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特別編3
第9話『おやすみ』
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「ねむい……」
美優先輩と一緒に食事の後片付けを始めてからすぐ、芽衣ちゃんのそんな声が聞こえた。リビングの方を見ると、芽衣ちゃんはウトウトし、風花に寄り掛かっている。
「芽衣ちゃん、お昼ご飯を食べて眠くなったんでしょうね」
「そうだね。それに、今日は朝から理恵ちゃんと一緒にここまで来たしね。おままごとやトランプで遊んだときも張り切っていたから、今になって一気に眠気が来たのかも。あと、保育園にはお昼寝の時間もあるし。由弦君、後片付けは瑠衣ちゃんと私でやるから、寝室に私のふとんを敷いて、風花ちゃんと一緒に芽衣ちゃんを寝かせてあげて。瑠衣ちゃん、由弦君と後片付けを交代してくれる?」
「分かったわ。桐生君、風花ちゃんと一緒に芽衣ちゃんのことを頼んだわよ」
「分かりました」
リビングに向かおうとしたとき、花柳先輩が右手を挙げてきた。バトンタッチってことかな。ポンッ、と先輩にハイタッチしてリビングへと向かう。
「芽衣ちゃん。ふとんを敷いてあげるから、お昼寝しようか」
「……うん」
「ふとんよろしくね。メイメイ、お昼寝する前にお手洗いに行こうか」
「……わかった」
風花と一度頷き合った後、寝室に行って美優先輩のふとんを敷く。
芽衣ちゃんにとって、いつもとは違う寝具で寝ることになるけど、ちゃんと眠れるかな。眠たそうにしていたので大丈夫だとは思うけど。
「こっちだよ、メイメイ」
風花と手を繋いで寝室に入ってくる芽衣ちゃん。お手洗いに行った後だからか、さっきよりは目が冴えているように見える。
手を繋いでいるので、芽衣ちゃんは風花と一緒にふとんの中に入る。ふとんが気持ちいいのか。それとも風花と一緒にふとんに入ったからなのか。芽衣ちゃんは柔らかな笑みを浮かべる。
「おふとんきもちいい。みゆちゃんのにおいがする……」
「美優先輩のふとんだからね」
「……ゆづくんのにおいもちょっとする」
「……一緒に寝ることがあるからね」
「へえ、そうなんだねぇ。仲がよろしいこと」
ニヤニヤしながら俺を見る風花。
今まで寝ていたベッドを美優先輩の実家に送ってから、たまに先輩のふとんにお邪魔することがあったからな。それで俺の匂いも感じるのだろう。
「ふうちゃんといっしょだから、あったかくてきもちいい」
「そうだね。あたしも気持ちいいよ」
「えへへっ。ゆづくん、ふうちゃん、おねがいをいってもいい?」
「何かな、芽衣ちゃん」
「どんなこと?」
「……てーへんじんのきょく、きかせてほしい」
「てーへんじん……ああ、低変人さんの曲か」
まさか、芽衣ちゃんの口から低変人さんの名前が出るとは。御両親や保育園の先生の影響でファンになったのかな。
「保育園に通う子にも知られているなんて、低変人さんは凄いね。メイメイ、何ていう名前の曲が聴きたいのかな?」
「『おやすみ』っていうきょく。ほいくえんでおひるねするとき、せんせいがいつもきかせてくれるの。そのきょくをきくと、きもちよくねれるの」
「そうなんだ」
そういえば、そんな曲もあったな。確か、オルゴールの音だけで作られた曲だった気がする。
「芽衣ちゃん、ちょっと待っててね」
俺はリビングにスマホを取りに行く。その際、キッチンをチラッと見ると、2人は洗った食器をふきんで拭いているところだった。
寝室に戻り、YuTubuに公開されている低変人さんの『おやすみ』を流し始める。記憶通り、オルゴールのみの音色で作られた優しい曲だ。
「この曲かな、芽衣ちゃん」
「……そうだよ。このきょく、すき。おやすみなさい、ゆづくん、ふうちゃん……」
「おやすみ、芽衣ちゃん」
