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第38話『告白』
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6月4日、木曜日。
今日も青空がとても綺麗だ。向日葵に告白しようと決めた昨日の夜は不安だった。だから、緊張してあまり眠れなくて。でも、この空を見たら気持ちが少し軽くなって、告白が成功するんじゃないかと思えてきた。
教室に行くと、向日葵は昨日の朝と同じ人達と一緒に談笑していた。僕の席には津川さんが座っている。向日葵以外は全員、僕が向日葵を好きで、今日の放課後に告白しようとしているのを知っている。そう考えると、何だか不思議な感じがする。
「みんな、おはよう」
挨拶すると、向日葵達は僕に向かって挨拶してくれる。それと同時に津川さんは僕の席から立った。
今日も向日葵の笑顔が本当に可愛い。そんな笑顔を見られて幸せに感じ、今日も近くでたくさん見たいと強く思う。こんな気持ちを抱くのは彼女に恋をしたからだろうか。段々と体が熱くなってきた。
スクールバッグを机に置き、僕は向日葵と向かい合う形で自分の席に座る。さてと、今日の放課後は空いているかどうか訊かないと。
「あ、あのさ。向日葵」
「うん?」
「きょ……今日はどうだった? 何事もなくここまで来られた?」
告白するためだから、緊張してしまって別のことを訊いてしまった。
しかし、向日葵は僕の考えには全く気づいていない様子。クスッと笑う。
「今日も安全に登校できたわ。告白とかもなかったから、本当に何事もなく」
「そ、そうか。本当に良かった」
「桔梗は心配性なのね」
「花村のことがあってから、まだ2日しか経っていないからね。念のために」
「なるほどね。心配してくれてありがとう」
向日葵は穏やかな笑みを浮かべてそう言う。以前なら、少しは照れくさそうにしていたのに。最近は僕に対する態度が本当に柔らかくなったなぁ。
おい、と呟かれながら岡嶋に左肩を軽く叩かれる。ちゃんと放課後のことを訊かないと。一度、長めに呼吸をする。
「ちなみに、向日葵は今日の放課後って予定は空いてるかな」
「うん、空いてるよ」
「良かった。実は向日葵と2人で行きたいところがあるんだ。いいかな?」
「もちろんいいけど。ちなみにどこ?」
「それは……放課後までの秘密でもいいかな。向日葵が喜べると思う場所だから」
僕がそう言うと、向日葵はにっこりと笑って一度頷く。
「そういうのも楽しそうでいいね。分かった。じゃあ、放課後を楽しみにしてる」
「ありがとう」
よし、これで放課後に告白する場ができたな。岡嶋、津川さん、福山さん、冴島さんに視線を送り微笑み合った。
撫子にメッセージを送るため、お手洗いに行くと言って、僕は教室を後にする。撫子にLIMEで放課後に例の場所に行くとメッセージを送った。
すると、すぐに僕のメッセージに『既読』マークが付き、
『分かった。準備は整ったね。あとは告白。頑張って! 見守ってるね!』
という返信が届いた。放課後は撫子が見守ってくれるのか。これは心強い。撫子に『ありがとう』と返信するのであった。
やがて、今日の授業が始まる。
ただ……放課後に告白するのもあって、今日の授業は全然集中できない。昨日以上に向日葵のことを見てしまうし。板書を取るので精一杯だ。
放課後に向日葵に告白することの緊張もある。ただ、向日葵本人の笑顔を見ると、不思議と緊張が和らいでいく。それだけ彼女のことが好きなのだろう。
時間は刻一刻と過ぎていった。
放課後。
いよいよこの時間がやってきた。終礼が終わった瞬間に一気に緊張感が高まる。
今朝、2人で行きたいところがあると言ったので、向日葵と2人きりで教室を後にするのは簡単だった。
