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続編
第10話『そうだ、旅行に行こう。』
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「みんな、今回もどうもありがとう」
掃除や洗濯、本などの整理が終わってすぐ、霧嶋先生は俺達の分の紅茶を淹れてくれた。それと、チョコレートマシュマロを出してくれる。昨日の仕事帰りに、近くのスーパーで購入したそうだ。
「紅茶とても美味しいです」
「ですね、美優先輩。チョコレートのマシュマロも美味しいですよ」
「どれどれ……うんっ! 甘くて美味しいね!」
掃除や洗濯などをして疲れたのか、美優先輩と風花はマシュマロをパクパク食べている。そんな2人を微笑ましいと思いながら、俺も紅茶を一口飲む。
「美味しいです」
「良かったわ。ほっとした。自分以外の人が飲むと思うと、淹れるのに緊張してしまって。濃さとか熱さとか」
「分かります。そういえば、霧嶋先生って普段は職員室で紅茶とかは飲まれるんですか?」
「ええ、飲むこともあるわ。ただ、昔は紅茶が一番好きだったのだけれど、今は日本茶やコーヒーの方が好きになったわ」
「そうなんですか。俺は……静岡出身ということもあって、小さい頃は日本茶が一番好きで。今はコーヒーです。もちろん、紅茶も好きですよ」
「そうなの。……みんなが美味しいって言ってくれて嬉しいわ」
霧嶋先生はそう言うと紅茶を一口飲んで、穏やかな笑みを浮かべた。学校でもこういう表情を見せれば、もっと人気が出そうな気がする。
掃除や本などの整理をしたから、部屋の中がとても綺麗になった。あと、心なしか部屋が広く感じられる。
「一佳先生。今度こそ、ゴミ箱はあふれそうになったらゴミ袋に入れて、本も定期的に整理するよう心がけてくださいね。洗濯物も、まずは放置しないようにする癖をつけましょう」
「分かったわ」
「これからも定期的にチェックしに来ますね」
「……わ、分かったわ」
はあっ、と霧嶋先生はため息をつく。教師として、教え子に色々と注意されるのが心苦しいのかも。キッチンは以前よりもマシになっていたので、きっと部屋の方も少しずつ良くなっていくだろう。
「今日も3人に掃除とかを手伝ってもらったし、特に桐生君は2匹もGを駆除してくれたから、何かいいご褒美をあげないといけないわね」
「ご褒美ですか! ゴールデンウィークなのでゴールデンなご褒美がいいです!」
「もう、風花ちゃんったら。ただ、ご褒美って言われるとワクワクしちゃうよね」
風花も美優先輩も興奮気味。
正直、俺もご褒美と言われると、どんなものなのか期待してしまう。それがこの紅茶とチョコレートマシュマロだと言われてもいいけど。
「……そうだ」
何か思いついたのか、霧嶋先生ははっとした表情になる。
「あなた達、このゴールデンウィークの予定はどうなっているかしら?」
「由弦君と私はデートしたいと話しています。あとは3人で元号が令和になったら近所の神社に行って、元号初詣をしようってことになってます」
「あたしも今のところ決まっているのは元号初詣と、明日、水泳部の友達と遊ぶくらいですね」
「そうなの。それなら誘うことができそうね。実は一昨日、両親からホテルの宿泊券が届いて」
「旅行ですか!」
「わーい!」
美優先輩と風花は満面の笑みを浮かべて、2人でハイタッチしている。旅行に誘われたら嬉しい気持ちにもなるか。
「年明けにあった地元のくじ引きで当たったけれど、すっかり忘れていたみたいで。期限がこのゴールデンウィークまでなの。2泊3日で6名までOKのチケットだから、お世話になっている先生や親しくしている生徒と一緒に行きなさいということで私に送ってきて。結局、誰にも言えなかったのだけれど」
「そうだったんですか。てっきり、大宮先生には話していると思っていました」
「以前、ここに遊びに来たとき、成実さんは家でゆっくりする方が好きなタイプだって言っていたから。ただ、お風呂好きらしいし、温泉のあるホテルだから誘ったら喜ばれるかも」
「成実先生も誘ってみましょうよ。私から訊いてみましょうか?」
「ありがとう。ただ、成実さんには私から訊いてみるわ」
霧嶋先生はスマホを手に取り、大宮先生に電話をかける。
