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特別編
第29話『恋愛神社』
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富士河乃湖ホテルの姿が見えなくなると、寂しいのかみんなため息をついていた。琴葉や真奈ちゃんは涙も浮かべているほど。よっぽど楽しかったんだろうな。
「さあ、みなさん。気分を変えていきましょう! これから桜乃庭神社に行きます!」
助手席に乗っている沙奈会長はとても元気な様子を見せる。これから行く桜乃庭神社というのは恋愛関連に御利益のある神社だそうで、沙奈会長が行きたいと希望しているところだ。
ちなみに、後部座席の1列目に僕と副会長さんが座り、その後ろの席に琴葉と真奈ちゃんが座っている。
また、最後尾の席はみんなが買ったお土産を置くスペースにした。みんなたくさん買ったし、この大きなワンボックスカーにして正解だと最終日にして初めて思えた。
ホテルから離れるとすぐに自然いっぱいの景色が広がり、たまに住宅がちらほら見えるくらいになる。
「神社やお寺に行くと修学旅行って感じがしますよね。沙奈会長、桜乃庭神社にはあとどのくらいで着きますか?」
「カーナビによると……あと15分もあれば到着するってさ」
「そうですか。楽しみですね」
「ふふっ、そうね」
「これから、沙奈ちゃんご希望のところに行くからか元気だね」
そう言う副会長さんは青いゴシックワンピースを着ている。服装に関しては旅行中終始ブレなかったな。神社に行っても、大丈夫な服装かどうかは分からないけど。
「ええ。未来が幸せなものであるように願いたいと思って」
「逢坂君との未来を、でしょ?」
「……えへへっ」
僕も幸せな未来になるようにお祈りしよう。沙奈会長はもちろん、みんなの未来も。あと、お守りがあったら買おうかな。おみくじもやってみたいな。
「玲人君も楽しみにしているんだね」
「……ええ。沙奈会長っていう可愛い恋人がいますから」
「もう、玲人君ったらぁ」
沙奈会長、ニヤニヤとした笑みを浮かべる。ずっと、彼女を笑みが絶えることなく、平和な生活を送れるようによーくお祈りしなければ。
「お熱いねぇ、お二人さん。私が逢坂君の隣に座っているのが申し訳なく思えるよ」
「いえ、副会長さんはここにいた方がいいです。そうじゃないと、沙奈会長が何をしでかすか分かりませんから」
「……そう言われると、ここに座ってもいい気がしてきたよ」
「もう、玲人君ったら。私のことを可愛いって言ってくれて嬉しいけど、今のこの状況では何にもしないって」
僕の方に振り返って、限界まで顔を近づけながら言われても全く説得力がない。ただ、とても嬉しいということは十分に伝わった。
「愛されてるねぇ、レイ君」
「ですよねぇ、琴葉さん。でも、世の中は何があるか分からないので、お姉ちゃんも玲人さんも神社ではしっかりと拝んだ方がいいですよ!」
「真奈の言う通りね! 玲人君もしっかりと心を込めて拝むこと!」
「拝みますよ。平穏な未来のために」
「あははっ、みんな盛り上がってるね。あと5分もすれば神社に着くからね」
桜乃庭神社にいる神様は僕達のことを見たらどう思うだろうか。
僕らは桜乃庭神社に到着する。まだ10時前だけど、駐車場には既に何台も車が駐車しており、大型の観光バスも1台駐まっていた。
「みなさん、桜乃庭神社に到着しました! 桜乃庭神社は恋愛成就や縁結びの神社として人気の高い神社となっております! また、神社の中には触ると運気が上がるというパワースポットの石もあるとのことです。それでは神社に行きましょう!」
沙奈会長、かなりテンションが高いな。この神社が恋愛関連のパワースポットとして有名であることも納得できる。