教室を出る際、岡嶋など僕が告白すると知っている人達は僕に微笑みかけてくれた。ちなみに、彼らは僕の告白を見守ってくれるそうだ。
「どんなところに連れて行ってくれるんだろう。楽しみだなぁ」
昇降口に到着したとき、向日葵は楽しげにそう言った。
「とても近いところだよ」
「そうなんだ」
そう、向日葵と2人で行きたい場所……告白の場所はとても近い。そこは教室A棟を出てから、歩いて1分もかからない場所だ。
「ここだよ、向日葵」
「……ここなんだ。桔梗の花とミニ向日葵の花が綺麗に咲いたね!」
向日葵を連れてきた場所は……教室B棟の横にある撫子と冴島さんが担当している園芸部の花壇だ。
以前、冴島さんの誘いでこの花壇に来たときは、撫子の花しか咲いていなかった。でも、6月となった今は青紫色の桔梗の花と、黄色いミニ向日葵の花が綺麗に咲いている。もちろん、淡いピンク色の撫子の花も。
花壇に植えられた3種類の花が全て咲いたので、告白の場所にいいだろうと冴島さんが提案してくれたのだ。
告白の舞台にはやってきた。だから、一気に緊張感が。どうやって話を切り出すか。
ただ、向日葵は目を輝かせながら花壇を見ている。まずは花を楽しんでいい雰囲気にしよう。
「スマホで調べて桔梗の花がどんな感じかは知っていたけど、実際に見るととても綺麗ね」
「そうだね。ミニ向日葵の花は可愛いな」
「そうね。普通の向日葵は背が高くて花も大きいからね。とっても可愛い。スマホで写真撮ろっと」
向日葵はスクールバッグからスマホを取り出し、花壇の写真を何枚も撮る。楽しそうに撮影する彼女はとても可愛くて。そんな彼女を撮りたかったけど、それを我慢して僕も花壇の写真をスマホで撮った。
「このくらいでいいかな。綺麗な花を見せてくれてありがとね」
「いえいえ。それに、育てたのは撫子と冴島さんだよ」
「確かにそうだね。2人に今撮った写真を送っておこうかな。桔梗とミニ向日葵の花が咲いたことは2人から聞いたの?」
「ああ。桔梗の花は中間試験が終わった直後から、ミニ向日葵の花は今週に入ってから咲き始めたって教えてくれた」
「なるほど。……でも、どうしてここにあたしと2人で行きたいって思ったの? もちろん、それが嫌だってわけじゃないよ。ただ、理由が知りたくて……」
向日葵は首を少し傾げる。そんな仕草も凄く可愛い。
告白するのにどう話を切り出そうか考えていたので、この向日葵の問いかけは有り難い。
「……向日葵に話したいことがあって」
「話したいこと?」
「……うん。向日葵に対する僕の気持ちを」
僕は向日葵と向かい合う形で立つ。向日葵の顔はほんのりと赤くなっている。自分に対する気持ちを話したいと言ったからだろうか。
一度、僕は長めに呼吸をして少しでも気持ちを落ち着かせる。さあ……言おう。
「僕は向日葵のことが好きだ」
向日葵の目を見つめて、しっかりとそう言った。好きな人に好きだと言ったからか、一気に全身が熱くなって、ドキドキしてくる。
今の僕の告白に、向日葵はどう返事をするのだろう。緊張と不安の気持ちが沸き上がってくる。今まで向日葵に告白してきた人達はこういう想いをしてきたのかな。
向日葵の顔は見る見るうちに赤くなって、視線をちらつかせる。そんなしおらしい姿も可愛くて。
「……あ、あたしのことが好きなの? 本当に?」
「本当だよ。女性として向日葵が好きだよ」
「そう……なんだ」
「4月の終わり頃に向日葵と話すようになって。放課後や休日に一緒に過ごすことが多くなって。席替えで隣になったから、学校でも話すようになって。そんな中で、向日葵の可愛い笑顔をたくさん見られるようになった。以前は向日葵に睨まれたり、舌打ちされたりしていたから、本当に嬉しくて」
「悪い態度を取っていた時期が遠く感じるよ」
「そっか。花村の件が解決した後から、向日葵のことが頭から離れなくなって。告白されたって話を聞いたら胸が苦しくて。向日葵と会って、向日葵の笑顔を見ると嬉しくなってキュンとなることもあってさ。恋愛経験は全然ないから……撫子達に相談したおかげで、これは恋なんだって分かったんだ」
