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本編
第45話『集結』
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白闇の中、入院着を着た琴葉が優しい目つきで僕のことを見つめている。これはアリスさんが見せている映像なのか。それとも僕の夢なのか。
「レイ君、いよいよだね。みんなで力を合わせて、決着を付けてね」
「……ああ、決着を付けてみせるさ」
僕がそう言うと、琴葉はニッコリと笑って、僕の目の前からすっと消えていったのであった。
4月28日、土曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、部屋の中はうっすらと明るくなっていた。昨日は早めに寝たけれど、どうやらぐっすりと眠ってしまったようだ。
「あっ、玲人君が起きましたよ」
「そうだね。おはよう、逢坂君」
「おはよう、玲人君」
聞き慣れた声が聞こえたような気がしたので、横を向いてみると、ベッドのすぐ近くで沙奈会長と副会長さんが僕をじっと見ていた。
「うわああっ!」
どうして、こんなに朝早くからいるんだよ。しかも、沙奈会長だけじゃなくて副会長さんまでいるとは。
「あははっ、玲人君がこんなに驚くなんて」
「いつもクールで落ち着いているから、何だか意外だよね」
沙奈会長と副会長さんは声を上げて笑っている。目を覚まして早々に笑われてしまうとは。
「それで、目は覚めたかな? 玲人君」
「一気に目覚めましたよ。沙奈会長はともかく、副会長さんまで来るとは思いませんでした。ていうか、会長にしか伝えてなかったですよね」
まさか、副会長さんと一緒に来るとは思わなかった。しかも、こんなに朝早く。
「玲人君にメッセージを返した後、樹里先輩にこのことを電話して。そうしたら、樹里先輩もここに来たいって」
「何もできないかもしれないけど。それに、今の生徒会の最も重要な課題は、逢坂君の抱えている問題を解決することだと思って。学校には多くの電話が来て、マスコミも校門近くで待っているし。これは最優先で取り組むべきことだと思ってね」
「……なるほど。特に校門前にマスコミ関係者がいると、多くの生徒に迷惑がかかりますからね。生徒会としても動かなければいけませんね」
「そういうこと、逢坂君」
だから、休日でも生徒会の活動をするために僕の家に集まったわけか。さすがに2人とも今日は私服だけれど。沙奈会長はデニムパンツにブラウス。副会長さんは肩開きのTシャツにロングスカートという格好だ。
僕の過去のことが発端なので、申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、それよりも2人が目の前にいる安心感と嬉しさの方が勝る。
「今日は僕のために来てくださってありがとうございます」
僕は沙奈会長と副会長さんの頭を優しく撫でる。もしかしたら、夢で琴葉が言っていた「みんなで力を合わせて」という言葉はこういうことなのかも。
「えへへっ、朝から玲人君に頭撫でられちゃった。玲人君の寝顔も可愛かったから、玲人君と結婚したい」
「沙奈ちゃん、話が飛躍しすぎだよ。逢坂君の寝顔が可愛かったとは思ったけど」
2人とも、僕が寝ているからこっそりと部屋の中に入ってきたんだろうな。部屋の時計を見てみると、今は8時過ぎか。
「さてと、10時過ぎくらいに氷室さんと刑事さんが来るから、早く朝ご飯を食べないと。沙奈会長と副会長さんはもう朝ご飯は済ませていますか?」
「うん、食べてきたよ、玲人君」
「私も大丈夫」
「じゃあ、2人は氷室さん達が来るまで、僕の部屋でゆっくりしていてください」
その後、僕は朝ご飯を食べる中で今一度、これまでのことを頭の中で整理する。はたして、僕が持っている情報で、警察が正しい方向に動いてもらえるきっかけを作ることができるだろうか。
