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特別編
第3話『今昔ルーム』
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5月3日、木曜日。
今日からゴールデンウィーク後半の4連休が始まった。
琴葉が泊まりに来るので、早めに旅行の準備を済ませようと昨日から始めた結果、昨日のうちにほとんど終わってしまった。ちなみに、琴葉は御両親と一緒に、午後2時過ぎに家に来るとのこと。
「玲人、ここなんていいんじゃない?」
「……そこは長野に近いところにあるから保留かな」
「あっ、本当だ」
午前中から、姉さんと一緒に僕の部屋でガイドブックを見ながら、どこに行くか候補を挙げている。姉さんはご当地グルメをたくさん食べたいらしい。
ちなみに、河乃湖ハイランドは姉さんも行きたいと言ったので、昨日、学校で沙奈会長や副会長さんと話した通り、2日目はずっと河乃湖ハイランドで遊ぶことに決まった。
――ピンポーン。
インターホンが鳴る。部屋の時計を見てみると午後2時前なので、もしかしたら琴葉が家に来たのかも。
「行ってみようか、玲人」
「ああ」
姉さんと一緒に玄関に向かうと、そこにはキュロットスカートに半袖のTシャツというとてもラフな恰好をした琴葉がいた。
「お邪魔します! レイ君! 麻実ちゃん!」
「いらっしゃい、琴葉」
「琴葉ちゃん、いらっしゃい!」
すると、琴葉は勢いよく姉さんに抱きついてきた。抱きつくのは昔から変わらないけど、昔は僕に抱きついてくる方が多かったな。
「またレイ君と麻実ちゃんのお家に行けるなんてね。引っ越したのに懐かしいって感じるなんて、何だかおかしいよね」
「おかしくないよ。あたしだって懐かしいもん。うちに遊びに来た琴葉ちゃんをこうして抱きしめていることが」
そう言う琴葉と姉さんは目に涙を浮かべていた。こうして、琴葉が家に遊びに来るのはおよそ2年ぶりだもんな。
「じゃあ……さっそく僕の部屋に行く?」
「うん! 行きたい!」
「じゃあ、行こうか。荷物は僕が運ぶよ」
「ありがとう、レイ君」
今の僕の部屋を見てどう思うのかな。以前、沙奈会長が送った僕の写真には、部屋の様子が多少は写っていたけど。ちょっと緊張する。
「へえ、素敵なお部屋だね! 綺麗なのは小さい頃から変わってないな……」
好意的な反応でほっとした。昔からおもちゃを散らかすことはしなかったな。たまに、勉強机やテーブルの上に、物がたくさん置いてあることはあったけど。
「見た目は全然違うのに、匂いは変わらないね。安心するなぁ」
「匂いか……」
沙奈会長も同じようなことを言いそうだな。むしろ言ってほしいくらい。
「教科書も高校生のものになって……本当に2年近く経ったんだね」
「……そうだな」
「じゃあ、レイ君も高校生になったってことで……えっちな本とか隠したりするようになった?」
「……どうだろうね」
本当は成人向けの本なんて1冊も持っていないけど。それよりも、どうして僕の部屋に来る女の子の多くは、そういう類の本があるかどうか気になるんだろうか。
すると、琴葉はちょっとがっかりとした様子に。
「そうに答えるってことは持っているんだね。レイ君、沙奈さんっていう恋人もいるし持っていないと思っていたよ……」
「まるで、沙奈会長を性欲処理目的の恋人みたいに言わないでほしいな。じゃあ、これから紅茶を淹れてくるから、僕が戻ってくるまでの間に物色してみるといいよ」
「分かった。麻実ちゃん、探してみようよ」
「やる気満々だね。たぶん、ないと思うけど……恋をすると人は変わるって言うし、頑張って探してみようか」
