向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ

文字の大きさ
21 / 41

第20話『タピオカデート-前編-』

しおりを挟む
 5月5日、火曜日。
 朝からよく晴れている。雲が広がる時間帯もあるそうだけど、雨が降る心配はないという。午後に向日葵とタピオカドリンク飲みに行くので一安心。
 午前中は連休前の授業で出されていた課題をする。連休が始まってから映画に行ったり、風邪を引いたり、一日バイトをしたりして課題をあまりしていなかったから。明日も日中はずっとバイトの予定なので、午前中のうちに課題を終わらせた。


 午後1時45分。
 僕は武蔵栄駅に向かって家を出発する。
 昨日の夜に向日葵とLIMEでメッセージし合い、午後2時に武蔵栄駅の改札前で待ち合わせをすることになっているのだ。
 少し雲もあるから、昨日より涼しいな。歩くのがとても心地いい。
 武蔵栄駅に到着すると……おっ、改札前に向日葵がいる。ピンクブラウンの膝丈のスカートに、ベージュの七分袖のVネックカットソーというシンプルな服装。紺色の小さなショルダーバッグを肩に掛けて。
 クラスメイトだからかもしれないけど、向日葵はとても存在感がある。周りの人とは違うというか。今も男性中心に彼女を見ている人が多い。

「向日葵」

 名前を呼んで向日葵のところへと向かう。
 向日葵はこちらに振り向き、微笑みながら小さく手を振った。

「向日葵、待った?」
「ううん。あたしもついさっき来たところだから。それに、待ち合わせの時間まであと5分以上あるし、待ったうちに入らないわ」
「そうか。ちゃんと会えて良かった。こうして向日葵と待ち合わせるのは初めてだからさ」
「そういえばこれが初めてね。桔梗と話すようになってからは、休みも含めて毎日会って話しているのに。意外だわ」

 あははっ、と快活に笑う向日葵。
 思い返してみれば、一週間ほど前にナンパする男達から助けてからは毎日話しているんだよな。それまでは教室などで睨まれたり、舌打ちされたりされるだけだったのに。そう思うと、嬉しい気持ちがどんどん沸いてくる。

「そうだね。……今日着ている服も可愛いね。爽やかな感じがする。よく似合っているよ」
「ありがとう。桔梗も……い、いいんじゃない? ジャケット好きなの? 映画に行ったときも着ていたし」
「好きだよ。色々な服に合うし」
「そうなのね。か、かっこいいと思うわ。……何だか、これからデートするような感じの会話ね。まあ、休日に待ち合わせして、2人でお店に行くんだからデートって言うのかもしれないけど」
「……デートだろうね」

 昨日の夕ご飯のとき、このことを家族に伝えたら、撫子と母さんに「それはデートだよ」って言われたし。

「今日のメインは一緒にタピオカドリンクを飲むことだから、タピオカデートになるのかな」
「タピオカデート……悪くない響きね。じゃあ、さっそく行きましょ」

 向日葵はタピオカドリンク店が入っているナノカドーのある南口に向かって歩き出す。デートって言葉も出たし、手でも繋いでくるかもしれないと思ったけど、そんなことはなかったか。そう思いながら向日葵の隣に。
 僕と一緒でも、依然として周りの人から視線が集まっている。彼らにとって、僕らはどう見えているんだろう? 一緒にいるからカップルなのか。一緒にいるけど手は繋いだり、腕を組んだりしていないからクラスメイトや友人なのか。きょうだいには……見えないだろうな。

「うわっ、あの金髪の子可愛いな」
「でも、男がいるぞ」
「……つまんねーの」

 などと言った会話が聞こえたり、鋭い視線を向けられたりするので、僕らがカップルだと思う人は多いようだ。
 向日葵を見ると、彼女の頬がほんのりと赤くなっている。意外だ。映画を観に行ったときも視線が集まるときが多かったけど、あのときは気にしていない様子だったのに。あのときは撫子と福山さんもいたからかな。
 南口を出ると、すぐ目の前にはナノカドーが。その周辺にもチェーンの飲食店や個人の商店がいくつかある。この光景も見慣れているけど、向日葵と一緒に歩いているからか新鮮さも感じられる。

「そういえば、桔梗。体調の方はどう? 昨日は夕方までバイトしていたんでしょ?」
「もう普段と変わらず元気だよ。昨日のバイトは長めの休憩を何度も挟んだし。昨日も早めに寝たからな」
「それなら良かった。じゃあ、一緒にタピオカドリンクを飲めるわねっ」

 楽しそうな笑みを顔に浮かべて、向日葵はそう言った。それだけ、僕と一緒にタピオカドリンクを飲むのを楽しみにしてくれているのかな。
 僕らはナノカドーに入り、タピオカドリンク店のある1階のフードコートへと向かう。お昼過ぎの時間帯だけど多くの人で賑わっている。
 タピオカドリンク店に行くと、カウンターに向かって列ができていた。若い女性中心に並んでいる。向日葵と僕は列の最後尾に並んだ。

