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本編
第29話『Still Alive-後編-』
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公園の近くから走り始めておよそ10分。
体中が熱くなって汗も結構出てきたところで、沙奈会長の家の前に到着する。俺の家よりも大きくて立派な家だ。
よし、さっそく会長の家にお邪魔することにしよう。
――ピンポーン。
沙奈会長が倒れるほどなので、彼女以外に誰か1人くらいは看病するために家にいるはずだろう。
『はい、どちら様でしょうか。月野学園の生徒さんのようですが……』
どうして月野学園の生徒だと分かるのだろうかと思ったら、インターホンのところにカメラが付いている。そういえば、引っ越した今の家のインターホンにも付いていたな。
「はい。月野学園高校1年、逢坂玲人といいます。生徒会の庶務係をやっているのですが」
『あなたが、沙奈がよく話している逢坂さんですか。今日も倒れた娘のことを保健室まで運んでくれたと聞いています。ありがとうございます』
「いえいえ。沙奈さんのお見舞いに来たのですが、大丈夫でしょうか」
『もちろんです。沙奈は逢坂さんのことをとても好きみたいですし。きっと元気になると思います。少々お待ちください』
とりあえず、沙奈会長と会うことができるようで良かった。沙奈会長、俺のことをご家族に話していたんだな。あと、今、話してくれたのは沙奈会長のお母さんだったのか。綺麗な声だったな。
すぐに玄関の扉が開き、中からセーターを着た落ち着いた雰囲気の女性が出てくる。沙奈会長と同じロングヘアで、会長に顔立ちも似ているけれど、この方が会長のお母さんなのかな。
「初めまして、逢坂さん。沙奈の母です」
「初めまして、月野学園高校1年の逢坂玲人です。沙奈さんのお見舞いに来ました」
「ありがとうございます。沙奈の言うようにとてもかっこいいですね。いずれは沙奈の旦那さんになるのかしら」
「……どうでしょうね」
ただ、沙奈会長がご家族に対して俺のことをどんな風に話しているのかは分かった。
「さあ、上がってください」
「はい。お邪魔します。失礼します」
沙奈会長のお母さんの案内で俺は家の中に入る。
すると、玄関にはYシャツ姿の可愛らしい女の子が。沙奈会長よりも背は小さく、髪はミディアムヘア。可愛い顔つきをしているけれど幼げな感じがするので、彼女が沙奈会長の妹さんなのかな。
「お母さん、こちらの方ってもしかして?」
「ええ。お姉ちゃんがいつも言っている逢坂さんよ」
その瞬間に女の子の表情がぱあっと明るくなる。
「そうなんだ! 初めまして、あたし、如月真奈《きさらぎまな》といいます。中学2年生です」
「初めまして、逢坂玲人です。高校1年生です。お姉さんからの推薦もあって、先週から生徒会で一緒に活動をしているよ」
「そうなんですね。あたしも将来、月野学園に入学してお姉ちゃんや逢坂さんのように生徒会に入りたいなって考えています」
「そうなんだ。実際にそうなれるように頑張ってね。応援しているよ」
「はい! ありがとうございます」
真奈ちゃんは沙奈会長よりも大人しそうな女の子に思えるけれど、今のような笑った顔が会長にそっくりだ。さすがは姉妹。
「沙奈会長のお部屋はどこでしょうか。できれば2人きりで話したいのですが……」
話すだけならお母さんや真奈ちゃんがいてもかまわないけれど、キスをするからその様子は誰にも見られたくない。
「分かりました。じゃあ、あたしが案内しますね。きっと、逢坂さんと会ったらお姉ちゃんも元気になると思います」
すると、真奈ちゃんと沙奈会長のお母さんはニヤリと笑う。きっと、キスとかキスをするんだろうだなって思っているんだろう。彼女の親や妹なのも納得だ。
真奈ちゃんに沙奈会長の部屋の前まで案内してもらった。
――コンコン。
軽くノックをするけれど……眠っているのか、あまりにも具合が悪いのか沙奈会長からの返事はない。
「お邪魔します」
小さな声でそう言いながら、静かに部屋の扉を開ける。そういえば、姉さん以外の女子の部屋に入るのは久しぶりだ。
