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特別編6
第5話『あの子にも先生達にも』
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サブロウに戯れていると、防災無線チャイムのメロディーが聞こえてくる。このチャイムは正午と夕方の5時に鳴る。ということは、もう午後5時なのか。
美優先輩達もこのチャイムの音を聞いて、今が午後5時であることを知る。メロディーが鳴り終わると亜衣さんが、
「夕飯のお買い物をしないといけないので、そろそろお暇しますね」
と言った。なので、それからすぐに亜衣さんと花柳先輩は一緒に帰っていった。明日は麻子さんと風花のお母さんが三者面談のために伯分寺に来るので、亜衣さんは明日も午後に遊びに来るという。
俺達はみやび様のアニメを第4話の序盤から見始める。3人になったので、俺、美優先輩、母さんの並びでソファーに座りながら。美優先輩は俺だけじゃなくて、母さんともみやび様のことで話が盛り上がっている。恋人が自分の母親と仲良く話しているのはいいことだ。
第4話を見終わり、第5話のAパートを見ているときだった。
――ピンポーン。
インターホンが鳴る。壁に掛かっている時計で時刻を確認すると、今は午後5時半過ぎか。時間的に一番可能性がありそうなのは風花かな。部活から帰ったら、母さんに会いたいと言っていたし。
「俺が出ますね」
「ありがとう、由弦君」
扉の近くにあるインターホンのモニターを確認しに行く。画面にはTシャツ姿の風花が映っている。
「おっ、風花か。部活お疲れ」
『ありがとう。由弦のお母さんに会いに来たよ~』
「ああ。すぐに行くよ。……風花です。部活が終わって母さんに会いに来たと」
「風花……ああ、綺麗な金髪の可愛い女の子ね!」
「そうそうその子。ここに連れてくるよ」
俺はリビングから出て、玄関へ向かう。
鍵を解錠して、扉を開けると、そこにはTシャツにハーフパンツという格好の風花が立っていた。一度家に帰って着替えてきたのか。行き先がお隣だから、かなりラフな服装になったのだろう。履いているのもサンダルだし。
俺と目が合うと、風花は持ち前の明るくて可愛い笑顔を見せる。
「風花、いらっしゃい」
「お邪魔します。あと、三者面談お疲れ様。どんな感じだった?」
「中間試験と部活中心に学校生活のことを話した。どっちもこの調子で頑張れって言われてすぐに終わったよ。雑談がメインとも言えるかな。母さんがゴールデンウィークのことでお礼を言ってた」
「そうなんだ。連休は一佳先生と一緒に過ごすことが多かったもんね。メインは雑談か。でも、それは中間試験の成績がとても良かった由弦だからだろうね。あたしは部活はともかく、中間試験のことで何か言われそう。あたし、赤点はなかったけど、数学Bと物理基礎は平均点未満だったから」
不安だなぁ、と風花は苦笑い。
「面談では、中間試験が実施された教科の得点と平均点の一覧を印刷した紙を見せられるんだ。平均点未満の教科は……何か言われるかもしれないな」
「……そっか。教えてくれてありがとう。覚悟ができるよ」
「そうか。明日は頑張れよ。母さんはリビングにいるから、上がって」
「うん! お邪魔します!」
元気な様子でそう言い、風花は家に上がる。
リビングに戻ると、風花が来たからか、美優先輩と母さんがソファーの前で待ち構えていた。なお、Blu-rayの再生は、ヒロインのみやびがアップで映っているシーンで止まっている。
「風花を連れてきました」
「こんにちは、風花ちゃん。部活お疲れ様」
「あらぁ! 実際に見ると本当に可愛い女の子ね! 金髪も綺麗で……」
「ありがとうございます! 髪のことも褒めてもらえて嬉しいです。水泳部なんですけど、練習が終わった後は髪のケアをするようにしています」
「そうなのね。……自己紹介がまだだったわね。初めまして、桐生由弦の母の香織です」
「初めまして。由弦と同じクラスの友人で、隣の102号室に住んでいる姫宮風花です。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね!」
そう言って、母さんは風花に右手を差し出す。
