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本編
第6話『紙一重』
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あれから、公園で猫と戯れてたっぷりと癒やされ、家に帰った。
家の場所を知っているため、如月会長が来るかどうか心配したけれど、一旦、距離を取ることに決めたのか、それとも諦めたのか……会長が姿を現すことはなかった。
4月18日、水曜日。
アリスさんに悩みを相談したことや、家で一晩ゆっくりと過ごしたこともあって、昨日までのストレスも大分なくなった。会長が家に来ないかどうか不安なときもあったけれど、それでも昨日の終礼までと比べたら気持ちも落ち着いた。
これまでは会長の影響もあって、生徒会は悪しき組織のように思うことも。ただ、仕事のことになれば会長だって真面目にやるかもしれないし、副会長さんもいい人みたいだから、決断する前に一度、生徒会の仕事がどんなものなのか訊いてみることにしよう。
今日も校舎に近づくにつれて、月野学園の生徒が俺のことをジロジロと見てくる。どういうことを思いながら見ているんだろうな。
今日は校門での身だしなみチェックはないようだ。生徒会や風紀委員会らしき生徒の姿が見当たらない。もちろん、如月会長も。
何事もなく校門を通り、校舎の中に入ろうとすると、昇降口のすぐ側にある掲示板の前に多くの生徒が集まっている。何か重大な内容の文書が貼ってあるのかな。
「あっ、逢坂が来たぞ」
「昨日、会長が言ったことって本当だったのね……」
「会長のことだから、あいつを更生させるつもりなのかも」
「なるほど、それで生徒会の庶務にするのか!」
どうやら、生徒が集まっている原因は俺絡みらしい。それにしても、更生という言葉を耳にしたので一瞬、全身に悪寒が走ってしまった。まさか、もう?
とりあえず、掲示板にどんな内容が記された紙が掲示されているのか見てみないと。
「ちょっとすみませんね……」
上履きを履いて、掲示板のところに行こうと生徒達の中に入ろうとすると、俺のことが恐がっているのか、一瞬にして生徒達は掲示板までの道を作ってくれた。
「……はあ?」
掲示されているの文書の内容を見たら思わずそんな声を上げてしまった。
『告示
1年3組 逢坂玲人を4月18日より生徒会庶務係とする。
私立月野学園高等学校生徒会』
昨日付でそんな掲示物が生徒会から発行されたのだ。生徒会による認可のハンコも押されている。
「如月会長め……!」
こうして任命したという内容の文書を発行してしまえば、俺が生徒会の一員になることを嫌がるのも収まると考えたんだな。昨日、俺の家に来ることがなかったのもこのためだったのか。
「ふざけるな!」
思わず荒げた声を出してしまった。そのせいで、周りの生徒が俺から離れている。恐がっている生徒もいれば、睨んでいる生徒もいる。
会長がどういう手を使っても俺のことを生徒会に入らせようとするなら、こっちはそれを断固拒否してやる! このことでもう頭にきた。一度、生徒会に入るかどうか考え直してみようかと思った俺が馬鹿だった。
告示内容が書かれた紙を剥がして、俺は抗議のために生徒会室へと向かう。
「失礼します!」
ノックをして中に入ると、そこには如月会長だけがいた。会長はまるで俺のことを待っていましたと言わんばかりの笑みを浮かべている。
「おはよう、玲人君。ノックをするのはいいけれど、私が返事をする前に入ってくるのはよくないね」
「かなり気が立っているので、返事をする前に入ってしまいました。それよりも、何なんですかこれは!」
俺は会長のすぐ目の前まで行き、机の上に告示内容が書かれた紙を叩きつける。
「見て分からない? 玲人君を生徒会の庶務係に任命したっていう正式な文書だよ?」
「俺は一度たりとも庶務係をやることを了承していません! だから、こんな告示は認められない!」
俺がそう言うと、如月会長はふっと笑った。ゆっくりと席から立ち上がり、俺が持ってきた告示の紙を俺の方に向けて持つ。
「この紙が発行されている意味が分かる? 学校による正式な決定が成されたという証拠なの。それを全校生徒や職員に知らせるためにこの告示内容の紙を発行し、学校の掲示板に貼っているの。ダメだよ、勝手に剥がしてこんなところに持ってきちゃあ」
如月会長は落ち着いた笑みを浮かべながらそう言った。
昨日、俺が何度も生徒会に入ることを断り、嫌であることも伝えたはずなのに。こんな強硬手段を使うことに、これっぽっちも悪いとは思っていないのか?