「そうだったんだ」
ふふっ、と向日葵は上品に笑い、再び僕の方を見つめる。
「笑顔が可愛いところや勉強とかに一生懸命なところ。風邪を引いたらお見舞いに来て看病してくれる優しいところとか、向日葵の好きなところはいっぱいあるよ。僕はそんな向日葵とずっと一緒にいたい。この花壇に咲いている花みたいに、向日葵の隣にずっといて、咲き誇りたい」
「咲き誇りたい?」
「……向日葵と一緒に笑顔でいられて、幸せになりたいってことだ。そう思うくらいに向日葵のことが大好きです。僕と……恋人として付き合ってくれませんか」
色々と話してしまったけど、撫子達からのアドバイス通り、最後は伝えたいことをストレートに言った。
向日葵は両目に涙を浮かばせ、とても柔らかい笑顔を僕に見せてくれる。
「……嬉しい。あたしも桔梗のことが好きです」
「向日葵……」
「ゴールデンウィーク前に助けられて、名前のことや笑顔を褒められたときから桔梗を意識するようになって。桔梗と一緒に過ごす中で想いが膨らんでいって。花村から助けられてからは、もう完全に好きになってる。優しくて、かっこよくて、頼りがいがあって、撫子ちゃんのことになるとシスコン発揮しちゃうところとか……あたしも桔梗の好きなところがいっぱいあるよ」
「……そう言ってくれて嬉しいな」
「あたしも桔梗とはこの花みたいに……隣同士で一緒にいたい。咲き誇りたい。だから……これからは恋人としてよろしくお願いします」
向日葵らしい明るくて可愛らしい笑顔を浮かべながらそう言ってくれた。
「ありがとう、向日葵。これからよろしく」
「うん! 告白してくれてありがとう!」
さらに明るさの増した笑顔でそう言うと、向日葵は僕にぎゅっと抱きしめた。花村から助けた後よりも彼女の温もりと柔らかさが感じられる。
夢のようだ。好きな人が僕からの告白を受け入れて、恋人になってくれるなんて。でも、向日葵から色々なものを感じているから、これは現実なんだよな。嬉しくて、両手を彼女の背中へと回した。
「兄さん! 向日葵先輩! おめでとうございます!」
「やったじゃねえか! 加瀬!」
背後から撫子と岡嶋の声が聞こえたのでそちらの方を見ると、撫子と岡嶋、津川さん、福山さん、冴島さんが嬉しそうな様子でこちらに駆け寄ってきた。福山さんは涙を流している。
「ひまちゃん、加瀬君、おめでとう! 感動しちゃったよ……」
「キュンキュンしたよ、2人とも! 加瀬君やったじゃん!」
「告白が成功する瞬間を見るのはいいものですね! おめでとうございます!」
福山さん、津川さん、冴島さんからもそんな祝福の言葉をくれる。そのことに向日葵はとても嬉しそうにしている。
「みんな、ありがとう。昨日の夜にみんなが相談に乗ってくれたおかげで、向日葵に告白して恋人同士になれました」
「5人に相談してたんだ。撫子ちゃん以外は朝とか昼休みとか一緒にいたのに、全然気づかなかったなぁ。ええと……ご覧の通り、桔梗と恋人として付き合うことになりました。これからもよろしくね」
恋人になったことを笑顔で報告する向日葵。
あと、向日葵に集中していたから気づかなかったけど、結構多くの生徒が僕らのことを見ている。告白が成功したと分かったのか、一部の生徒は拍手を送っていて。放課後になってそんなに時間が経っていないからかな。
「明日にはあたし達のことが学校中に広まっているかも」
「そうかもね」
「もし、あたしのことで誰かに絡まれたら、遠慮なく言ってね」
「ありがとう。僕もこれからも向日葵のことを守っていくよ」
「ありがとう、桔梗」
――ちゅっ。
向日葵は僕の右頬にキスをしてきた。一瞬だったけど、頬から独特の柔らかな感覚と温もりが伝わってきて。みんなの前だから照れくささもあるけど、頬にキスしてくれた嬉しさが勝る。