「一佳先生と風花ちゃん、由弦君、私は確定。成実先生も行くとしたら残りは1人か。瑠衣ちゃんを誘いたいと思うんだけど、由弦君や風花ちゃんはどうかな?」
「瑠衣先輩も一緒ならより楽しそうです!」
「花柳先輩であれば俺もかまいません」
「じゃあ、さっそく訊いてみようっと。……あっ、瑠衣ちゃん?」
美優先輩も花柳先輩に電話をかけている。
あと、いつの間にか俺も行くことが確定しているのか。女性ばかりの中で男が1人で大丈夫なのだろうか。美優先輩と一緒だからOKということなのか? 先輩と一緒に旅行に行くことができるというのは嬉しいけれど。
「成実さんは5月になってからであればいつでも大丈夫みたい」
「瑠衣ちゃんもいつでも大丈夫みたいです」
「分かった。6人のメンバーが決まったところで、招待チケットに書かれているホテルに連絡してみるわ。もし、どこの日も満室だったらごめんなさい」
すると、霧嶋先生は仕事用のデスクの引き出しから封筒を取り出す。その中からチケットを取り出し、さっそく電話をかける。
「部屋が空いているといいね、由弦君、風花ちゃん」
「ですね! 6人で旅行に行きたいなぁ」
「旅行は嬉しいですけど、男の俺が一緒でも大丈夫でしょうか」
「私が許可するよ、由弦君。むしろ、由弦君と一緒がいいな」
「美優先輩っていう恋人がいれば大丈夫でしょ。何か変なことをしたら瑠衣先輩と一緒にお仕置きすればいいんだし」
笑顔でお仕置きって言われるととても恐いな。風花だけじゃなくて花柳先輩と一緒ってところがまた。旅行中は変な事態にならないように気を付けなければ。
「分かりました。では、その形で予約をお願いできますでしょうか。……はい。ありがとうございます。失礼します」
そう言うと、霧嶋先生は通話を切った。
「運良く、5月3日から2泊で予約を取ることができたわ。バイキング形式の夕食と朝食付きよ」
「やったー! さすがです! 一佳先生!」
「ありがとうございます! 瑠衣ちゃんにさっそく伝えないと!」
「私も成実さんに伝えましょう」
3人とも、とても嬉しそうな様子を浮かべている。きっと、花柳先輩や大宮先生も旅行に行けることを知ったら喜びそうだ。
ただ、旅行に行けるのはいいけど、一番大事なことを訊かないと。
「霧嶋先生。予約はできたとのことですが、何部屋予約できたんですか?」
「3部屋。ただ、直前に予約したこともあってか、3部屋とも同じ形式ではなくて、ツインが2部屋、ダブルが1部屋になるわ。普段から一緒に住んでいて、恋人として付き合い始めた桐生君と白鳥さんがダブルがいいと思っているのだけれど」
「あたしもそれに賛成です、一佳先生」
「……俺もそれがいいかなと思っていました」
それに、ダブルベッドをいずれは買おうと考えているので、参考に美優先輩と一緒にダブルベッドで寝てみたい。
俺1人か美優先輩と2人という部屋割りができる形で良かった。これなら俺が一緒に旅行に行っても大丈夫そうだな。
「うん、またね。瑠衣ちゃん。……瑠衣ちゃんも3日から行けるとのことです」
「旅行に行く6人のメンバーも決定ね。聞こえていたかもしれないけれど、ツインを2部屋、ダブルを1部屋予約したわ。同棲している白鳥さんと桐生君がダブルがいいと考えているのだけれど、白鳥さんはどうかしら? 桐生君はそれがいいと言っていて」
「私もダブルがいいです。ふふっ、由弦君と一緒に旅行ができて、ホテルでは同じベッドで寝ることができるなんて。もう幸せでいっぱいだよ」
美優先輩は頬を赤くして、言葉通りの幸せな笑みを浮かべている。
2人きりではないものの、美優先輩と初めて旅行に行くんだ。思いっきり楽しみたいな。
「そういえば、一佳先生。あたし達が行くホテルって何ていう名前のホテルなんですか? どこにあるんでしょう?」
「ええと……御立リゾートホテルというホテル。住所は茨城県の御立市ってところにあるわ。記憶が正しければ、茨城県の北東部にある市だったはず」
「そうなんですか! 旅行にはいい距離のところですね」
「茨城県ってことは、美優先輩はご存知ですか?」
「うん。先生の言うように、御立市は県の北東部にある海沿いの市でね。このホテルも私が小学生のときに家族で行ったことがあるよ。立派なホテルだったな。ただ、そのときは家族全員で和室に泊まったんだ。あと、夏休みだったから、ホテルの前にある浜辺で海水浴をしたり、ホテルが開催した夏祭りを楽しんだりしたなぁ」
「そうなんですか」
