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特別編
第28話『ご注文はお土産ですか?』
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大浴場での朝風呂を満喫した後、僕達はレストランで朝食を食べることに。
朝食は昨日と同じくバイキング形式。昨日は和食料理を中心に食べたので、今日は洋食料理をメインに食べた。もちろん、そのときの飲み物はコーヒーで。隣には沙奈会長もいるし、こんなにも優雅な朝食が今までにあっただろうか。個人的にはもちろん大満足。みんなも楽しそうに食べていた。
今日が最終日ということもあり、朝食を食べ終わって部屋に戻る前に売店でお土産を買うことになった。
「玲人、お父さんとお母さんへのお饅頭、どれがいいかな」
「昨日の夕方、大浴場から戻ってくるときにこの一番大きい20個入りを買ったんだ。部屋にも置いてあったお饅頭だけど。これ1つで足りるかな?」
「2人ともお饅頭は大好きだからねぇ。あたしも大好きだし、玲人が1つ買ったならあたしも20個入りを1つ買おうかな。2人が食べきれなさそうなら、家族用ってことにしてさ」
「僕もお饅頭は好きだから……じゃあ、そうしよっか」
「うん、分かった」
合計40個になっても、父さんと母さんなら賞味期限までの間に完食しそうだ。ただ、このお饅頭は美味しかったし、僕も何個かいただくことにしよう。
「お父様とお母様、お饅頭がとても好きなのね」
「ええ。旅行に行ったら必ずと言っていいほど温泉饅頭は買いますね。客室に出されたもので気に入ったものなら、チェックインして間もなく買うときもありました。和風中心ですけど、両親も甘いもの好きですね」
「なるほどね。何か納得できるな。玲人君もお姉様も甘いものが大好きなのは、御両親譲りなんだろうね。今日はスイーツも食べる予定だから楽しみだね!」
ふふっ、と沙奈会長は優しい笑みを浮かべた。あまりにも可愛いので、2人きりだったらキスしていたと思う。
「これ、来たときに食べたお饅頭だね。美味しかったなぁ。クラス用と、生徒会室でみんなで食べるために買おうかな。玲人君は昨日、大浴場からの帰りに買ったんだよね」
「ええ。忘れないうちに両親用だけですが。僕もクラス用に……買っていってもいいかもしれませんね」
あの事件が解決して以降、少しずつクラスメイトと話すことも増えたし、連絡先を交換するようにもなった。相変わらず僕に嫌悪感を向ける人もいるけど。ただ、そんな人も含めて学校生活を共に送っているんだ。美味しかったこのお饅頭をお土産で買っていくか。
あと、ゴンにも何か買おう。あいつは饅頭よりも煎餅派かも。
「おっ、玲人。自分用?」
「……いや、クラス用に買おうかなって」
「……そっか。ちなみに、あたしは山梨餅も買うつもり。ほら、きなこ餅に黒蜜をかけて……」
「ああ、あの餅か。父さんが前に山梨に社員旅行に行ったときのお土産で買ってきてくれたやつね。美味しかったなぁ」
「それそれ。じゃあ、お姉ちゃんが玲人の分も買ってあげよう。あと、あたしも友達用に饅頭追加しよっと」
姉さんはそう言うと買い物かごに温泉饅頭を入れる。何だか、僕達によって売店の饅頭が買い占めてしまいそうで怖いな。会計をするときに、お店の人にお饅頭がとても美味しかったことを伝えておくか。
「レイ君、お饅頭の量凄いね」
「クラス用でね。琴葉こそお饅頭と、ぶどう味だけれど懐かしいお菓子もあるね」
「うん! このお菓子小さい頃から好きだし、ぶどう味は山梨限定なんだって」
「ご当地限定ってやつだね」
そういえば、山梨県はぶどうも有名だっけ。僕も自分用に1つ買っておこうかな。真似っ子だと琴葉に馬鹿にされないようさりげなくかごの中に。
「おっ、琴葉ちゃんの言うようにお饅頭の量が凄いね、逢坂君」