風花は両手で母さんと握手を交わし、母さんのことをじっと見つめる。
「雫さんと心愛ちゃんの持ってきてくれたアルバムとホームビデオで、香織さんの姿は分かっていましたけど、実際に会うと本当に素敵です。あっ、写真写りや動画映りが悪いってことじゃないですよ! 素敵なのがもっと素敵ってことです!」
「ふふっ、ありがとう。子供世代の人に褒められると、気分が若返ってくるわ」
「見た目もお若いですよ。雫さんのお姉さんって感じです」
「私も同じようなことを思ったよ」
「あら、嬉しいお言葉。ねえ、風花ちゃん。可愛いし、金髪も綺麗だから抱きしめてもいいかしら?」
「もちろんいいですよ」
「ありがとう!」
2人が握手を止めると、母さんは風花のことを抱きしめる。やっぱりこういう展開になったか。風花を抱きしめる母さんはもちろんのこと、抱きしめられている風花も嬉しそうな様子だ。そんな2人を美優先輩が微笑ましそうに見ている。
「あぁ、風花ちゃんの抱き心地いいわぁ。金髪がとてもいいわ。金色なのは元々かな?」
「そうですよ。母も金髪で」
「そうなんだ。染めた金髪もいいけど、天然ものの金髪はよりいいわね。あぁ、シャンプーの甘いいい匂い」
母さんはまったりした表情で言い、風花の金髪に髪を埋めている。風花も母さんの胸に顔を埋めていて。
「この柔らかな感触……気持ちいいです。水泳の練習の疲れが取れます……」
深山先輩みたいなことを言っているな、風花。まあ、母さんと同じくらいの大きさを持つ美優先輩の胸に顔を埋めて、心身共に癒された経験は何度もある。だから、疲れが取れると2人が言うのは納得できる。
――プルルッ。プルルッ。
テレビの近くのローテーブルに置いてある俺のスマホが鳴った。さっそく確認すると、LIMEというSNSアプリを通じて、霧嶋先生から1件の新着メッセージが届いたと通知が。今日は三者面談もあったし、何かあったのだろうか。アプリを開くと、
『お母様はもう帰られたかしら? それとも、まだ伯分寺にいる? もし、伯分寺にいて、お時間が大丈夫なら、成実さんと一緒に会いに行きたいの。成実さんにお母様のお礼を伝えたら、直接会いたいと言って。仕事が終わってからだから、午後6時過ぎになってしまうけれど』
というメッセージが送られていた。
霧嶋先生……大宮先生に母さんからの言葉を伝えてくれたのか。そうしたら、大宮先生は母さんに会いたくなったと。俺の入っている部活の顧問だし、霧嶋先生ほどじゃないが、ゴールデンウィークには一緒に過ごした。実家は静岡なので、そう簡単には会えない。だから、仕事帰りに会いたいと考えたのだろう。母さんも直接言えたら嬉しいと言っていたし。
『母は今夜は101号室に泊まります。なので、是非、お仕事帰りに来てください。母には俺から伝えておきますので。』
という返信を霧嶋先生に送った。
すると、このトーク画面を見ているのか、送った瞬間に『既読』マークが付き、
『ありがとう。では、6時過ぎにお伺いするわ』
と、霧嶋先生から届いた。
「どうしたの? 由弦君」
「霧嶋先生からメッセージが来まして。6時過ぎに大宮先生と一緒にここに来ます。母さんのことを話したら、大宮先生は母さんと直接会いたいと所望されたそうで」
「大宮先生と会えるのね! 私は大歓迎よ」
「面談のとき、直接言えたら……って言っていたもんな」
「うんっ! 霧嶋先生とまた会えるのも楽しみだわ」
明るい笑顔を見せながらそう言う母さん。霧嶋先生のことを相当気に入ったようだ。面談中に見せた、ほころんだ真っ赤な顔の影響だろうか。
それから、霧嶋先生と大宮先生が来るまで、風花を加えた4人でみやび様のアニメを観る。
風花曰く、実家にいた頃にお兄さんから原作漫画を借りて読んだことがあり、アニメもお兄さんが録画したものを受験が終わってから観たのだそうだ。それもあって、風花は俺達と楽しく話しながらアニメを観ていた。
そして、午後6時10分頃。仕事が終わった霧嶋先生と大宮先生が家にやってきた。
「初めまして。桐生由弦の母の香織です。部活中心に息子がいつもお世話になっています」