美優先輩はご家族と一緒に行ったことがあるんだ。そんな人がいるのは、一緒に旅をする上で心強いな。
「今、スマホで公式サイトを見ていますけど、御立市の中ではかなり人気のホテルみたいですね。今の時期は海に入ることはできませんが、客室は全室オーシャンビュー。地元の御立温泉に入ることができるんですね。食事はバイキング形式で、地元の海の幸を楽しむことができるみたいです。あと……あっ、1年中入ることのできる屋内プールもあるじゃないですか!」
水泳部に入部しているだけあって、屋内プールがあることに風花はテンションが上がっている。
「水泳部の風花ちゃんには嬉しい施設だね。そういえば、家族で行ったときも屋内のプールに入ったっけ」
「そうなんですか! 美優先輩、せっかくですから、瑠衣先輩も一緒に水着を買いに行きましょう!」
「そうだね。去年の夏に買った水着……多分、着ることができなくなっていると思うし」
美優先輩は照れ笑いしながらそう言う。つい先日、サイズが合わなくなったから新しい下着を買いに行ったもんな。美優先輩の水着姿を見られるのは楽しみだ。
泳ぐのは去年の夏以来なので、全然ダメになっているかもしれない。6月からは水泳の授業もあるし、それに向けて練習するいい機会だ。
「水着か。家にあるけれど最後に着たのは学生のときだから、新しく買おうかしら」
「一佳先生の水着姿楽しみです! あと、成実先生って脱いだら凄そう……」
「ふふっ、旅行の楽しみが増えたね、風花ちゃん。あと、旅先が茨城なので、帰りに私の実家に寄ってもいいですか? ちくば市というところなのですが。旅行のお土産を渡したいですし、恋人の由弦君のことを家族に会わせたくて。わがままになってしまいますが……」
「そうですね。実際に会って、ご挨拶したいです」
「先輩には妹さんが2人いると聞いていますので、会ってみたいです!」
「私もかまわないわ。恋人を家族に紹介するのは大事なことだし。交通手段はレンタカーにしようと考えていたし、そこら辺の融通は利くから。成実さんも花柳さんも、きっといいと言ってくれるでしょう」
「ありがとうございます!」
美優先輩は嬉しそうな表情を浮かべる。ゴールデンウィーク中の案として、帰省も考えていたからな。
美優先輩のご家族に会うのは緊張するけど、恋人として早いうちに一度は顔を合わせた方がいい。今年のゴールデンウィークは色々な意味で忘れられないものになりそうだ。
掃除や洗濯、本などの整理が終わってすぐ、霧嶋先生は俺達の分の紅茶を淹れてくれた。それと、チョコレートマシュマロを出してくれる。昨日の仕事帰りに、近くのスーパーで購入したそうだ。
「紅茶とても美味しいです」
「ですね、美優先輩。チョコレートのマシュマロも美味しいですよ」
「どれどれ……うんっ! 甘くて美味しいね!」
掃除や洗濯などをして疲れたのか、美優先輩と風花はマシュマロをパクパク食べている。そんな2人を微笑ましいと思いながら、俺も紅茶を一口飲む。
「美味しいです」
「良かったわ。ほっとした。自分以外の人が飲むと思うと、淹れるのに緊張してしまって。濃さとか熱さとか」
「分かります。そういえば、霧嶋先生って普段は職員室で紅茶とかは飲まれるんですか?」
「ええ、飲むこともあるわ。ただ、昔は紅茶が一番好きだったのだけれど、今は日本茶やコーヒーの方が好きになったわ」
「そうなんですか。俺は……静岡出身ということもあって、小さい頃は日本茶が一番好きで。今はコーヒーです。もちろん、紅茶も好きですよ」
「そうなの。……みんなが美味しいって言ってくれて嬉しいわ」
霧嶋先生はそう言うと紅茶を一口飲んで、穏やかな笑みを浮かべた。学校でもこういう表情を見せれば、もっと人気が出そうな気がする。
掃除や本などの整理をしたから、部屋の中がとても綺麗になった。あと、心なしか部屋が広く感じられる。
「一佳先生。今度こそ、ゴミ箱はあふれそうになったらゴミ袋に入れて、本も定期的に整理するよう心がけてくださいね。洗濯物も、まずは放置しないようにする癖をつけましょう」
「分かったわ」
「これからも定期的にチェックしに来ますね」
「……わ、分かったわ」
はあっ、と霧嶋先生はため息をつく。教師として、教え子に色々と注意されるのが心苦しいのかも。キッチンは以前よりもマシになっていたので、きっと部屋の方も少しずつ良くなっていくだろう。