「学校による正式な決定と言っていますけど、本当は如月会長が独断で作ったんですよね、これ。この紙に捺印されている生徒会のハンコももちろん、生徒会長であるあなたなら自由に使うことができる」
「……ふふっ、ご名答。そう、この文書を作ったのは私。庶務という役職は生徒会が必要だと判断すれば、生徒会と各種委員会のいずれにも属していない生徒であれば任命することのできる決まりになっているの」
「それでも、任命される側に拒否権があるはずです。任命を受け入れたことで初めて、他の生徒に知らせるためにこの文書が発行されるのが正しい流れだと思います。しかし、会長が実際にやったことは、拒否し続ける俺のことを黙らせるため。違いますか?」
文書という形で俺が庶務係として生徒会に入ることになったと公表し、一般生徒がそれを知ることで俺に断らせない空気を作ろうとしたんだ。
「一度は考え直して、生徒会のことを知ってみようと思った自分が馬鹿でした」
「やっぱり、考え直そうとしてくれていたんだね。そうなるって信じて、昨日の放課後にこれを作ったんだけどな」
「信じていた? 嘘を言わないでください!」
「きゃっ!」
俺は強引に如月会長のことを壁に追い詰める。
「俺が考え直してくれると信じていたなら、どうして、昨日の段階でこんなものを作ったんですか! そうしたってことは、拒否をするという俺の考えを無理矢理にねじ伏せたってことになるんですよ。つまり、俺のことなんて信じていない」
「違う! 私は玲人君のことを信じて――」
「信じているなんて言葉、軽々しく使わないでください。人を信じることで辛い気持ちになってしまうことがあることをあなたは知らないんだ!」
如月会長は自分勝手すぎる。自分が正しいと思っているから、こういったことまでできるんだ。
「この際ですからはっきり言っておきます。俺は生徒会には絶対に入りません。あと、会長が俺のことを好きでいることは自由ですが、俺は会長のことが嫌いです。拘束されてからずっと。二度と関わってほしくない。会長に付きまとわれるのが迷惑なんですよ」
昨日だって、会長が家まで来るかもしれないって不安だったときもあったんだ。もうそんな思いはしたくない。
すると、如月会長はこれまでの余裕の笑みからは一転して悲しげな表情になり、
「だって、これしか玲人君を生徒会に入れさせる方法が思いつかなかったし……」
大粒の涙をいくつもこぼしながら、まるで独り言のように言った。こんな如月会長を見るのは初めてだ。
「キツく言いすぎたかもしれません。それについては謝ります。ただ、俺は生徒会に入らない。俺とはもう二度と関わらない。それだけは覚えておいてくれませんか」
「うっ、ううっ……」
泣いてしまってそれどころではないか。今は何を言っても会長に届かないような気がする。ここにいても意味はないから、さっさと教室に――。
「いやだ」
如月会長は俺のブレザーの裾をぎゅっと掴む。
「どこにも行かないでよ……」
俺のことを見つめながら発せられたその震えた声は、まるで針に刺されたように心を痛ませる。その痛みはじんわりと広がっていって。このままでは耐えきれずに崩れ落ちてしまいそうだった。
「……失礼します」
裾を持つ彼女の手をそっと離して、俺は生徒会室を出ようとする。
「ちょっと待っ……けほっ、けほっ」
会長、咳き込んでいるな。昨日も無理はするなと言ったのに。
「俺のことは諦めて、ゆっくりと休んでください。では、失礼します」
俺は生徒会室を後にする。
すると、副会長さんがこっちに向かって走ってきた。だからなのか、僕の目の前で立ち止まったとき、彼女は息を乱していた。
