10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ

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第4章

第7話『夏の始まりは夏服の始まり』

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 6月1日、水曜日。
 6月になり、今日から季節は夏。高校2年生の夏が始まる。
 まさか、あおいとも同じ高校に通う中で、高校2年の夏を迎えられるとは。去年の夏には想像もしなかったことだ。当時の俺にこのことを教えたらどんな反応をされるだろう? 信じてくれないかもしれないな。
 また、今日から6月がスタートしたので、校則により制服が冬服から夏服に衣替え。夏服期間は9月末まで続く。
 夏服期間になると、男子のネクタイと女子のリボンが、デザインは一緒だけどストライプの色が赤から青に変わる。半袖のワイシャツやブラウスを着てもいい決まりになる。また、見た目の変化はないものの、男子のスラックスや女子のスカートが通気性のいい素材で作られたものに変わる。
 今日も朝から晴れているので、俺はさっそく半袖のワイシャツを着ている。鏡で半袖のワイシャツに、青いストライプ柄のネクタイを身につける自分の姿を見ると、夏になったのだと実感できる。
 ――ガラガラッ。
 愛実の家の方から、窓の開く音が聞こえた。愛実が開けたのかもしれないな。
 愛実の部屋側にある窓を開けると、自分の部屋からこちらに向く愛実の姿があった。愛実は半袖のブラウスに、桃色のベストを着ている。もちろん、リボンは青いストライプの夏服仕様になっている。
 愛実は俺と目が合うと、ニッコリと笑って小さく手を振ってきた。

「おはよう、リョウ君」
「おはよう、愛実。久しぶりに愛実の夏服姿を見るな」
「去年の9月末以来だからね。私も久しぶりの夏服姿のリョウ君だって思ったよ」
「ははっ、そうか」
「ワイシャツも半袖だし、ネクタイのストライプも青いから……爽やかでかっこいいよ」
「ありがとう」

 爽やかだとかかっこいいと愛実に言われることは何度もあるけど、今まで以上に嬉しい気持ちになる。

「愛実も爽やかな雰囲気でいいな。ベストが桃色だから、愛実らしくて可愛いと思う」
「ありがとう、リョウ君」

 えへへっ、と愛実は声に出して笑う。愛実の頬がほんのりと赤くなっていた。

「あおいちゃんがどんな夏服姿になるのか楽しみだね」
「楽しみだよな。俺はベストを着るあおいも初めてだから、それも楽しみだよ」
「一昨日、一緒に買いに行ったけど、あおいちゃんのベスト姿可愛かったよ」
「おぉ、そうなのか」

 愛実のお墨付きか。より期待が膨らむ。ジャケット姿もブラウス姿も、以前通っていた高校のセーラー服姿も似合っていたから、きっと夏服のベスト姿も似合っているんだろうな。

「じゃあ、そろそろ外に出るか」
「そうだね。また後でね、リョウ君」
「ああ、また後で」

 愛実に軽く手を振って、俺は部屋の窓を閉めた。
 荷物や服装が大丈夫なことを確認し、スクールバッグを持って部屋を出る。
 1階のキッチンで弁当と水筒をバッグに入れ、母さんに「いってきます」と言って家の外に出た。

「リョウ君」
「おう、愛実」

 俺の家の前にいるのは愛実だけだった。あおいが最後に家から出てくることは普通にあるので、愛実と2人で待っていよう。

「今日も朝から晴れてるね」
「ああ。ただ、半袖だし、スラックスも夏服仕様だから昨日までより涼しく感じるよ」
「半袖を着られるのは大きいよね。私も昨日よりも涼しいなって思う」
「だよな」

 さっそく、夏服の恩恵を受けている感じがする。
 あおいの家の方を見ながら愛実と雑談していると、

「いってきまーす」

 あおいのそんな声が聞こえ、あおいの家の玄関が開いた。そのことで夏服姿のあおいの姿がお披露目となる。
 あおいも愛実と同じで半袖のブラウスを着ている。その上には紺色のベスト。あれが一昨日の放課後に買ったベストかな。爽やかな雰囲気であおいに似合っている。
 あおいはこちらに振り向くと、いつもの明るい笑顔になって小さく手を振ってくる。小走りで俺達のすぐ側までやってきて。その一連の姿がとても絵になっていた。

「おはようございます、涼我君、愛実ちゃん!」
「おはよう、あおいちゃん」
「おはよう、あおい。その紺色のベストが一昨日の放課後に買ったやつか?」
「そうですよ。色々と試着して、一番いいなって思った色に決めました。どうですか?」

 上目遣いで俺を見ながらそう問いかけてくるあおい。

「似合ってるよ。青色要素が入ってる紺色を選ぶのはあおいらしいなって思う。あと、夏服姿も爽やかでいいな」
「爽やかでいいよね。そのベスト、夏服とも合ってるよ」
「ありがとうございますっ! お二人にそう言ってもらえて嬉しいです!」

 あおいはとても嬉しそうな笑顔を見せてくれる。そのことで、より今の制服姿が似合っていて可愛いと思えるように。こんなにもうちの高校の制服が似合っている女子はなかなかいない。