僕らは鳥居をくぐって桜乃庭神社の敷地へと入る。さすがに人気の観光スポットだけあって、それなりに人がいるな。その理由が恋愛関連だからなのか、女性の比率がかなり高いように思える。
「女性が多いね、玲人君」
「そうですね」
「……だからなのか、こっちを見てくる人が多いような気がするの」
「そうですかね」
沙奈会長達しか見ていなかったので、周りの視線は全然気にならなかった。確かに、見てみると……こちらを見てくる女性が多いような気がする。
「レイ君はかっこいいからね。一目惚れする人が多いんじゃないですか?」
「……私も一目惚れがきっかけだったから、それは否定できないね、琴葉ちゃん。ちなみに、玲人君は昔からモテたの?」
「今ほどじゃないと思いますけど、レイ君に好意を抱いている子は何人かいましたね。あたしにレイ君の好みのタイプとかを訊いてきた子もいましたから」
「なるほどね……」
すると、沙奈会長はそれまで手を繋いでいただけだったけど、腕をぎゅっと絡ませてきた。このくらいしないとまずいと思ったのかな。
「自信を持ってお姉ちゃん! それに、玲人さんはお姉ちゃんのことが一番好きだと思うし、浮気なんて絶対にしないから! ……しちゃだめですよ、玲人さん」
「……き、肝に銘じておくよ、真奈ちゃん」
時々、真奈ちゃんにはお姉さん譲りの恐ろしさが垣間見えるときがあるな。
「玲人なら大丈夫だって。さっ、あそこで手と口を清めて、本殿にお参りするよ」
『はーい』
いつの間にか、ガイドさんが沙奈会長から姉さんに変わっていた。沙奈会長も元気に返事しているし。それでいいのか?
僕らは手と口を清め、本殿に参拝しようとするけど、参拝待ちの行列ができていた。改めて見てみると若い人が多いんだな。そんなことを考えながら最後尾に並んだ。
「結構並んでいるね。まあ、さすがに昨日の河乃湖ハイランドよりは早いでしょ」
「そうですね、副会長さん。何分も拝むような人はいないでしょう」
とは言ってみたものの、長い時間をかけてたくさん拝みそうな人がすぐ側にいる。神様も驚きそうな気がするよ、沙奈会長には。
副会長さんの予想通り、昨日よりも早く僕達が拝む番になった。
「レイ君、拝むときの作法ってあったよね。何回お辞儀して、何回拍手するんだっけ?」
「二礼、二拍手、一礼かな」
「二礼、二拍手、一礼ね。分かった、ありがとう」
お参りはあまり行かないから、こういうときの作法って分からなくなるよね。
沙奈会長が鐘を鳴らした後、僕達は二礼、二拍手、一礼をして手を合わせて拝む。沙奈会長と一緒にずっと平和で幸せに暮らせますように。琴葉達も心身共に健康で過ごせますように……と。こんな感じでいいかな。
「玲人君とずっと一緒にいることができますように。玲人君が心身共に健康に過ごすことができますように。玲人君が浮気しませんように。玲人君に変な女が近づきませんように。玲人君に何かしようとした女がポックリと……じゃなくて、さっさとどっかに行きますように。どうかお願いします」
沙奈会長のお願いが途中から恐ろしいものになって、神様もさぞかし驚かれていることだろう。僕がしっかりとしますから、どうか安心してください。
「さっ、行こうか。玲人君。ちゃんとお願いはできた?」
「ええ、できましたよ。そのお願いを叶うかどうかは僕ら次第……なんでしょうけど」
「……そうかもね。玲人君と一緒にいられるように頑張らないとね!」
「そうですね」
賽銭場所から少し離れると、沙奈会長はすぐに僕と腕を絡ませてきた。周りに人が多いのでちょっと恥ずかしいけれど。
「レイ君! 沙奈さん! 向こうに恋愛おみくじがありますよ! やってみましょうよ」
「いいわね、琴葉ちゃん。玲人君もやってみようよ」
「ええ」
僕達はおみくじ売り場で恋愛おみくじを1つ買うことに。さて、恋愛に関してどんな運勢なのかな?
