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第6話『バイトをしていたら。-後編-』
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向日葵と福山さんのいるテーブルから離れた僕は、別のテーブルに座っているお客様の注文を伺ったり、料理を運んだりする。仕事をしている中で、彼女達の姿が視界に入ると新鮮だなぁ。
――ピンポーン。
注文ボタンの音が聞こえた。番号が表示される電光掲示板を見てみると、『5』と表示されている。そのテーブル番号は向日葵と福山さんのいるテーブル。彼女達のところへ向かう。
「ご注文をお伺いします」
「ひまちゃんからどうぞ」
「分かったわ。ナポリタンのアイスティーセットで」
「私はオムライスのアイスコーヒーセットをお願いします」
「かしこまりました」
2人とも、人気のあるランチメニューを注文したな。好きな料理なのだろうか。ちなみに、僕はここのナポリタンとオムライスが大好きだ。
「確認いたします。ナポリタンのアイスティーセットと、オムライスのアイスコーヒーセットですね。お飲み物は先にお出ししますか?」
「先がいいよね、愛華」
「そうだね。先にお願いします」
「かしこまりました。失礼いたします」
軽く頭を下げ、僕は向日葵と福山さんのいるテーブル席から離れる。
キッチン担当の方に向日葵と福山さんからの注文を伝える。2人が飲み物は先に出してほしいと注文したため、すぐにアイスティーとアイスコーヒーがキッチンから出される。それらを持って、僕は2人のところへ。
「失礼します。セットドリンクのアイスコーヒーとアイスティーになります」
「ありがとう、加瀬君」
「ありがとう。……仕事とはいえ、桔梗にもてなされるのっていいわね」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
「ふふっ。2人が笑顔で話す光景が見られて私は嬉しいよ。これも、ひまちゃんが今までのことについて謝れたからだね。良かったよ」
「……まあ、長い間、睨んだり舌打ちしたりするのは申し訳ないと思ったし。鬱陶しいってはっきり言っちゃったから……」
そう言うと向日葵は頬を赤くして、アイスティーをストローでチューチュー飲んでいく。その姿は何とも可愛らしい。
福山さんは向日葵が悪い態度を取ったことを謝ってくるほどだった。だから、こうして僕らが普通に話せるようになったのが嬉しいのだろう。
「こうして向日葵と話せるようになって嬉しいよ。もちろん、福山さんとも」
「私とも? それは嬉しい言葉だね」
「いえいえ。では、ごゆっくり」
軽く頭を下げて、2人のいるテーブルを後にする。レジの近くまで行ったとき、
「5番テーブルに座っている2人、桔梗君の知り合いなんだね」
「そうですよ、なずなさん」
先輩店員の相沢なずなさんに話しかけられた。とても小柄で可愛らしい声。幼い顔立ち。銀色の髪をショートヘアにしているので、僕の後輩だと思うお客様もいる。でも、実際はお酒も呑める20歳の大学3年生。
なずなさんは去年、バイトを始めた僕に指導係としてホールでの仕事を教えてくれた方だ。一年経った今でも、彼女がいると心強くて安心する。
あと、なずなさんは僕の卒業した中学と、今通っている武蔵栄高校文系クラスOGでもある。ただ、4学年違いなのもあり、バイトでの先輩というイメージが強い。それもあって、僕は彼女を「なずなさん」と呼んでいる。
「2年になって同じクラスになった子達なんです」
「そうなんだ。2人とも背が高くて、胸も大きくて大人っぽいなぁ」
なずなさんは向日葵と福山さんに羨望の眼差しを向けている。背は低いけれど、胸はそれなりにあると思う。彼女達には敵わないかもしれないが。撫子には……勝つかもな。……って、何を考えているんだ僕は。
それにしても、なずなさんって『なずな』という名前に合っている雰囲気だと思う。なずなは白くて小さい花を咲かせるから。
「あの雰囲気なら、2人は大学生だって言っても十分に通じると思うよ」
「確かに。私服姿を全然見たことがないんで、今日の彼女達は普段よりも大人っぽく見えますね」
「だよね。あたしなんて3年生になったのに、大学の職員の方に『迷子かな?』って訊かれるし、友達やサークルの仲間と居酒屋に行ってもお店の方に『お嬢ちゃんはお酒を呑んじゃダメなんだよ~』って言われるんだよ。ひどいと思わない?」
「それはひどいですねぇ。本当に20歳の大学3年生なのにねぇ」
ただ、大学職員はともかく、居酒屋の店員さんが「お酒はダメなんだよ」と言ってしまうのは理解できるかな。僕もなずなさんのことを知らなかったら、年齢確認のために学生証や運転免許証を見せてもらうだろう。