そんなことを考えているとあっという間に時間が過ぎていって。約束の時間である午前10時を過ぎた。僕達はリビングに集まる。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので父さんが出ることに。氷室さん達かな。
「氷室君、よく来てくれたね」
やっぱり氷室さんなんだ。何だか緊張してきた。
「はい、お邪魔します。あの、羽賀の運転する車でここまで来たのですが、どこに駐車すればいいですか?」
「じゃあ、俺がその車に乗って近くの駐車場まで案内するから。氷室君と彼女さんは先にリビングに行ってほしい。息子がいますので」
「分かりました」
「彼女n間違えられちゃいましたね、氷室さん」
昨日の話だと、氷室さんと親友の刑事さんが来ることになっていたけど。もしかして3人で来たのかな。
「さあ、こちらですよ、氷室さんに……」
「浅野といいます。羽賀の部下です」
女性は浅野さんっていう名前なのか。
リビングには母さんと、ワイシャツにベスト姿の氷室さん、メガネをかけたスーツ姿の女性が入ってくる。この女性が浅野さんかな。氷室さん、実際に見ると本当にかっこいい人だな。母さんや姉さんが嬉々とした視線を彼に送っている。
氷室さんと浅野さんは僕達と向かい合う形でソファーに座った。そんな2人に姉さんが温かい緑茶を出す。
「こちらが息子の玲人です。そして、姉の麻実。長髪の子が玲人の通っている月野学園の生徒会長の如月沙奈ちゃん、ツインテールの子が副会長の笛吹樹里ちゃんです」
「初めまして、逢坂玲人です。よろしくお願いします」
「逢坂麻実です」
「月野学園生徒会長の如月沙奈です」
「副会長の笛吹樹里です」
僕達が自己紹介をすると、氷室さんと浅野さんは穏やかな笑みを浮かべる。
「玲人君に麻実ちゃん、如月さんに笛吹さん……分かりました。こちらも自己紹介をしましょうか。初めまして、株式会社SKTTの氷室智也です。年度の変わり目で、逢坂さんのいる部署に異動してきました。逢坂さんからは玲人君の話は聞いています。僕達が何か力になれればいいと思います」
「初めまして、警視庁刑事部捜査一課の浅野千尋といいます。階級は巡査部長です。2歳年下の上司である羽賀さんの助っ人として来ました」
氷室さんと浅野さんは名刺を差し出してきた。浅野さんという女性は警察官なのか。上司は年下なんだ。どうやら、社会に出ると複雑な事情があるようだ。
「彼女から出た羽賀というのが僕の親友の警察官です。2歳年下の上司というのは、羽賀の階級が警視だからというのが主な理由ですね」
「羽賀さんは凄いんですよ! 私よりも若いのに頭も良ければ運動神経も良く、事件解決率は警視庁の中でもナンバーワンのキャリア警察官。おまけに超イケメンなのです! 私はそんな羽賀さんのことを色々な意味で尊敬しています!」
「色々と妄想をして興奮するのは分かりますが、初対面の人の前ではやらないでくださいね」
「つい熱く語ってしまいました。でも、玲人さんもなかなかの逸材な気がします」
「10歳以上若い高校生を妄想の種にしないでくださいよ。興奮しすぎて鼻血を出すのは厳禁ですから」
「人様の家で鼻血は出しませんって」
今のやり取りからして、氷室さんと浅野さんも以前からの知り合いのようだ。
それにしても、部下の女性から色々な意味で尊敬されるなんて、羽賀さんってどんな警察官なんだろう。あと、僕が逸材ってどういうことなんだか。
「気にしないでいいよ、玲人君。彼女はただ……男同士の色々なことを頭の中で妄想するのが趣味な人だから」
「……そうなんですね」
いわゆる、腐女子ってやつなのかな、浅野さんは。彼女が警察官になった理由の一つが分かってしまった気がする。
「しかし、学校の生徒会の方が家に来てくれるなんて。玲人さんはとても愛されているのですね」
「はい! 私は玲人君のことをとても愛していますし、結婚したいほどに恋もしています!」
