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番外編
『質問箱』
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番外編
6月11日、月曜日。
今月から始まった夏服がようやく慣れてきた今日この頃。梅雨という時期もあってか、今日はずっと朝から雨が降り続いている。
沙奈会長と副会長さんは今日も新しい仕事を教えてくれるとのこと。そのために、教室棟の各階に設置されている質問箱から用紙を回収しに行った。
そういえば、生徒会室のある階の掲示板には、生徒からの質問を答える用紙が張り出されていたな。
「質問箱から用紙を回収してきました。10枚以上ありました」
「ありがとう、玲人君」
「今回は多いね。また沙奈ちゃん絡みの質問が多そうだけれど」
「確かに、質問用紙を見てみると沙奈会長の名前が書いてあるものが多いですね。後は金髪とか、庶務とか書かれているので、僕絡みの質問もありますが」
「玲人君が生徒会に入って1ヶ月以上経つからね。生徒会によって質問箱が設置されていて、定期的に生徒から投函された質問に生徒会メンバーが答えていくの。真面目な質問もあれば、生徒会メンバー個人に向けたゆるい質問もあってね。もちろん、卑猥すぎたり、誹謗中傷したりする質問は無視するけど」
「逢坂君も見たことがあると思うけど、生徒会が回答した質問用紙を、この生徒会室のあるフロアの掲示板に貼っていくんだよ」
「そうなんですね」
「今日教えることは、この質問箱関連のことだよ。質問の回答を考えて、記入して、生徒会の掲示認可のハンコを押して、掲示板に貼るっていう流れを覚えようね」
「分かりました。では、さっそく質問用紙を確認していきましょうか」
質問用紙を見ていくと、衣替えがあったからか服装に関することなどの質問があるな。これは会長や副会長が回答を記入する。
あとは、最近流行している漫画や音楽を観たり、聴いたりしているかというゆるい質問もある。これは趣味のことなので、3人それぞれが回答を記入する。
残りはさっき言ったように、沙奈会長や僕絡みの質問もあるな。
『質問:沙奈会長の体が小さくなって、記憶がなくなったらどうしますか?
質問者:1年・男子』
「へえ、面白いことを訊いてくる子がいるのね」
「どっちかだけでも嫌なのに、記憶がなくなった上に体が小さくなるのは嫌だな」
「僕は体が小さくなるだけならいいですけど、記憶がなくなるのはキツいですね。沙奈会長はどうしますか?」
「答えは決まっているわ」
『回答:体も小さくなって記憶がなくなっているならポジティブに生きれそう。ただ、玲人君のことが好きになって付き合うのは絶対だと思うよ!
回答者:会長・如月沙奈』
本当にポジティブな考えを持っているな。アリスさんという魔法を使える女性を知っている以上、実際にそうなる可能性はゼロとは言いきれない。
さあ、次の質問用紙を見ていこう。
『質問:金髪の人が庶務として生徒会にいて大丈夫ですか? 人間的には真面目そうだけど。
質問者:3年・女子』
「これは玲人君に関する質問ね」
「校則には引っかかってないんですけどね。ほとんどの生徒が黒髪で、たまに茶髪がいるくらいで」
「私の茶髪みたいに地毛で黒髪以外の子はいるけれど、逢坂君のように染めてくる子って全然いないんだよね。校則違反じゃないのに」
「真面目な生徒が多いですよね。もちろん、玲人君だって真面目ないい子だよ。じゃあ、生徒会を代表して私が回答しよう」
『回答:問題ないです。庶務の金髪の玲人君はしっかり働いてくれています。生徒会は彼を可愛くもかっこいいマスコットキャラクターだと思っています。
回答者:会長・如月沙奈』
マスコットキャラクターになった覚えはないんだけれど。かっこいいはともかく可愛いはないのでは。あと、クスクス笑わないでくれませんか、副会長さん。
気を取り直して、次の質問用紙を見ていこう。
『質問:入学して出会ったクラスメイトの女の子に恋心を抱いています。どうすればそのこと付き合うことができますか? 女の子同士なのでハードルが高そうに思えます。
質問者:1年・女子』
「女の子同士の恋愛についての質問ですか。キュンとなりました」
「ガールズラブの漫画やライトノベルは好んで読んでいるけれど、付き合いたいなら告白するのが一番じゃないかって思うよ。ただ、恋愛経験のない私が答えても説得力がないから、沙奈ちゃんが答えて」