「クラス用に。副会長さんこそ、たくさんお饅頭買っているじゃないですか。あとは……ぶどうのゴーフレットですか?」
「クラスメイト全員に渡すならお饅頭が一番いいかなって。ゴーフレットは友達に。こういうクリーム系が好きな子が何人もいてさ」
「なるほど。それならゴーフレットもいいですよね」
それも聞いたらゴーフレットも自分用に買いたくなってきた。手頃な量のものがあったら買おうかな。
みんなと話していたら、真奈ちゃんもどんなお土産を買うのか気になってきた。楽しそうに商品を見ている真奈ちゃんのところに向かう。
「真奈ちゃんは誰かにお土産を買ったりする?」
「はい。クラスメイトの子にはゴーフレットにして、部活の方にはいちご大福を買おうかなと思って。一昨日のいちご狩りで食べた桃ほっぺを使っているみたいなんです」
「いちご大福かぁ、美味しいよね。あと、部活に入っているのは初耳だね。どんな部活に入っているの?」
「茶道部です。ですから、明日の部活動のときに、このいちご大福を茶菓子にしてお抹茶を点てようと考えているんです」
「それは素敵だね。真奈ちゃんは茶道部か。何だか、真奈ちゃんらしい感じがするよ」
真奈ちゃん、普段は落ち着いているからなぁ。和服も似合いそうだし。沙奈会長も黙っていれば大和撫子なので、姉妹で和服を着ているところを見てみたい気もする。
「ふふっ、ではいつか……玲人さんにもお抹茶を点ててあげますね」
「うん、楽しみにしているよ」
真奈ちゃんの頭を優しく撫でる。そのことで香ってくる髪の匂いは沙奈会長のものに似ていて。
それにしてもお抹茶かぁ。苦いってよく聞くけど、どんな感じなんだろう。旅行から帰った後の楽しみが一つ増えた。
「あらぁ、玲人君と楽しそうに話していたけれど」
「ふふっ、お姉ちゃんにはナイショ」
真奈ちゃん、そう言って右手の人差し指を唇に当てている。
「ええっ、お姉ちゃんにも教えてよ、真奈。そうしないと、玲人君に問い詰めることになっちゃうから」
不意に訪れる生命の危機。真奈ちゃんとやましい話をしたわけでもないのに、全身に悪寒が走る。笑顔だからこそ恐いのだ。
「別に隠す必要はないんだけれどね。ただ、玲人さんに茶道部に入っていることを教えたから、いつかお抹茶を点てるって約束しただけだよ」
「なるほどね、それは素敵なお約束だ。そのときはお姉ちゃんにも点ててくれると嬉しいな」
「うん、いいよ」
ありがとね、と沙奈会長は真奈ちゃんの頭を撫でる。嬉しそうにしている彼女達の様子は、さすがに姉妹だけあって似ている。その光景はとても微笑ましく同時に安心した。
姉さんや沙奈会長曰く、この後もお土産を買う機会はあるそうなので、今はお菓子中心に購入した。たくさんのお土産を持って部屋に戻る。
「たくさん買っちゃったね、玲人君」
「そうですね。ただ、車で来ているのでそこは安心です」
「そうだね。それにしても、あと少しでこのホテルから出発するんだよね」
「チェックアウトは11時までですけど、今日も色々と観光したり、スイーツを食べたりしますからもっと早く出ますもんね」
「うん。色々あったからか寂しい気分になるな……」
「連泊でしたからね」
「……うん。たくさんあったよね。玲人君や琴葉ちゃん達と富士山を眺めながら一緒に入った温泉。一緒に寝て、たくさん愛を育んだベッド。汗を流して何度もイチャイチャしたお風呂。部屋にいるときだけじゃなくて、食事も貸切温泉も2人きりでした夜のお散歩も楽しかったな。玲人君へのサプライズ誕生日パーティーも。ご飯も美味しかったし。あぁ、思い出しただけで何かが溢れ出てきそう」
沙奈会長、寂しいと言っていた割には結構楽しそうな様子を見せる。実際に楽しいことがたくさんあったからな。今みたいに思い出したり、たくさん撮影した写真や副会長さんの動画を観たりすれば、きっと楽しい気分になれるんじゃないだろうか。