「……物色していいとは言ったけど、散らかさないようにしてね」
僕は1階に降りてキッチンで3人分の紅茶を淹れる。
リビングからはうちの両親と琴葉の親御さんによる談笑が聞こえてきて。今日みたいに、休日だとたまに琴葉の親御さんもうちに来ていたっけ。まさに家族ぐるみの付き合いだった。それもあってか、2年前の事件があっても僕を非難することは一切なかった。
「……良かった」
琴葉が目覚めて、元気になって、また家に遊びに来て。明日からは一緒に2泊3日の旅行に行くことになって。
しみじみとした想いに浸りながら部屋に戻ると、琴葉と姉さんはエロ本物色を諦めたのかベッドの上でゴロゴロしていた。こういう風景も懐かしい。
「琴葉も姉さんも諦めたの?」
「うん。本棚とクローゼットを見たけど見つからないからね。それに、レイ君のベッドでゴロゴロしたいなって」
「……相変わらずだね」
「だって、レイ君の匂い大好きだもん」
ニコニコしながら琴葉はそう言う。今の言葉を沙奈会長が聞いたらどう思うか考えてみたけど、不快な思いを抱かずにむしろ喜んで琴葉と握手を交わしそう。
その後も、僕がいるのにも関わらず、琴葉と姉さんは僕のベッドの上でゴロゴロして、果てにはふとんの中に入った。
「あぁ、こうしていると3人で寝たのを思い出すよね」
「玲人を真ん中にして寝たよね」
「うんうん、そうだった。もちろん、今は沙奈さんっていう恋人がいるから、それはやらないけどね」
そうは言うけど、姉さんと一緒だからなのか、僕のベッドの中にはしっかりと入って、僕の匂いを堪能している。
「それに、今はレイ君……色気が凄いから、一緒に眠れるかどうか分からないし」
まるで、昔は色気が全く無かったような言い方だな。今の自分に色気があるかどうかなんてさっぱり分からないけれど。いつか、沙奈会長に訊いてみようかな?
そうだ、沙奈会長が来る前に、琴葉にあのことを訊いてみるか。
「ねえ、琴葉。昨日……沙奈会長と話しているときに、アルバムとホームビデオを厳選して持ってくるって言っていたじゃないか。……どんなものを持ってきたんだ?」
その内容によっては、沙奈会長が来てしまう前にどこかに隠さなければ。
「小さい頃、お互いの家で遊んだり、旅行に行ったりしたときの写真とホームビデオが多いかな」
「……それならいいけど」
「でも、面白いものもあった方がいいと思って、あたしや麻実ちゃんの服を着せたときの写真とかも持ってきたよ」
「琴葉も持っていたのか……」
面白くしなくてもいいんだけどな。それでも、女の子の服を着せられた小さい頃の写真は、既に沙奈会長に見られているからいいか。
「それよりも、早く飲まないと紅茶が冷めちゃうよ」
「そうだね、レイ君」
「猫舌だからそろそろいいかも」
そういえば、小さい頃は2人とも熱いものが得意じゃなかったか。今日は特別暑いわけじゃないからホットティーにしちゃったけど、アイスティーにすれば良かったかな。
琴葉と姉さんはベッドから降りて、テーブルの側に座って僕の淹れた紅茶を一口飲む。
「はぁ、レイ君の入れた紅茶美味しい」
「そうだね、琴葉ちゃん。ただ、あたしは甘いのが好きだから砂糖を入れよっと」
「あたしはミルク」
琴葉はミルク、姉さんは砂糖を入れて自分の好みの紅茶を作っていく。また一口飲んだときに見せる柔らかい笑みを見ると、何だかまったりとした気分になる。
――プルルッ。
うん? 誰のスマートフォンが鳴っているのかな。
一応、確認してみると、沙奈会長からメッセージが1件届いている。
『準備が一通り終わったから、真奈と一緒に玲人君の家に行くね!』
真奈ちゃんも家に来るのか。そういえば、真奈ちゃんは僕の家に来たことはまだ一度もなかったんだっけ。もしかしたら、旅行前に琴葉や姉さんと顔合わせをしたいと考えているのかも。
