向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ

文字の大きさ
37 / 41

第36話『あなたのことばかり』

しおりを挟む
 夕食を食べ終わってからおよそ2時間。
 今日の授業で出た課題がようやく全て終わった。3教科あり、どれもプリント1枚。そこまで難しくない。普段からきりのいいところで小休憩を挟むけど、こんなに時間はかからない。こうなっている理由は――。

『桔梗、ありがとう』

 花村から助けた直後に言われたお礼の言葉。
 初めてされた強くて温かい抱擁。
 至近距離で見せてくれた明るくて可愛い笑顔。
 時折、花村の一件直後の向日葵を思い浮かぶからだ。たまに、今まで向日葵が見せてくれた笑顔がどんどん思い浮かぶこともあって。自然と気持ちが温かくなる。

「どうしてなんだろうな……」

 花村から向日葵を助けられたからだろうか。
 抱きしめられながら、お礼を言われるのが初めてだったからだろうか。
 4月の終わり頃まではツンツンしていたけど、今は笑顔を見せることが多くなったからだろうか。
 はっきりとした理由は分からない。でも、向日葵のことを考えていると心地いい。バイトや勉強の疲れが取れて、体が楽になっていく。
 ――プルルッ。
 スマホのバイブ音が響く。確認すると、LIMEを通じて向日葵からメッセージあると通知が。さっそく見てみると、

『今日は本当にありがとう。また明日学校でね。早いけど、おやすみ』

 という内容だった。おやすみって言葉を送ってくれたのはこれが初めてだと思う。凄く嬉しい。頬が緩んでいるのが分かる。
 さてと、いつまでも既読無視のままではいけないな。

『また明日。おやすみ、向日葵』

 向日葵にそんな返信を送った。
 向日葵もトーク画面を見ているのか、返信を送った直後に『既読』のマークがつく。それから数秒もしないうちに、三毛猫がふとんに入って眠っているイラストスタンプが送られてきた。
 僕も三毛猫イラストのスタンプを持っているので、同じスタンプを送信したのであった。



 6月3日、水曜日。
 今日も青空が広がっている。昨日よりも雲が少なく、快晴とも言える空模様。日差しは暑いけど、青い空を見ると清々しい気持ちになれる。
 今日も撫子と一緒に登校。教室A棟の昇降口には……向日葵の姿はない。既に登校して教室に行っているのかな。
 撫子と別れて、僕は1人で2年1組の教室へと向かう。普段よりも早足で。階段はいつもはしない1段飛ばしで上がる。
 教室に入ると、向日葵は自分の席に座って福山さんや岡嶋、津川さん、冴島さんと一緒に談笑している。柔らかな笑みが可愛らしい。そんな彼女を見て安心した。昨日の夜から、幾度となく向日葵の顔が思い浮かぶけど、実際に見るのが一番いいと思う。
 僕が入り口近くにいるクラスメイトに挨拶したことで、向日葵達は僕が登校したことに気づく。みんな僕に向かって笑顔で手を振り、「おはよう」と言ってくれる。その際、僕の席に座っていた冴島さんは席から立つ。

「みんなおはよう」

 そう挨拶して、僕は自分の席に座る。
 スクールバッグから必要なものを机に出していると、誰かにポンと左肩に手を置かれる。手から視線を動かしていくと、その先には爽やかな笑顔で僕を見る岡嶋の姿があった。

「聞いたぜ、加瀬。昨日の放課後、元カレから宝来を守ったんだってな」
「一歩も引くことなく相手して、凄くかっこよかったみたいだね、加瀬君」
「それを向日葵さんが幸せそうに話していましたよ」
「だって、あたしを守ってくれて、元カレに二度と関わらせないって約束させたのが嬉しかったから……」

 いつになく甘い声で言う向日葵。僕と目が合うと、向日葵はとても柔らかな笑顔を見せてくれる。今までも可愛かったけど、今の笑顔は特別に可愛らしい。撫子と同じくらい……いや、撫子よりも可愛いかもしれない。
 あと、向日葵は岡嶋達に昨日のことを話したのか。花村と決着を付けられたことがよほど嬉しかったのだろう。