「このくらいの列の長さだと、待つのは10分くらいかな」
「そう言うってことは、このお店に何度か来たことあるの?」
「うん。撫子とはもちろん、友達ともね。岡嶋や津川さんとも来たことあるよ」
「そうだったのね。あたしも愛華とかとたくさん来たわ。暖かくなる今ぐらいの時期から列ができることが多いわよね」
「そうだね。向日葵は今みたいに列で待つのは大丈夫な方?」
「基本的にはあんまり得意じゃない。今は待てば美味しいタピオカドリンクが飲めるって分かっているから待てるけど。愛華とか友達と一緒なら、初めて行くお店でも待つのは我慢できるかな」

 何のお店の列か、誰と一緒に並んでいるかで、待っても大丈夫な時間は変わってくるか。あと、待つのがあまり得意じゃないのはイメージ通りだ。

「桔梗はどうなの?」
「僕は待てる方かな。今みたいに誰かと一緒なら話していればあっという間だし。一人きりなら音楽を聴いたりとかするから」
「なるほどね。イメージ通りだわ。桔梗って気長な感じがするし」
「そっか」

 すぐにカッとなることはあまりないかな。最近そうなったのは、先日、撫子が同級生の男子に告白されたときくらいだし。
 列で待っているときは音楽を聴くと言ったのもあり、その後はどんな音楽を聴くのかで話が盛り上がった。向日葵は好きなアニメの主題歌や、それをきっかけにハマったアーティストの曲を中心に聴いているそうだ。もちろん、その中には僕の好きな曲がいくつもあって嬉しい気持ちになった。
 音楽の話をしたこともあって、あっという間に僕らの順番に。
 僕はタピオカミルクコーヒーのレギュラーサイズ、向日葵はタピオカミルクティーのレギュラーサイズを注文。約束通り、僕が向日葵の分も代金を支払った。
 お昼過ぎになっているので、テーブル席はいくつか空いている。店員さんからタピオカドリンクを受け取った僕らは、2人用のテーブル席に座った。
 席に座るや否や、向日葵はスマホでタピオカミルクティーの写真を撮る。

「これでOK」
「そういう写真って、TubutterとかMinstagramとかのSNSにアップするのか?」
「ううん、しない。愛華とか友達にLIMEで送るくらいで。基本的に思い出用。アルバムアプリで撮影した日付と時刻も表示できるし」
「なるほどね。……そのタピオカドリンクも思い出にしてくれるんだ」

 僕がそう言うと、向日葵は頬をほんのりと紅潮させる。

「お、奢ってくれるのは嬉しいからね。今日のことを思い出しやすくするためにも、桔梗のミルクコーヒーの写真も撮っておきたいんだけど……いい?」
「いいよ」

 向日葵にミルクコーヒーの入ったコップを渡すと、向日葵はミルクティーのカップの隣に置いた。そして、再びスマホで撮影。満足のいく写真が撮れたのか、向日葵は笑顔になって「うんっ」と呟いていた。
 向日葵の思い出の中に僕がいると思うと嬉しくなる。

「ありがとう、桔梗。2つ並べた写真を撮れたわ」
「そっか。僕も今日のことを思い出せるように、写真を撮っておこうかな」
「あたしの撮った写真で良ければLIMEで送るけど」
「じゃあ、お願い」
「いいよ」

 それから程なくして、僕のスマートフォンのバイブ音が響く。
 確認すると、LIMEで向日葵から写真を1枚送信されていると通知が。向日葵とのトークを開くと、ミルクティーとミルクコーヒーのカップが並んだ写真が送られていた。その写真をさっそくスマホに保存。向日葵と同じ写真を持っていると思うと気持ちが温かくなる。

「ありがとう、向日葵」
「いえいえ。じゃあ、飲もうか」
「そうだね。タピオカミルクコーヒーいただきます」
「タピオカミルクティーいただきます!」

 ミルクコーヒーのコップを手に取って一口飲む。ミルクコーヒーと一緒にタピオカが何粒も口の中に入ってくる。初めてタピオカドリンクを飲んだとき、タピオカが口に入る感覚に驚いて吹き出したことを思い出した。

「あぁ、甘くて美味しい! ミルクティー最高だわ!」

 満面の笑みでそう言う向日葵。今の彼女を撮って広告に使ったら、お店の売上がかなり伸びるじゃないかと思うくらいにいい笑顔になっている。

「良かった。奢った身として嬉しいよ」
「ありがとう、桔梗」
「いえいえ。それに、これはお見舞いと看病のお礼でもあるからね。改めて……ありがとう」
「元気になって良かったわ」

 そう言う向日葵の笑顔は、タピオカミルクティーを飲んだときよりもさらにいい笑顔になっているように思えるのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...