「ねえ、玲人君。またここに来たいね。一度は2人きりでも来てみたいし、この6人でも何度も来たい」
「……ええ。素敵な時間を過ごせましたもんね。今度はいつになるか分かりませんが、また来たいですね」
「うん。あと、玲人君……このホテルでの最後の思い出としてキスしたいな」
「いいですよ」
僕は沙奈会長を抱き寄せて、そのままキスした。どのくらいの時間したのかは分からないけれど、最後の思い出と言われたこともあってかとても長く感じた。
その後、忘れ物はないか確認をして、僕らは9時半過ぎにチェックアウトの手続きを行なった。
素敵な思い出がたくさんできた富士河乃湖ホテルを後にする。僕と運転する姉さん以外、ホテルに向かって手を振っていたのが印象的だった。
またいつか、ここに来よう。沙奈会長と。みんなと。
朝食は昨日と同じくバイキング形式。昨日は和食料理を中心に食べたので、今日は洋食料理をメインに食べた。もちろん、そのときの飲み物はコーヒーで。隣には沙奈会長もいるし、こんなにも優雅な朝食が今までにあっただろうか。個人的にはもちろん大満足。みんなも楽しそうに食べていた。
今日が最終日ということもあり、朝食を食べ終わって部屋に戻る前に売店でお土産を買うことになった。
「玲人、お父さんとお母さんへのお饅頭、どれがいいかな」
「昨日の夕方、大浴場から戻ってくるときにこの一番大きい20個入りを買ったんだ。部屋にも置いてあったお饅頭だけど。これ1つで足りるかな?」
「2人ともお饅頭は大好きだからねぇ。あたしも大好きだし、玲人が1つ買ったならあたしも20個入りを1つ買おうかな。2人が食べきれなさそうなら、家族用ってことにしてさ」
「僕もお饅頭は好きだから……じゃあ、そうしよっか」
「うん、分かった」
合計40個になっても、父さんと母さんなら賞味期限までの間に完食しそうだ。ただ、このお饅頭は美味しかったし、僕も何個かいただくことにしよう。
「お父様とお母様、お饅頭がとても好きなのね」
「ええ。旅行に行ったら必ずと言っていいほど温泉饅頭は買いますね。客室に出されたもので気に入ったものなら、チェックインして間もなく買うときもありました。和風中心ですけど、両親も甘いもの好きですね」
「なるほどね。何か納得できるな。玲人君もお姉様も甘いものが大好きなのは、御両親譲りなんだろうね。今日はスイーツも食べる予定だから楽しみだね!」
ふふっ、と沙奈会長は優しい笑みを浮かべた。あまりにも可愛いので、2人きりだったらキスしていたと思う。
「これ、来たときに食べたお饅頭だね。美味しかったなぁ。クラス用と、生徒会室でみんなで食べるために買おうかな。玲人君は昨日、大浴場からの帰りに買ったんだよね」
「ええ。忘れないうちに両親用だけですが。僕もクラス用に……買っていってもいいかもしれませんね」
あの事件が解決して以降、少しずつクラスメイトと話すことも増えたし、連絡先を交換するようにもなった。相変わらず僕に嫌悪感を向ける人もいるけど。ただ、そんな人も含めて学校生活を共に送っているんだ。美味しかったこのお饅頭をお土産で買っていくか。
あと、ゴンにも何か買おう。あいつは饅頭よりも煎餅派かも。
「おっ、玲人。自分用?」
「……いや、クラス用に買おうかなって」
「……そっか。ちなみに、あたしは山梨餅も買うつもり。ほら、きなこ餅に黒蜜をかけて……」
「ああ、あの餅か。父さんが前に山梨に社員旅行に行ったときのお土産で買ってきてくれたやつね。美味しかったなぁ」
「それそれ。じゃあ、お姉ちゃんが玲人の分も買ってあげよう。あと、あたしも友達用に饅頭追加しよっと」
姉さんはそう言うと買い物かごに温泉饅頭を入れる。何だか、僕達によって売店の饅頭が買い占めてしまいそうで怖いな。会計をするときに、お店の人にお饅頭がとても美味しかったことを伝えておくか。
「レイ君、お饅頭の量凄いね」
「クラス用でね。琴葉こそお饅頭と、ぶどう味だけれど懐かしいお菓子もあるね」