「……中吉か、僕は」
「私は大吉だったよ、玲人君!」
「あたしも大吉だよ、お姉ちゃん!」
「私は逢坂君と同じで中吉だね」
「……あたしは小吉だぁ。レイ君達いいなぁ」
「あたしは末吉だよ、琴葉ちゃん。それに、小吉や末吉はこれから徐々に良くなっていくって聞いたことがあるよ」
みんなバラバラの運勢になったようだ。6人いたら同じ方が珍しいか。
運勢も大事だけれど、どんなことが書いてあるんだろうか。
『出会いあり。既に恋人がいる者は大切にせよ。そうすれば、幸せな未来に辿り着くことであろう。ただし、邪念宿せば必ず報いあり。向き合うべし』
さすがにおみくじだけあって、ごもっともなことが書いてあるな。沙奈会長のことを大切にすること。ただし、浮気などをしたらとんでもないこと仕打ちを受けるということか。
「玲人君、何があっても上手くいくってさ!」
「……それは良かったですね」
確かに、どんな状況になっても沙奈会長は自分にとっていい方向に変える力を持っている気がする。
「玲人君、あそこにおみくじを結ぶ場所があるよ」
「そうですか。ただ、僕は大切に持っていたいと思います。僕にとって響く言葉が書いてあるので」
「それもいいよね。じゃあ、私達は結んでくるね」
「はい」
沙奈会長達はおみくじを結びに行く。こうして見てみると、沙奈会長って他の誰よりも可愛らしいよなぁ。
「拝んだ効果がさっそくあった! あの……あなたに一目惚れをしたので連絡先を交換していただけないでしょうか? これは何かの運命だと思うんです!」
気付けば、白いワンピースを着た金髪の女性が僕にそう言ってきていた。姉さんと同じ女子大生かな。見た目は姉さんよりも断然大人っぽいけど。僕に一目惚れしているだけあって、顔を赤くしながら僕のことを見ている。
さてと、柔らかくしっかりと断らなければ。
「あなたのそのお気持ちはとても嬉しいのですが……ごめんなさい、それはできません。僕には結婚したいと考えている大好きな恋人がいますので」
「そう……ですか」
できるだけ柔らかい言葉を選んだつもりだけど、彼女にとって断れたことに変わりない。両眼には涙が浮かばせている。
「あなたがまた誰かに一目惚れできることをお祈りしています」
「……ありがとうございます。あの、握手してもらってもいいですか?」
「ええ。そのくらいであればかまいませんよ」
金髪の女性と握手をすると、彼女はとても嬉しそうな笑みを浮かべた。何だかアイドルになった気分だな。
「ありがとうございました! し、失礼します!」
「はい、さようなら」
僕に一礼すると、一緒に来ていた友人らしき女性と桜乃庭神社を後にした。
「玲人君……」
「さ、沙奈会長……」
全身に悪寒が走る。流れであの女性に握手をしちゃったけど、沙奈会長にとってはそれも嫌だったかなぁ。
「一瞬ヒヤッとしたけど、さすがは玲人君! 神対応だったよ!」
「そ、そうですか……」
沙奈会長は嬉しそうに僕のことを抱きしめてきた。良かった、沙奈会長が不機嫌にならずに済んで。あと、神対応って……ますますアイドルみたいな感じに。何を根拠に神対応と言っているのか未だに分からない。僕はやんわりと断っただけなんだけどな。
「玲人君、御守を買いに行こっか」
「そうですね」
その後、僕は沙奈会長とお揃いで恋愛成就の御守を買った。あとは無病息災の御守。これは琴葉も買っていた。
副会長さんは受験もあるので合格祈願の御守、姉さんと真奈ちゃんは金運上昇の御守を購入した。
また、沙奈会長は色々と未来を見据えているのか、子宝御守や安産祈願の御守まで買っていた。早い気はするけど、大切に持つのであればいいのかな。
