管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ

文字の大きさ
30 / 251
本編

第29話『週明けの学校は。』

しおりを挟む
 4月8日、月曜日。
 美優先輩や風花達と一緒に過ごしていたこともあり、週末の時間はあっという間に過ぎていった。
 今日から授業が始まるので、いよいよ高校生活が本格的にスタートする感じだ。

「はい、お弁当だよ、由弦君。冷たい日本茶を入れた水筒もあるからね」

 制服に着替え終わったときに、美優先輩が小さな手提げを渡してくれた。中にはお弁当と水筒が入っている。

「ありがとうございます」
「午後まであるのは今日が初めてだからね。気合いを入れて作ったよ!」
「嬉しいです。昼休みが楽しみです」
「楽しみにしていてね。去年はたまにしか作らなかったの。購買部とか学校近くのコンビニでパンやおにぎりを買ったり、食堂で食べたりすることが多くて。2年生の生活に慣れてきたら、たまにお弁当を作るね」
「分かりました。ありがとうございます。俺も高校生活が慣れてきたら、先輩にお弁当を作りたいと思います。そのときには言いますね」
「うん! ありがとう」

 高校生活に慣れてからとは言ったけど、今月中……平成の間にお弁当を一度作ってみたいな。
 ――ピンポーン。
 俺がモニターを確認すると、風花と花柳先輩の姿が映っていた。

『美優、迎えに来たよ!』
『美優先輩、由弦。一緒に行きましょう』
「ええ。すぐに行きます。……行きましょうか、美優先輩」
「そうだね。行ってきます! 由弦君」
「行ってきます、美優先輩」

 これから一緒に行くのに「行ってきます」と言葉を掛け合うのは変な感じがするけど……悪くはない。
 美優先輩と一緒に外に出ると、そこには風花と花柳先輩が。

「おはよう、瑠衣ちゃん、風花ちゃん」
「おはようございます。風花、花柳先輩」
「おはようございます」
「おはよう。……2人とも、色違いの手提げを持っちゃって」
「ふふっ、授業初日だしお弁当を作ったの」
「へえ、そうなんだぁ。いいねぇ、桐生君」

 そう言うと、花柳先輩は俺に向けて冷たい笑顔を見せてくる。何だ? お昼になったらおかずを少しよこせってことか?

「楽しみだなぁ、由弦」
「……ちょっと食べるつもりなんだね、風花」

 俺がそう問いかけると風花は思いっきり頷いた。こんなにも正直だと、全く嫌だと思わないな。
 俺達は4人で学校に向かって歩き始める。もし、風花の入部する水泳部に朝練がなかったら、こうやって登校するのが普通になっていくのかな。
 学校に近づくにつれて、陽出学院の制服を着た生徒が多くなってきて。金曜日に比べて、こちらをチラチラと見る生徒が多い気がする。
 陽出学院に到着すると……やっぱり、結構な数の生徒がこっちの方を見てきているな。中には好奇な視線を向ける生徒もいて。霧嶋先生や大宮先生が家に来た時点でこうなることは覚悟していた。

「どうやら、美優先輩と俺のことが学校中に広まっているみたいですね」
「そうだね。思ったよりも早いだけで、こういう日はいずれ来ると思ってた。だから、由弦君は特に罪悪感とか抱かなくていいんだよ。あの告白のときの対応次第では……って考えているかもしれないけど」
「……はい」

 美優先輩には考えていることが見抜かれているんだな。

「何かあったら連絡をするようにしようね、由弦君」
「分かりました」
「美優のことはあたしに任せて」
「クラスにいるときは、由弦のことを気に掛けるようにします。こっちには奏や加藤君、霧嶋先生もいますけど」
「ありがとう、風花」
「……クラスメイトで、友人で、隣人でもある人が困るのが嫌なだけよ。それに、可愛くて優しい美優先輩が関わっているから。本当にそれだけなんだから」

 風花は俺のことは一切見ることなく、照れくさそうな様子でそう言った。そんな風花の優しさは既に受け取っているよ。
 多くの生徒からの視線を浴びる中、俺達は第1教室棟の中に入る。
 階段を上り、4階で美優先輩や花柳先輩と別れて、俺は風花と一緒に1年3組の教室へと向かった。
 すると、金曜日のときのように何人ものクラスメイトが、興奮した様子で俺達のところにやってくる。

「なあ、桐生。あの有名な白鳥先輩と一緒に住んでるって本当なのかよ!」
「一緒に登下校するところを見た人もいるし、日曜日には風花ちゃんと一緒にショッピングセンターにいるところを見た子もいたって!」
「去年1年間で、何人もの男子を振ってきた先輩と楽しくできるなんて凄いよ!」
「白鳥先輩と一緒にあけぼの荘を管理してるとも聞いたぜ!」