「メイメイ、おやすみ」
「……うん」
芽衣ちゃんはゆっくりと目を瞑る。いつもと違う場所だけど、いい夢を見られるといいな。
「そういえば、この曲、受験勉強の休憩中に聴いたな。優しいメロディーで癒されるんだよね。ふとんに入っているからか、あたしも眠くなってきちゃった」
ふああっ、と風花は可愛らしくあくびをする。
「俺の枕でいいなら貸すけど」
「……お願いします」
クローゼットの中から俺の枕を取り出し、風花に渡す。
風花は俺の枕を美優先輩の枕とくっつけ、ゆっくりと頭を乗せた。
「……由弦のいい匂いがする」
穏やかな笑みを浮かべ、俺のことを見ながら言う風花。そんな風花に不覚にもキュンときてしまった。
「じゃあ、あたしも寝るね」
「ああ。おやすみ」
「おやすみ。あたし達が寝ている間に変なことしないでよね」
「そこは安心してくれ」
「……うん。じゃあ、おやすみなさい」
穏やかな笑顔のまま風花はそう言い、目を閉じる。
「すぅ……」
いつもと同じように、低変人さんの『おやすみ』を聴けたからなのか、芽衣ちゃんは可愛い寝息を立て始める。寝顔が凄くかわいい。天使のようだ。
まさか、低変人さんの曲で眠れるとは。もし、そういう曲がなくて、芽衣ちゃんがなかなか眠れないようなら、俺が子守歌を疲労するつもりだったけど。もちろん、歌の効果は心愛で実証済み。俺が歌うと、大抵は30秒以内で眠ってくれる。
さっき、お昼ご飯を食べているときに理恵さんから連絡が来て、当初の予定通り仕事が夕方までかかってしまうそうだ。理恵さんがここに戻ってくるまで、芽衣ちゃんを寝かせるのもありかな。
「うんっ……」
さっき眠くなってきたと言っていただけあって、風花も寝始めた。芽衣ちゃんに負けず劣らずの可愛らしい寝顔だ。保育園では他の園児が寝ているだろうし、風花が添い寝するのはいいことだと思う。もし、芽衣ちゃんが先に起きても、誰かが側にいれば安心できるだろうから。
7分以上ある『おやすみ』が終わると、風花と芽衣ちゃんの寝息のハーモニーがよりはっきりと聞こえてくる。可愛らしい光景なので、スマホで写真を撮ってみることに。
――カシャ。
撮影ボタンを押すとそんな音が鳴った。ただ、あまり大きくなかったからか、2人が起きる気配は全くなかった。
「後片付け、終わったわよ」
「芽衣ちゃんの方はどうかな?」
廊下の方に振り返ると、扉の近くに美優先輩と花柳先輩の姿が。眠っている風花と芽衣ちゃんの姿を見て、2人はほんわかとした笑顔に。
「2人とも、お疲れ様です。美優先輩のふとんが気持ちいいのか、低変人さんの『おやすみ』という曲が心地良かったのか、芽衣ちゃんだけじゃなくて風花も一緒に寝始めました」
「ふふっ、そうなんだ。……2人とも幸せそうに寝てるね。風花ちゃん、芽衣ちゃんにメロメロだったもんね」
「そうね。低変人さんの『おやすみ』を聴かせたのは桐生君のアイデア? あの曲、オルゴール曲だからリラックスできるもんね」
「いいえ、芽衣ちゃんの希望で。保育園のお昼寝の時間に先生がかけてくれるんですって。芽衣ちゃんも好きみたいで、気持ち良く眠れるとか」
「へえ、そうなんだ。そういう場で活躍しているのね、あの人の曲は」
凄いなぁ、と花柳先輩は感心している。
『おやすみ』の動画のコメント欄を見ていくと『1歳の娘がすんなりと寝てくれます』など、子供が寝てくれるという旨のコメントがいくつもある。もしかしたら、芽衣ちゃんが通っている保育園以外にも、お昼寝の時間に聴かせる保育園は多いのかもしれない。もちろん、お家でも。
「芽衣ちゃんと風花ちゃんの寝顔可愛いなぁ。写真撮りたくなっちゃう」
「あたしも」
「俺、さっきスマホで撮ったので、2人に送りますよ」
「ありがとう、由弦君」
「ありがとう。じゃあ、2人を起こさないためにも、あたし達はリビングでゆっくりしようか」
「それがいいね」