沙奈会長、初対面の人達に向かって嬉しそうに何を言っているんだか。本当のことだけれど。こっちが恥ずかしくなってくる。
「如月さんって、氷室さんの恋人と重なるところがありますね」
「……僕も同じことを思いました」
氷室さんの恋人は沙奈会長みたいな人なのか? こんなに執着心が強くて行動力のある女性はそうそういないだろう。。
「先輩方は僕の過去について知っています。それに、木曜日あたりから学校の前にマスコミが集まり始めたことで、月野学園の生徒への影響を及ぼしかねません。生徒会として解決すべき案件という意味でも、ここに来てもらっているんです」
「なるほどなるほど。学校として考えるべきことでもありますよね。それにしても、女子高生可愛いなぁ。その身分は10年ほど前に卒業してしまいました……」
あははっ……と浅野さんは力なく笑う。どうやら、彼女はアラサーと呼ばれるくらいの年齢らしい。こんなにもフランクな警察官もいるんだな。
「お待たせしました」
すると、廊下から父さんと一緒に、黒いジャケットを着た茶髪の男性が入ってくる。まさか、この人が氷室さんの親友の羽賀さんという警察官なのかな。氷室さん以上のイケメンだ。母さんと姉さん、副会長さんが興奮しているぞ。
羽賀さんは氷室さんと浅野さんの間に座る。そのことで、ちょうど僕の真正面にいる形に。
「緑茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
かっこいい人だからか、姉さんは嬉しそうな様子で羽賀さんにお茶を出した。
「羽賀、こちらの金髪の彼が例の逢坂玲人君だ。お姉さんの麻実ちゃん。玲人君の学校の生徒会の如月沙奈さんに、笛吹樹里さん。玲人君が生徒会に入っているから、今日ここに来たそうだ」
「なるほど。学校の先輩までが来ているとは、きっと真面目に学校生活を送っている賜物だろう。愛されている証拠だな。まるで君のようだ、氷室」
「ははっ、僕は学生時代に生徒会に入っていないし、ここまで女の子に囲まれたことはなかったよ」
「……そうだったな」
氷室さんと羽賀さんが隣同士で座っていると絵になるな。それを横から浅野さんが興奮した様子で見ている。妄想していたりして。
「初めまして。私、警視庁刑事部捜査一課理事官の羽賀尊といいます。よろしくお願いします」
羽賀さんも僕に名刺を差し出してくれる。きっと20代の半ばだろうけど、警視庁の理事官だなんて。階級は警視か。漫画やドラマだと、警視という階級の警察官はかなりやり手の人が多い。きっと、浅野さんの言うように凄い人なんだろうな。
「今日は息子のために来てくださってありがとうございます。氷室君にも本当に感謝しているよ」
「いえいえ、何かお役に立てれば嬉しいです。それにしても、羽賀が玲人君の逮捕された事件の話をしたら、深く興味を示してきたことには驚きました」
「逢坂君が殺人未遂の罪で逮捕されたこともそうですが、そのことで事件当時14歳の少年に執行猶予なしの禁固1年の実刑判決が出たことが気になっていまして。もし、現職の国会議員の圧力がかかっていたことが事実であれば、不正な捜査を行なった警察や司法関係者がいたということになります。以前に私も氷室と同じように、警察関係者の圧力によって不当な逮捕されたことがありますから」
そういえば、氷室さんの誤認逮捕された事件を調べた警察官が、公務執行妨害の疑いで逮捕されて捜査妨害を受けたというニュースもあったな。その警察官が羽賀さんだったのかな。
「そんな経験もあってか、特に警察関係者が関わっている事件については徹底的に事実を明らかにする考えです。逢坂君、まずはあなたが知っていることを私達に教えてくれませんか? もちろん、ゆっくりでかまいませんので」
「……分かりました」
「ありがとうございます。浅野さん、パソコンでメモをお願いします」
