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本編
第25話『極限距離』
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身だしなみチェックの名簿を沙奈会長と副会長さんに確認してもらった。
名簿に書かれているのは5人。生徒会が書く名簿としては多い方らしい。ただ、これが風紀委員会の書く名簿であれば少ない方であるとのこと。風紀委員会にはズバズバと違反箇所を指摘する生徒さんがいたからなぁ。
「うん、OKだね。これで提出しよう」
「ありがとうございます」
「少しはこういうのが校則違反だってことは分かったかな?」
「……強烈に違反している生徒がいましたからね」
Yシャツを全て開けて登校してきた男子生徒や、普通に歩いていても下着が見えるかもしれないくらいにスカートの丈が短い女子生徒とか。沙奈会長を怒らせたら俺の名前も名簿に書かなければならない可能性が出てくるとか。
「今回はこの名簿に書かれるようなことを覚えておけばいいよ。それにしても、明らかに校則違反する生徒もいるのに、入学初日から金髪に染めてくる玲人君の方が目立っちゃっているよね」
「……もう慣れてしまいましたよ、悲しいことに」
それとも、俺が知らないだけでこの名簿に書かれている生徒も周りから変な視線を浴びているのかな。
違反者名簿は風紀委員会を通じて職員の方に提出された。この名簿に書かれている生徒は後日、生徒指導担当の教員から呼び出されて再度チェックされる。その時の態度によっては処分が検討されるとのこと。
今日も授業を受ける。
そういえば、火曜日って沙奈会長のクラスは体育があるんだっけ。先週は具合が悪そうだったけれど。
そんなことを考えながら外を眺めてみると、校庭にはこちらを見ている沙奈会長がいた。俺と目が合うと会長はにっこりと笑って手を振ってきた。もしかして、俺が外を見るのを待っていたのかな。
「可愛い人だ」
あの様子だと、沙奈会長のクラスメイトにも俺のことが好きだっていうことを言っていそうだ。
そういえば、今日は副会長さんが歯医者に行くから、放課後は沙奈会長と2人きりなのか。今日も生徒会の仕事を教えてくれるみたいだけれど、それにかこつけて変なことをされないかどうか心配だ。今朝も佐藤先輩のことで執拗に問われたけれど、副会長さんがいたおかげで早急に丸く収めることができたから。
「……どうなるのやら」
放課後のことを今から考えても仕方ないか。今は授業に集中しよう。
ただ、授業に集中し過ぎたこともあってか、あっという間に昼休みになり、あっという間に放課後になってしまった。
副会長さんがいたことで平和だった昼休みだったけれど、沙奈会長と2人きりの放課後はというと――。
「ここに生徒会が承認したことを示すハンコを押せばいいんだよ」
「こう……ですかね」
「うん、OK。こっちの書類にも押してくれるかな」
「分かりました。……よいしょっと」
「はーい、よくできました!」
多少、ご褒美として甘えさせてくるものの、沙奈会長から生徒会の仕事を教えてもらっている。何か変なことをされるかと思ったけれど。不安になっていたことが申し訳なく思うほどに平和だ。
「玲人君、仕事を覚えるのが早いね」
「沙奈会長や副会長さんの教え方が上手だからですよ」
「……嬉しいから頭を撫でてあげよう」
沙奈会長は俺の頭を優しく撫でてくる。放課後になってから、これで何度目だろう。
「今日のお仕事はこれで終わりだよ」
「そうですか。無事に終わって良かったです」
「玲人君が生徒会に入ってくれたおかげだと思うよ。風紀委員会でもなければ、図書委員会でもなくて……生徒会に入ってくれてさ」
いつしか、俺の頭を撫でていた沙奈会長の手は背中へと移動して、自分の方へと抱き寄せる。