「逢坂君、これが掲示板に貼ってあったんだけど見た?」
副会長さんは例の告示の紙を見せてくる。学校の中にはいくつも掲示板があるから、きっと、会長が全部の掲示板に貼ったんだろう。
「昇降口近くに貼ってあったものを見ました。その紙について、たった今、会長とお話ししました。この告示は不当なものであり、俺は生徒会には入らないことを伝えました」
「そうだったんだ。昨日は私、先に帰ったんだけれど……まさか、こんなものを作っていたなんて」
「副会長さんはこの紙のことを知らなかったんですね」
「うん。この紙が発行されたことで、逢坂君は正式に生徒会に入ったことになるね。庶務係は選挙ではなく、生徒会からの任命という形だから。当たり前だけど、任命された生徒の了承があってのことだけど。あと、この紙の発行も生徒会で行なうこともできる」
「会長から同じようなことを言われました。しかし、俺は一度も生徒会に入ることを了承した覚えはありません」
「そうだね。沙奈ちゃんも、どうすれば入ってくれるか悩んでいたから。……うちの如月が迷惑を掛けてしまってごめんなさい。生徒会のメンバーを代表して謝ります」
副会長さんは深く頭を下げる。彼女が生徒会にいるから何とかなるかな。
「気にしないでください。あと、早く会長のところに行ってあげてください。会長のことを泣かせてしまって。……申し訳ないです」
「いいのよ。じゃあ、まずは沙奈ちゃんのことを慰めるか。それで叱るか」
「よろしくお願いします。では、失礼します」
前向きに考えようとしていたところだったのに、散々な朝になっちゃったな。
時間が過ぎていく中で段々と怒りは収まっていくけれど、その代わりに居座り始めるのは切なさと虚しい気持ちだった。
無意識に如月会長の様々な顔が頭によぎってくる。その度に自分が会長に言ったことは正しかったのだと思うために、無理矢理に怒りの感情を作りだして。
やっぱり、誰かと関わると、ろくなことがなくて疲れてしまうなぁ……と思いながら、今日の授業を受けるのであった。
家の場所を知っているため、如月会長が来るかどうか心配したけれど、一旦、距離を取ることに決めたのか、それとも諦めたのか……会長が姿を現すことはなかった。
4月18日、水曜日。
アリスさんに悩みを相談したことや、家で一晩ゆっくりと過ごしたこともあって、昨日までのストレスも大分なくなった。会長が家に来ないかどうか不安なときもあったけれど、それでも昨日の終礼までと比べたら気持ちも落ち着いた。
これまでは会長の影響もあって、生徒会は悪しき組織のように思うことも。ただ、仕事のことになれば会長だって真面目にやるかもしれないし、副会長さんもいい人みたいだから、決断する前に一度、生徒会の仕事がどんなものなのか訊いてみることにしよう。
今日も校舎に近づくにつれて、月野学園の生徒が俺のことをジロジロと見てくる。どういうことを思いながら見ているんだろうな。
今日は校門での身だしなみチェックはないようだ。生徒会や風紀委員会らしき生徒の姿が見当たらない。もちろん、如月会長も。
何事もなく校門を通り、校舎の中に入ろうとすると、昇降口のすぐ側にある掲示板の前に多くの生徒が集まっている。何か重大な内容の文書が貼ってあるのかな。
「あっ、逢坂が来たぞ」
「昨日、会長が言ったことって本当だったのね……」
「会長のことだから、あいつを更生させるつもりなのかも」
「なるほど、それで生徒会の庶務にするのか!」
どうやら、生徒が集まっている原因は俺絡みらしい。それにしても、更生という言葉を耳にしたので一瞬、全身に悪寒が走ってしまった。まさか、もう?
