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本編
第16話『喫茶店』
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午後1時半過ぎ。
俺と会長は国立東京中央病院を後にする。昼過ぎということもあって結構暖かい。
「もうお昼過ぎですから、どこかで昼食でも食べましょうか」
「そうだね、玲人君」
「会長はどこか行きたいお店とかってありますか?」
俺1人だったら、ラーメン屋さんとかファーストフード店に行って適当に済ませちゃうけれど、会長がそういうお店が好きだとは限らない。
「月野駅の周りなら、玲人君に勧めたい喫茶店があるんだけれど。四鷹駅の周りはあまり分からないな……」
「喫茶店ですか。気になりますね」
「じゃあ、月野駅まで戻っちゃおっか。玲人君、あと30分くらいは我慢できる?」
「大丈夫ですよ。会長は?」
「私も大丈夫。それに、お腹を空かせた方がご飯もより美味しくなるしね。よし、まずは月野駅に行こう」
俺達は電車に乗って月野駅まで戻ることに。琴葉のことを知ったからなのか、行くときとは違って俺にベッタリとすることはなかった。
午後2時過ぎに月野駅に到着し、会長の案内でオススメの喫茶店に。
月野駅から徒歩3分ほどのところにある落ち着いた雰囲気のお店だな。土曜日の昼過ぎにも関わらず店内は静かだ。
俺は会長と向かい合うようにして窓側のテーブル席に座る。
「へえ、月野にはこういう喫茶店があるんですね」
「樹里先輩や友達とたまに来るんだ。喫茶店だけれど、ランチメニューも豊富でね」
「そうなんですか。どれどれ……」
メニュー表を見てみると、パスタやサンドウィッチなどのランチメニューの種類が豊富だ。それなりの値段はするけれど、父さんからもらったお金があるので問題ない。
「私はナポリタンの紅茶セットにするけれど、玲人君は決まった?」
「はい。俺はオムライスのコーヒーセットにします」
「そうなんだ。ここのオムライスは結構美味しいよ」
笑顔でそう言われると期待してしまう。楽しみだ。
それぞれの食べたいものを注文し、俺はアイスコーヒー、沙奈会長はホットティーを飲みながら料理が出てくるのを待つことに。
「まさか、玲人君に2年近くも眠り続けている幼なじみがいるとは思わなかったわ」
「隠すつもりはなかったんですけど、言う気にもなれなくて。すみません」
「玲人君のことを責めるつもりは全くないよ。あと、恩田さんに話しかけているときの玲人君が、普段とはまるで違って見えたからさ。もちろん、学校での玲人君も玲人君だし、あのときの玲人君も玲人君なんだって分かってる。ただ、病院での玲人君は恩田さんだからこそ引き出すことができているような気がして……正直、嫉妬してる」
「そりゃ、琴葉とは10年以上の付き合いがありますからね」
沙奈会長の前だからできるだけ普段通りに振る舞ったつもりだったけれど、会長にはごまかすことができなかったようだ。
それにしても、沙奈会長……お見舞い中は不機嫌な様子を一切見せていなかったけれど、やはり嫉妬していたのか。
「私の場合はまだ1週間も経っていないんだもんね」
「その1週間はかなり濃厚でしたけどね。会長のせ……おかげで先週の土曜日が遙か昔のように感じていますよ」
「今、私のせいって言おうとしたでしょ」
「会長がいなければ、あっという間に1週間が終わっていたと思います」
「何かごまかされたような気がするけれど、まあいっか。玲人君が生徒会に入ってくれて、今日もこうして一緒にいられるから」
沙奈会長は嬉しそうな表情を浮かべながら紅茶を飲んでいる。生徒会の件も今日の件も、会長の行動力あってのことだと思う。
「嫉妬したのは事実だけれど、ますます玲人君のことが好きになったよ。恩田さんに見せていた柔らかい雰囲気を私にも向けてくれると嬉しい……かな」
「琴葉だからこそっていう部分もありますけどね。ただ、沙奈会長だって素直に可愛いなって思ったり、素敵だと感じたりすることはあります」
ただ、第一印象が最悪であり、その後も問題ありな行動が多いからか、どうしても冷たい態度を取ってしまいがちになる。そこのところは少しずつ直していかないといけないな。彼女の態度次第ではより冷たくなるかもしれないけど。
「ほ、本当にそう思ってくれることがあるの?」
「嘘をついてどうするんですか」
「……ありがとう」
沙奈会長、顔を真っ赤にしてゆるんだ笑みを浮かべている。
「嬉しすぎて、今夜は玲人君を襲っちゃうかも」
笑顔でそう言われると恐さが増すんですけど。やっぱり、この人には基本的に冷たい態度で接した方がいいのだろうかと悩む。
「……気を付けてくださいね。場合によっては、無理矢理にでも家から追い出さないといけませんから」
「さすがにそれは嫌だな。うん、気を付ける」
と本人が言っているけれど、泊まるのは今回が初めてだし、会長のことだからきっと俺の部屋で寝るだろうから俺の方が気を付けないと。