部屋の中は薄暗いけれど、綺麗な部屋だということが分かる。あと、猫や熊のぬいぐるみがあったりもするので、女の子の部屋なんだなと思う。
「……だれ? お母さん? それとも、真奈?」
小さいけれど、沙奈会長の声が確かに聞こえた。部屋の中を見渡すと、ベッドに横になっている寝間着の沙奈会長が。
「逢坂です。生徒会の仕事が終わったのでお見舞いに来ました」
「……そうなんだ」
すると、沙奈会長はゆっくりと俺の方に体を向ける。俺と目が合うとにっこりと笑った。
「嬉しいな。まさか、ここに玲人君が来てくれるなんて。こんなにもいいことがあると、何だかもうすぐ死んじゃうのかなって思っちゃう。……大げさだよね」
あははっ、と沙奈会長は力なくはにかんだ。
きっと、俺を心配させないように大げさだと言っているけれど、ミッションを達成できないと、今日中に死んでしまうと分かっているから出た言葉なんだろう。
「会長、具合はどうですか。学校にいたときよりは少しでも楽になりましたか?」
「……正直、全然良くなってない。むしろ、悪くなっている感じもする。でも、玲人君の顔を見たらちょっと元気になった」
「……そうですか」
沙奈会長の額を触ってみると、今朝よりも熱くなっている気がする。これもミッションの期限に迫っているからなのか。
「玲人君の手、冷たくて気持ちいい」
「……今日は曇っていてずっと寒いですからね。手袋もしてませんし」
ここまで走ったから体はポカポカだけれど、この部屋の暖かさが心地よい。
「……バチが当たったのかな」
「えっ?」
「だって、玲人君に色々なことをしたじゃない。ロープで縛ったり、家まで押しかけたり、勝手に告示の紙を作ったり。玲人君が嫌な態度を取っていたのに、そんなことをおかまいなしにやっちゃって。……玲人君のことを好きになることがいけなかったのかな」
すると、沙奈会長の目から涙がポロポロとこぼれ落ちる。
アリスさんも琴葉のことを考えると、沙奈会長のことが邪魔だったと言っていた。そのことを沙奈会長は知っているのだろうか。それとも、単に俺に対する罪悪感からなのか。
「俺のことを好きになるのはいけないことじゃないですよ」
「……本当?」
「もちろんです」
「……そっか。玲人君は………私のことをどう想ってくれているの? いつの日か、私は……玲人君の彼女になることができるのかな? 教えてほしいな」
気付けば、涙は止まっていたけれど、依然として潤んだ瞳で沙奈会長は俺のことを見つめてくる。
沙奈会長のことを俺はどう想っているのか。好きかどうかはまだ分からないけれど、はっきりと抱いている彼女に対する気持ちはあった。
「好意を抱いているかどうかはまだ分かりません。でも、沙奈会長のことは琴葉と同じようにとても大切に想っています。今日、副会長さんと一緒に生徒会の仕事をしましたけど、沙奈会長がいないからか、寂しい気持ちがどんどんと湧いてくるんです」
琴葉のことがたくさん頭によぎるけれど、これで沙奈会長のことを救うことができるなら、俺は躊躇わない。
「だから、沙奈会長には死なないでほしい」
そう言って、俺は沙奈会長にそっとキスをする。
沙奈会長の唇はとても柔らかくて、熱くて、甘くて。どのくらいキスをすればミッションを達成できるのか分からないので、彼女が拒む姿勢を示さない限りはこのままし続けるか。
やがて、沙奈会長からしっかりと抱きしめられる。
もしやと思って唇を離すと、そこにはにっこりと嬉しそうに笑う沙奈会長の顔がすぐ目の前にあった。
「ありがとう。玲人君の愛情ですっかりと元気になったよ」
さっきまでとは違い、沙奈会長はしっかりとした声でそう言った。
その言葉が本当かどうか確かめるために額を当ててみると、熱はすっかりと下がっていた。どうやら、ミッションは達成したと見なされたようだ。
「……良かった、間に合って」
と言っても、期限まであと7時間弱くらいあったけれど。
「間に合って、って……もしかして、私が今日中にキスされないと死ぬってことを知っていたの?」
「ええ。でも、会長に死なないでほしいって思っているのは本当ですから」
沙奈会長が元気になってから、改めて同じことを言うと恥ずかしくなってしまうな。
