高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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夏休み小話編

『恋人とスクール水着とチョコミント-後編-』

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 それからも、結衣と抱きしめ合って、何度か唇を重ねた。それはこれまでに何度もしてきたこと。だけど、スクール水着を着た状態でするのは初めてで。だから、いつもよりもドキドキして。体が熱くなって。スクール水着しか着ていないから、きっと結衣にも伝わってしまっているんだろうな。そう思うと、何だか恥ずかしさを感じた。

「スクール水着姿の悠真君といっぱいキスできて幸せです」

 恍惚とした笑顔で結衣はそう言う。そんな結衣が可愛くて、ドキッとする。

「俺も結衣とキスできて幸せだよ。素敵なお礼だった。ありがとう」
「いえいえ」

 そう言うと、結衣は俺への抱擁を解く。それに合わせて俺も抱擁を解くと、結衣は一歩後ろに下がった。抱きしめ合ってキスしていたから、結衣が離れても結衣の温もりがしっかりと感じられる。

「ねえ、悠真君。スクール水着絡みでもう一つお願いがあるんだけど」
「ああ、いいぞ。何だ?」
「……悠真君のスクール水着を穿いてみたいです」
「へっ?」

 予想もしなかったお願いだったので、間の抜けた声が漏れてしまった。それが面白かったのか、結衣はクスクスと楽しそうに笑う。

「お、俺のスクール水着を穿きたいのか?」

 確認のために問いかけると、結衣は笑顔で「うんっ」と頷く。

「男の子のスクール水着ってどんな穿き心地なのか気になって。今まで穿いたことないし」
「そうか。まあ、結衣は男のきょうだいがいないし、彼氏も俺が初めてだもんな。それじゃ、男子用のスクール水着を穿くことはないか」
「うん。もちろん、悠真君のスクール水着だから穿きたいって思ったんだよ」
「嬉しいことを言ってくれるな。……結衣は俺よりも細身だから穿くのは問題なさそうだな。じゃあ、着替えるか」
「うんっ!」

 男用のスクール水着を穿いた結衣……どんな感じなのか気になるな。ただ、俺みたいにスクール水着一丁の姿になるのか? それとも、結衣はスカートとブラウスを着ているから、スカートやパンツだけを脱いでスクール水着を着るのか? それを含めて気になるな。
 スクール水着を脱いで、結衣に渡すと……結衣はスクール水着の匂いを嗅ぐ。

「……あぁ、悠真君のいい匂い。たまらない」
「結衣ならやると思った」
「ふふっ」

 結衣は恍惚とした笑顔になる。ほんと、結衣らしい。
 俺はさっきまで着ていた服を再び着ていく。その中で結衣を見てみると……結衣はスカートとパンツだけ脱いでいる。どうやら、下半身だけ着替えるスタイルのようだ。
 結衣は俺のスクール水着を穿く。さっき言ったように、俺よりも細身だから難なく穿けたな。さあ、結衣が気になっている穿き心地はどうかな?

「あったかい……」
「それがスクール水着を穿いた第一声か」
「だって、悠真君の温もりに包まれて気持ちいいんだもんっ!」
「そ、そうか。まあ、温もりが気持ちいいと言ってもらえるのは嬉しいよ」

 結衣とキスしたことで体が熱くなっていたから、その温もりがスクール水着に残っていたのだろう。
 スクール水着の温もりが気持ちいいからか、結衣はとても幸せそうにしている。そんな結衣を可愛いと思いながら、俺は元の服に着替え終えた。

「それで、スクール水着の穿き心地はどうだ? 難なく穿けたみたいだけど」
「悠真君のだから、特にキツさは感じないよ。なかなかいいね。あと、太ももまで水着で覆われているのは新鮮な感覚だよ」
「結衣がこの前披露してくれたスクール水着も、旅行用に買ったビキニも太ももまでは覆ってないもんな」
「うん。これが男子のスクール水着の穿いた感覚なんだね。穿かせてくれてありがとう、悠真君」
「いえいえ」

 いい穿き心地だと思ってもらえて何よりだ。
 それにしても、彼氏のスクール水着を穿く女の子って世の中に何人いるのだろう? そうそういない気がする。

「もしよければ、今の私の写真を撮ってもいいよ」
「じゃあ、1枚撮ろうかな」

 こんなことはそうそうないだろうし。
 俺は自分のスマホで、俺のスクール水着を穿いた結衣を撮影する。その際、笑顔でピースサインをしてくれたから可愛いんだけど、上はブラウス、下は俺のスクール水着なのでシュールさが凄い。俺の部屋で撮っているのもあって、シュールさに拍車がかかっている。

「ありがとう、結衣」
「いえいえ。……慣れてきたから、穿き心地がもっと良くなってきた。さっきまで悠真君が穿いていたものだから、ドキドキして体が熱くなってくるよ」
「ははっ、そうか。俺もさっきキスしたことの体の熱さが残っているし……アイスでも食べようか」
「いいね! アイス食べたい!」
「……あっ、でも、今、うちにあるアイスはチョコミントなんだ。結衣ってチョコミントって食べられる? これまで、結衣がミント系のものを口にするところを全然見たことがないし」

 もしかしたら、結衣はミントの香りや風味が苦手かもしれない。

「そこまでミントが強くなければ大丈夫だよ」

 結衣は笑顔でそう言った。

「そうか。うちにあるチョコミントアイスは、ミントの爽やかさも感じられるけど、チョコの味がしっかりしているよ」
「そういう感じならきっと大丈夫だと思う。チョコ大好きだし、チョコミントは好きな方だよ」
「そうか。じゃあ、持ってくるよ」
「うんっ!」