「いえいえ、こちらこそ。桐生君は料理がちゃんとできて、料理部唯一の男子生徒ですから頼ることが多くて。私、料理部顧問で授業では家庭科を担当している大宮成実といいます。美優ちゃんと瑠衣ちゃんの担任の先生でもあります。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
母さんと大宮先生は自己紹介をして頭を下げる。今日、こういう光景を見るのはこれで何度目だろうか。あと、お互いに会いたがっていたからか、2人とも凄く嬉しそうだ。
「霧嶋先生から聞いているとは思いますが、ゴールデンウィークは霧嶋先生と一緒に旅行へ連れて行ってくださりありがとうございました」
「いえいえ。桐生君や一佳ちゃん達と一緒に旅行へ行けてとても楽しかったです。それにしても、一佳ちゃんから桐生君のお母様はとても綺麗だと聞いていましたが、本当にお綺麗ですね」
雫姉さんと心愛がここに泊まりに来て、アルバムやホームビデオを見たとき、大宮先生はご家族の方で用事があって遊びに来ていなかった。だから、母さんの顔は今まで知らなかったのか。
「嬉しいことを言ってくれますね、大宮先生。霧嶋先生も」
「本当にお綺麗だったので。アルバムやホームビデオで見た、桐生君達の小さかった頃の姿と変わりないですし」
「ふふっ、そうですか。お二人は綺麗で可愛らしい先生ですよ。ところで、もう仕事は終わっていますし、お二人のことを抱きしめたいのですが……いいですか?」
上目遣いになって、先生達にハグを懇願する母さん。まさか、先生達にも抱きしめたいと言うとは。可愛かったり、綺麗だったりする女性なら年齢問わず抱きしめたいのだろうか。昔は、抱きしめるのは自分の子供世代の女の子が中心だったけど。
母さんの今の言葉に霧嶋先生は目を見開いていたけど、大宮先生は笑顔のまま。
「あたしは抱きしめてもいいですよ~」
「……まあ、三者面談中ならともかく、今は勤務外ですからね。私も……いいですよ」
「ありがとうございます! では、遠慮なく」
母さんは大宮先生、霧嶋先生の順番で抱きしめ合う。綺麗で可愛らしい女性とハグできて母さんはとても満足そうだ。こりゃ、明日は麻子さんと風花のお母さんにも抱きしめそうだな。
母さんから「お仕事お疲れ様でした」と優しく言われ、頭を撫でられたからだろうか。大宮先生も霧嶋先生もやんわりとした笑みを浮かべていた。母さんのハグには年齢や職業を問わず癒やし効果があるんだなぁ……と思った。
美優先輩達もこのチャイムの音を聞いて、今が午後5時であることを知る。メロディーが鳴り終わると亜衣さんが、
「夕飯のお買い物をしないといけないので、そろそろお暇しますね」
と言った。なので、それからすぐに亜衣さんと花柳先輩は一緒に帰っていった。明日は麻子さんと風花のお母さんが三者面談のために伯分寺に来るので、亜衣さんは明日も午後に遊びに来るという。
俺達はみやび様のアニメを第4話の序盤から見始める。3人になったので、俺、美優先輩、母さんの並びでソファーに座りながら。美優先輩は俺だけじゃなくて、母さんともみやび様のことで話が盛り上がっている。恋人が自分の母親と仲良く話しているのはいいことだ。
第4話を見終わり、第5話のAパートを見ているときだった。
――ピンポーン。
インターホンが鳴る。壁に掛かっている時計で時刻を確認すると、今は午後5時半過ぎか。時間的に一番可能性がありそうなのは風花かな。部活から帰ったら、母さんに会いたいと言っていたし。
「俺が出ますね」
「ありがとう、由弦君」
扉の近くにあるインターホンのモニターを確認しに行く。画面にはTシャツ姿の風花が映っている。
「おっ、風花か。部活お疲れ」
『ありがとう。由弦のお母さんに会いに来たよ~』
「ああ。すぐに行くよ。……風花です。部活が終わって母さんに会いに来たと」
「風花……ああ、綺麗な金髪の可愛い女の子ね!」
「そうそうその子。ここに連れてくるよ」
俺はリビングから出て、玄関へ向かう。
鍵を解錠して、扉を開けると、そこにはTシャツにハーフパンツという格好の風花が立っていた。一度家に帰って着替えてきたのか。行き先がお隣だから、かなりラフな服装になったのだろう。履いているのもサンダルだし。
俺と目が合うと、風花は持ち前の明るくて可愛い笑顔を見せる。
「風花、いらっしゃい」
「お邪魔します。あと、三者面談お疲れ様。どんな感じだった?」