しかし、沙奈会長はそんな俺のことをからかう様子は全く見せず、嬉しそうな笑みを浮かべる。
「……分かってるよ。玲人君からの唇から感じるものがとても優しかったもん。温もりとか、柔らかさとか。あと、さっきのキスでスイッチ入っちゃった。もっと玲人君のことを感じたい」
そう言うと、沙奈会長は俺のことを抱き寄せて、彼女の方からキスをしてきた。興奮しているからなのか、会長は強引に俺の舌と絡ませてくる。生温かいし変な感触だけれど、あまり嫌な気分にならないのが悔しい。
唇を離したとき、沙奈会長はうっとりとしながらも幸せそうな笑みを浮かべている。唇に付いている唾液を舌で舐め取っている姿が艶やかだ。
「玲人君のことますます好きになっちゃった。ファーストキスを玲人君にあげることもできたし、凄く幸せな気分だよ」
「……そうですか」
「ありがとう、玲人君。今のキスで玲人君の唾液も飲んじゃったし、これはもう結婚っていう未来しかないね」
「さっそくエンジン全開ですね。会長と結婚するなんて全然考えてませんけど」
沙奈会長、あっという間に復活したな。しかも、今まで以上に元気になっているし。これなら明日は普通に登校できそうだ。
「ミッションのことは誰にも知られないようにって注意されていたけれど、何か理由があって玲人君もキスのことを知っているみたいだし、ちゃんと話すよ」
「ええ。聞かせてください」
アリスさんの話によると、沙奈会長にミッションを課した件について琴葉が関わっているそうだから。
「その前に、体調が良くなったんですから、このことをお母さんと真奈ちゃんに伝えましょうか」
「そうだね。玲人君の熱くて優しい愛情行為のおかげで元気になったって伝えないと」
「……詳しい内容を言うのは避けておきましょうか」
沙奈会長のお母さんと真奈ちゃんに、体調が良くなったことを報告する。会長の元気な姿を見てお母さんは嬉し泣きをし、真奈ちゃんは喜んだ様子で沙奈会長のことを抱きしめていた。
治った理由についても当然訊かれたけれど、医者から処方された薬が思った以上に効いて、俺と会ったら精神的にも元気になったからだと沙奈会長は上手くごまかした。さすがは生徒会長をやっているだけはある。俺は心の中で拍手を贈ったのであった。
体中が熱くなって汗も結構出てきたところで、沙奈会長の家の前に到着する。俺の家よりも大きくて立派な家だ。
よし、さっそく会長の家にお邪魔することにしよう。
――ピンポーン。
沙奈会長が倒れるほどなので、彼女以外に誰か1人くらいは看病するために家にいるはずだろう。
『はい、どちら様でしょうか。月野学園の生徒さんのようですが……』
どうして月野学園の生徒だと分かるのだろうかと思ったら、インターホンのところにカメラが付いている。そういえば、引っ越した今の家のインターホンにも付いていたな。
「はい。月野学園高校1年、逢坂玲人といいます。生徒会の庶務係をやっているのですが」
『あなたが、沙奈がよく話している逢坂さんですか。今日も倒れた娘のことを保健室まで運んでくれたと聞いています。ありがとうございます』
「いえいえ。沙奈さんのお見舞いに来たのですが、大丈夫でしょうか」
『もちろんです。沙奈は逢坂さんのことをとても好きみたいですし。きっと元気になると思います。少々お待ちください』
とりあえず、沙奈会長と会うことができるようで良かった。沙奈会長、俺のことをご家族に話していたんだな。あと、今、話してくれたのは沙奈会長のお母さんだったのか。綺麗な声だったな。
すぐに玄関の扉が開き、中からセーターを着た落ち着いた雰囲気の女性が出てくる。沙奈会長と同じロングヘアで、会長に顔立ちも似ているけれど、この方が会長のお母さんなのかな。
「初めまして、逢坂さん。沙奈の母です」
「初めまして、月野学園高校1年の逢坂玲人です。沙奈さんのお見舞いに来ました」
「ありがとうございます。沙奈の言うようにとてもかっこいいですね。いずれは沙奈の旦那さんになるのかしら」
「……どうでしょうね」
ただ、沙奈会長がご家族に対して俺のことをどんな風に話しているのかは分かった。
「さあ、上がってください」
「はい。お邪魔します。失礼します」
沙奈会長のお母さんの案内で俺は家の中に入る。