「分かりました! あと、記録としてこのICレコーダーでこれからの会話を録音させてもらいますね」
僕は羽賀さん達に2年前の事件のことや、菅原による事実の隠蔽、背景となった琴葉の受けたいじめについて話すのであった。
「レイ君、いよいよだね。みんなで力を合わせて、決着を付けてね」
「……ああ、決着を付けてみせるさ」
僕がそう言うと、琴葉はニッコリと笑って、僕の目の前からすっと消えていったのであった。
4月28日、土曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、部屋の中はうっすらと明るくなっていた。昨日は早めに寝たけれど、どうやらぐっすりと眠ってしまったようだ。
「あっ、玲人君が起きましたよ」
「そうだね。おはよう、逢坂君」
「おはよう、玲人君」
聞き慣れた声が聞こえたような気がしたので、横を向いてみると、ベッドのすぐ近くで沙奈会長と副会長さんが僕をじっと見ていた。
「うわああっ!」
どうして、こんなに朝早くからいるんだよ。しかも、沙奈会長だけじゃなくて副会長さんまでいるとは。
「あははっ、玲人君がこんなに驚くなんて」
「いつもクールで落ち着いているから、何だか意外だよね」
沙奈会長と副会長さんは声を上げて笑っている。目を覚まして早々に笑われてしまうとは。
「それで、目は覚めたかな? 玲人君」
「一気に目覚めましたよ。沙奈会長はともかく、副会長さんまで来るとは思いませんでした。ていうか、会長にしか伝えてなかったですよね」
まさか、副会長さんと一緒に来るとは思わなかった。しかも、こんなに朝早く。
「玲人君にメッセージを返した後、樹里先輩にこのことを電話して。そうしたら、樹里先輩もここに来たいって」
「何もできないかもしれないけど。それに、今の生徒会の最も重要な課題は、逢坂君の抱えている問題を解決することだと思って。学校には多くの電話が来て、マスコミも校門近くで待っているし。これは最優先で取り組むべきことだと思ってね」
「……なるほど。特に校門前にマスコミ関係者がいると、多くの生徒に迷惑がかかりますからね。生徒会としても動かなければいけませんね」
「そういうこと、逢坂君」
だから、休日でも生徒会の活動をするために僕の家に集まったわけか。さすがに2人とも今日は私服だけれど。沙奈会長はデニムパンツにブラウス。副会長さんは肩開きのTシャツにロングスカートという格好だ。
僕の過去のことが発端なので、申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、それよりも2人が目の前にいる安心感と嬉しさの方が勝る。
「今日は僕のために来てくださってありがとうございます」
僕は沙奈会長と副会長さんの頭を優しく撫でる。もしかしたら、夢で琴葉が言っていた「みんなで力を合わせて」という言葉はこういうことなのかも。
「えへへっ、朝から玲人君に頭撫でられちゃった。玲人君の寝顔も可愛かったから、玲人君と結婚したい」
「沙奈ちゃん、話が飛躍しすぎだよ。逢坂君の寝顔が可愛かったとは思ったけど」
2人とも、僕が寝ているからこっそりと部屋の中に入ってきたんだろうな。部屋の時計を見てみると、今は8時過ぎか。
「さてと、10時過ぎくらいに氷室さんと刑事さんが来るから、早く朝ご飯を食べないと。沙奈会長と副会長さんはもう朝ご飯は済ませていますか?」
「うん、食べてきたよ、玲人君」
「私も大丈夫」
「じゃあ、2人は氷室さん達が来るまで、僕の部屋でゆっくりしていてください」
その後、僕は朝ご飯を食べる中で今一度、これまでのことを頭の中で整理する。はたして、僕が持っている情報で、警察が正しい方向に動いてもらえるきっかけを作ることができるだろうか。
そんなことを考えているとあっという間に時間が過ぎていって。約束の時間である午前10時を過ぎた。僕達はリビングに集まる。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので父さんが出ることに。氷室さん達かな。