「今日も3人に掃除とかを手伝ってもらったし、特に桐生君は2匹もGを駆除してくれたから、何かいいご褒美をあげないといけないわね」
「ご褒美ですか! ゴールデンウィークなのでゴールデンなご褒美がいいです!」
「もう、風花ちゃんったら。ただ、ご褒美って言われるとワクワクしちゃうよね」
風花も美優先輩も興奮気味。
正直、俺もご褒美と言われると、どんなものなのか期待してしまう。それがこの紅茶とチョコレートマシュマロだと言われてもいいけど。
「……そうだ」
何か思いついたのか、霧嶋先生ははっとした表情になる。
「あなた達、このゴールデンウィークの予定はどうなっているかしら?」
「由弦君と私はデートしたいと話しています。あとは3人で元号が令和になったら近所の神社に行って、元号初詣をしようってことになってます」
「あたしも今のところ決まっているのは元号初詣と、明日、水泳部の友達と遊ぶくらいですね」
「そうなの。それなら誘うことができそうね。実は一昨日、両親からホテルの宿泊券が届いて」
「旅行ですか!」
「わーい!」
美優先輩と風花は満面の笑みを浮かべて、2人でハイタッチしている。旅行に誘われたら嬉しい気持ちにもなるか。
「年明けにあった地元のくじ引きで当たったけれど、すっかり忘れていたみたいで。期限がこのゴールデンウィークまでなの。2泊3日で6名までOKのチケットだから、お世話になっている先生や親しくしている生徒と一緒に行きなさいということで私に送ってきて。結局、誰にも言えなかったのだけれど」
「そうだったんですか。てっきり、大宮先生には話していると思っていました」
「以前、ここに遊びに来たとき、成実さんは家でゆっくりする方が好きなタイプだって言っていたから。ただ、お風呂好きらしいし、温泉のあるホテルだから誘ったら喜ばれるかも」
「成実先生も誘ってみましょうよ。私から訊いてみましょうか?」
「ありがとう。ただ、成実さんには私から訊いてみるわ」
霧嶋先生はスマホを手に取り、大宮先生に電話をかける。
「一佳先生と風花ちゃん、由弦君、私は確定。成実先生も行くとしたら残りは1人か。瑠衣ちゃんを誘いたいと思うんだけど、由弦君や風花ちゃんはどうかな?」
「瑠衣先輩も一緒ならより楽しそうです!」
「花柳先輩であれば俺もかまいません」
「じゃあ、さっそく訊いてみようっと。……あっ、瑠衣ちゃん?」
美優先輩も花柳先輩に電話をかけている。
あと、いつの間にか俺も行くことが確定しているのか。女性ばかりの中で男が1人で大丈夫なのだろうか。美優先輩と一緒だからOKということなのか? 先輩と一緒に旅行に行くことができるというのは嬉しいけれど。
「成実さんは5月になってからであればいつでも大丈夫みたい」
「瑠衣ちゃんもいつでも大丈夫みたいです」
「分かった。6人のメンバーが決まったところで、招待チケットに書かれているホテルに連絡してみるわ。もし、どこの日も満室だったらごめんなさい」
すると、霧嶋先生は仕事用のデスクの引き出しから封筒を取り出す。その中からチケットを取り出し、さっそく電話をかける。
「部屋が空いているといいね、由弦君、風花ちゃん」
「ですね! 6人で旅行に行きたいなぁ」
「旅行は嬉しいですけど、男の俺が一緒でも大丈夫でしょうか」
「私が許可するよ、由弦君。むしろ、由弦君と一緒がいいな」
「美優先輩っていう恋人がいれば大丈夫でしょ。何か変なことをしたら瑠衣先輩と一緒にお仕置きすればいいんだし」
笑顔でお仕置きって言われるととても恐いな。風花だけじゃなくて花柳先輩と一緒ってところがまた。旅行中は変な事態にならないように気を付けなければ。
「分かりました。では、その形で予約をお願いできますでしょうか。……はい。ありがとうございます。失礼します」
そう言うと、霧嶋先生は通話を切った。
「運良く、5月3日から2泊で予約を取ることができたわ。バイキング形式の夕食と朝食付きよ」
「やったー! さすがです! 一佳先生!」
「ありがとうございます! 瑠衣ちゃんにさっそく伝えないと!」
「私も成実さんに伝えましょう」
3人とも、とても嬉しそうな様子を浮かべている。きっと、花柳先輩や大宮先生も旅行に行けることを知ったら喜びそうだ。
ただ、旅行に行けるのはいいけど、一番大事なことを訊かないと。
「霧嶋先生。予約はできたとのことですが、何部屋予約できたんですか?」