とりあえず、掲示板にどんな内容が記された紙が掲示されているのか見てみないと。
「ちょっとすみませんね……」
上履きを履いて、掲示板のところに行こうと生徒達の中に入ろうとすると、俺のことが恐がっているのか、一瞬にして生徒達は掲示板までの道を作ってくれた。
「……はあ?」
掲示されているの文書の内容を見たら思わずそんな声を上げてしまった。
『告示
1年3組 逢坂玲人を4月18日より生徒会庶務係とする。
私立月野学園高等学校生徒会』
昨日付でそんな掲示物が生徒会から発行されたのだ。生徒会による認可のハンコも押されている。
「如月会長め……!」
こうして任命したという内容の文書を発行してしまえば、俺が生徒会の一員になることを嫌がるのも収まると考えたんだな。昨日、俺の家に来ることがなかったのもこのためだったのか。
「ふざけるな!」
思わず荒げた声を出してしまった。そのせいで、周りの生徒が俺から離れている。恐がっている生徒もいれば、睨んでいる生徒もいる。
会長がどういう手を使っても俺のことを生徒会に入らせようとするなら、こっちはそれを断固拒否してやる! このことでもう頭にきた。一度、生徒会に入るかどうか考え直してみようかと思った俺が馬鹿だった。
告示内容が書かれた紙を剥がして、俺は抗議のために生徒会室へと向かう。
「失礼します!」
ノックをして中に入ると、そこには如月会長だけがいた。会長はまるで俺のことを待っていましたと言わんばかりの笑みを浮かべている。
「おはよう、玲人君。ノックをするのはいいけれど、私が返事をする前に入ってくるのはよくないね」
「かなり気が立っているので、返事をする前に入ってしまいました。それよりも、何なんですかこれは!」
俺は会長のすぐ目の前まで行き、机の上に告示内容が書かれた紙を叩きつける。
「見て分からない? 玲人君を生徒会の庶務係に任命したっていう正式な文書だよ?」
「俺は一度たりとも庶務係をやることを了承していません! だから、こんな告示は認められない!」
俺がそう言うと、如月会長はふっと笑った。ゆっくりと席から立ち上がり、俺が持ってきた告示の紙を俺の方に向けて持つ。
「この紙が発行されている意味が分かる? 学校による正式な決定が成されたという証拠なの。それを全校生徒や職員に知らせるためにこの告示内容の紙を発行し、学校の掲示板に貼っているの。ダメだよ、勝手に剥がしてこんなところに持ってきちゃあ」
如月会長は落ち着いた笑みを浮かべながらそう言った。
昨日、俺が何度も生徒会に入ることを断り、嫌であることも伝えたはずなのに。こんな強硬手段を使うことに、これっぽっちも悪いとは思っていないのか?
「学校による正式な決定と言っていますけど、本当は如月会長が独断で作ったんですよね、これ。この紙に捺印されている生徒会のハンコももちろん、生徒会長であるあなたなら自由に使うことができる」
「……ふふっ、ご名答。そう、この文書を作ったのは私。庶務という役職は生徒会が必要だと判断すれば、生徒会と各種委員会のいずれにも属していない生徒であれば任命することのできる決まりになっているの」
「それでも、任命される側に拒否権があるはずです。任命を受け入れたことで初めて、他の生徒に知らせるためにこの文書が発行されるのが正しい流れだと思います。しかし、会長が実際にやったことは、拒否し続ける俺のことを黙らせるため。違いますか?」
文書という形で俺が庶務係として生徒会に入ることになったと公表し、一般生徒がそれを知ることで俺に断らせない空気を作ろうとしたんだ。
「一度は考え直して、生徒会のことを知ってみようと思った自分が馬鹿でした」
「やっぱり、考え直そうとしてくれていたんだね。そうなるって信じて、昨日の放課後にこれを作ったんだけどな」
「信じていた? 嘘を言わないでください!」
「きゃっ!」
俺は強引に如月会長のことを壁に追い詰める。
「俺が考え直してくれると信じていたなら、どうして、昨日の段階でこんなものを作ったんですか! そうしたってことは、拒否をするという俺の考えを無理矢理にねじ伏せたってことになるんですよ。つまり、俺のことなんて信じていない」