「氷室君、よく来てくれたね」
やっぱり氷室さんなんだ。何だか緊張してきた。
「はい、お邪魔します。あの、羽賀の運転する車でここまで来たのですが、どこに駐車すればいいですか?」
「じゃあ、俺がその車に乗って近くの駐車場まで案内するから。氷室君と彼女さんは先にリビングに行ってほしい。息子がいますので」
「分かりました」
「彼女n間違えられちゃいましたね、氷室さん」
昨日の話だと、氷室さんと親友の刑事さんが来ることになっていたけど。もしかして3人で来たのかな。
「さあ、こちらですよ、氷室さんに……」
「浅野といいます。羽賀の部下です」
女性は浅野さんっていう名前なのか。
リビングには母さんと、ワイシャツにベスト姿の氷室さん、メガネをかけたスーツ姿の女性が入ってくる。この女性が浅野さんかな。氷室さん、実際に見ると本当にかっこいい人だな。母さんや姉さんが嬉々とした視線を彼に送っている。
氷室さんと浅野さんは僕達と向かい合う形でソファーに座った。そんな2人に姉さんが温かい緑茶を出す。
「こちらが息子の玲人です。そして、姉の麻実。長髪の子が玲人の通っている月野学園の生徒会長の如月沙奈ちゃん、ツインテールの子が副会長の笛吹樹里ちゃんです」
「初めまして、逢坂玲人です。よろしくお願いします」
「逢坂麻実です」
「月野学園生徒会長の如月沙奈です」
「副会長の笛吹樹里です」
僕達が自己紹介をすると、氷室さんと浅野さんは穏やかな笑みを浮かべる。
「玲人君に麻実ちゃん、如月さんに笛吹さん……分かりました。こちらも自己紹介をしましょうか。初めまして、株式会社SKTTの氷室智也です。年度の変わり目で、逢坂さんのいる部署に異動してきました。逢坂さんからは玲人君の話は聞いています。僕達が何か力になれればいいと思います」
「初めまして、警視庁刑事部捜査一課の浅野千尋といいます。階級は巡査部長です。2歳年下の上司である羽賀さんの助っ人として来ました」
氷室さんと浅野さんは名刺を差し出してきた。浅野さんという女性は警察官なのか。上司は年下なんだ。どうやら、社会に出ると複雑な事情があるようだ。
「彼女から出た羽賀というのが僕の親友の警察官です。2歳年下の上司というのは、羽賀の階級が警視だからというのが主な理由ですね」
「羽賀さんは凄いんですよ! 私よりも若いのに頭も良ければ運動神経も良く、事件解決率は警視庁の中でもナンバーワンのキャリア警察官。おまけに超イケメンなのです! 私はそんな羽賀さんのことを色々な意味で尊敬しています!」
「色々と妄想をして興奮するのは分かりますが、初対面の人の前ではやらないでくださいね」
「つい熱く語ってしまいました。でも、玲人さんもなかなかの逸材な気がします」
「10歳以上若い高校生を妄想の種にしないでくださいよ。興奮しすぎて鼻血を出すのは厳禁ですから」
「人様の家で鼻血は出しませんって」
今のやり取りからして、氷室さんと浅野さんも以前からの知り合いのようだ。
それにしても、部下の女性から色々な意味で尊敬されるなんて、羽賀さんってどんな警察官なんだろう。あと、僕が逸材ってどういうことなんだか。
「気にしないでいいよ、玲人君。彼女はただ……男同士の色々なことを頭の中で妄想するのが趣味な人だから」
「……そうなんですね」
いわゆる、腐女子ってやつなのかな、浅野さんは。彼女が警察官になった理由の一つが分かってしまった気がする。
「しかし、学校の生徒会の方が家に来てくれるなんて。玲人さんはとても愛されているのですね」
「はい! 私は玲人君のことをとても愛していますし、結婚したいほどに恋もしています!」
沙奈会長、初対面の人達に向かって嬉しそうに何を言っているんだか。本当のことだけれど。こっちが恥ずかしくなってくる。