「あっ、2人が桔梗君のことを見てるよ。特に金髪ちゃんが」
なずなさんがそう言うので、向日葵と福山さんが座っているテーブル席の方を見る。すると、2人がこちらを見ていた。特に金髪ちゃん……向日葵はじっと僕を見ている。僕がバイトしているし、料理を待っている間の話題にしているのだろう。
「黒髪ちゃんの方が桔梗君と楽しそうに話していたけど、実は金髪ちゃんの方が桔梗君のことが気になっていたりして」
「成績絡みで金髪の彼女から気にされていますね。ただ、今は……純粋にバイトをしている僕の様子を見ているんでしょう。バイト中の僕の姿を見たら面白そうだと言っていましたし」
「なるほどなるほど」
ニコニコと笑いながらなずなさんは言う。
それから10分ほどで向日葵と福山さんの注文したメニューが完成する。それらをトレンチ……お盆に乗せて2人のところへと向かう。
「お待たせしました。ナポリタンとオムライスでございます」
ナポリタンを向日葵の前、オムライスを福山さんの前に置く。その瞬間に2人から「美味しそう」という声が聞こえた。
「ところで、桔梗。さっき、レジにいる銀髪の女性と楽しそうに話していたけど。……か、彼女とか?」
「ううん、彼女じゃないよ。バイトの先輩で、僕の指導係だった方だよ。ちなみに、4学年上だけど、武蔵栄高校のOGなんだ」
「マジで? 4学年上ってことは20歳にはなっているんだ……」
「後輩じゃないかって思ったよね。この4月から、加瀬君は先輩としてあの人にお仕事を教えているのかなって話していたんだよ」
「そうか」
僕の後輩に見えてしまったか。
今の話、なずなさんには話さない方がいいな。ショックを受けるか、不機嫌になりそうだから。
「ごゆっくり」
「うん。何時までシフトが入っているのかは知らないけど、バイト頑張りなさいよ」
「頑張ってね」
「ありがとう」
2人に軽く頭を下げて、僕は先ほど帰られたお客様のテーブルの掃除をしていく。
『いただきます』
という向日葵と福山さんの声が聞こえたので、彼女達の方をチラッと見ると、ちょうど注文した料理の一口目を口に入れたところだった。2人とも、口に入れてすぐに満面の笑みを浮かべ、
「美味しい!」
「オムライスも美味しいよ!」
と、店員としてとても嬉しい感想を言ってくれる。2人の今の言葉を聞いて、口元や頬が緩んでいるのが分かった。
それから1時間近く、向日葵と福山さんは料理やドリンクを楽しみながら談笑していた。
向日葵と福山さんが店に来てくれたことや、撫子、岡嶋、津川さんが送ってくれた写真を休憩中に見たこともあって、1日ずっとバイトをしてもそこまで疲れは感じなかったのであった。
――ピンポーン。
注文ボタンの音が聞こえた。番号が表示される電光掲示板を見てみると、『5』と表示されている。そのテーブル番号は向日葵と福山さんのいるテーブル。彼女達のところへ向かう。
「ご注文をお伺いします」
「ひまちゃんからどうぞ」
「分かったわ。ナポリタンのアイスティーセットで」
「私はオムライスのアイスコーヒーセットをお願いします」
「かしこまりました」
2人とも、人気のあるランチメニューを注文したな。好きな料理なのだろうか。ちなみに、僕はここのナポリタンとオムライスが大好きだ。
「確認いたします。ナポリタンのアイスティーセットと、オムライスのアイスコーヒーセットですね。お飲み物は先にお出ししますか?」
「先がいいよね、愛華」
「そうだね。先にお願いします」
「かしこまりました。失礼いたします」
軽く頭を下げ、僕は向日葵と福山さんのいるテーブル席から離れる。
キッチン担当の方に向日葵と福山さんからの注文を伝える。2人が飲み物は先に出してほしいと注文したため、すぐにアイスティーとアイスコーヒーがキッチンから出される。それらを持って、僕は2人のところへ。
「失礼します。セットドリンクのアイスコーヒーとアイスティーになります」
「ありがとう、加瀬君」
「ありがとう。……仕事とはいえ、桔梗にもてなされるのっていいわね」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
「ふふっ。2人が笑顔で話す光景が見られて私は嬉しいよ。これも、ひまちゃんが今までのことについて謝れたからだね。良かったよ」
「……まあ、長い間、睨んだり舌打ちしたりするのは申し訳ないと思ったし。鬱陶しいってはっきり言っちゃったから……」
そう言うと向日葵は頬を赤くして、アイスティーをストローでチューチュー飲んでいく。その姿は何とも可愛らしい。
福山さんは向日葵が悪い態度を取ったことを謝ってくるほどだった。だから、こうして僕らが普通に話せるようになったのが嬉しいのだろう。
「こうして向日葵と話せるようになって嬉しいよ。もちろん、福山さんとも」