「私の恋人は男性ですけどね。でも、恋をすることや恋愛をすることに性別は関係ないですよね。じゃあ、樹里先輩と私の考えを回答にしましょう」
『回答:性別でハードルがあるように考えちゃうよね。ただ、本来は性別関係なく、恋をすることや付き合うことは素敵なこと。好きな人と付き合う第一歩となるのは、きっと告白することでしょう。
回答者:会長・如月沙奈と副会長・笛吹樹里』
素敵な質問と回答になったな。とても気持ちが温かくなった。
こういう質問用紙が1つ貼られているだけでも、掲示板全体の印象が変わるんじゃないだろうか。
さあ、次で最後の質問用紙だ。どんな質問が書かれているのかな。
『質問:沙奈会長と庶務の男の子が恋人として付き合っているそうですね。もし、庶務の子が浮気をしたらどうしますか?
質問者:2年・女子』
「……愚問ね。この2年女子の正体を突き止めて口頭で伝えたいね」
「最後に物凄い質問が来ちゃいましたね」
「生徒会メンバー同士で付き合っていると、こういった質問が来るのかぁ。こういった状況は初めてだから、この手の質問も初めてだよ」
「そうなんですね、副会長さん。これは会長が答えないと」
「そうね」
『回答:そんなことを許すわけがないし、そもそも玲人君が浮気をするような人間だとは思いません。万が一、そんなことになったら、どんな手段を使っても、私だけの恋人だと約束させます。浮気相手にも玲人君に関わらせないように誓わせますよ、絶対に。あと、浮気しないでね? 玲人君。
回答者:会長・如月沙奈』
愚問を投げかけた怒りをぶつけるかのごとく、物凄い筆圧で一気に書いていったぞ。この文面を見ると、会長の深い愛情だけでなく狂気すら感じるほどだ。あと、回答の最後の部分が質問者じゃなくて僕への言葉になっているよ。
「さあ、質問に全部答えたし、この質問用紙を掲示板に貼りに行こうか」
「そうね。背の高い逢坂君がいると助かるな」
「こういうことは僕に任せてください」
生徒会室に近い掲示板へと向かい、古い質問用紙を剥がして、今日答えた質問用紙を掲示していく。
その際に古い質問用紙を見たら、新年度早々に答えたのか、新入生のことや部活のこと、お花見などの質問に答えていた。あとは2人で生徒会をやっていけるのか……とか。思ったよりも月野学園には面白い生徒がいるようだ。まあ、生徒会長が沙奈会長だもんな。
ちなみに、今回答えた質問は生徒だけでなく職員にも好評であり、質問箱の横に置いてある質問用紙の減りが以前よりも早くなったという。
番外編 おわり
6月11日、月曜日。
今月から始まった夏服がようやく慣れてきた今日この頃。梅雨という時期もあってか、今日はずっと朝から雨が降り続いている。
沙奈会長と副会長さんは今日も新しい仕事を教えてくれるとのこと。そのために、教室棟の各階に設置されている質問箱から用紙を回収しに行った。
そういえば、生徒会室のある階の掲示板には、生徒からの質問を答える用紙が張り出されていたな。
「質問箱から用紙を回収してきました。10枚以上ありました」
「ありがとう、玲人君」
「今回は多いね。また沙奈ちゃん絡みの質問が多そうだけれど」
「確かに、質問用紙を見てみると沙奈会長の名前が書いてあるものが多いですね。後は金髪とか、庶務とか書かれているので、僕絡みの質問もありますが」
「玲人君が生徒会に入って1ヶ月以上経つからね。生徒会によって質問箱が設置されていて、定期的に生徒から投函された質問に生徒会メンバーが答えていくの。真面目な質問もあれば、生徒会メンバー個人に向けたゆるい質問もあってね。もちろん、卑猥すぎたり、誹謗中傷したりする質問は無視するけど」
「逢坂君も見たことがあると思うけど、生徒会が回答した質問用紙を、この生徒会室のあるフロアの掲示板に貼っていくんだよ」
「そうなんですね」
「今日教えることは、この質問箱関連のことだよ。質問の回答を考えて、記入して、生徒会の掲示認可のハンコを押して、掲示板に貼るっていう流れを覚えようね」
「分かりました。では、さっそく質問用紙を確認していきましょうか」
質問用紙を見ていくと、衣替えがあったからか服装に関することなどの質問があるな。これは会長や副会長が回答を記入する。
あとは、最近流行している漫画や音楽を観たり、聴いたりしているかというゆるい質問もある。これは趣味のことなので、3人それぞれが回答を記入する。
残りはさっき言ったように、沙奈会長や僕絡みの質問もあるな。
『質問:沙奈会長の体が小さくなって、記憶がなくなったらどうしますか?