予想外の出来事もあったけれど、忘れることのないお参りとなったのであった。
「さあ、みなさん。気分を変えていきましょう! これから桜乃庭神社に行きます!」
助手席に乗っている沙奈会長はとても元気な様子を見せる。これから行く桜乃庭神社というのは恋愛関連に御利益のある神社だそうで、沙奈会長が行きたいと希望しているところだ。
ちなみに、後部座席の1列目に僕と副会長さんが座り、その後ろの席に琴葉と真奈ちゃんが座っている。
また、最後尾の席はみんなが買ったお土産を置くスペースにした。みんなたくさん買ったし、この大きなワンボックスカーにして正解だと最終日にして初めて思えた。
ホテルから離れるとすぐに自然いっぱいの景色が広がり、たまに住宅がちらほら見えるくらいになる。
「神社やお寺に行くと修学旅行って感じがしますよね。沙奈会長、桜乃庭神社にはあとどのくらいで着きますか?」
「カーナビによると……あと15分もあれば到着するってさ」
「そうですか。楽しみですね」
「ふふっ、そうね」
「これから、沙奈ちゃんご希望のところに行くからか元気だね」
そう言う副会長さんは青いゴシックワンピースを着ている。服装に関しては旅行中終始ブレなかったな。神社に行っても、大丈夫な服装かどうかは分からないけど。
「ええ。未来が幸せなものであるように願いたいと思って」
「逢坂君との未来を、でしょ?」
「……えへへっ」
僕も幸せな未来になるようにお祈りしよう。沙奈会長はもちろん、みんなの未来も。あと、お守りがあったら買おうかな。おみくじもやってみたいな。
「玲人君も楽しみにしているんだね」
「……ええ。沙奈会長っていう可愛い恋人がいますから」
「もう、玲人君ったらぁ」
沙奈会長、ニヤニヤとした笑みを浮かべる。ずっと、彼女を笑みが絶えることなく、平和な生活を送れるようによーくお祈りしなければ。
「お熱いねぇ、お二人さん。私が逢坂君の隣に座っているのが申し訳なく思えるよ」
「いえ、副会長さんはここにいた方がいいです。そうじゃないと、沙奈会長が何をしでかすか分かりませんから」
「……そう言われると、ここに座ってもいい気がしてきたよ」
「もう、玲人君ったら。私のことを可愛いって言ってくれて嬉しいけど、今のこの状況では何にもしないって」
僕の方に振り返って、限界まで顔を近づけながら言われても全く説得力がない。ただ、とても嬉しいということは十分に伝わった。
「愛されてるねぇ、レイ君」
「ですよねぇ、琴葉さん。でも、世の中は何があるか分からないので、お姉ちゃんも玲人さんも神社ではしっかりと拝んだ方がいいですよ!」
「真奈の言う通りね! 玲人君もしっかりと心を込めて拝むこと!」
「拝みますよ。平穏な未来のために」
「あははっ、みんな盛り上がってるね。あと5分もすれば神社に着くからね」
桜乃庭神社にいる神様は僕達のことを見たらどう思うだろうか。
僕らは桜乃庭神社に到着する。まだ10時前だけど、駐車場には既に何台も車が駐車しており、大型の観光バスも1台駐まっていた。
「みなさん、桜乃庭神社に到着しました! 桜乃庭神社は恋愛成就や縁結びの神社として人気の高い神社となっております! また、神社の中には触ると運気が上がるというパワースポットの石もあるとのことです。それでは神社に行きましょう!」
沙奈会長、かなりテンションが高いな。この神社が恋愛関連のパワースポットとして有名であることも納得できる。
僕らは鳥居をくぐって桜乃庭神社の敷地へと入る。さすがに人気の観光スポットだけあって、それなりに人がいるな。その理由が恋愛関連だからなのか、女性の比率がかなり高いように思える。