「私とも? それは嬉しい言葉だね」
「いえいえ。では、ごゆっくり」
軽く頭を下げて、2人のいるテーブルを後にする。レジの近くまで行ったとき、
「5番テーブルに座っている2人、桔梗君の知り合いなんだね」
「そうですよ、なずなさん」
先輩店員の相沢なずなさんに話しかけられた。とても小柄で可愛らしい声。幼い顔立ち。銀色の髪をショートヘアにしているので、僕の後輩だと思うお客様もいる。でも、実際はお酒も呑める20歳の大学3年生。
なずなさんは去年、バイトを始めた僕に指導係としてホールでの仕事を教えてくれた方だ。一年経った今でも、彼女がいると心強くて安心する。
あと、なずなさんは僕の卒業した中学と、今通っている武蔵栄高校文系クラスOGでもある。ただ、4学年違いなのもあり、バイトでの先輩というイメージが強い。それもあって、僕は彼女を「なずなさん」と呼んでいる。
「2年になって同じクラスになった子達なんです」
「そうなんだ。2人とも背が高くて、胸も大きくて大人っぽいなぁ」
なずなさんは向日葵と福山さんに羨望の眼差しを向けている。背は低いけれど、胸はそれなりにあると思う。彼女達には敵わないかもしれないが。撫子には……勝つかもな。……って、何を考えているんだ僕は。
それにしても、なずなさんって『なずな』という名前に合っている雰囲気だと思う。なずなは白くて小さい花を咲かせるから。
「あの雰囲気なら、2人は大学生だって言っても十分に通じると思うよ」
「確かに。私服姿を全然見たことがないんで、今日の彼女達は普段よりも大人っぽく見えますね」
「だよね。あたしなんて3年生になったのに、大学の職員の方に『迷子かな?』って訊かれるし、友達やサークルの仲間と居酒屋に行ってもお店の方に『お嬢ちゃんはお酒を呑んじゃダメなんだよ~』って言われるんだよ。ひどいと思わない?」
「それはひどいですねぇ。本当に20歳の大学3年生なのにねぇ」
ただ、大学職員はともかく、居酒屋の店員さんが「お酒はダメなんだよ」と言ってしまうのは理解できるかな。僕もなずなさんのことを知らなかったら、年齢確認のために学生証や運転免許証を見せてもらうだろう。
「あっ、2人が桔梗君のことを見てるよ。特に金髪ちゃんが」
なずなさんがそう言うので、向日葵と福山さんが座っているテーブル席の方を見る。すると、2人がこちらを見ていた。特に金髪ちゃん……向日葵はじっと僕を見ている。僕がバイトしているし、料理を待っている間の話題にしているのだろう。
「黒髪ちゃんの方が桔梗君と楽しそうに話していたけど、実は金髪ちゃんの方が桔梗君のことが気になっていたりして」
「成績絡みで金髪の彼女から気にされていますね。ただ、今は……純粋にバイトをしている僕の様子を見ているんでしょう。バイト中の僕の姿を見たら面白そうだと言っていましたし」
「なるほどなるほど」
ニコニコと笑いながらなずなさんは言う。
それから10分ほどで向日葵と福山さんの注文したメニューが完成する。それらをトレンチ……お盆に乗せて2人のところへと向かう。
「お待たせしました。ナポリタンとオムライスでございます」
ナポリタンを向日葵の前、オムライスを福山さんの前に置く。その瞬間に2人から「美味しそう」という声が聞こえた。
「ところで、桔梗。さっき、レジにいる銀髪の女性と楽しそうに話していたけど。……か、彼女とか?」
「ううん、彼女じゃないよ。バイトの先輩で、僕の指導係だった方だよ。ちなみに、4学年上だけど、武蔵栄高校のOGなんだ」
「マジで? 4学年上ってことは20歳にはなっているんだ……」
「後輩じゃないかって思ったよね。この4月から、加瀬君は先輩としてあの人にお仕事を教えているのかなって話していたんだよ」
「そうか」
僕の後輩に見えてしまったか。
今の話、なずなさんには話さない方がいいな。ショックを受けるか、不機嫌になりそうだから。
「ごゆっくり」
「うん。何時までシフトが入っているのかは知らないけど、バイト頑張りなさいよ」
「頑張ってね」
「ありがとう」
2人に軽く頭を下げて、僕は先ほど帰られたお客様のテーブルの掃除をしていく。
『いただきます』
という向日葵と福山さんの声が聞こえたので、彼女達の方をチラッと見ると、ちょうど注文した料理の一口目を口に入れたところだった。2人とも、口に入れてすぐに満面の笑みを浮かべ、
「美味しい!」
「オムライスも美味しいよ!」
と、店員としてとても嬉しい感想を言ってくれる。2人の今の言葉を聞いて、口元や頬が緩んでいるのが分かった。
それから1時間近く、向日葵と福山さんは料理やドリンクを楽しみながら談笑していた。
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