「嫉妬深くて、執念深くてごめん。でも、今朝……図書委員の彼女と話している玲人君の姿を見たら、私、凄く不安になっちゃって。だから、あんな態度を取っちゃって。本当に……ごめんなさい」
今朝の沙奈会長は先週、ローブで縛られたとき以上の恐ろしさを感じたからな。それだけ俺への想いが深い証拠なんだろうけど。
「先週のことも、今日のことも、全ては俺のことが好きだからという想いからですよね」
「……うん」
「睡眠薬で眠らされてロープで縛られたり、突然家に来られたりしたことに比べれば……今朝のことをすぐに謝ってくれるなんて会長も成長したなって思いますよ」
今朝の場合は、副会長さんがその場に居合わせたおかげでもあるけれど。沙奈会長に偉そうに言っている俺自身は成長できているのだろうか。
「そう言ってくれると嬉しいな。じゃあ、前よりは……好きになってくれてる?」
沙奈会長は潤ませた眼で俺のことを見つめながらそう問いかけてくる。
「第一印象が最悪でしたからね。ロープで縛られたあのときに比べれば、今の沙奈会長は可愛らしくて素敵な人だと思っていますよ」
「……本当? 嘘じゃない?」
「嘘をついてどうするんですか。思ったことを素直に言っただけですよ」
最初から俺のことが好きであることは分かっていたけれど、あのときは俺を自分のものにするためなら手段を選ばない感じがして恐ろしかったから。
1週間以上、沙奈会長と一緒に過ごしたことで可愛らしく、人間らしい部分を知っていったので好感度はかなり上がっている。
「そっか、本当なんだ。嬉しいな。でも、不安になっちゃうよ」
すると、沙奈会長は寂しげな表情を浮かべた。
「だって、そんなに素敵な言葉を素直に言えるんだもん。それを知ったら、きっと……玲人君のことを好きになる子はたくさん出てくると思うよ」
「そんなものなんですかね」
ただ、学校では生徒会メンバーなどの一部の生徒を除いたら、ほとんど話していない。だからこそ一匹狼とか言われるんだろうけど。
自分の好きなこととかを誰かと話していたら、今のような状況にはなっていなかったかもしれないな。
「あの図書委員の子だって、好意を持っているかどうかはともかく、玲人君には素直に色々と話せるって感じだったよ」
「気さくに話してくれる先輩ですね。普段は煙たがられるからこそ、彼女のような人がとても眩しく思えます」
「……そうなんだ」
沙奈会長は悔しそうな表情を浮かべて、下唇を噛んでいた。そんな彼女の様子を見て思い浮かんだ言葉はやっぱり、『やっぱり』だった。
「玲人君に側にいてほしい気持ちは一目惚れをしたあの日から変わっていない。玲人君には誰とも付き合ってほしくないの。私と恋人として付き合ってほしい。玲人君が生徒会に入ってくれて、嬉しい気持ちもあるけれど、玲人君の素敵なところを見ると不安にもなるの」
気付けば、会長の目からはいくつものの涙がこぼれ落ちていた。
「これはわがままだって分かってる。でも、玲人君が私のことを好きになってきてくれているなら、私にキスをしてほしい。玲人君から……してほしいの」
沙奈会長はゆっくりと目を閉じる。
確かに、俺は沙奈会長のことを出会った頃に比べれば可愛いと思っている。素敵だとも思っている。好きになってきている。
ただ、今の逢坂玲人は、人に言わせれば普通ではない道を通ってきて作られたものだ。
「会長の気持ちもある程度は理解できますけど、キスは付き合っている人達がすることでしょう? 俺から沙奈会長にはできません。ごめんなさい」
今のこの状況で俺は恋人として誰かと付き合うつもりはない。付き合えない。
会長はゆっくりと目を開けると、必死に笑顔を作ろうとしている。怒ることもなければ、泣くこともなく。それは2年前の琴葉と重なる部分がある。
「……彼女のため?」
琴葉のことを考えていたからか、まるで体中に強い電気が走ったかのように全身がビクついて、胃がキュッと痛む。
