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夏休み編
第6話『水着選び』
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結衣と一緒に歩き始めてから2、3分。俺達はエオンに到着する。
中に入ると、心地良い涼しい空気に体が包まれていく。結衣も心地良さそうな表情を見せる。
「物販バイトで暑さに慣れたけど、涼しいのがより幸せに思えるようになったよ」
「あのカウンターは日陰だけど暑いって言っていたもんな」
「うん。汗も掻くから、風が吹いていたときはマシだったけど、無風のときは結構暑かったよ」
「そうだったんだ。結衣と伊集院さんは凄いなって思うよ。俺のバイトは涼しい店内でするからさ。外に出るのはゴミ出しとか、入口前の掃除くらいだし」
「悠真君だって凄いよ。だけど、ありがとう」
そうお礼を言うと、結衣は快活に笑った。こういう笑顔を結衣は物販ブースでたくさん見せていたな。この笑顔を見たら、ニジイロキラリと関係のあるタレントだと間違えるのも無理ないだろう。事務所に入りたての新人アイドルとか新人モデルだと思った人もいるかも。
エスカレーターで2階へ上がって、俺達は水着売り場へ。まずは結衣の水着を買うことに決め、女性向けの水着売り場へ向かう。
「ここだね、悠真君」
結衣がそう言って立ち止まる。目の前には、ビキニやワンピースなど女性向けの水着がたくさん陳列されている。
「見ようか!」
「そうだな」
俺達は女性向けの水着売り場の中に入っていく。
周りにあるハンガーラックには女性向けの水着がたくさんかけられているし、お客さんも女性ばかり。それに、ここに来るのは、何年か前に芹花姉さんの水着選びに付き合わされたとき以来。だから、ちょっと緊張してしまう。
結衣と一緒にいるからか、周りにいるお客さんから変な視線で向けられることはない。むしろ、好奇な目つきでこちらを見る人がいるほどだ。
「ねえ、悠真君」
「な、何でしょうか」
緊張しているから敬語になっちゃったよ。それがおかしいのか、結衣はクスッと笑った。
「私に着てほしい水着ってある? よほど変なものじゃない限りは、悠真君が選んでくれた水着を買って、海水浴のときに着たいなって思っているの」
「そっか」
責任重大だ。似合っているのはもちろんのこと、結衣が「これを買って良かった」って思ってもらえる水着を選びたい。
それまで、ハンガーラックの方はあまり見てこなかったけど、近くにかけられている水着からじっくりと見ていく。
こうして見てみると、女性向けの水着って色々なものがあるなぁ。色はもちろんのこと、水着の形の種類も。
「色々な水着を見ているね。私に良さそうなものはある?」
「結衣はスタイルがいいし、美人で可愛らしいからなぁ。どの水着も似合いそうだ」
「もう、悠真君ったら。嬉しいことを言ってくれるね。でも、さすがに何かしら絞ってくれないと。種類とか色とか」
「そうだな……シンプルで王道の三角ビキニがいいな」
結衣のようなスタイル抜群の美人な子は、王道の水着が一番似合うんじゃないだろうか。あと、ビキニ姿の結衣を見てみたいから。
俺が希望を言ったからだろうか。結衣の笑顔は嬉しそうなものに変わる。
「三角ビキニだね! もちろんいいよ。私も好きなデザインだから」
「ありがとう」
俺達は三角ビキニが陳列されているところへと向かう。
人気があるのだろうか。他の種類の水着に比べて、三角ビキニは色や柄のバリエーションが非常に多い。
「色々なのがあるんだな」
「そうだね。……そういえば、前にTubutterで青系や緑、黒色が好きって呟いたよね」
「……あぁ、呟いたね」