僕にとって人生初の告白は、向日葵と恋人になるという最高の結果になったのであった。
今日も青空がとても綺麗だ。向日葵に告白しようと決めた昨日の夜は不安だった。だから、緊張してあまり眠れなくて。でも、この空を見たら気持ちが少し軽くなって、告白が成功するんじゃないかと思えてきた。
教室に行くと、向日葵は昨日の朝と同じ人達と一緒に談笑していた。僕の席には津川さんが座っている。向日葵以外は全員、僕が向日葵を好きで、今日の放課後に告白しようとしているのを知っている。そう考えると、何だか不思議な感じがする。
「みんな、おはよう」
挨拶すると、向日葵達は僕に向かって挨拶してくれる。それと同時に津川さんは僕の席から立った。
今日も向日葵の笑顔が本当に可愛い。そんな笑顔を見られて幸せに感じ、今日も近くでたくさん見たいと強く思う。こんな気持ちを抱くのは彼女に恋をしたからだろうか。段々と体が熱くなってきた。
スクールバッグを机に置き、僕は向日葵と向かい合う形で自分の席に座る。さてと、今日の放課後は空いているかどうか訊かないと。
「あ、あのさ。向日葵」
「うん?」
「きょ……今日はどうだった? 何事もなくここまで来られた?」
告白するためだから、緊張してしまって別のことを訊いてしまった。
しかし、向日葵は僕の考えには全く気づいていない様子。クスッと笑う。
「今日も安全に登校できたわ。告白とかもなかったから、本当に何事もなく」
「そ、そうか。本当に良かった」
「桔梗は心配性なのね」
「花村のことがあってから、まだ2日しか経っていないからね。念のために」
「なるほどね。心配してくれてありがとう」
向日葵は穏やかな笑みを浮かべてそう言う。以前なら、少しは照れくさそうにしていたのに。最近は僕に対する態度が本当に柔らかくなったなぁ。
おい、と呟かれながら岡嶋に左肩を軽く叩かれる。ちゃんと放課後のことを訊かないと。一度、長めに呼吸をする。
「ちなみに、向日葵は今日の放課後って予定は空いてるかな」
「うん、空いてるよ」
「良かった。実は向日葵と2人で行きたいところがあるんだ。いいかな?」
「もちろんいいけど。ちなみにどこ?」
「それは……放課後までの秘密でもいいかな。向日葵が喜べると思う場所だから」
僕がそう言うと、向日葵はにっこりと笑って一度頷く。
「そういうのも楽しそうでいいね。分かった。じゃあ、放課後を楽しみにしてる」
「ありがとう」
よし、これで放課後に告白する場ができたな。岡嶋、津川さん、福山さん、冴島さんに視線を送り微笑み合った。
撫子にメッセージを送るため、お手洗いに行くと言って、僕は教室を後にする。撫子にLIMEで放課後に例の場所に行くとメッセージを送った。
すると、すぐに僕のメッセージに『既読』マークが付き、
『分かった。準備は整ったね。あとは告白。頑張って! 見守ってるね!』
という返信が届いた。放課後は撫子が見守ってくれるのか。これは心強い。撫子に『ありがとう』と返信するのであった。
やがて、今日の授業が始まる。
ただ……放課後に告白するのもあって、今日の授業は全然集中できない。昨日以上に向日葵のことを見てしまうし。板書を取るので精一杯だ。
放課後に向日葵に告白することの緊張もある。ただ、向日葵本人の笑顔を見ると、不思議と緊張が和らいでいく。それだけ彼女のことが好きなのだろう。
時間は刻一刻と過ぎていった。
放課後。
いよいよこの時間がやってきた。終礼が終わった瞬間に一気に緊張感が高まる。
今朝、2人で行きたいところがあると言ったので、向日葵と2人きりで教室を後にするのは簡単だった。
教室を出る際、岡嶋など僕が告白すると知っている人達は僕に微笑みかけてくれた。ちなみに、彼らは僕の告白を見守ってくれるそうだ。
「どんなところに連れて行ってくれるんだろう。楽しみだなぁ」