「ええ。琴葉が眠り続けている限り、俺は琴葉のことを見守りたいんです。それが琴葉に対する俺なりの責任の取り方ですから」
「玲人君……」
「今の状況が変わらない限り、俺は誰とも恋人として付き合うつもりはありません。恋人じゃない限り、キスはしたくない。これは俺のわがままなのかもしれません。沙奈会長の想いに応えることができなくてごめんなさい」
ただ、琴葉が目を覚ましたり、亡くなったりしたら俺はどうなるんだろう。誰かと付き合うのだろうか。考えるほど分からなくなっていく。
「私こそ、ごめん。玲人君がそこまで考えているってことが分からなくて。辛い想いをさせちゃったよね。本当にごめんなさい」
「そこまで辛くはないですよ。気持ちを伝えたにも関わらず、会長が無理矢理にキスをしてきたらまた別ですけど。沙奈会長は頼りになるいい先輩だって分かっていますし、同じ生徒会メンバーとしての付き合いはしていくつもりです。事前に連絡をくれれば、また家に泊まりに来てくれてもいいですから」
もう1人、俺に甘えてくる姉ができたような感覚だから。きっと、琴葉も許してくれるんじゃないかと勝手に思っている。
「ありがとう、玲人君。嫌われていないだけ本当に良かった。大嫌いだって言われたら死んじゃっていたところだから」
「まったく大げさですよ、沙奈会長」
そういう言葉が出てしまうほど、俺のことが大好きなんだろうな。
「でも、世の中何が起こるか分からないし、明日になったら私、死んじゃうかもしれないよ。だから、やりたいって思うことはすぐに実行しようって心がけてるの」
「……会長がそう心がけているのが納得できる気がします」
思い返してみると、沙奈会長は色々なことを突然やってきたから。
「……ごめんね、色々と言っちゃって。そろそろ帰ろうか」
「そうですね」
何とも言えない空気の中、帰ろうという言葉にほっとしてしまった。
校舎を出ると、空は予報とは違ってどんよりと雲が広がっている。陽差しがないと今の時期でもまだまだ寒い。
校門を出たところで沙奈会長と別れて、俺は真っ直ぐ家に帰るのであった。
名簿に書かれているのは5人。生徒会が書く名簿としては多い方らしい。ただ、これが風紀委員会の書く名簿であれば少ない方であるとのこと。風紀委員会にはズバズバと違反箇所を指摘する生徒さんがいたからなぁ。
「うん、OKだね。これで提出しよう」
「ありがとうございます」
「少しはこういうのが校則違反だってことは分かったかな?」
「……強烈に違反している生徒がいましたからね」
Yシャツを全て開けて登校してきた男子生徒や、普通に歩いていても下着が見えるかもしれないくらいにスカートの丈が短い女子生徒とか。沙奈会長を怒らせたら俺の名前も名簿に書かなければならない可能性が出てくるとか。
「今回はこの名簿に書かれるようなことを覚えておけばいいよ。それにしても、明らかに校則違反する生徒もいるのに、入学初日から金髪に染めてくる玲人君の方が目立っちゃっているよね」
「……もう慣れてしまいましたよ、悲しいことに」
それとも、俺が知らないだけでこの名簿に書かれている生徒も周りから変な視線を浴びているのかな。
違反者名簿は風紀委員会を通じて職員の方に提出された。この名簿に書かれている生徒は後日、生徒指導担当の教員から呼び出されて再度チェックされる。その時の態度によっては処分が検討されるとのこと。
今日も授業を受ける。
そういえば、火曜日って沙奈会長のクラスは体育があるんだっけ。先週は具合が悪そうだったけれど。
そんなことを考えながら外を眺めてみると、校庭にはこちらを見ている沙奈会長がいた。俺と目が合うと会長はにっこりと笑って手を振ってきた。もしかして、俺が外を見るのを待っていたのかな。
「可愛い人だ」