1ヶ月ほど前、低変人としての企画で、リスナーから質問を募り、そのうちのいくつかについてTubutterというSNSで答えを呟く企画を実施したのだ。その中で『好きな色は何ですか?』という質問があったので、俺は『青系、緑、黒が好き』と答えたのだ。
「あのときから、好きな色の好みは変わってないよ」
「分かった。じゃあ、青と緑と黒のビキニを試着してみようかな。それで、悠真君が一番いいと思ったものを買うよ」
「分かった」
試着とはいえ、ビキニ姿になった結衣の姿を見られるのか。楽しみだな。
結衣は俺にトートバッグを渡し、ハンガーラックから、俺の好きな色の三角ビキニを手に取っていく。
「……あれ。青と黒はあったけど、緑は私のサイズに合うビキニがないなぁ」
「そっか。ただ、その3色の中だと、青と黒が特に好きだから、2つのうちのどっちかにしよう」
「うん、分かった! じゃあ、この2着を試着するね」
「ああ」
俺達は試着室がいくつも並んでいるところへ向かう。試着室は4つあり、運良く右端の試着室が空いていた。
「じゃあ、試着してくるよ」
「分かった。俺はここにいるから」
「うん。覗いてもいいけど、試着室を間違えないようにね」
「ははっ、しないでおくよ」
お着替えの様子に興味がないと言ったら嘘になる。ただ、プライベートな空間ならともかく、ここはエオン。通報されて警察のお世話になってしまう可能性もある。
「でも、誰かが間違えて開けちゃわないようにここで見張ってる」
「……はーい」
ちょっとがっかりした様子で、結衣は試着室の中へと入っていった。俺に覗かれたかったのか。それとも、水着に着替えるところを見られたかったのか。結衣なら後者もありえそうだ。
これまで結衣と一緒にいたからだろうか。訝しそうな目つきでこちらを見る店員さんやお客さんはいない。そのことに一安心。
試着室の中から、結衣の鼻歌と布の擦れる音が聞こえてくる。そのせいで段々とドキドキしてきたぞ。これまで、ベッドやお風呂で結衣の裸を何度も見てきているから、お着替えの様子が想像できてしまって。頬が熱くなり始めているのが分かる。何か他のことを考えよう。
「この鼻歌……」
聞き覚えのあるメロディーだと思ったら、俺が物販ブースで買ったニジイロキラリのアルバムに収録されている曲だ。アルバムのリードトラックでもあるので、初めて聴いたときからメロディーが耳に残っていた。
それにしても、結衣は鼻歌でも声が綺麗だ。メロディーも外れていないし、ずっと聴いていられる。
「悠真君。青いビキニを着てみたよ!」
「そうか。見せてくれるかな」
「はーい!」
結衣の元気な返事が聞こえると、サッ、と試着室のカーテンが開いた。
目の前には青いビキニを着た結衣の姿が。青い色もあって清涼な印象をもたらす。谷間がしっかりできるほどの豊満な胸、はっきりしたくびれ、細くて長い脚とスタイルの良さも分かって。あと、さっきまでよりも甘い匂いがはっきりと感じられる。
「……いいな。似合ってる」
「ありがとう。裸は何度も見られたことあるけど、水着姿はスクール水着を含めても2度目だからドキドキする。じっくり見られちゃったし」
「あまりにも素敵だったから、つい。もし嫌だったならごめん」
「そんなことないよ。むしろ、悠真君に見てもらえて嬉しい。興奮しちゃう。2人きりだったらキスしてた」
「結衣らしいね」
「ふふっ。悠真君、スマホで写真撮っていいよ。それに、これから黒い方のビキニを着るし、どっちの水着にするか決めるときに写真があった方がいいでしょ?」
「そうだね」
俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、青いビキニ姿の結衣を何枚か撮影した。満面の笑みを浮かべたり、ピースサインしたりするいい写真が撮れたぞ。間違って消してしまわないように気をつけよう。