「如月さんって、氷室さんの恋人と重なるところがありますね」
「……僕も同じことを思いました」
氷室さんの恋人は沙奈会長みたいな人なのか? こんなに執着心が強くて行動力のある女性はそうそういないだろう。。
「先輩方は僕の過去について知っています。それに、木曜日あたりから学校の前にマスコミが集まり始めたことで、月野学園の生徒への影響を及ぼしかねません。生徒会として解決すべき案件という意味でも、ここに来てもらっているんです」
「なるほどなるほど。学校として考えるべきことでもありますよね。それにしても、女子高生可愛いなぁ。その身分は10年ほど前に卒業してしまいました……」
あははっ……と浅野さんは力なく笑う。どうやら、彼女はアラサーと呼ばれるくらいの年齢らしい。こんなにもフランクな警察官もいるんだな。
「お待たせしました」
すると、廊下から父さんと一緒に、黒いジャケットを着た茶髪の男性が入ってくる。まさか、この人が氷室さんの親友の羽賀さんという警察官なのかな。氷室さん以上のイケメンだ。母さんと姉さん、副会長さんが興奮しているぞ。
羽賀さんは氷室さんと浅野さんの間に座る。そのことで、ちょうど僕の真正面にいる形に。
「緑茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
かっこいい人だからか、姉さんは嬉しそうな様子で羽賀さんにお茶を出した。
「羽賀、こちらの金髪の彼が例の逢坂玲人君だ。お姉さんの麻実ちゃん。玲人君の学校の生徒会の如月沙奈さんに、笛吹樹里さん。玲人君が生徒会に入っているから、今日ここに来たそうだ」
「なるほど。学校の先輩までが来ているとは、きっと真面目に学校生活を送っている賜物だろう。愛されている証拠だな。まるで君のようだ、氷室」
「ははっ、僕は学生時代に生徒会に入っていないし、ここまで女の子に囲まれたことはなかったよ」
「……そうだったな」
氷室さんと羽賀さんが隣同士で座っていると絵になるな。それを横から浅野さんが興奮した様子で見ている。妄想していたりして。
「初めまして。私、警視庁刑事部捜査一課理事官の羽賀尊といいます。よろしくお願いします」
羽賀さんも僕に名刺を差し出してくれる。きっと20代の半ばだろうけど、警視庁の理事官だなんて。階級は警視か。漫画やドラマだと、警視という階級の警察官はかなりやり手の人が多い。きっと、浅野さんの言うように凄い人なんだろうな。
「今日は息子のために来てくださってありがとうございます。氷室君にも本当に感謝しているよ」
「いえいえ、何かお役に立てれば嬉しいです。それにしても、羽賀が玲人君の逮捕された事件の話をしたら、深く興味を示してきたことには驚きました」
「逢坂君が殺人未遂の罪で逮捕されたこともそうですが、そのことで事件当時14歳の少年に執行猶予なしの禁固1年の実刑判決が出たことが気になっていまして。もし、現職の国会議員の圧力がかかっていたことが事実であれば、不正な捜査を行なった警察や司法関係者がいたということになります。以前に私も氷室と同じように、警察関係者の圧力によって不当な逮捕されたことがありますから」
そういえば、氷室さんの誤認逮捕された事件を調べた警察官が、公務執行妨害の疑いで逮捕されて捜査妨害を受けたというニュースもあったな。その警察官が羽賀さんだったのかな。
「そんな経験もあってか、特に警察関係者が関わっている事件については徹底的に事実を明らかにする考えです。逢坂君、まずはあなたが知っていることを私達に教えてくれませんか? もちろん、ゆっくりでかまいませんので」
「……分かりました」
「ありがとうございます。浅野さん、パソコンでメモをお願いします」
「分かりました! あと、記録としてこのICレコーダーでこれからの会話を録音させてもらいますね」
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