あの様子だと、沙奈会長のクラスメイトにも俺のことが好きだっていうことを言っていそうだ。
そういえば、今日は副会長さんが歯医者に行くから、放課後は沙奈会長と2人きりなのか。今日も生徒会の仕事を教えてくれるみたいだけれど、それにかこつけて変なことをされないかどうか心配だ。今朝も佐藤先輩のことで執拗に問われたけれど、副会長さんがいたおかげで早急に丸く収めることができたから。
「……どうなるのやら」
放課後のことを今から考えても仕方ないか。今は授業に集中しよう。
ただ、授業に集中し過ぎたこともあってか、あっという間に昼休みになり、あっという間に放課後になってしまった。
副会長さんがいたことで平和だった昼休みだったけれど、沙奈会長と2人きりの放課後はというと――。
「ここに生徒会が承認したことを示すハンコを押せばいいんだよ」
「こう……ですかね」
「うん、OK。こっちの書類にも押してくれるかな」
「分かりました。……よいしょっと」
「はーい、よくできました!」
多少、ご褒美として甘えさせてくるものの、沙奈会長から生徒会の仕事を教えてもらっている。何か変なことをされるかと思ったけれど。不安になっていたことが申し訳なく思うほどに平和だ。
「玲人君、仕事を覚えるのが早いね」
「沙奈会長や副会長さんの教え方が上手だからですよ」
「……嬉しいから頭を撫でてあげよう」
沙奈会長は俺の頭を優しく撫でてくる。放課後になってから、これで何度目だろう。
「今日のお仕事はこれで終わりだよ」
「そうですか。無事に終わって良かったです」
「玲人君が生徒会に入ってくれたおかげだと思うよ。風紀委員会でもなければ、図書委員会でもなくて……生徒会に入ってくれてさ」
いつしか、俺の頭を撫でていた沙奈会長の手は背中へと移動して、自分の方へと抱き寄せる。
「嫉妬深くて、執念深くてごめん。でも、今朝……図書委員の彼女と話している玲人君の姿を見たら、私、凄く不安になっちゃって。だから、あんな態度を取っちゃって。本当に……ごめんなさい」
今朝の沙奈会長は先週、ローブで縛られたとき以上の恐ろしさを感じたからな。それだけ俺への想いが深い証拠なんだろうけど。
「先週のことも、今日のことも、全ては俺のことが好きだからという想いからですよね」
「……うん」
「睡眠薬で眠らされてロープで縛られたり、突然家に来られたりしたことに比べれば……今朝のことをすぐに謝ってくれるなんて会長も成長したなって思いますよ」
今朝の場合は、副会長さんがその場に居合わせたおかげでもあるけれど。沙奈会長に偉そうに言っている俺自身は成長できているのだろうか。
「そう言ってくれると嬉しいな。じゃあ、前よりは……好きになってくれてる?」
沙奈会長は潤ませた眼で俺のことを見つめながらそう問いかけてくる。
「第一印象が最悪でしたからね。ロープで縛られたあのときに比べれば、今の沙奈会長は可愛らしくて素敵な人だと思っていますよ」
「……本当? 嘘じゃない?」
「嘘をついてどうするんですか。思ったことを素直に言っただけですよ」
最初から俺のことが好きであることは分かっていたけれど、あのときは俺を自分のものにするためなら手段を選ばない感じがして恐ろしかったから。
1週間以上、沙奈会長と一緒に過ごしたことで可愛らしく、人間らしい部分を知っていったので好感度はかなり上がっている。
「そっか、本当なんだ。嬉しいな。でも、不安になっちゃうよ」
すると、沙奈会長は寂しげな表情を浮かべた。
「だって、そんなに素敵な言葉を素直に言えるんだもん。それを知ったら、きっと……玲人君のことを好きになる子はたくさん出てくると思うよ」
「そんなものなんですかね」
ただ、学校では生徒会メンバーなどの一部の生徒を除いたら、ほとんど話していない。だからこそ一匹狼とか言われるんだろうけど。
自分の好きなこととかを誰かと話していたら、今のような状況にはなっていなかったかもしれないな。