部屋の電気を消して、俺は美優先輩と花柳先輩と一緒にリビングへ戻る。
リビングに戻り、俺はさっき撮った風花と芽衣ちゃんの寝顔写真を先輩方に送る。これまで撮影した写真を見て、美優先輩の淹れてくれたコーヒーを飲みながら、3人で談笑するのであった。
美優先輩と一緒に食事の後片付けを始めてからすぐ、芽衣ちゃんのそんな声が聞こえた。リビングの方を見ると、芽衣ちゃんはウトウトし、風花に寄り掛かっている。
「芽衣ちゃん、お昼ご飯を食べて眠くなったんでしょうね」
「そうだね。それに、今日は朝から理恵ちゃんと一緒にここまで来たしね。おままごとやトランプで遊んだときも張り切っていたから、今になって一気に眠気が来たのかも。あと、保育園にはお昼寝の時間もあるし。由弦君、後片付けは瑠衣ちゃんと私でやるから、寝室に私のふとんを敷いて、風花ちゃんと一緒に芽衣ちゃんを寝かせてあげて。瑠衣ちゃん、由弦君と後片付けを交代してくれる?」
「分かったわ。桐生君、風花ちゃんと一緒に芽衣ちゃんのことを頼んだわよ」
「分かりました」
リビングに向かおうとしたとき、花柳先輩が右手を挙げてきた。バトンタッチってことかな。ポンッ、と先輩にハイタッチしてリビングへと向かう。
「芽衣ちゃん。ふとんを敷いてあげるから、お昼寝しようか」
「……うん」
「ふとんよろしくね。メイメイ、お昼寝する前にお手洗いに行こうか」
「……わかった」
風花と一度頷き合った後、寝室に行って美優先輩のふとんを敷く。
芽衣ちゃんにとって、いつもとは違う寝具で寝ることになるけど、ちゃんと眠れるかな。眠たそうにしていたので大丈夫だとは思うけど。
「こっちだよ、メイメイ」
風花と手を繋いで寝室に入ってくる芽衣ちゃん。お手洗いに行った後だからか、さっきよりは目が冴えているように見える。
手を繋いでいるので、芽衣ちゃんは風花と一緒にふとんの中に入る。ふとんが気持ちいいのか。それとも風花と一緒にふとんに入ったからなのか。芽衣ちゃんは柔らかな笑みを浮かべる。
「おふとんきもちいい。みゆちゃんのにおいがする……」
「美優先輩のふとんだからね」
「……ゆづくんのにおいもちょっとする」
「……一緒に寝ることがあるからね」
「へえ、そうなんだねぇ。仲がよろしいこと」
ニヤニヤしながら俺を見る風花。
今まで寝ていたベッドを美優先輩の実家に送ってから、たまに先輩のふとんにお邪魔することがあったからな。それで俺の匂いも感じるのだろう。
「ふうちゃんといっしょだから、あったかくてきもちいい」
「そうだね。あたしも気持ちいいよ」
「えへへっ。ゆづくん、ふうちゃん、おねがいをいってもいい?」
「何かな、芽衣ちゃん」
「どんなこと?」
「……てーへんじんのきょく、きかせてほしい」
「てーへんじん……ああ、低変人さんの曲か」
まさか、芽衣ちゃんの口から低変人さんの名前が出るとは。御両親や保育園の先生の影響でファンになったのかな。
「保育園に通う子にも知られているなんて、低変人さんは凄いね。メイメイ、何ていう名前の曲が聴きたいのかな?」
「『おやすみ』っていうきょく。ほいくえんでおひるねするとき、せんせいがいつもきかせてくれるの。そのきょくをきくと、きもちよくねれるの」
「そうなんだ」
そういえば、そんな曲もあったな。確か、オルゴールの音だけで作られた曲だった気がする。
「芽衣ちゃん、ちょっと待っててね」
俺はリビングにスマホを取りに行く。その際、キッチンをチラッと見ると、2人は洗った食器をふきんで拭いているところだった。
寝室に戻り、YuTubuに公開されている低変人さんの『おやすみ』を流し始める。記憶通り、オルゴールのみの音色で作られた優しい曲だ。
「この曲かな、芽衣ちゃん」
「……そうだよ。このきょく、すき。おやすみなさい、ゆづくん、ふうちゃん……」
「おやすみ、芽衣ちゃん」
「メイメイ、おやすみ」