すると、玄関にはYシャツ姿の可愛らしい女の子が。沙奈会長よりも背は小さく、髪はミディアムヘア。可愛い顔つきをしているけれど幼げな感じがするので、彼女が沙奈会長の妹さんなのかな。
「お母さん、こちらの方ってもしかして?」
「ええ。お姉ちゃんがいつも言っている逢坂さんよ」
その瞬間に女の子の表情がぱあっと明るくなる。
「そうなんだ! 初めまして、あたし、如月真奈《きさらぎまな》といいます。中学2年生です」
「初めまして、逢坂玲人です。高校1年生です。お姉さんからの推薦もあって、先週から生徒会で一緒に活動をしているよ」
「そうなんですね。あたしも将来、月野学園に入学してお姉ちゃんや逢坂さんのように生徒会に入りたいなって考えています」
「そうなんだ。実際にそうなれるように頑張ってね。応援しているよ」
「はい! ありがとうございます」
真奈ちゃんは沙奈会長よりも大人しそうな女の子に思えるけれど、今のような笑った顔が会長にそっくりだ。さすがは姉妹。
「沙奈会長のお部屋はどこでしょうか。できれば2人きりで話したいのですが……」
話すだけならお母さんや真奈ちゃんがいてもかまわないけれど、キスをするからその様子は誰にも見られたくない。
「分かりました。じゃあ、あたしが案内しますね。きっと、逢坂さんと会ったらお姉ちゃんも元気になると思います」
すると、真奈ちゃんと沙奈会長のお母さんはニヤリと笑う。きっと、キスとかキスをするんだろうだなって思っているんだろう。彼女の親や妹なのも納得だ。
真奈ちゃんに沙奈会長の部屋の前まで案内してもらった。
――コンコン。
軽くノックをするけれど……眠っているのか、あまりにも具合が悪いのか沙奈会長からの返事はない。
「お邪魔します」
小さな声でそう言いながら、静かに部屋の扉を開ける。そういえば、姉さん以外の女子の部屋に入るのは久しぶりだ。
部屋の中は薄暗いけれど、綺麗な部屋だということが分かる。あと、猫や熊のぬいぐるみがあったりもするので、女の子の部屋なんだなと思う。
「……だれ? お母さん? それとも、真奈?」
小さいけれど、沙奈会長の声が確かに聞こえた。部屋の中を見渡すと、ベッドに横になっている寝間着の沙奈会長が。
「逢坂です。生徒会の仕事が終わったのでお見舞いに来ました」
「……そうなんだ」
すると、沙奈会長はゆっくりと俺の方に体を向ける。俺と目が合うとにっこりと笑った。
「嬉しいな。まさか、ここに玲人君が来てくれるなんて。こんなにもいいことがあると、何だかもうすぐ死んじゃうのかなって思っちゃう。……大げさだよね」
あははっ、と沙奈会長は力なくはにかんだ。
きっと、俺を心配させないように大げさだと言っているけれど、ミッションを達成できないと、今日中に死んでしまうと分かっているから出た言葉なんだろう。
「会長、具合はどうですか。学校にいたときよりは少しでも楽になりましたか?」
「……正直、全然良くなってない。むしろ、悪くなっている感じもする。でも、玲人君の顔を見たらちょっと元気になった」
「……そうですか」
沙奈会長の額を触ってみると、今朝よりも熱くなっている気がする。これもミッションの期限に迫っているからなのか。
「玲人君の手、冷たくて気持ちいい」
「……今日は曇っていてずっと寒いですからね。手袋もしてませんし」
ここまで走ったから体はポカポカだけれど、この部屋の暖かさが心地よい。
「……バチが当たったのかな」
「えっ?」
「だって、玲人君に色々なことをしたじゃない。ロープで縛ったり、家まで押しかけたり、勝手に告示の紙を作ったり。玲人君が嫌な態度を取っていたのに、そんなことをおかまいなしにやっちゃって。……玲人君のことを好きになることがいけなかったのかな」
すると、沙奈会長の目から涙がポロポロとこぼれ落ちる。
アリスさんも琴葉のことを考えると、沙奈会長のことが邪魔だったと言っていた。そのことを沙奈会長は知っているのだろうか。それとも、単に俺に対する罪悪感からなのか。
「俺のことを好きになるのはいけないことじゃないですよ」
「……本当?」
「もちろんです」
「……そっか。玲人君は………私のことをどう想ってくれているの? いつの日か、私は……玲人君の彼女になることができるのかな? 教えてほしいな」