 結衣の可愛い笑顔に見送られながら、俺は部屋を後にする。廊下は結構暑いけど、結衣と自分のためにアイスを持ってくると思えば、この暑さも苦ではない。
 1階のキッチンに行き、冷凍庫からチョコミントアイスを2つ取り出す。カップのアイスなので、棚からスプーンを取り出して自分の部屋に戻った。

「ただいま、結衣。持ってきたよ」
「おかえり。ありがとう、悠真君」

 俺は結衣の座っている隣のクッションまで向かう。その中で、結衣が今も俺のスクール水着を穿いたままなのが分かって。

「気に入っているんだな、俺のスクール水着」
「穿き心地がいいからね。アイスを食べ終わるまではこのまま穿いていようかなって」
「ははっ、そうか。……はい、結衣の分」
「ありがとう」

 結衣にチョコミントアイスとスプーンを渡して、俺は結衣の隣のクッションに座る。

「じゃあ、さっそくいただきます!」
「結衣の口に合うと嬉しいな。俺もいただきます」

 蓋を開けて、俺はスプーンでチョコミントアイスを一口分掬う。冷凍庫から出してまだあまり時間が経っていないから、まだまだ固い。
 スプーンで掬ったチョコミントアイスを食べる。その瞬間、アイスの冷たさとミントの爽やかな風味が口の中に広がっていく。そこから少し遅れて、チョコの甘味も広がっていって。

「あぁ、美味しい」

 ミントの爽やかな風味が暑い夏の今の時期によく合う。それなりに爽やかさを感じるけど、結衣はどうだろうか。

「結衣、どうだ?」
「……うん、美味しいよ! チョコの甘味がしっかり感じられて。ミントの香りもなかなかあるけど、このくらいなら問題なく食べられるよ」

 結衣は爽やかな笑顔でそう言った。結衣が大丈夫だと思えるミントの強さで安心した。それと同時に、俺が好きなこのチョコミントアイスを結衣も美味しいと言ってくれることに嬉しさを覚える。

「良かった」
「結構美味しいね。悠真君、美味しそうに食べているけどミントは好きな方?」
「ああ。小さい頃から結構好きだな。チョコミントもそうだし、あとは勉強とか低変人の曲を作っているときとかの気分転換や眠気覚ましに、ミント系のタブレット菓子を食べることもあるよ」
「そうなんだ。私は小さい頃はミントがかなり苦手だったんだ」
「そうだったのか」

 意外だ。今もチョコミントを美味しそうに食べていたし。

「幼稚園の頃、両親がたまに食べていたミントガムを一つもらって。でも、ミントが結構強めで。辛くて、凄くスースーして。泣きながら、すぐにガムを包み紙に吐き出したことを覚えてる」
「そうだったのか。その経験がトラウマになって、苦手な時期があったと」
「うん」

 結衣は俺の目を見ながら頷く。
 俺も幼稚園の頃にはミント風味のものを食べていたけど、チョコミントアイスやチョコミント味のお菓子といった、ミントの風味が優しいものばかりだった。そのおかげでミントが結構好きになれたのだと思う。俺も結衣のような経験をしていたら、ミントが苦手な時期があったんじゃないかと思う。

「妹の柚月や友達から、ミントの風味が弱めなお菓子を一口分けてもらったり、歯磨き粉を使ったりして少しずつミントの風味に慣れてきて。そのおかげで、強めの風味じゃなければ大丈夫になったんだ」
「そうだったのか」
「ミントの耐性がついて良かったよ。こうして、悠真君と一緒にチョコミントアイスを美味しく食べられるから」

 そう言うと、結衣はチョコミントアイスをもう一口食べ、「う~んっ!」と笑顔で甘い声を上げる。今の言葉もあって、結衣がとても可愛く見える。下半身が俺のスクール水着姿だけど。そう思いながら、俺もチョコミントをもう一口食べると……さっきよりも味わい深く感じられた。

「悠真君。一口食べさせてあげるよ」

 結衣はそう言い、チョコミントアイスを一口分掬ったスプーンを俺の口元まで持ってきてくれる。そうしている結衣の笑顔は優しい。

「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて」
「うんっ。はい、あ~ん」
「あーん」

 結衣にチョコミントアイスを一口食べさせてもらう。
 結衣が口をつけたスプーンで食べさせてもらったからだろうか。これまで自分で食べたアイスよりも甘味が強く感じられる。

「凄く美味しいよ。今までで一番美味しいかもしれない」
「ふふっ、良かった」
「じゃあ、お礼に俺も一口食べさせてあげるよ」
「うんっ」

 スプーンで自分のチョコミントアイスを一口分掬い、結衣の口元まで持っていく。

「はい、結衣。あーん」
「あ~ん」

 結衣にチョコミントアイスを食べさせる。
 食べさせた瞬間、結衣の笑顔はニコッと明るいものになって。俺を見つめながら食べていたり、俺が食べさせたりしたのもあって凄く可愛らしい。

「凄く美味しいよ、悠真君」
「良かった」
「悠真君と一緒にチョコミントアイスを食べて、一口食べさせてもらったから、これまでよりもミントが好きになれそうだよ」
「そうなると嬉しいな」

 結衣が何かを好きになる過程に自分が関われたら嬉しい。
 それからも、結衣と一緒にチョコミントアイスを楽しむ。
 食べ物の好みは人それぞれだし、尊重したい。それでも、同じものを一緒に食べて、美味しいと言えることに嬉しさや幸せを感じるのであった。



『恋人とスクール水着とチョコミント』 おわり
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