「撮ったよ。ありがとう」
「いえいえ。じゃあ、黒い方のビキニを着るねー」
そう言うと、結衣は再び試着室のカーテンを閉める。それから程なくして、再び同じ曲の鼻歌が聞こえてくる。
さっき、ビキニ姿の結衣の写真を撮ったけど、俺……不審者とかヤバい奴に思われていないだろうか。恐る恐る周りの様子を見ると……良かった。不審がって、こちらを見ている人はいない。結衣が楽しそうなのが良かったのかな。
「悠真君。黒いビキニを着てみたよ」
「おっ、早いね。じゃあ、見せてくれるかな」
「はーい」
試着室のカーテンがゆっくりと開く。
目の前には黒いビキニ姿の結衣が。青色のビキニよりも大人っぽくてセクシーな雰囲気だ。結衣の持つ白い肌がより際立つ。ビキニのデザインやサイズは変わらないのに、色が変わるだけで雰囲気って変わるものなんだな。
「……黒のビキニ姿も素敵だ」
「今回もじっくり見た後に感想を言ってくれたね。ありがとう。私はどっちも同じくらいいいなって思ってる。だから、悠真君が好きな方を買うよ」
「分かった。俺もどっちもいいなぁ……って思ってる。ちょっと考えさせて」
「うん、いいよ。じゃあ、このビキニ姿の写真も撮って」
「分かった」
スマホで黒いビキニ姿の結衣の写真を撮る。
そして、結衣が元の服へ着替えている間、写真を見ながら青いビキニと黒いビキニのどちらがいいか考える。
爽やかな青。
大人っぽく艶やかな黒。
「……どっちもいいよなぁ」
甲乙付けがたい。
ただ、どちらかに決めないといけない。……そうだ。旅先の海水浴場で着るんだから、その情景を思い浮かべてみよう。
青い空に青い海。そこにいる結衣は――。
「悠真君」
気づけば、元のワンピース姿に着替え終わった結衣が試着室から出てきていた。海水浴場での水着姿の結衣を想像していたから、現実に戻ってきた感覚がある。
「おかえり、結衣」
「ふふっ、ただいま。……どう? 青と黒、どっちがいいか決まった?」
「……青。青空の下の海での水着姿の結衣を思い浮かべたとき、青の方がいいなぁって思ったんだ」
「なるほどね。じゃあ、青い方のビキニにするね。選んでくれてありがとう」
「いえいえ」
結衣は黒いビキニを元の場所に戻し、青いビキニをレジへ持っていく。
レジで接客してくれる店員さん……ずっと楽しそうな笑顔を見せているな。俺達のやり取りを見ていたのかもしれない。
購入したビキニが入った袋を受け取り上機嫌な結衣と一緒に、女性向けの水着売り場を出た。
「悠真君のおかげで、いい水着を買えたよ! ありがとう!」
「いえいえ」
「じゃあ、今度は悠真君の水着だね。こういう水着を買おうとかって考えてる?」
「結衣が青い水着を買ったから、俺も青系の水着を買いたいなって思ってる」
「分かった。じゃあ、男性向けの水着売り場に行こうか!」
「ああ」
それから、結衣と一緒に男性向けの水着売り場に行く。
さっきの俺のように、結衣が俺の水着を選んでくれることに。結衣のことだから、露出度の高いビキニパンツとかTバックを手に取りそうで不安だ。だけど、そういったことはなく、
「これいいな。悠真君に似合いそう」
と、青いスイムショーツを選んでくれた。
シンプルなデザインが気に入ったし、値段もお手頃。さっそく試着室で着てみる。……丈は膝よりも少し上くらいでちょうどいいな。ウエストもキツくないし。
試着した姿を結衣に見せると、
「似合ってるよ! かっこいいっ!」
と大喜び。写真を撮るかと俺が訊く前から、結衣はスマホを使って興奮した様子で何枚も写真を撮っていた。そんな結衣の姿を見て、この水着を買おうと決めた。