「中間試験と部活中心に学校生活のことを話した。どっちもこの調子で頑張れって言われてすぐに終わったよ。雑談がメインとも言えるかな。母さんがゴールデンウィークのことでお礼を言ってた」
「そうなんだ。連休は一佳先生と一緒に過ごすことが多かったもんね。メインは雑談か。でも、それは中間試験の成績がとても良かった由弦だからだろうね。あたしは部活はともかく、中間試験のことで何か言われそう。あたし、赤点はなかったけど、数学Bと物理基礎は平均点未満だったから」
不安だなぁ、と風花は苦笑い。
「面談では、中間試験が実施された教科の得点と平均点の一覧を印刷した紙を見せられるんだ。平均点未満の教科は……何か言われるかもしれないな」
「……そっか。教えてくれてありがとう。覚悟ができるよ」
「そうか。明日は頑張れよ。母さんはリビングにいるから、上がって」
「うん! お邪魔します!」
元気な様子でそう言い、風花は家に上がる。
リビングに戻ると、風花が来たからか、美優先輩と母さんがソファーの前で待ち構えていた。なお、Blu-rayの再生は、ヒロインのみやびがアップで映っているシーンで止まっている。
「風花を連れてきました」
「こんにちは、風花ちゃん。部活お疲れ様」
「あらぁ! 実際に見ると本当に可愛い女の子ね! 金髪も綺麗で……」
「ありがとうございます! 髪のことも褒めてもらえて嬉しいです。水泳部なんですけど、練習が終わった後は髪のケアをするようにしています」
「そうなのね。……自己紹介がまだだったわね。初めまして、桐生由弦の母の香織です」
「初めまして。由弦と同じクラスの友人で、隣の102号室に住んでいる姫宮風花です。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね!」
そう言って、母さんは風花に右手を差し出す。
風花は両手で母さんと握手を交わし、母さんのことをじっと見つめる。
「雫さんと心愛ちゃんの持ってきてくれたアルバムとホームビデオで、香織さんの姿は分かっていましたけど、実際に会うと本当に素敵です。あっ、写真写りや動画映りが悪いってことじゃないですよ! 素敵なのがもっと素敵ってことです!」
「ふふっ、ありがとう。子供世代の人に褒められると、気分が若返ってくるわ」
「見た目もお若いですよ。雫さんのお姉さんって感じです」
「私も同じようなことを思ったよ」
「あら、嬉しいお言葉。ねえ、風花ちゃん。可愛いし、金髪も綺麗だから抱きしめてもいいかしら?」
「もちろんいいですよ」
「ありがとう!」
2人が握手を止めると、母さんは風花のことを抱きしめる。やっぱりこういう展開になったか。風花を抱きしめる母さんはもちろんのこと、抱きしめられている風花も嬉しそうな様子だ。そんな2人を美優先輩が微笑ましそうに見ている。
「あぁ、風花ちゃんの抱き心地いいわぁ。金髪がとてもいいわ。金色なのは元々かな?」
「そうですよ。母も金髪で」
「そうなんだ。染めた金髪もいいけど、天然ものの金髪はよりいいわね。あぁ、シャンプーの甘いいい匂い」
母さんはまったりした表情で言い、風花の金髪に髪を埋めている。風花も母さんの胸に顔を埋めていて。
「この柔らかな感触……気持ちいいです。水泳の練習の疲れが取れます……」
深山先輩みたいなことを言っているな、風花。まあ、母さんと同じくらいの大きさを持つ美優先輩の胸に顔を埋めて、心身共に癒された経験は何度もある。だから、疲れが取れると2人が言うのは納得できる。
――プルルッ。プルルッ。
テレビの近くのローテーブルに置いてある俺のスマホが鳴った。さっそく確認すると、LIMEというSNSアプリを通じて、霧嶋先生から1件の新着メッセージが届いたと通知が。今日は三者面談もあったし、何かあったのだろうか。アプリを開くと、
『お母様はもう帰られたかしら? それとも、まだ伯分寺にいる? もし、伯分寺にいて、お時間が大丈夫なら、成実さんと一緒に会いに行きたいの。成実さんにお母様のお礼を伝えたら、直接会いたいと言って。仕事が終わってからだから、午後6時過ぎになってしまうけれど』
というメッセージが送られていた。
