撃すぎて大きな声が出てしまった。ティでさえも呆れたような顔で驚いていた。そんな僕達の会話を聞いていたからか、バルドがちょっと不安げな声を上げる。

「じゃあ…俺達は…?」

「黒、緑、赤で」

「まさかの色判定なのか!?」

髪の色で見分けていたというまさかの事実に驚愕の声を上げれば、それを聞いても悪びれた様子もなく、さらりと言った。

「特に珍しい色と言うわけではないので、黒と緑で常に一緒にいて貰えたら他と区別しやすいです」

「俺達を一括りにするなよ!?」

「そうですよ!」

「ですが、そこにいる2人も、私とそう変わらないと思いますよ?」

そんな扱いをされるのは心外だとばかりに抗議の声を上げれば、グレイが2人の存在へと話を振った事で、バルド達の疑いの視線がバッとキール達に向く。すると、2人は揃って首を振りながら否定した。

「いや、俺もここまで酷くはない…」

「ワシもじゃ…」

「意外ですね?私と同じように興味がないと思っていたんですが?しかし、人間の喧嘩を買えるからには、相手を意識しているという意味でもあるので、意外ではないんでしょうか?」

「いや!?俺が知るかよ!?」

人間に対して関心はなくても、ある程度は識別する事はできると返せば、他人事のようではあったけれど関心したような態度を見せる。だけど、同じように手が出るのが速そうなバルドへと向けた疑問は、俺に聞くなとばかりに返されていた。そして、一人だけ追及されるのが面倒になってきたのか、続けて僕達にも聞き返してきた。

「それよりも、先程から私の事を気にかけているようですが、先程の子供を助けに行くんじゃないんですか?」

「そうだった!こんなこと話してる暇じゃなかった!!」

グレイの認識力の低さに驚きすぎて大事な事を忘れかけており、今からでも急いで追いかけようと、去って行った方へと向かおうとすれば、再びバルドの背をグレイが止める。

「ちょっと待って下さい」

「何だよ!?俺、急いでるんだけど!?」

「私も一緒に行きますよ?」

「はぁっ!?お前、本当に協力する気あったのか!?」

「それを言っていたのはキールであって、私は最初から協力しても良いと言っていましたよ?それに、人間を合法的に痛めつけられる機会なんて、あまりないですからね」

「そんな理由で来んなよ!」

楽しげな笑みを浮かべ、遊びにでも行くかの様相を見せているグレイに、不謹慎だとでもいうように声を荒げる。だけど、そんなグレイの態度に不安を覚えたのは僕達だけじゃないようだった。

「のう…?グレイが物騒な事を言い初めておるから、とりあえず悪者退治はワシが相手した方が良いんじゃないかのう…?」

「そうだな。普段は全く動かないくせに、一度動くと周囲への影響が一番大きい奴だからな。それに、躊躇いがない」

「それはお主も含めて皆も同じじゃろうて…。まったく…なぜ、そうも極端なことしかできんのじゃ…」

「俺も同じ言葉を返すぞ」

まるで自分の不幸でも呪うかのように言う相手に、自分の事を棚上げするなとでもいうように言い返しているけれど、そんなお爺さんやキールの会話で、さらなる不安が増していく。見捨てるという選択肢は僕にもないけれど、ネアが協力してくれるかも分からないから、バルドだけで勝てるとも思えない。だから、ついて来て貰うのが一番なんだけど、人間に対して価値観が違いすぎて、本当に手を貸してくれるかどうかも不安だ。でも、そんな不安を他所に、グレイが自分を連れて行く利点をあげる。

「私は後を彼の足取りを追えるので、闇雲に探す必要はなくなりますよ?」

「それは…助かる…」

「では、一緒に行くという事で良いかな?」

「なら!さっさと行くぞ!だいぶ時間を無駄にしたからな!!」

バルドが言うほど時間は経ってないとは思うけれど、男の子の足の速さを考えると、遠くに行ってしまった可能性もあるため、急いで追い掛けたそうに急かす。すると、成り行きを見守っていたネアが、止めても無駄だと悟ったように、後ろでため息を吐いた。

「はぁ…、最終的にこうなるような気はしていたが…目醒が悪いのも確かだからな…。だが、危ないと判断したら引くからな…」

「おぅ!」

ネアなりに男の子の事は心配はしていたようで、何だかんだ言いながらも付き合ってくれるネアには、バルドも元気に返事を返していた。
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