「女性が多いね、玲人君」
「そうですね」
「……だからなのか、こっちを見てくる人が多いような気がするの」
「そうですかね」
沙奈会長達しか見ていなかったので、周りの視線は全然気にならなかった。確かに、見てみると……こちらを見てくる女性が多いような気がする。
「レイ君はかっこいいからね。一目惚れする人が多いんじゃないですか?」
「……私も一目惚れがきっかけだったから、それは否定できないね、琴葉ちゃん。ちなみに、玲人君は昔からモテたの?」
「今ほどじゃないと思いますけど、レイ君に好意を抱いている子は何人かいましたね。あたしにレイ君の好みのタイプとかを訊いてきた子もいましたから」
「なるほどね……」
すると、沙奈会長はそれまで手を繋いでいただけだったけど、腕をぎゅっと絡ませてきた。このくらいしないとまずいと思ったのかな。
「自信を持ってお姉ちゃん! それに、玲人さんはお姉ちゃんのことが一番好きだと思うし、浮気なんて絶対にしないから! ……しちゃだめですよ、玲人さん」
「……き、肝に銘じておくよ、真奈ちゃん」
時々、真奈ちゃんにはお姉さん譲りの恐ろしさが垣間見えるときがあるな。
「玲人なら大丈夫だって。さっ、あそこで手と口を清めて、本殿にお参りするよ」
『はーい』
いつの間にか、ガイドさんが沙奈会長から姉さんに変わっていた。沙奈会長も元気に返事しているし。それでいいのか?
僕らは手と口を清め、本殿に参拝しようとするけど、参拝待ちの行列ができていた。改めて見てみると若い人が多いんだな。そんなことを考えながら最後尾に並んだ。
「結構並んでいるね。まあ、さすがに昨日の河乃湖ハイランドよりは早いでしょ」
「そうですね、副会長さん。何分も拝むような人はいないでしょう」
とは言ってみたものの、長い時間をかけてたくさん拝みそうな人がすぐ側にいる。神様も驚きそうな気がするよ、沙奈会長には。
副会長さんの予想通り、昨日よりも早く僕達が拝む番になった。
「レイ君、拝むときの作法ってあったよね。何回お辞儀して、何回拍手するんだっけ?」
「二礼、二拍手、一礼かな」
「二礼、二拍手、一礼ね。分かった、ありがとう」
お参りはあまり行かないから、こういうときの作法って分からなくなるよね。
沙奈会長が鐘を鳴らした後、僕達は二礼、二拍手、一礼をして手を合わせて拝む。沙奈会長と一緒にずっと平和で幸せに暮らせますように。琴葉達も心身共に健康で過ごせますように……と。こんな感じでいいかな。
「玲人君とずっと一緒にいることができますように。玲人君が心身共に健康に過ごすことができますように。玲人君が浮気しませんように。玲人君に変な女が近づきませんように。玲人君に何かしようとした女がポックリと……じゃなくて、さっさとどっかに行きますように。どうかお願いします」
沙奈会長のお願いが途中から恐ろしいものになって、神様もさぞかし驚かれていることだろう。僕がしっかりとしますから、どうか安心してください。
「さっ、行こうか。玲人君。ちゃんとお願いはできた?」
「ええ、できましたよ。そのお願いを叶うかどうかは僕ら次第……なんでしょうけど」
「……そうかもね。玲人君と一緒にいられるように頑張らないとね!」
「そうですね」
賽銭場所から少し離れると、沙奈会長はすぐに僕と腕を絡ませてきた。周りに人が多いのでちょっと恥ずかしいけれど。
「レイ君! 沙奈さん! 向こうに恋愛おみくじがありますよ! やってみましょうよ」
「いいわね、琴葉ちゃん。玲人君もやってみようよ」
「ええ」
僕達はおみくじ売り場で恋愛おみくじを1つ買うことに。さて、恋愛に関してどんな運勢なのかな?