「……うん」
芽衣ちゃんはゆっくりと目を瞑る。いつもと違う場所だけど、いい夢を見られるといいな。
「そういえば、この曲、受験勉強の休憩中に聴いたな。優しいメロディーで癒されるんだよね。ふとんに入っているからか、あたしも眠くなってきちゃった」
ふああっ、と風花は可愛らしくあくびをする。
「俺の枕でいいなら貸すけど」
「……お願いします」
クローゼットの中から俺の枕を取り出し、風花に渡す。
風花は俺の枕を美優先輩の枕とくっつけ、ゆっくりと頭を乗せた。
「……由弦のいい匂いがする」
穏やかな笑みを浮かべ、俺のことを見ながら言う風花。そんな風花に不覚にもキュンときてしまった。
「じゃあ、あたしも寝るね」
「ああ。おやすみ」
「おやすみ。あたし達が寝ている間に変なことしないでよね」
「そこは安心してくれ」
「……うん。じゃあ、おやすみなさい」
穏やかな笑顔のまま風花はそう言い、目を閉じる。
「すぅ……」
いつもと同じように、低変人さんの『おやすみ』を聴けたからなのか、芽衣ちゃんは可愛い寝息を立て始める。寝顔が凄くかわいい。天使のようだ。
まさか、低変人さんの曲で眠れるとは。もし、そういう曲がなくて、芽衣ちゃんがなかなか眠れないようなら、俺が子守歌を疲労するつもりだったけど。もちろん、歌の効果は心愛で実証済み。俺が歌うと、大抵は30秒以内で眠ってくれる。
さっき、お昼ご飯を食べているときに理恵さんから連絡が来て、当初の予定通り仕事が夕方までかかってしまうそうだ。理恵さんがここに戻ってくるまで、芽衣ちゃんを寝かせるのもありかな。
「うんっ……」
さっき眠くなってきたと言っていただけあって、風花も寝始めた。芽衣ちゃんに負けず劣らずの可愛らしい寝顔だ。保育園では他の園児が寝ているだろうし、風花が添い寝するのはいいことだと思う。もし、芽衣ちゃんが先に起きても、誰かが側にいれば安心できるだろうから。
7分以上ある『おやすみ』が終わると、風花と芽衣ちゃんの寝息のハーモニーがよりはっきりと聞こえてくる。可愛らしい光景なので、スマホで写真を撮ってみることに。
――カシャ。
撮影ボタンを押すとそんな音が鳴った。ただ、あまり大きくなかったからか、2人が起きる気配は全くなかった。
「後片付け、終わったわよ」
「芽衣ちゃんの方はどうかな?」
廊下の方に振り返ると、扉の近くに美優先輩と花柳先輩の姿が。眠っている風花と芽衣ちゃんの姿を見て、2人はほんわかとした笑顔に。
「2人とも、お疲れ様です。美優先輩のふとんが気持ちいいのか、低変人さんの『おやすみ』という曲が心地良かったのか、芽衣ちゃんだけじゃなくて風花も一緒に寝始めました」
「ふふっ、そうなんだ。……2人とも幸せそうに寝てるね。風花ちゃん、芽衣ちゃんにメロメロだったもんね」
「そうね。低変人さんの『おやすみ』を聴かせたのは桐生君のアイデア? あの曲、オルゴール曲だからリラックスできるもんね」
「いいえ、芽衣ちゃんの希望で。保育園のお昼寝の時間に先生がかけてくれるんですって。芽衣ちゃんも好きみたいで、気持ち良く眠れるとか」
「へえ、そうなんだ。そういう場で活躍しているのね、あの人の曲は」
凄いなぁ、と花柳先輩は感心している。
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「芽衣ちゃんと風花ちゃんの寝顔可愛いなぁ。写真撮りたくなっちゃう」
「あたしも」
「俺、さっきスマホで撮ったので、2人に送りますよ」
「ありがとう、由弦君」
「ありがとう。じゃあ、2人を起こさないためにも、あたし達はリビングでゆっくりしようか」
「それがいいね」
部屋の電気を消して、俺は美優先輩と花柳先輩と一緒にリビングへ戻る。
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