気付けば、涙は止まっていたけれど、依然として潤んだ瞳で沙奈会長は俺のことを見つめてくる。
沙奈会長のことを俺はどう想っているのか。好きかどうかはまだ分からないけれど、はっきりと抱いている彼女に対する気持ちはあった。
「好意を抱いているかどうかはまだ分かりません。でも、沙奈会長のことは琴葉と同じようにとても大切に想っています。今日、副会長さんと一緒に生徒会の仕事をしましたけど、沙奈会長がいないからか、寂しい気持ちがどんどんと湧いてくるんです」
琴葉のことがたくさん頭によぎるけれど、これで沙奈会長のことを救うことができるなら、俺は躊躇わない。
「だから、沙奈会長には死なないでほしい」
そう言って、俺は沙奈会長にそっとキスをする。
沙奈会長の唇はとても柔らかくて、熱くて、甘くて。どのくらいキスをすればミッションを達成できるのか分からないので、彼女が拒む姿勢を示さない限りはこのままし続けるか。
やがて、沙奈会長からしっかりと抱きしめられる。
もしやと思って唇を離すと、そこにはにっこりと嬉しそうに笑う沙奈会長の顔がすぐ目の前にあった。
「ありがとう。玲人君の愛情ですっかりと元気になったよ」
さっきまでとは違い、沙奈会長はしっかりとした声でそう言った。
その言葉が本当かどうか確かめるために額を当ててみると、熱はすっかりと下がっていた。どうやら、ミッションは達成したと見なされたようだ。
「……良かった、間に合って」
と言っても、期限まであと7時間弱くらいあったけれど。
「間に合って、って……もしかして、私が今日中にキスされないと死ぬってことを知っていたの?」
「ええ。でも、会長に死なないでほしいって思っているのは本当ですから」
沙奈会長が元気になってから、改めて同じことを言うと恥ずかしくなってしまうな。
しかし、沙奈会長はそんな俺のことをからかう様子は全く見せず、嬉しそうな笑みを浮かべる。
「……分かってるよ。玲人君からの唇から感じるものがとても優しかったもん。温もりとか、柔らかさとか。あと、さっきのキスでスイッチ入っちゃった。もっと玲人君のことを感じたい」
そう言うと、沙奈会長は俺のことを抱き寄せて、彼女の方からキスをしてきた。興奮しているからなのか、会長は強引に俺の舌と絡ませてくる。生温かいし変な感触だけれど、あまり嫌な気分にならないのが悔しい。
唇を離したとき、沙奈会長はうっとりとしながらも幸せそうな笑みを浮かべている。唇に付いている唾液を舌で舐め取っている姿が艶やかだ。
「玲人君のことますます好きになっちゃった。ファーストキスを玲人君にあげることもできたし、凄く幸せな気分だよ」
「……そうですか」
「ありがとう、玲人君。今のキスで玲人君の唾液も飲んじゃったし、これはもう結婚っていう未来しかないね」
「さっそくエンジン全開ですね。会長と結婚するなんて全然考えてませんけど」
沙奈会長、あっという間に復活したな。しかも、今まで以上に元気になっているし。これなら明日は普通に登校できそうだ。
「ミッションのことは誰にも知られないようにって注意されていたけれど、何か理由があって玲人君もキスのことを知っているみたいだし、ちゃんと話すよ」
「ええ。聞かせてください」
アリスさんの話によると、沙奈会長にミッションを課した件について琴葉が関わっているそうだから。
「その前に、体調が良くなったんですから、このことをお母さんと真奈ちゃんに伝えましょうか」
「そうだね。玲人君の熱くて優しい愛情行為のおかげで元気になったって伝えないと」
「……詳しい内容を言うのは避けておきましょうか」
沙奈会長のお母さんと真奈ちゃんに、体調が良くなったことを報告する。会長の元気な姿を見てお母さんは嬉し泣きをし、真奈ちゃんは喜んだ様子で沙奈会長のことを抱きしめていた。
治った理由についても当然訊かれたけれど、医者から処方された薬が思った以上に効いて、俺と会ったら精神的にも元気になったからだと沙奈会長は上手くごまかした。さすがは生徒会長をやっているだけはある。俺は心の中で拍手を贈ったのであった。
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