昇降口に到着したとき、向日葵は楽しげにそう言った。
「とても近いところだよ」
「そうなんだ」
そう、向日葵と2人で行きたい場所……告白の場所はとても近い。そこは教室A棟を出てから、歩いて1分もかからない場所だ。
「ここだよ、向日葵」
「……ここなんだ。桔梗の花とミニ向日葵の花が綺麗に咲いたね!」
向日葵を連れてきた場所は……教室B棟の横にある撫子と冴島さんが担当している園芸部の花壇だ。
以前、冴島さんの誘いでこの花壇に来たときは、撫子の花しか咲いていなかった。でも、6月となった今は青紫色の桔梗の花と、黄色いミニ向日葵の花が綺麗に咲いている。もちろん、淡いピンク色の撫子の花も。
花壇に植えられた3種類の花が全て咲いたので、告白の場所にいいだろうと冴島さんが提案してくれたのだ。
告白の舞台にはやってきた。だから、一気に緊張感が。どうやって話を切り出すか。
ただ、向日葵は目を輝かせながら花壇を見ている。まずは花を楽しんでいい雰囲気にしよう。
「スマホで調べて桔梗の花がどんな感じかは知っていたけど、実際に見るととても綺麗ね」
「そうだね。ミニ向日葵の花は可愛いな」
「そうね。普通の向日葵は背が高くて花も大きいからね。とっても可愛い。スマホで写真撮ろっと」
向日葵はスクールバッグからスマホを取り出し、花壇の写真を何枚も撮る。楽しそうに撮影する彼女はとても可愛くて。そんな彼女を撮りたかったけど、それを我慢して僕も花壇の写真をスマホで撮った。
「このくらいでいいかな。綺麗な花を見せてくれてありがとね」
「いえいえ。それに、育てたのは撫子と冴島さんだよ」
「確かにそうだね。2人に今撮った写真を送っておこうかな。桔梗とミニ向日葵の花が咲いたことは2人から聞いたの?」
「ああ。桔梗の花は中間試験が終わった直後から、ミニ向日葵の花は今週に入ってから咲き始めたって教えてくれた」
「なるほど。……でも、どうしてここにあたしと2人で行きたいって思ったの? もちろん、それが嫌だってわけじゃないよ。ただ、理由が知りたくて……」
向日葵は首を少し傾げる。そんな仕草も凄く可愛い。
告白するのにどう話を切り出そうか考えていたので、この向日葵の問いかけは有り難い。
「……向日葵に話したいことがあって」
「話したいこと?」
「……うん。向日葵に対する僕の気持ちを」
僕は向日葵と向かい合う形で立つ。向日葵の顔はほんのりと赤くなっている。自分に対する気持ちを話したいと言ったからだろうか。
一度、僕は長めに呼吸をして少しでも気持ちを落ち着かせる。さあ……言おう。
「僕は向日葵のことが好きだ」
向日葵の目を見つめて、しっかりとそう言った。好きな人に好きだと言ったからか、一気に全身が熱くなって、ドキドキしてくる。
今の僕の告白に、向日葵はどう返事をするのだろう。緊張と不安の気持ちが沸き上がってくる。今まで向日葵に告白してきた人達はこういう想いをしてきたのかな。
向日葵の顔は見る見るうちに赤くなって、視線をちらつかせる。そんなしおらしい姿も可愛くて。
「……あ、あたしのことが好きなの? 本当に?」
「本当だよ。女性として向日葵が好きだよ」
「そう……なんだ」
「4月の終わり頃に向日葵と話すようになって。放課後や休日に一緒に過ごすことが多くなって。席替えで隣になったから、学校でも話すようになって。そんな中で、向日葵の可愛い笑顔をたくさん見られるようになった。以前は向日葵に睨まれたり、舌打ちされたりしていたから、本当に嬉しくて」
「悪い態度を取っていた時期が遠く感じるよ」
「そっか。花村の件が解決した後から、向日葵のことが頭から離れなくなって。告白されたって話を聞いたら胸が苦しくて。向日葵と会って、向日葵の笑顔を見ると嬉しくなってキュンとなることもあってさ。恋愛経験は全然ないから……撫子達に相談したおかげで、これは恋なんだって分かったんだ」
「そうだったんだ」