「違う! 私は玲人君のことを信じて――」
「信じているなんて言葉、軽々しく使わないでください。人を信じることで辛い気持ちになってしまうことがあることをあなたは知らないんだ!」
如月会長は自分勝手すぎる。自分が正しいと思っているから、こういったことまでできるんだ。
「この際ですからはっきり言っておきます。俺は生徒会には絶対に入りません。あと、会長が俺のことを好きでいることは自由ですが、俺は会長のことが嫌いです。拘束されてからずっと。二度と関わってほしくない。会長に付きまとわれるのが迷惑なんですよ」
昨日だって、会長が家まで来るかもしれないって不安だったときもあったんだ。もうそんな思いはしたくない。
すると、如月会長はこれまでの余裕の笑みからは一転して悲しげな表情になり、
「だって、これしか玲人君を生徒会に入れさせる方法が思いつかなかったし……」
大粒の涙をいくつもこぼしながら、まるで独り言のように言った。こんな如月会長を見るのは初めてだ。
「キツく言いすぎたかもしれません。それについては謝ります。ただ、俺は生徒会に入らない。俺とはもう二度と関わらない。それだけは覚えておいてくれませんか」
「うっ、ううっ……」
泣いてしまってそれどころではないか。今は何を言っても会長に届かないような気がする。ここにいても意味はないから、さっさと教室に――。
「いやだ」
如月会長は俺のブレザーの裾をぎゅっと掴む。
「どこにも行かないでよ……」
俺のことを見つめながら発せられたその震えた声は、まるで針に刺されたように心を痛ませる。その痛みはじんわりと広がっていって。このままでは耐えきれずに崩れ落ちてしまいそうだった。
「……失礼します」
裾を持つ彼女の手をそっと離して、俺は生徒会室を出ようとする。
「ちょっと待っ……けほっ、けほっ」
会長、咳き込んでいるな。昨日も無理はするなと言ったのに。
「俺のことは諦めて、ゆっくりと休んでください。では、失礼します」
俺は生徒会室を後にする。
すると、副会長さんがこっちに向かって走ってきた。だからなのか、僕の目の前で立ち止まったとき、彼女は息を乱していた。
「逢坂君、これが掲示板に貼ってあったんだけど見た?」
副会長さんは例の告示の紙を見せてくる。学校の中にはいくつも掲示板があるから、きっと、会長が全部の掲示板に貼ったんだろう。
「昇降口近くに貼ってあったものを見ました。その紙について、たった今、会長とお話ししました。この告示は不当なものであり、俺は生徒会には入らないことを伝えました」
「そうだったんだ。昨日は私、先に帰ったんだけれど……まさか、こんなものを作っていたなんて」
「副会長さんはこの紙のことを知らなかったんですね」
「うん。この紙が発行されたことで、逢坂君は正式に生徒会に入ったことになるね。庶務係は選挙ではなく、生徒会からの任命という形だから。当たり前だけど、任命された生徒の了承があってのことだけど。あと、この紙の発行も生徒会で行なうこともできる」
「会長から同じようなことを言われました。しかし、俺は一度も生徒会に入ることを了承した覚えはありません」
「そうだね。沙奈ちゃんも、どうすれば入ってくれるか悩んでいたから。……うちの如月が迷惑を掛けてしまってごめんなさい。生徒会のメンバーを代表して謝ります」
副会長さんは深く頭を下げる。彼女が生徒会にいるから何とかなるかな。
「気にしないでください。あと、早く会長のところに行ってあげてください。会長のことを泣かせてしまって。……申し訳ないです」
「いいのよ。じゃあ、まずは沙奈ちゃんのことを慰めるか。それで叱るか」
「よろしくお願いします。では、失礼します」
前向きに考えようとしていたところだったのに、散々な朝になっちゃったな。
時間が過ぎていく中で段々と怒りは収まっていくけれど、その代わりに居座り始めるのは切なさと虚しい気持ちだった。
無意識に如月会長の様々な顔が頭によぎってくる。その度に自分が会長に言ったことは正しかったのだと思うために、無理矢理に怒りの感情を作りだして。
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