「3部屋。ただ、直前に予約したこともあってか、3部屋とも同じ形式ではなくて、ツインが2部屋、ダブルが1部屋になるわ。普段から一緒に住んでいて、恋人として付き合い始めた桐生君と白鳥さんがダブルがいいと思っているのだけれど」
「あたしもそれに賛成です、一佳先生」
「……俺もそれがいいかなと思っていました」
それに、ダブルベッドをいずれは買おうと考えているので、参考に美優先輩と一緒にダブルベッドで寝てみたい。
俺1人か美優先輩と2人という部屋割りができる形で良かった。これなら俺が一緒に旅行に行っても大丈夫そうだな。
「うん、またね。瑠衣ちゃん。……瑠衣ちゃんも3日から行けるとのことです」
「旅行に行く6人のメンバーも決定ね。聞こえていたかもしれないけれど、ツインを2部屋、ダブルを1部屋予約したわ。同棲している白鳥さんと桐生君がダブルがいいと考えているのだけれど、白鳥さんはどうかしら? 桐生君はそれがいいと言っていて」
「私もダブルがいいです。ふふっ、由弦君と一緒に旅行ができて、ホテルでは同じベッドで寝ることができるなんて。もう幸せでいっぱいだよ」
美優先輩は頬を赤くして、言葉通りの幸せな笑みを浮かべている。
2人きりではないものの、美優先輩と初めて旅行に行くんだ。思いっきり楽しみたいな。
「そういえば、一佳先生。あたし達が行くホテルって何ていう名前のホテルなんですか? どこにあるんでしょう?」
「ええと……御立リゾートホテルというホテル。住所は茨城県の御立市ってところにあるわ。記憶が正しければ、茨城県の北東部にある市だったはず」
「そうなんですか! 旅行にはいい距離のところですね」
「茨城県ってことは、美優先輩はご存知ですか?」
「うん。先生の言うように、御立市は県の北東部にある海沿いの市でね。このホテルも私が小学生のときに家族で行ったことがあるよ。立派なホテルだったな。ただ、そのときは家族全員で和室に泊まったんだ。あと、夏休みだったから、ホテルの前にある浜辺で海水浴をしたり、ホテルが開催した夏祭りを楽しんだりしたなぁ」
「そうなんですか」
美優先輩はご家族と一緒に行ったことがあるんだ。そんな人がいるのは、一緒に旅をする上で心強いな。
「今、スマホで公式サイトを見ていますけど、御立市の中ではかなり人気のホテルみたいですね。今の時期は海に入ることはできませんが、客室は全室オーシャンビュー。地元の御立温泉に入ることができるんですね。食事はバイキング形式で、地元の海の幸を楽しむことができるみたいです。あと……あっ、1年中入ることのできる屋内プールもあるじゃないですか!」
水泳部に入部しているだけあって、屋内プールがあることに風花はテンションが上がっている。
「水泳部の風花ちゃんには嬉しい施設だね。そういえば、家族で行ったときも屋内のプールに入ったっけ」
「そうなんですか! 美優先輩、せっかくですから、瑠衣先輩も一緒に水着を買いに行きましょう!」
「そうだね。去年の夏に買った水着……多分、着ることができなくなっていると思うし」
美優先輩は照れ笑いしながらそう言う。つい先日、サイズが合わなくなったから新しい下着を買いに行ったもんな。美優先輩の水着姿を見られるのは楽しみだ。
泳ぐのは去年の夏以来なので、全然ダメになっているかもしれない。6月からは水泳の授業もあるし、それに向けて練習するいい機会だ。
「水着か。家にあるけれど最後に着たのは学生のときだから、新しく買おうかしら」
「一佳先生の水着姿楽しみです! あと、成実先生って脱いだら凄そう……」
「ふふっ、旅行の楽しみが増えたね、風花ちゃん。あと、旅先が茨城なので、帰りに私の実家に寄ってもいいですか? ちくば市というところなのですが。旅行のお土産を渡したいですし、恋人の由弦君のことを家族に会わせたくて。わがままになってしまいますが……」
「そうですね。実際に会って、ご挨拶したいです」
「先輩には妹さんが2人いると聞いていますので、会ってみたいです!」
「私もかまわないわ。恋人を家族に紹介するのは大事なことだし。交通手段はレンタカーにしようと考えていたし、そこら辺の融通は利くから。成実さんも花柳さんも、きっといいと言ってくれるでしょう」
「ありがとうございます!」
美優先輩は嬉しそうな表情を浮かべる。ゴールデンウィーク中の案として、帰省も考えていたからな。
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