ふふっ、と向日葵は上品に笑い、再び僕の方を見つめる。
「笑顔が可愛いところや勉強とかに一生懸命なところ。風邪を引いたらお見舞いに来て看病してくれる優しいところとか、向日葵の好きなところはいっぱいあるよ。僕はそんな向日葵とずっと一緒にいたい。この花壇に咲いている花みたいに、向日葵の隣にずっといて、咲き誇りたい」
「咲き誇りたい?」
「……向日葵と一緒に笑顔でいられて、幸せになりたいってことだ。そう思うくらいに向日葵のことが大好きです。僕と……恋人として付き合ってくれませんか」
色々と話してしまったけど、撫子達からのアドバイス通り、最後は伝えたいことをストレートに言った。
向日葵は両目に涙を浮かばせ、とても柔らかい笑顔を僕に見せてくれる。
「……嬉しい。あたしも桔梗のことが好きです」
「向日葵……」
「ゴールデンウィーク前に助けられて、名前のことや笑顔を褒められたときから桔梗を意識するようになって。桔梗と一緒に過ごす中で想いが膨らんでいって。花村から助けられてからは、もう完全に好きになってる。優しくて、かっこよくて、頼りがいがあって、撫子ちゃんのことになるとシスコン発揮しちゃうところとか……あたしも桔梗の好きなところがいっぱいあるよ」
「……そう言ってくれて嬉しいな」
「あたしも桔梗とはこの花みたいに……隣同士で一緒にいたい。咲き誇りたい。だから……これからは恋人としてよろしくお願いします」
向日葵らしい明るくて可愛らしい笑顔を浮かべながらそう言ってくれた。
「ありがとう、向日葵。これからよろしく」
「うん! 告白してくれてありがとう!」
さらに明るさの増した笑顔でそう言うと、向日葵は僕にぎゅっと抱きしめた。花村から助けた後よりも彼女の温もりと柔らかさが感じられる。
夢のようだ。好きな人が僕からの告白を受け入れて、恋人になってくれるなんて。でも、向日葵から色々なものを感じているから、これは現実なんだよな。嬉しくて、両手を彼女の背中へと回した。
「兄さん! 向日葵先輩! おめでとうございます!」
「やったじゃねえか! 加瀬!」
背後から撫子と岡嶋の声が聞こえたのでそちらの方を見ると、撫子と岡嶋、津川さん、福山さん、冴島さんが嬉しそうな様子でこちらに駆け寄ってきた。福山さんは涙を流している。
「ひまちゃん、加瀬君、おめでとう! 感動しちゃったよ……」
「キュンキュンしたよ、2人とも! 加瀬君やったじゃん!」
「告白が成功する瞬間を見るのはいいものですね! おめでとうございます!」
福山さん、津川さん、冴島さんからもそんな祝福の言葉をくれる。そのことに向日葵はとても嬉しそうにしている。
「みんな、ありがとう。昨日の夜にみんなが相談に乗ってくれたおかげで、向日葵に告白して恋人同士になれました」
「5人に相談してたんだ。撫子ちゃん以外は朝とか昼休みとか一緒にいたのに、全然気づかなかったなぁ。ええと……ご覧の通り、桔梗と恋人として付き合うことになりました。これからもよろしくね」
恋人になったことを笑顔で報告する向日葵。
あと、向日葵に集中していたから気づかなかったけど、結構多くの生徒が僕らのことを見ている。告白が成功したと分かったのか、一部の生徒は拍手を送っていて。放課後になってそんなに時間が経っていないからかな。
「明日にはあたし達のことが学校中に広まっているかも」
「そうかもね」
「もし、あたしのことで誰かに絡まれたら、遠慮なく言ってね」
「ありがとう。僕もこれからも向日葵のことを守っていくよ」
「ありがとう、桔梗」
――ちゅっ。
向日葵は僕の右頬にキスをしてきた。一瞬だったけど、頬から独特の柔らかな感覚と温もりが伝わってきて。みんなの前だから照れくささもあるけど、頬にキスしてくれた嬉しさが勝る。
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