「涼我君と愛実ちゃんも夏服姿が似合っていますよ! ワイシャツやブラウスが半袖なので爽やかさも感じます!」
「ありがとう、あおいちゃん」
「ありがとう」
「とても似合っていますし、スマホで写真を撮ってもいいですか?」
「もちろんいいよ。あとで写真送ってね」
「いいぞ」
「ありがとうございますっ!」

 それから少しの間、家の前であおいのスマホを使って写真撮影会に。ツーショット写真を撮ったり、スリーショット写真を自撮りしたり。あおいと愛実はとても楽しそうで。
 愛実の約束もあり、俺達3人のグループトークに今撮った写真を送ってくれた。写真に写るあおいと愛実はどれも可愛いと思いながら、俺は送られた写真を全てスマホに保存した。
 また、写真撮影が終わった後、愛実が月曜日の放課後にベストを買った際の、ベストを試着するあおいの写真を見せてくれた。今着ている紺色以外にも、愛実と同じ桃色、赤、ベージュ、黒と様々な色のベストを試着したようだ。

「どれも似合っているけど、やっぱり紺色が一番似合うな」

 と、素直な感想をあおいに伝えると、あおいは照れくさそうに「ありがとうございます」とお礼を言っていた。
 ようやく俺達は家を出発して、いつも通りに3人で調津高校に登校する。
 今日から夏服期間となったため、周りにいる生徒達の装いも変わっている。今日も晴れているからか半袖のワイシャツやブラウスを着る生徒が多く、ガラリと変わったなぁと印象を抱く。
 また、夏服期間初日ということもあってか、正門前では生徒会メンバーや教師数人が立っていて。間違えて冬服を着て登校してしまった生徒に注意する一幕もあった。それを見て、道本達はちゃんと夏服を着て登校したのかなと思った。
 校舎に入って、俺達は2年2組のある4階に向かう。新年度になって2ヶ月近く経つから、4階まで階段で上がるのも何とも思わなくなってきたな。
 俺達は教室後方の扉から、教室の中に入る。

「あぁ、涼しいです」
「涼しいね、あおいちゃん」

 あおいと愛実は柔らかな笑顔に。
 夏服期間になったのに伴い、今日から教室のエアコンも解禁。黒板の近くに壁に備え付けられているスイッチがあり、生徒が自由に操作できるようになっている。だから、さっそくクラスメイトの誰かが冷房を点けてくれたのだろう。

「こりゃ快適だ。暑い中10分くらい歩いて登校するから、教室を涼しくしてくれているのは有り難いよ」
「そうだね、リョウ君。去年の夏服期間を思い出したよ」
「ふふっ。結構涼しくなっていますね。これだと、人によっては寒く感じるのも頷けます。ベストを買って正解でしたね」
「そうだね」

 教室を見渡すと、女子中心にベストやカーティガンを着ている生徒が多い。ただ、エアコンが掛かっていて涼しいからか、大半の生徒はいい表情をしていて。

「おっ、麻丘達が来たな! おはよう!」
「おはよう、麻丘君、愛実、あおい」
「みんなおはよう」

 あおいの席の後ろから、道本と鈴木とあおいが手を振ってくる。みんな夏服姿になっているな。道本と鈴木は半袖のワイシャツ姿。海老名さんは半袖のブラウスに、昨日までも着ていた水色のベストを着ている。
 ちなみに、席替えをしたことで俺と愛実、あおいの席が窓側後方に集中しているため、今は朝礼前にあおいの席の後ろで話すのが恒例となっている。
 俺達は手を振りながら、道本達のところへ向かう。

「みなさん、おはようございます!」
「おはよう、みんな」
「おはよう。みんなも夏服姿になったな」
「おう! ただ、冬服で学校に来ちまった1年もいたな! まあ、オレも美里に言われなかったら危なかったけどな!」

 わははっ! と快活に笑う鈴木。それにつられて俺達も笑う。別の高校に通う恋人のおかげで冬服を免れることができたとは。鈴木らしいというか。

「あおいの夏服姿を見るのはこれが初めてね。よく似合っているわ。紺色のベストも」
「ありがとうございます! 理沙ちゃん達も夏服似合っていますよ!」

 あおいは嬉しそうに言うと、海老名さんのことをぎゅっと抱きしめる。微笑ましい光景だ。
 その後、あおいの希望で、スマホで海老名さん達の夏服姿も撮影した。俺が女子3人を撮ったり、6人全員で撮影したりすることもあって。
 また、あおいが初めて夏服を着たのもあり、女子中心にあおいのところへ集まってくる。友達の女子と一緒に自撮りする一幕も。あおいもすっかりとクラスに溶け込んだと思う。
 それから程なくして、朝礼開始のチャイムが鳴る。

「やあやあやあ。みんなおはよう。……みんな、ちゃんと夏服を着ているね」

 チャイムが鳴り終わった直後に佐藤先生が教室に入ってくる。先生はジーンズパンツに、ノースリーブの縦ニットを着ていて。覚えている限りでは、先生がノースリーブの服を着るのは今年度初だと思う。先生も衣替えをしたのかな。
 今年も夏の高校生活が始まるのであった。
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