 誤解しているヤツも中にはいるけど、美優先輩と俺が一緒に住んでいることについて悪く考えている生徒は今のところはあまりいないようだ。

「みんな、落ち着いて。話が広がっているから言うけど、引っ越しのときに色々とあって、美優先輩の家に住まわせてもらっているんだ。そんな俺らを見て付き合っているように見えるかもしれないけど、そうじゃないからな。ちゃんとした生活を送るように心がけてる。それは霧嶋先生にも伝えたことだ。みんなもそれを覚えておいてくれると嬉しいな。あと、美優先輩に迷惑を掛けないようお願いするよ」
「隣人であるあたしからもお願いするわ」

 風花そう言ってくれるのは心強い。風花が隣に住んでおり、クラスメイトであることはとても大きいと改めて思う。
 とりあえず、これで少しでも落ち着くといいんだけど。そんなことを考えながら自分の席へ向かう。

「おはよう、桐生」
「おはよう」
「桐生が白鳥先輩と住んでいること、随分と広まってるよな。俺は誰にも話していないし、金曜日のあの告白が原因なのかな」
「多分な。ショックで、あの男子生徒が友人などに話したんじゃないかって思ってる。職員の間にも広まっていて、土曜日に霧嶋先生と美優先輩のクラス担任の大宮先生が家に来たよ。ざっくりと事情は話して、一緒に住んでいることは了承してもらった」
「そっか。それぞれの担任に事情を伝えてあれば、ひとまずは安心だな」
「……そうだね」

 もし職員会議などで話題になったとしても、霧嶋先生と大宮先生の方から話しておくとは言ってくれた。
 ――プルルッ。
 スマートフォンが鳴っているので確認してみると、美優先輩からメッセージが届いていた。

『そっちはどう? 私はクラスの子に由弦君のことを色々と訊かれたよ。訳あって一緒に住んでるって話しておいたから。付き合ってないってちゃんと言った!』

 やっぱり、美優先輩のクラスでも同居のことが話題になっているのか。付き合っていないのは事実だけど、それをちゃんと言ったとメッセージに書かれると、何とも言えない気分になるな。

『分かりました。こっちも話題になってます。俺の方も色々とあって、美優先輩と住んでいると伝えておきました。そうしたら、少しは落ち着きました』

 とりあえず、こう返信をしておけば大丈夫かな。
 それから程なくして、霧嶋先生が教室にやってきた。今日のスーツ姿がよく似合っている。そんな先生と朝礼が始まる前に目が合った気がした。
 今日から授業が始まるので頑張るように。予習と復習はしっかりやってねという旨の朝礼が終わると、霧嶋先生が俺のところにやってきた。

「金曜日以上に、あなたと白鳥さんのことが学校中に広まっているわ。職員の間で話題になっていたから、成実さんと一緒に事情は説明しておいたから」
「そうですか。ありがとうございます」
「あの、霧嶋先生。桐生が白鳥先輩と一緒に住んでいることで、2人に何か処分が下るってことはないですよね?」
「今のところ、その心配はないわ、加藤君。高校生としての節度を持って暮らしていけばね。あと、定期的に私や成実さん……白鳥美優さんのいるクラス担任が話を聞いたり、家庭訪問したりするつもりだから」
「そうですか。それなら一安心です」

 加藤は落ち着いた笑みを浮かべて俺のことを見ると、一度頷いた。美優先輩や俺のことを心配してくれる友人が高校でできて、俺は幸せ者だな。

「では、私はこれで。2人とも授業をしっかりと受けるように。特に私の現代文の授業はね。あと、私が顧問をしている文芸部は月曜日と木曜日だから。もし良かったら遊びに来て。特に部活について考え中の桐生君は」

 霧嶋先生はそう言うと、口元だけ笑って教室を後にした。
 この前配られた時間割が壁に貼ってあるのでそれを見てみると、現代文と古典の2つを担当しているので授業でも霧嶋先生と会うのが一番多い。毎日1回はある。特に先生の授業は気を抜かずにやらないと。


 そして、陽出学院での高校の授業が始まる。
 ただ、各科目初回だったこともあってか、担当する先生の自己紹介や学生時代の思い出について話されたり、科目の全体的な説明をされたりしただけで全然キツくなかった。担任の霧嶋先生の現代文を除いて。
 あと、昼休みは美優先輩と花柳先輩が1年3組の教室に遊びに来て、6人でお昼ご飯を食べた。
 また、霧嶋先生が教室にやってきて、テレビを点けた。先生曰く、部活説明会の時間がない代わりに、今日から来週の金曜日まで、昼休みに部活や同好会の紹介映像を流すらしい。美優先輩は料理部の紹介映像に出ているとのこと。
 美優先輩が作ってくれたお弁当はとても美味しかったな。朝の宣言通り、風花におかずを少し取られたけど。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。  ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。  しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、 「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」  と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。  大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!  ※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)  ※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

処理中です...