「昨日も言ったけど、加瀬君……ひまちゃんのためにありがとう」
「いえいえ」

 昨日、福山さんは部活帰りにサカエカフェへ向日葵を迎えに来た。向日葵からのメッセージで花村との一件について知った彼女は、お店に入るや否や僕の手をぎゅっと握ってお礼を言ってくれたのだ。お客様や他の店員の目もあったから、僕はちょっと恥ずかしかったけど。

「何度も言っているけど、また言わせて。本当にありがとう、桔梗」
「どういたしまして。向日葵が不安に思っていることが解決できて僕も嬉しいよ」

 あと、何度でも向日葵にお礼を言われることが凄く嬉しい。自然と頬が緩んでしまう。

「ところで、今日は普通に来たんだっけ」
「うん。いつも通りに来たよ」
「昨日のことがあったから大丈夫だとは思うけど、あの男に何かされたり、視線を感じたりしたことはなかった?」
「うん、なかった。学校に到着して、昇降口のところで1年生の女子生徒に告白されたけどね。いつも通り、その場で断ったわ」

 告白されて断ることが「いつも通り」と言えるとは。向日葵の人気が凄いと改めて思う。ただ、向日葵にとって告白されることがいつも通りでも、僕は胸がチクッと痛んだ。そして、断ったことに安心する。

「そっか。何事もなく、いつも通りの朝で良かったよ。安心した」
「桔梗のおかげだよ。ありがとう」
「……どういたしまして」

 向日葵の優しい笑顔……とても可愛いな。花村のことを解決できたから、こういう笑顔を見られるようになったのかな。そう思うと凄く嬉しくなった。そして、これからも向日葵の可愛い顔をたくさん見たい。

「そんなにじっと見つめられると照れちゃうよ……」
「ご、ごめん」

 向日葵の笑顔が魅力的だったから、つい見入ってしまった。
 少し視線を逸らすと、僕を見てニヤニヤする岡嶋や津川さんの姿が視界に入る。その瞬間、何だか気恥ずかしくなった。


 席の位置関係から、授業中に板書を写す際は向日葵の方を向かない。だから、今までは向日葵を見ないか、見たとしても一つの授業でせいぜい一度か二度くらいだった。
 でも、今日は……向日葵の顔が見たくなって、1時間目の授業から彼女の方に何度も視線を動かしてしまう。真剣な様子で板書を取る向日葵や、ぼーっと窓の方を見る向日葵もいいなと思えて。
 ただ、たまに向日葵と目が合ってしまうことがあった。僕が見ていることに気づいたときもあれば、僕が向日葵の方に視線を動かしたら向日葵が僕を見ていたときもあって。後者の場合、向日葵は目を見開き恥ずかしそうにすることもあったけど。ただ、基本的に目が合ったときには僕に優しく微笑みかけてくれた。
 そんなこともあって、いつも以上に学校での時間は早く過ぎ去っていった。


 今日も放課後はサカエカフェでバイト。
 しかし、向日葵はサカエカフェには来店しない。午後に百合さんからメッセージが入り、助っ人としてランジェリーショップでバイトすることになったからだ。百合さんと一緒に夜までバイトすると知ったとき、凄く寂しくなった。
 仕事中はまだしも、休憩中は向日葵のことばかり考えてしまって。向日葵と話すようになってから、僕がバイトしていると来店してくれることが多かったからだろうか。
 今日のバイトも残り1時間を切ったとき、副店長に頼まれて、お店の前の道路を掃除することに。
 ほうきとちりとりを持って従業員用の出入口から外に出る。
 その瞬間、昨日の花村との一件や、4月の終わり頃に男達から向日葵を助けたときのことを思い出す。内容は良くないけど、ここは向日葵にまつわる思い出の地だ。
 そういえば、昨日……花村に向日葵のことが好きなのかと問いかけられて、

『好きですよ。友人として』

 って即答したんだよな。

「向日葵が好き……か」

 そう口にした瞬間、ドクンと心臓が鼓動して、全身が急に熱くなっていく。
 向日葵に抱きしめられてお礼を言われた場所だからか、あのときのことを鮮明に思い出す。あのときの向日葵の笑顔は本当に素敵で。そう思うと、心臓の鼓動が段々と心地よいものに変わっていく。
 もしかしたら、僕は――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...