『分かりました。琴葉と3人で待っていますね』
というメッセージを送っておいた。
「もしかして、沙奈ちゃんから?」
「うん。旅行の準備が一通り終わったから、妹の真奈ちゃんと一緒にここに来るって」
「そうなんだ。そういえば、沙奈ちゃんには妹がいるんだったね」
「何歳くらいの子なの? レイ君」
「沙奈会長よりも3歳年下の中学2年生だよ」
「そっかぁ、中2か……」
そう呟くと、琴葉の笑みが切ないものになる。いじめられて、あの事件が起こったのは僕達が中学2年生のときだったからかな。
「……いい子だといいな。沙奈さんの妹だからきっといい子だろうけど」
「2回しか会っていないけど、いい子だと思っているよ、僕は。きっと、すぐに友達になれるさ」
「……うん」
昨日は真奈ちゃんと会うのを楽しみにしていたのに。ただ、初対面だから緊張しているだけかも。もしかしたら、異世界でアリスさんと初めて会ったときも同じだったのかな。
「あと、沙奈さんは胸が大きいから、妹さんも大きそうな気がして……」
「……そこを気にするんだ」
琴葉も服の上から膨らみが分かる程度の大きさはあるけど、真奈ちゃんの方が大きいかな。それはいずれ分かってしまうことだから言わないでおこう。
「分かるよ、琴葉ちゃんのその気持ち。大学の友達、胸が大きい子が多くてさ。もうちょっとだけでもいいから大きくなりたいなって思ってるよ。しかも、周りの子から子供扱いされることもあってね。毎日、誰かしらお菓子をくれるの」
「……それを嬉しそうに話すから、きっとお菓子くれるんだと思うよ、麻実ちゃん」
確かに、姉さんは小動物的な可愛らしさがあると思う。周りの人がつい姉さんにお菓子をあげたくなるのも分かる気がする。
その後は思い出話に花を咲かせていき、
――ピンポーン。
昔の思い出に浸っている中、インターホンが鳴った。その音で今に帰ってきた気がした。沙奈会長と真奈ちゃんが来たのかな。
玄関に行って家の扉を開けると、そこにはお揃いの青いノースリーブのワンピースを着た沙奈会長と真奈ちゃんが立っていたのであった。
「……いらっしゃい」
今日からゴールデンウィーク後半の4連休が始まった。
琴葉が泊まりに来るので、早めに旅行の準備を済ませようと昨日から始めた結果、昨日のうちにほとんど終わってしまった。ちなみに、琴葉は御両親と一緒に、午後2時過ぎに家に来るとのこと。
「玲人、ここなんていいんじゃない?」
「……そこは長野に近いところにあるから保留かな」
「あっ、本当だ」
午前中から、姉さんと一緒に僕の部屋でガイドブックを見ながら、どこに行くか候補を挙げている。姉さんはご当地グルメをたくさん食べたいらしい。
ちなみに、河乃湖ハイランドは姉さんも行きたいと言ったので、昨日、学校で沙奈会長や副会長さんと話した通り、2日目はずっと河乃湖ハイランドで遊ぶことに決まった。
――ピンポーン。
インターホンが鳴る。部屋の時計を見てみると午後2時前なので、もしかしたら琴葉が家に来たのかも。
「行ってみようか、玲人」
「ああ」
姉さんと一緒に玄関に向かうと、そこにはキュロットスカートに半袖のTシャツというとてもラフな恰好をした琴葉がいた。
「お邪魔します! レイ君! 麻実ちゃん!」
「いらっしゃい、琴葉」
「琴葉ちゃん、いらっしゃい!」
すると、琴葉は勢いよく姉さんに抱きついてきた。抱きつくのは昔から変わらないけど、昔は僕に抱きついてくる方が多かったな。
「またレイ君と麻実ちゃんのお家に行けるなんてね。引っ越したのに懐かしいって感じるなんて、何だかおかしいよね」
「おかしくないよ。あたしだって懐かしいもん。うちに遊びに来た琴葉ちゃんをこうして抱きしめていることが」