「あの図書委員の子だって、好意を持っているかどうかはともかく、玲人君には素直に色々と話せるって感じだったよ」
「気さくに話してくれる先輩ですね。普段は煙たがられるからこそ、彼女のような人がとても眩しく思えます」
「……そうなんだ」
沙奈会長は悔しそうな表情を浮かべて、下唇を噛んでいた。そんな彼女の様子を見て思い浮かんだ言葉はやっぱり、『やっぱり』だった。
「玲人君に側にいてほしい気持ちは一目惚れをしたあの日から変わっていない。玲人君には誰とも付き合ってほしくないの。私と恋人として付き合ってほしい。玲人君が生徒会に入ってくれて、嬉しい気持ちもあるけれど、玲人君の素敵なところを見ると不安にもなるの」
気付けば、会長の目からはいくつものの涙がこぼれ落ちていた。
「これはわがままだって分かってる。でも、玲人君が私のことを好きになってきてくれているなら、私にキスをしてほしい。玲人君から……してほしいの」
沙奈会長はゆっくりと目を閉じる。
確かに、俺は沙奈会長のことを出会った頃に比べれば可愛いと思っている。素敵だとも思っている。好きになってきている。
ただ、今の逢坂玲人は、人に言わせれば普通ではない道を通ってきて作られたものだ。
「会長の気持ちもある程度は理解できますけど、キスは付き合っている人達がすることでしょう? 俺から沙奈会長にはできません。ごめんなさい」
今のこの状況で俺は恋人として誰かと付き合うつもりはない。付き合えない。
会長はゆっくりと目を開けると、必死に笑顔を作ろうとしている。怒ることもなければ、泣くこともなく。それは2年前の琴葉と重なる部分がある。
「……彼女のため?」
琴葉のことを考えていたからか、まるで体中に強い電気が走ったかのように全身がビクついて、胃がキュッと痛む。
「ええ。琴葉が眠り続けている限り、俺は琴葉のことを見守りたいんです。それが琴葉に対する俺なりの責任の取り方ですから」
「玲人君……」
「今の状況が変わらない限り、俺は誰とも恋人として付き合うつもりはありません。恋人じゃない限り、キスはしたくない。これは俺のわがままなのかもしれません。沙奈会長の想いに応えることができなくてごめんなさい」
ただ、琴葉が目を覚ましたり、亡くなったりしたら俺はどうなるんだろう。誰かと付き合うのだろうか。考えるほど分からなくなっていく。
「私こそ、ごめん。玲人君がそこまで考えているってことが分からなくて。辛い想いをさせちゃったよね。本当にごめんなさい」
「そこまで辛くはないですよ。気持ちを伝えたにも関わらず、会長が無理矢理にキスをしてきたらまた別ですけど。沙奈会長は頼りになるいい先輩だって分かっていますし、同じ生徒会メンバーとしての付き合いはしていくつもりです。事前に連絡をくれれば、また家に泊まりに来てくれてもいいですから」
もう1人、俺に甘えてくる姉ができたような感覚だから。きっと、琴葉も許してくれるんじゃないかと勝手に思っている。
「ありがとう、玲人君。嫌われていないだけ本当に良かった。大嫌いだって言われたら死んじゃっていたところだから」
「まったく大げさですよ、沙奈会長」
そういう言葉が出てしまうほど、俺のことが大好きなんだろうな。
「でも、世の中何が起こるか分からないし、明日になったら私、死んじゃうかもしれないよ。だから、やりたいって思うことはすぐに実行しようって心がけてるの」
「……会長がそう心がけているのが納得できる気がします」
思い返してみると、沙奈会長は色々なことを突然やってきたから。
「……ごめんね、色々と言っちゃって。そろそろ帰ろうか」
「そうですね」
何とも言えない空気の中、帰ろうという言葉にほっとしてしまった。
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