そんなことを話していると、俺達が頼んだオムライスとナポリタンが運ばれてきた。食欲がそそられるいい匂いだ。
「美味しそうだね」
「そうですね」
初めてこのお店に来たし、美味しそうなのでスマートフォンでオムライスを撮る。沙奈会長も自分のナポリタンと俺のオムライスをスマートフォンで撮影している。
「じゃあ、食べよっか。いただきます」
「いただきます」
さっそく俺はオムライスを一口食べる。ふんわりとした甘い玉子とチキンライスの相性が抜群で美味しいな。
「ナポリタン、美味しい!」
「オムライスも美味しいですよ」
沙奈会長、幸せそうにナポリタンを食べている。こうして見てみると会長も可愛らしい女の子だな。男女問わず月野学園の大半の生徒から人気を集めているのも分かる気がする。
「ねえ、玲人君」
「何ですか?」
「私のナポリタン、一口食べてみる?」
「ありがとうございます。じゃあ、そのお礼に俺のオムライスも一口あげますね」
「あ、ありがと」
そっちから言い始めたことなのに、どうして会長は恥ずかしがっているのか。オムライスをもらえるとは思っていなかったからかな。
「じゃあ、私の方から食べさせてあげるね。あーん」
「いただきます」
沙奈会長にナポリタンを食べさせてもらう。美味しいなぁ。小学校の給食にもナポリタンがあったから思い出すよ。琴葉が好きだったな。
「うん、ナポリタンも美味しいですね。……か、会長?」
どうしたんだろう、きょとんとしちゃって。
「玲人君、もっと恥ずかしがるかと思ったのに。あっさり食べちゃった」
「昔から、家族で食事をしに行くと姉さんと一口交換し合ったり、琴葉や姉さんの友達にお菓子を食べさせられたりしたので。今みたいに一言あれば、俺は全然かまいませんよ」
「……なるほどね。玲人君は女性経験豊富なんだ……」
どうして、今の話で女性経験豊富という結論に至ってしまうんだろう。姉や妹がいればこういうことが多いのは普通だと思ったんだけれど、実際は違うのかな。
「会長、オムライスですよ。あーん」
「いただきます!」
沙奈会長は勢いよくオムライスを食べて、うっとりとした表情になっている。これは予想通りだ。
「凄く美味しい。玲人君と間接キスしたからかな」
「……その言葉も俺の想像通りですよ」
だからこそ思わず笑ってしまう。
「あっ、ということは……このフォークでナポリタンを食べれば、もう一度、玲人君と間接キスができるじゃない!」
そう言って、会長は意気揚々とした様子でナポリタンを食べる。この人は本当にポジティブというか何というか。
その後も、沙奈会長の笑顔を目の前にしてオムライスを堪能するのであった。
俺と会長は国立東京中央病院を後にする。昼過ぎということもあって結構暖かい。
「もうお昼過ぎですから、どこかで昼食でも食べましょうか」
「そうだね、玲人君」
「会長はどこか行きたいお店とかってありますか?」
俺1人だったら、ラーメン屋さんとかファーストフード店に行って適当に済ませちゃうけれど、会長がそういうお店が好きだとは限らない。
「月野駅の周りなら、玲人君に勧めたい喫茶店があるんだけれど。四鷹駅の周りはあまり分からないな……」
「喫茶店ですか。気になりますね」
「じゃあ、月野駅まで戻っちゃおっか。玲人君、あと30分くらいは我慢できる?」
「大丈夫ですよ。会長は?」
「私も大丈夫。それに、お腹を空かせた方がご飯もより美味しくなるしね。よし、まずは月野駅に行こう」
俺達は電車に乗って月野駅まで戻ることに。琴葉のことを知ったからなのか、行くときとは違って俺にベッタリとすることはなかった。
午後2時過ぎに月野駅に到着し、会長の案内でオススメの喫茶店に。
月野駅から徒歩3分ほどのところにある落ち着いた雰囲気のお店だな。土曜日の昼過ぎにも関わらず店内は静かだ。
俺は会長と向かい合うようにして窓側のテーブル席に座る。
「へえ、月野にはこういう喫茶店があるんですね」
「樹里先輩や友達とたまに来るんだ。喫茶店だけれど、ランチメニューも豊富でね」
「そうなんですか。どれどれ……」
メニュー表を見てみると、パスタやサンドウィッチなどのランチメニューの種類が豊富だ。それなりの値段はするけれど、父さんからもらったお金があるので問題ない。
「私はナポリタンの紅茶セットにするけれど、玲人君は決まった?」
「はい。俺はオムライスのコーヒーセットにします」
「そうなんだ。ここのオムライスは結構美味しいよ」
笑顔でそう言われると期待してしまう。楽しみだ。
それぞれの食べたいものを注文し、俺はアイスコーヒー、沙奈会長はホットティーを飲みながら料理が出てくるのを待つことに。
「まさか、玲人君に2年近くも眠り続けている幼なじみがいるとは思わなかったわ」
「隠すつもりはなかったんですけど、言う気にもなれなくて。すみません」