そう言う琴葉と姉さんは目に涙を浮かべていた。こうして、琴葉が家に遊びに来るのはおよそ2年ぶりだもんな。
「じゃあ……さっそく僕の部屋に行く?」
「うん! 行きたい!」
「じゃあ、行こうか。荷物は僕が運ぶよ」
「ありがとう、レイ君」
今の僕の部屋を見てどう思うのかな。以前、沙奈会長が送った僕の写真には、部屋の様子が多少は写っていたけど。ちょっと緊張する。
「へえ、素敵なお部屋だね! 綺麗なのは小さい頃から変わってないな……」
好意的な反応でほっとした。昔からおもちゃを散らかすことはしなかったな。たまに、勉強机やテーブルの上に、物がたくさん置いてあることはあったけど。
「見た目は全然違うのに、匂いは変わらないね。安心するなぁ」
「匂いか……」
沙奈会長も同じようなことを言いそうだな。むしろ言ってほしいくらい。
「教科書も高校生のものになって……本当に2年近く経ったんだね」
「……そうだな」
「じゃあ、レイ君も高校生になったってことで……えっちな本とか隠したりするようになった?」
「……どうだろうね」
本当は成人向けの本なんて1冊も持っていないけど。それよりも、どうして僕の部屋に来る女の子の多くは、そういう類の本があるかどうか気になるんだろうか。
すると、琴葉はちょっとがっかりとした様子に。
「そうに答えるってことは持っているんだね。レイ君、沙奈さんっていう恋人もいるし持っていないと思っていたよ……」
「まるで、沙奈会長を性欲処理目的の恋人みたいに言わないでほしいな。じゃあ、これから紅茶を淹れてくるから、僕が戻ってくるまでの間に物色してみるといいよ」
「分かった。麻実ちゃん、探してみようよ」
「やる気満々だね。たぶん、ないと思うけど……恋をすると人は変わるって言うし、頑張って探してみようか」
「……物色していいとは言ったけど、散らかさないようにしてね」
僕は1階に降りてキッチンで3人分の紅茶を淹れる。
リビングからはうちの両親と琴葉の親御さんによる談笑が聞こえてきて。今日みたいに、休日だとたまに琴葉の親御さんもうちに来ていたっけ。まさに家族ぐるみの付き合いだった。それもあってか、2年前の事件があっても僕を非難することは一切なかった。
「……良かった」
琴葉が目覚めて、元気になって、また家に遊びに来て。明日からは一緒に2泊3日の旅行に行くことになって。
しみじみとした想いに浸りながら部屋に戻ると、琴葉と姉さんはエロ本物色を諦めたのかベッドの上でゴロゴロしていた。こういう風景も懐かしい。
「琴葉も姉さんも諦めたの?」
「うん。本棚とクローゼットを見たけど見つからないからね。それに、レイ君のベッドでゴロゴロしたいなって」
「……相変わらずだね」
「だって、レイ君の匂い大好きだもん」
ニコニコしながら琴葉はそう言う。今の言葉を沙奈会長が聞いたらどう思うか考えてみたけど、不快な思いを抱かずにむしろ喜んで琴葉と握手を交わしそう。
その後も、僕がいるのにも関わらず、琴葉と姉さんは僕のベッドの上でゴロゴロして、果てにはふとんの中に入った。
「あぁ、こうしていると3人で寝たのを思い出すよね」
「玲人を真ん中にして寝たよね」
「うんうん、そうだった。もちろん、今は沙奈さんっていう恋人がいるから、それはやらないけどね」
そうは言うけど、姉さんと一緒だからなのか、僕のベッドの中にはしっかりと入って、僕の匂いを堪能している。
「それに、今はレイ君……色気が凄いから、一緒に眠れるかどうか分からないし」
まるで、昔は色気が全く無かったような言い方だな。今の自分に色気があるかどうかなんてさっぱり分からないけれど。いつか、沙奈会長に訊いてみようかな?