結衣も俺も満足な水着を買うことができたから、金曜日からの旅行がより楽しみになった。
中に入ると、心地良い涼しい空気に体が包まれていく。結衣も心地良さそうな表情を見せる。
「物販バイトで暑さに慣れたけど、涼しいのがより幸せに思えるようになったよ」
「あのカウンターは日陰だけど暑いって言っていたもんな」
「うん。汗も掻くから、風が吹いていたときはマシだったけど、無風のときは結構暑かったよ」
「そうだったんだ。結衣と伊集院さんは凄いなって思うよ。俺のバイトは涼しい店内でするからさ。外に出るのはゴミ出しとか、入口前の掃除くらいだし」
「悠真君だって凄いよ。だけど、ありがとう」
そうお礼を言うと、結衣は快活に笑った。こういう笑顔を結衣は物販ブースでたくさん見せていたな。この笑顔を見たら、ニジイロキラリと関係のあるタレントだと間違えるのも無理ないだろう。事務所に入りたての新人アイドルとか新人モデルだと思った人もいるかも。
エスカレーターで2階へ上がって、俺達は水着売り場へ。まずは結衣の水着を買うことに決め、女性向けの水着売り場へ向かう。
「ここだね、悠真君」
結衣がそう言って立ち止まる。目の前には、ビキニやワンピースなど女性向けの水着がたくさん陳列されている。
「見ようか!」
「そうだな」
俺達は女性向けの水着売り場の中に入っていく。
周りにあるハンガーラックには女性向けの水着がたくさんかけられているし、お客さんも女性ばかり。それに、ここに来るのは、何年か前に芹花姉さんの水着選びに付き合わされたとき以来。だから、ちょっと緊張してしまう。
結衣と一緒にいるからか、周りにいるお客さんから変な視線で向けられることはない。むしろ、好奇な目つきでこちらを見る人がいるほどだ。
「ねえ、悠真君」
「な、何でしょうか」
緊張しているから敬語になっちゃったよ。それがおかしいのか、結衣はクスッと笑った。
「私に着てほしい水着ってある? よほど変なものじゃない限りは、悠真君が選んでくれた水着を買って、海水浴のときに着たいなって思っているの」
「そっか」
責任重大だ。似合っているのはもちろんのこと、結衣が「これを買って良かった」って思ってもらえる水着を選びたい。
それまで、ハンガーラックの方はあまり見てこなかったけど、近くにかけられている水着からじっくりと見ていく。
こうして見てみると、女性向けの水着って色々なものがあるなぁ。色はもちろんのこと、水着の形の種類も。
「色々な水着を見ているね。私に良さそうなものはある?」
「結衣はスタイルがいいし、美人で可愛らしいからなぁ。どの水着も似合いそうだ」
「もう、悠真君ったら。嬉しいことを言ってくれるね。でも、さすがに何かしら絞ってくれないと。種類とか色とか」
「そうだな……シンプルで王道の三角ビキニがいいな」
結衣のようなスタイル抜群の美人な子は、王道の水着が一番似合うんじゃないだろうか。あと、ビキニ姿の結衣を見てみたいから。
俺が希望を言ったからだろうか。結衣の笑顔は嬉しそうなものに変わる。
「三角ビキニだね! もちろんいいよ。私も好きなデザインだから」
「ありがとう」
俺達は三角ビキニが陳列されているところへと向かう。
人気があるのだろうか。他の種類の水着に比べて、三角ビキニは色や柄のバリエーションが非常に多い。
「色々なのがあるんだな」
「そうだね。……そういえば、前にTubutterで青系や緑、黒色が好きって呟いたよね」
「……あぁ、呟いたね」
1ヶ月ほど前、低変人としての企画で、リスナーから質問を募り、そのうちのいくつかについてTubutterというSNSで答えを呟く企画を実施したのだ。その中で『好きな色は何ですか?』という質問があったので、俺は『青系、緑、黒が好き』と答えたのだ。