霧嶋先生……大宮先生に母さんからの言葉を伝えてくれたのか。そうしたら、大宮先生は母さんに会いたくなったと。俺の入っている部活の顧問だし、霧嶋先生ほどじゃないが、ゴールデンウィークには一緒に過ごした。実家は静岡なので、そう簡単には会えない。だから、仕事帰りに会いたいと考えたのだろう。母さんも直接言えたら嬉しいと言っていたし。
『母は今夜は101号室に泊まります。なので、是非、お仕事帰りに来てください。母には俺から伝えておきますので。』
という返信を霧嶋先生に送った。
すると、このトーク画面を見ているのか、送った瞬間に『既読』マークが付き、
『ありがとう。では、6時過ぎにお伺いするわ』
と、霧嶋先生から届いた。
「どうしたの? 由弦君」
「霧嶋先生からメッセージが来まして。6時過ぎに大宮先生と一緒にここに来ます。母さんのことを話したら、大宮先生は母さんと直接会いたいと所望されたそうで」
「大宮先生と会えるのね! 私は大歓迎よ」
「面談のとき、直接言えたら……って言っていたもんな」
「うんっ! 霧嶋先生とまた会えるのも楽しみだわ」
明るい笑顔を見せながらそう言う母さん。霧嶋先生のことを相当気に入ったようだ。面談中に見せた、ほころんだ真っ赤な顔の影響だろうか。
それから、霧嶋先生と大宮先生が来るまで、風花を加えた4人でみやび様のアニメを観る。
風花曰く、実家にいた頃にお兄さんから原作漫画を借りて読んだことがあり、アニメもお兄さんが録画したものを受験が終わってから観たのだそうだ。それもあって、風花は俺達と楽しく話しながらアニメを観ていた。
そして、午後6時10分頃。仕事が終わった霧嶋先生と大宮先生が家にやってきた。
「初めまして。桐生由弦の母の香織です。部活中心に息子がいつもお世話になっています」
「いえいえ、こちらこそ。桐生君は料理がちゃんとできて、料理部唯一の男子生徒ですから頼ることが多くて。私、料理部顧問で授業では家庭科を担当している大宮成実といいます。美優ちゃんと瑠衣ちゃんの担任の先生でもあります。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
母さんと大宮先生は自己紹介をして頭を下げる。今日、こういう光景を見るのはこれで何度目だろうか。あと、お互いに会いたがっていたからか、2人とも凄く嬉しそうだ。
「霧嶋先生から聞いているとは思いますが、ゴールデンウィークは霧嶋先生と一緒に旅行へ連れて行ってくださりありがとうございました」
「いえいえ。桐生君や一佳ちゃん達と一緒に旅行へ行けてとても楽しかったです。それにしても、一佳ちゃんから桐生君のお母様はとても綺麗だと聞いていましたが、本当にお綺麗ですね」
雫姉さんと心愛がここに泊まりに来て、アルバムやホームビデオを見たとき、大宮先生はご家族の方で用事があって遊びに来ていなかった。だから、母さんの顔は今まで知らなかったのか。
「嬉しいことを言ってくれますね、大宮先生。霧嶋先生も」
「本当にお綺麗だったので。アルバムやホームビデオで見た、桐生君達の小さかった頃の姿と変わりないですし」
「ふふっ、そうですか。お二人は綺麗で可愛らしい先生ですよ。ところで、もう仕事は終わっていますし、お二人のことを抱きしめたいのですが……いいですか?」
上目遣いになって、先生達にハグを懇願する母さん。まさか、先生達にも抱きしめたいと言うとは。可愛かったり、綺麗だったりする女性なら年齢問わず抱きしめたいのだろうか。昔は、抱きしめるのは自分の子供世代の女の子が中心だったけど。
母さんの今の言葉に霧嶋先生は目を見開いていたけど、大宮先生は笑顔のまま。
「あたしは抱きしめてもいいですよ~」
「……まあ、三者面談中ならともかく、今は勤務外ですからね。私も……いいですよ」
「ありがとうございます! では、遠慮なく」
母さんは大宮先生、霧嶋先生の順番で抱きしめ合う。綺麗で可愛らしい女性とハグできて母さんはとても満足そうだ。こりゃ、明日は麻子さんと風花のお母さんにも抱きしめそうだな。
母さんから「お仕事お疲れ様でした」と優しく言われ、頭を撫でられたからだろうか。大宮先生も霧嶋先生もやんわりとした笑みを浮かべていた。母さんのハグには年齢や職業を問わず癒やし効果があるんだなぁ……と思った。
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