怪蒐師

うろこ道

文字の大きさ
12 / 58
第二話 忌み地

2②

しおりを挟む
  *

 住宅地を抜けると、車窓から見える風景は緑が多くなっていった。
 やがてビニールハウスの並ぶ畑が見えてきて、それも通り過ぎると、ミニバンは山に向かって進んでいった。
 草茫々の砂利道に入り、しばし走ったところでようやく車は止まった。
 傾きかけた掘っ立て小屋の前に黒のワンボックスカーが停まっていて、近くに女の子が二人立っている。
 彼女らが□□女子大のアルバイトなのだろう。なんだか対照的な二人だった。
 一人は髪を明るい栗色に染め、服も派手――というか華やかだった。レトロな小花柄のワンピースにデニムジャケット、足元は真っ赤なローヒールパンプス。鬱蒼とした周囲の風景からものすごく浮いている。
 もう一人は対照的に陰気な雰囲気を醸しだしていた。顎下でばっさりと切り揃えた真っ黒なおかっぱに、重たげな前髪が眼鏡の上半分を隠している。服装はグレーのパーカーにベージュのコットンパンツ、スニーカーという実用重視の恰好だった。隣に立つ派手な女子と並ぶと野暮ったさが際立った。――Tシャツにジーンズ姿の自分に言われたくはないだろうだが。
 ちなみに中野もTシャツにクロップドパンツという僕と似たり寄ったりのいでだちだった。まあ奴の恰好などどうでもいいのだが。
 ミニバンを降りた僕たちに、派手なほうの子が愛想よく声を掛けてきた。
国生こくしょう瑠菜るなでーす」
 にこっと笑いながらゆるく巻いた髪を揺らし、「はじめましてぇ」と舌ったらずな口調で言った。
 ――眩しい。今までの人生の中であまりに縁遠いタイプの女子で、僕はそっと目をそらす。
 一方で中野は、「瑠菜ちゃんかぁ」とだらしなく顔を弛緩させた。
 中野と僕も自己紹介をし、最後に眼鏡の女子が「日下部くさかべあかねです」と伏し目がちにぼつりと名乗った。
「この子、愛想悪くてごめんねぇ」
 瑠奈が小首を傾げて両手を合わせてみせた。
 仕草のいちいちが可愛らしい。自分が相手にどう見えるかよくわかっているのだ。実際、中野は鼻の下を伸ばしっぱなしである。
 一方で――茜は下を向いたままだった。
「自己紹介は済んだかな」
 イスルギは僕たち四人を興味深そうに眺めながら言った。
「では仕事内容の説明をしようか。今から君たちにやってもらうのは、だ」
 中野はぽかんとする。
 女子二人は特に動じた様子もなく、イスルギの話を聞いていた。事前に内容を聞かされていたようだった。
「この道を行った先にもう使われていない古い別荘がある。肝試しと言うくらいだから予測がつくと思うが、そこは心霊スポットだ。その別荘に入り、二階まで行って戻ってくる。以上が君たちの仕事だ」
「……それだけですか?」
 中野が呆気にとられたように尋ねた。
「ああそうだ。ただ条件があって――これをつけてもらう」
 出たよ――イスルギが内ポケットから取り出した測定装置に、僕はたちまち警戒する。
「まあ、アップルウォッチみたいなものだ。君たちの位置情報を正確に記録する。だからごまかしは効かないよ。しっかりやってくれたまえ」
 記録するのは位置情報だけじゃないだろう――僕はイスルギを見据えた。
 イスルギはチラと僕を見返すと、薄く笑った。
「――では行きたまえ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori
ホラー
 あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。 全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。 短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。 たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

処理中です...