「あのときから、好きな色の好みは変わってないよ」
「分かった。じゃあ、青と緑と黒のビキニを試着してみようかな。それで、悠真君が一番いいと思ったものを買うよ」
「分かった」
試着とはいえ、ビキニ姿になった結衣の姿を見られるのか。楽しみだな。
結衣は俺にトートバッグを渡し、ハンガーラックから、俺の好きな色の三角ビキニを手に取っていく。
「……あれ。青と黒はあったけど、緑は私のサイズに合うビキニがないなぁ」
「そっか。ただ、その3色の中だと、青と黒が特に好きだから、2つのうちのどっちかにしよう」
「うん、分かった! じゃあ、この2着を試着するね」
「ああ」
俺達は試着室がいくつも並んでいるところへ向かう。試着室は4つあり、運良く右端の試着室が空いていた。
「じゃあ、試着してくるよ」
「分かった。俺はここにいるから」
「うん。覗いてもいいけど、試着室を間違えないようにね」
「ははっ、しないでおくよ」
お着替えの様子に興味がないと言ったら嘘になる。ただ、プライベートな空間ならともかく、ここはエオン。通報されて警察のお世話になってしまう可能性もある。
「でも、誰かが間違えて開けちゃわないようにここで見張ってる」
「……はーい」
ちょっとがっかりした様子で、結衣は試着室の中へと入っていった。俺に覗かれたかったのか。それとも、水着に着替えるところを見られたかったのか。結衣なら後者もありえそうだ。
これまで結衣と一緒にいたからだろうか。訝しそうな目つきでこちらを見る店員さんやお客さんはいない。そのことに一安心。
試着室の中から、結衣の鼻歌と布の擦れる音が聞こえてくる。そのせいで段々とドキドキしてきたぞ。これまで、ベッドやお風呂で結衣の裸を何度も見てきているから、お着替えの様子が想像できてしまって。頬が熱くなり始めているのが分かる。何か他のことを考えよう。
「この鼻歌……」
聞き覚えのあるメロディーだと思ったら、俺が物販ブースで買ったニジイロキラリのアルバムに収録されている曲だ。アルバムのリードトラックでもあるので、初めて聴いたときからメロディーが耳に残っていた。
それにしても、結衣は鼻歌でも声が綺麗だ。メロディーも外れていないし、ずっと聴いていられる。
「悠真君。青いビキニを着てみたよ!」
「そうか。見せてくれるかな」
「はーい!」
結衣の元気な返事が聞こえると、サッ、と試着室のカーテンが開いた。
目の前には青いビキニを着た結衣の姿が。青い色もあって清涼な印象をもたらす。谷間がしっかりできるほどの豊満な胸、はっきりしたくびれ、細くて長い脚とスタイルの良さも分かって。あと、さっきまでよりも甘い匂いがはっきりと感じられる。
「……いいな。似合ってる」
「ありがとう。裸は何度も見られたことあるけど、水着姿はスクール水着を含めても2度目だからドキドキする。じっくり見られちゃったし」
「あまりにも素敵だったから、つい。もし嫌だったならごめん」
「そんなことないよ。むしろ、悠真君に見てもらえて嬉しい。興奮しちゃう。2人きりだったらキスしてた」
「結衣らしいね」
「ふふっ。悠真君、スマホで写真撮っていいよ。それに、これから黒い方のビキニを着るし、どっちの水着にするか決めるときに写真があった方がいいでしょ?」
「そうだね」
俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、青いビキニ姿の結衣を何枚か撮影した。満面の笑みを浮かべたり、ピースサインしたりするいい写真が撮れたぞ。間違って消してしまわないように気をつけよう。
「撮ったよ。ありがとう」
「いえいえ。じゃあ、黒い方のビキニを着るねー」