「うん! このお菓子小さい頃から好きだし、ぶどう味は山梨限定なんだって」
「ご当地限定ってやつだね」
そういえば、山梨県はぶどうも有名だっけ。僕も自分用に1つ買っておこうかな。真似っ子だと琴葉に馬鹿にされないようさりげなくかごの中に。
「おっ、琴葉ちゃんの言うようにお饅頭の量が凄いね、逢坂君」
「クラス用に。副会長さんこそ、たくさんお饅頭買っているじゃないですか。あとは……ぶどうのゴーフレットですか?」
「クラスメイト全員に渡すならお饅頭が一番いいかなって。ゴーフレットは友達に。こういうクリーム系が好きな子が何人もいてさ」
「なるほど。それならゴーフレットもいいですよね」
それも聞いたらゴーフレットも自分用に買いたくなってきた。手頃な量のものがあったら買おうかな。
みんなと話していたら、真奈ちゃんもどんなお土産を買うのか気になってきた。楽しそうに商品を見ている真奈ちゃんのところに向かう。
「真奈ちゃんは誰かにお土産を買ったりする?」
「はい。クラスメイトの子にはゴーフレットにして、部活の方にはいちご大福を買おうかなと思って。一昨日のいちご狩りで食べた桃ほっぺを使っているみたいなんです」
「いちご大福かぁ、美味しいよね。あと、部活に入っているのは初耳だね。どんな部活に入っているの?」
「茶道部です。ですから、明日の部活動のときに、このいちご大福を茶菓子にしてお抹茶を点てようと考えているんです」
「それは素敵だね。真奈ちゃんは茶道部か。何だか、真奈ちゃんらしい感じがするよ」
真奈ちゃん、普段は落ち着いているからなぁ。和服も似合いそうだし。沙奈会長も黙っていれば大和撫子なので、姉妹で和服を着ているところを見てみたい気もする。
「ふふっ、ではいつか……玲人さんにもお抹茶を点ててあげますね」
「うん、楽しみにしているよ」
真奈ちゃんの頭を優しく撫でる。そのことで香ってくる髪の匂いは沙奈会長のものに似ていて。
それにしてもお抹茶かぁ。苦いってよく聞くけど、どんな感じなんだろう。旅行から帰った後の楽しみが一つ増えた。
「あらぁ、玲人君と楽しそうに話していたけれど」
「ふふっ、お姉ちゃんにはナイショ」
真奈ちゃん、そう言って右手の人差し指を唇に当てている。
「ええっ、お姉ちゃんにも教えてよ、真奈。そうしないと、玲人君に問い詰めることになっちゃうから」
不意に訪れる生命の危機。真奈ちゃんとやましい話をしたわけでもないのに、全身に悪寒が走る。笑顔だからこそ恐いのだ。
「別に隠す必要はないんだけれどね。ただ、玲人さんに茶道部に入っていることを教えたから、いつかお抹茶を点てるって約束しただけだよ」
「なるほどね、それは素敵なお約束だ。そのときはお姉ちゃんにも点ててくれると嬉しいな」
「うん、いいよ」
ありがとね、と沙奈会長は真奈ちゃんの頭を撫でる。嬉しそうにしている彼女達の様子は、さすがに姉妹だけあって似ている。その光景はとても微笑ましく同時に安心した。
姉さんや沙奈会長曰く、この後もお土産を買う機会はあるそうなので、今はお菓子中心に購入した。たくさんのお土産を持って部屋に戻る。
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「……ええ。素敵な時間を過ごせましたもんね。今度はいつになるか分かりませんが、また来たいですね」
「うん。あと、玲人君……このホテルでの最後の思い出としてキスしたいな」
「いいですよ」
僕は沙奈会長を抱き寄せて、そのままキスした。どのくらいの時間したのかは分からないけれど、最後の思い出と言われたこともあってかとても長く感じた。
その後、忘れ物はないか確認をして、僕らは9時半過ぎにチェックアウトの手続きを行なった。
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