「玲人君のことを責めるつもりは全くないよ。あと、恩田さんに話しかけているときの玲人君が、普段とはまるで違って見えたからさ。もちろん、学校での玲人君も玲人君だし、あのときの玲人君も玲人君なんだって分かってる。ただ、病院での玲人君は恩田さんだからこそ引き出すことができているような気がして……正直、嫉妬してる」
「そりゃ、琴葉とは10年以上の付き合いがありますからね」
沙奈会長の前だからできるだけ普段通りに振る舞ったつもりだったけれど、会長にはごまかすことができなかったようだ。
それにしても、沙奈会長……お見舞い中は不機嫌な様子を一切見せていなかったけれど、やはり嫉妬していたのか。
「私の場合はまだ1週間も経っていないんだもんね」
「その1週間はかなり濃厚でしたけどね。会長のせ……おかげで先週の土曜日が遙か昔のように感じていますよ」
「今、私のせいって言おうとしたでしょ」
「会長がいなければ、あっという間に1週間が終わっていたと思います」
「何かごまかされたような気がするけれど、まあいっか。玲人君が生徒会に入ってくれて、今日もこうして一緒にいられるから」
沙奈会長は嬉しそうな表情を浮かべながら紅茶を飲んでいる。生徒会の件も今日の件も、会長の行動力あってのことだと思う。
「嫉妬したのは事実だけれど、ますます玲人君のことが好きになったよ。恩田さんに見せていた柔らかい雰囲気を私にも向けてくれると嬉しい……かな」
「琴葉だからこそっていう部分もありますけどね。ただ、沙奈会長だって素直に可愛いなって思ったり、素敵だと感じたりすることはあります」
ただ、第一印象が最悪であり、その後も問題ありな行動が多いからか、どうしても冷たい態度を取ってしまいがちになる。そこのところは少しずつ直していかないといけないな。彼女の態度次第ではより冷たくなるかもしれないけど。
「ほ、本当にそう思ってくれることがあるの?」
「嘘をついてどうするんですか」
「……ありがとう」
沙奈会長、顔を真っ赤にしてゆるんだ笑みを浮かべている。
「嬉しすぎて、今夜は玲人君を襲っちゃうかも」
笑顔でそう言われると恐さが増すんですけど。やっぱり、この人には基本的に冷たい態度で接した方がいいのだろうかと悩む。
「……気を付けてくださいね。場合によっては、無理矢理にでも家から追い出さないといけませんから」
「さすがにそれは嫌だな。うん、気を付ける」
と本人が言っているけれど、泊まるのは今回が初めてだし、会長のことだからきっと俺の部屋で寝るだろうから俺の方が気を付けないと。
そんなことを話していると、俺達が頼んだオムライスとナポリタンが運ばれてきた。食欲がそそられるいい匂いだ。
「美味しそうだね」
「そうですね」
初めてこのお店に来たし、美味しそうなのでスマートフォンでオムライスを撮る。沙奈会長も自分のナポリタンと俺のオムライスをスマートフォンで撮影している。
「じゃあ、食べよっか。いただきます」
「いただきます」
さっそく俺はオムライスを一口食べる。ふんわりとした甘い玉子とチキンライスの相性が抜群で美味しいな。
「ナポリタン、美味しい!」
「オムライスも美味しいですよ」
沙奈会長、幸せそうにナポリタンを食べている。こうして見てみると会長も可愛らしい女の子だな。男女問わず月野学園の大半の生徒から人気を集めているのも分かる気がする。
「ねえ、玲人君」
「何ですか?」
「私のナポリタン、一口食べてみる?」
「ありがとうございます。じゃあ、そのお礼に俺のオムライスも一口あげますね」
「あ、ありがと」
そっちから言い始めたことなのに、どうして会長は恥ずかしがっているのか。オムライスをもらえるとは思っていなかったからかな。
「じゃあ、私の方から食べさせてあげるね。あーん」
「いただきます」
沙奈会長にナポリタンを食べさせてもらう。美味しいなぁ。小学校の給食にもナポリタンがあったから思い出すよ。琴葉が好きだったな。
「うん、ナポリタンも美味しいですね。……か、会長?」
どうしたんだろう、きょとんとしちゃって。
「玲人君、もっと恥ずかしがるかと思ったのに。あっさり食べちゃった」
「昔から、家族で食事をしに行くと姉さんと一口交換し合ったり、琴葉や姉さんの友達にお菓子を食べさせられたりしたので。今みたいに一言あれば、俺は全然かまいませんよ」
「……なるほどね。玲人君は女性経験豊富なんだ……」
どうして、今の話で女性経験豊富という結論に至ってしまうんだろう。姉や妹がいればこういうことが多いのは普通だと思ったんだけれど、実際は違うのかな。
「会長、オムライスですよ。あーん」
「いただきます!」
沙奈会長は勢いよくオムライスを食べて、うっとりとした表情になっている。これは予想通りだ。
「凄く美味しい。玲人君と間接キスしたからかな」
「……その言葉も俺の想像通りですよ」
だからこそ思わず笑ってしまう。
「あっ、ということは……このフォークでナポリタンを食べれば、もう一度、玲人君と間接キスができるじゃない!」
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