そう言うと、結衣は再び試着室のカーテンを閉める。それから程なくして、再び同じ曲の鼻歌が聞こえてくる。
さっき、ビキニ姿の結衣の写真を撮ったけど、俺……不審者とかヤバい奴に思われていないだろうか。恐る恐る周りの様子を見ると……良かった。不審がって、こちらを見ている人はいない。結衣が楽しそうなのが良かったのかな。
「悠真君。黒いビキニを着てみたよ」
「おっ、早いね。じゃあ、見せてくれるかな」
「はーい」
試着室のカーテンがゆっくりと開く。
目の前には黒いビキニ姿の結衣が。青色のビキニよりも大人っぽくてセクシーな雰囲気だ。結衣の持つ白い肌がより際立つ。ビキニのデザインやサイズは変わらないのに、色が変わるだけで雰囲気って変わるものなんだな。
「……黒のビキニ姿も素敵だ」
「今回もじっくり見た後に感想を言ってくれたね。ありがとう。私はどっちも同じくらいいいなって思ってる。だから、悠真君が好きな方を買うよ」
「分かった。俺もどっちもいいなぁ……って思ってる。ちょっと考えさせて」
「うん、いいよ。じゃあ、このビキニ姿の写真も撮って」
「分かった」
スマホで黒いビキニ姿の結衣の写真を撮る。
そして、結衣が元の服へ着替えている間、写真を見ながら青いビキニと黒いビキニのどちらがいいか考える。
爽やかな青。
大人っぽく艶やかな黒。
「……どっちもいいよなぁ」
甲乙付けがたい。
ただ、どちらかに決めないといけない。……そうだ。旅先の海水浴場で着るんだから、その情景を思い浮かべてみよう。
青い空に青い海。そこにいる結衣は――。
「悠真君」
気づけば、元のワンピース姿に着替え終わった結衣が試着室から出てきていた。海水浴場での水着姿の結衣を想像していたから、現実に戻ってきた感覚がある。
「おかえり、結衣」
「ふふっ、ただいま。……どう? 青と黒、どっちがいいか決まった?」
「……青。青空の下の海での水着姿の結衣を思い浮かべたとき、青の方がいいなぁって思ったんだ」
「なるほどね。じゃあ、青い方のビキニにするね。選んでくれてありがとう」
「いえいえ」
結衣は黒いビキニを元の場所に戻し、青いビキニをレジへ持っていく。
レジで接客してくれる店員さん……ずっと楽しそうな笑顔を見せているな。俺達のやり取りを見ていたのかもしれない。
購入したビキニが入った袋を受け取り上機嫌な結衣と一緒に、女性向けの水着売り場を出た。
「悠真君のおかげで、いい水着を買えたよ! ありがとう!」
「いえいえ」
「じゃあ、今度は悠真君の水着だね。こういう水着を買おうとかって考えてる?」
「結衣が青い水着を買ったから、俺も青系の水着を買いたいなって思ってる」
「分かった。じゃあ、男性向けの水着売り場に行こうか!」
「ああ」
それから、結衣と一緒に男性向けの水着売り場に行く。
さっきの俺のように、結衣が俺の水着を選んでくれることに。結衣のことだから、露出度の高いビキニパンツとかTバックを手に取りそうで不安だ。だけど、そういったことはなく、
「これいいな。悠真君に似合いそう」
と、青いスイムショーツを選んでくれた。
シンプルなデザインが気に入ったし、値段もお手頃。さっそく試着室で着てみる。……丈は膝よりも少し上くらいでちょうどいいな。ウエストもキツくないし。
試着した姿を結衣に見せると、
「似合ってるよ! かっこいいっ!」
と大喜び。写真を撮るかと俺が訊く前から、結衣はスマホを使って興奮した様子で何枚も写真を撮っていた。そんな結衣の姿を見て、この水着を買おうと決めた。
結衣も俺も満足な水着を買うことができたから、金曜日からの旅行がより楽しみになった。
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