「……中吉か、僕は」
「私は大吉だったよ、玲人君!」
「あたしも大吉だよ、お姉ちゃん!」
「私は逢坂君と同じで中吉だね」
「……あたしは小吉だぁ。レイ君達いいなぁ」
「あたしは末吉だよ、琴葉ちゃん。それに、小吉や末吉はこれから徐々に良くなっていくって聞いたことがあるよ」
みんなバラバラの運勢になったようだ。6人いたら同じ方が珍しいか。
運勢も大事だけれど、どんなことが書いてあるんだろうか。
『出会いあり。既に恋人がいる者は大切にせよ。そうすれば、幸せな未来に辿り着くことであろう。ただし、邪念宿せば必ず報いあり。向き合うべし』
さすがにおみくじだけあって、ごもっともなことが書いてあるな。沙奈会長のことを大切にすること。ただし、浮気などをしたらとんでもないこと仕打ちを受けるということか。
「玲人君、何があっても上手くいくってさ!」
「……それは良かったですね」
確かに、どんな状況になっても沙奈会長は自分にとっていい方向に変える力を持っている気がする。
「玲人君、あそこにおみくじを結ぶ場所があるよ」
「そうですか。ただ、僕は大切に持っていたいと思います。僕にとって響く言葉が書いてあるので」
「それもいいよね。じゃあ、私達は結んでくるね」
「はい」
沙奈会長達はおみくじを結びに行く。こうして見てみると、沙奈会長って他の誰よりも可愛らしいよなぁ。
「拝んだ効果がさっそくあった! あの……あなたに一目惚れをしたので連絡先を交換していただけないでしょうか? これは何かの運命だと思うんです!」
気付けば、白いワンピースを着た金髪の女性が僕にそう言ってきていた。姉さんと同じ女子大生かな。見た目は姉さんよりも断然大人っぽいけど。僕に一目惚れしているだけあって、顔を赤くしながら僕のことを見ている。
さてと、柔らかくしっかりと断らなければ。
「あなたのそのお気持ちはとても嬉しいのですが……ごめんなさい、それはできません。僕には結婚したいと考えている大好きな恋人がいますので」
「そう……ですか」
できるだけ柔らかい言葉を選んだつもりだけど、彼女にとって断れたことに変わりない。両眼には涙が浮かばせている。
「あなたがまた誰かに一目惚れできることをお祈りしています」
「……ありがとうございます。あの、握手してもらってもいいですか?」
「ええ。そのくらいであればかまいませんよ」
金髪の女性と握手をすると、彼女はとても嬉しそうな笑みを浮かべた。何だかアイドルになった気分だな。
「ありがとうございました! し、失礼します!」
「はい、さようなら」
僕に一礼すると、一緒に来ていた友人らしき女性と桜乃庭神社を後にした。
「玲人君……」
「さ、沙奈会長……」
全身に悪寒が走る。流れであの女性に握手をしちゃったけど、沙奈会長にとってはそれも嫌だったかなぁ。
「一瞬ヒヤッとしたけど、さすがは玲人君! 神対応だったよ!」
「そ、そうですか……」
沙奈会長は嬉しそうに僕のことを抱きしめてきた。良かった、沙奈会長が不機嫌にならずに済んで。あと、神対応って……ますますアイドルみたいな感じに。何を根拠に神対応と言っているのか未だに分からない。僕はやんわりと断っただけなんだけどな。
「玲人君、御守を買いに行こっか」
「そうですね」
その後、僕は沙奈会長とお揃いで恋愛成就の御守を買った。あとは無病息災の御守。これは琴葉も買っていた。
副会長さんは受験もあるので合格祈願の御守、姉さんと真奈ちゃんは金運上昇の御守を購入した。
また、沙奈会長は色々と未来を見据えているのか、子宝御守や安産祈願の御守まで買っていた。早い気はするけど、大切に持つのであればいいのかな。
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