そうだ、沙奈会長が来る前に、琴葉にあのことを訊いてみるか。
「ねえ、琴葉。昨日……沙奈会長と話しているときに、アルバムとホームビデオを厳選して持ってくるって言っていたじゃないか。……どんなものを持ってきたんだ?」
その内容によっては、沙奈会長が来てしまう前にどこかに隠さなければ。
「小さい頃、お互いの家で遊んだり、旅行に行ったりしたときの写真とホームビデオが多いかな」
「……それならいいけど」
「でも、面白いものもあった方がいいと思って、あたしや麻実ちゃんの服を着せたときの写真とかも持ってきたよ」
「琴葉も持っていたのか……」
面白くしなくてもいいんだけどな。それでも、女の子の服を着せられた小さい頃の写真は、既に沙奈会長に見られているからいいか。
「それよりも、早く飲まないと紅茶が冷めちゃうよ」
「そうだね、レイ君」
「猫舌だからそろそろいいかも」
そういえば、小さい頃は2人とも熱いものが得意じゃなかったか。今日は特別暑いわけじゃないからホットティーにしちゃったけど、アイスティーにすれば良かったかな。
琴葉と姉さんはベッドから降りて、テーブルの側に座って僕の淹れた紅茶を一口飲む。
「はぁ、レイ君の入れた紅茶美味しい」
「そうだね、琴葉ちゃん。ただ、あたしは甘いのが好きだから砂糖を入れよっと」
「あたしはミルク」
琴葉はミルク、姉さんは砂糖を入れて自分の好みの紅茶を作っていく。また一口飲んだときに見せる柔らかい笑みを見ると、何だかまったりとした気分になる。
――プルルッ。
うん? 誰のスマートフォンが鳴っているのかな。
一応、確認してみると、沙奈会長からメッセージが1件届いている。
『準備が一通り終わったから、真奈と一緒に玲人君の家に行くね!』
真奈ちゃんも家に来るのか。そういえば、真奈ちゃんは僕の家に来たことはまだ一度もなかったんだっけ。もしかしたら、旅行前に琴葉や姉さんと顔合わせをしたいと考えているのかも。
『分かりました。琴葉と3人で待っていますね』
というメッセージを送っておいた。
「もしかして、沙奈ちゃんから?」
「うん。旅行の準備が一通り終わったから、妹の真奈ちゃんと一緒にここに来るって」
「そうなんだ。そういえば、沙奈ちゃんには妹がいるんだったね」
「何歳くらいの子なの? レイ君」
「沙奈会長よりも3歳年下の中学2年生だよ」
「そっかぁ、中2か……」
そう呟くと、琴葉の笑みが切ないものになる。いじめられて、あの事件が起こったのは僕達が中学2年生のときだったからかな。
「……いい子だといいな。沙奈さんの妹だからきっといい子だろうけど」
「2回しか会っていないけど、いい子だと思っているよ、僕は。きっと、すぐに友達になれるさ」
「……うん」
昨日は真奈ちゃんと会うのを楽しみにしていたのに。ただ、初対面だから緊張しているだけかも。もしかしたら、異世界でアリスさんと初めて会ったときも同じだったのかな。
「あと、沙奈さんは胸が大きいから、妹さんも大きそうな気がして……」
「……そこを気にするんだ」
琴葉も服の上から膨らみが分かる程度の大きさはあるけど、真奈ちゃんの方が大きいかな。それはいずれ分かってしまうことだから言わないでおこう。
「分かるよ、琴葉ちゃんのその気持ち。大学の友達、胸が大きい子が多くてさ。もうちょっとだけでもいいから大きくなりたいなって思ってるよ。しかも、周りの子から子供扱いされることもあってね。毎日、誰かしらお菓子をくれるの」
「……それを嬉しそうに話すから、きっとお菓子くれるんだと思うよ、麻実ちゃん」
確かに、姉さんは小動物的な可愛らしさがあると思う。周りの人がつい姉さんにお菓子をあげたくなるのも分かる気がする。
その後は思い出話に花を咲かせていき、
――ピンポーン。
昔の思い出に浸っている中、インターホンが鳴った。その音で今に帰ってきた気がした。沙奈会長と真奈ちゃんが来たのかな。
玄関に行って家の扉を開けると、そこにはお揃いの青いノースリーブのワンピースを着た沙奈会長と真奈ちゃんが立っていたのであった。
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