質問者:1年・男子』
「へえ、面白いことを訊いてくる子がいるのね」
「どっちかだけでも嫌なのに、記憶がなくなった上に体が小さくなるのは嫌だな」
「僕は体が小さくなるだけならいいですけど、記憶がなくなるのはキツいですね。沙奈会長はどうしますか?」
「答えは決まっているわ」
『回答:体も小さくなって記憶がなくなっているならポジティブに生きれそう。ただ、玲人君のことが好きになって付き合うのは絶対だと思うよ!
回答者:会長・如月沙奈』
本当にポジティブな考えを持っているな。アリスさんという魔法を使える女性を知っている以上、実際にそうなる可能性はゼロとは言いきれない。
さあ、次の質問用紙を見ていこう。
『質問:金髪の人が庶務として生徒会にいて大丈夫ですか? 人間的には真面目そうだけど。
質問者:3年・女子』
「これは玲人君に関する質問ね」
「校則には引っかかってないんですけどね。ほとんどの生徒が黒髪で、たまに茶髪がいるくらいで」
「私の茶髪みたいに地毛で黒髪以外の子はいるけれど、逢坂君のように染めてくる子って全然いないんだよね。校則違反じゃないのに」
「真面目な生徒が多いですよね。もちろん、玲人君だって真面目ないい子だよ。じゃあ、生徒会を代表して私が回答しよう」
『回答:問題ないです。庶務の金髪の玲人君はしっかり働いてくれています。生徒会は彼を可愛くもかっこいいマスコットキャラクターだと思っています。
回答者:会長・如月沙奈』
マスコットキャラクターになった覚えはないんだけれど。かっこいいはともかく可愛いはないのでは。あと、クスクス笑わないでくれませんか、副会長さん。
気を取り直して、次の質問用紙を見ていこう。
『質問:入学して出会ったクラスメイトの女の子に恋心を抱いています。どうすればそのこと付き合うことができますか? 女の子同士なのでハードルが高そうに思えます。
質問者:1年・女子』
「女の子同士の恋愛についての質問ですか。キュンとなりました」
「ガールズラブの漫画やライトノベルは好んで読んでいるけれど、付き合いたいなら告白するのが一番じゃないかって思うよ。ただ、恋愛経験のない私が答えても説得力がないから、沙奈ちゃんが答えて」
「私の恋人は男性ですけどね。でも、恋をすることや恋愛をすることに性別は関係ないですよね。じゃあ、樹里先輩と私の考えを回答にしましょう」
『回答:性別でハードルがあるように考えちゃうよね。ただ、本来は性別関係なく、恋をすることや付き合うことは素敵なこと。好きな人と付き合う第一歩となるのは、きっと告白することでしょう。
回答者:会長・如月沙奈と副会長・笛吹樹里』
素敵な質問と回答になったな。とても気持ちが温かくなった。
こういう質問用紙が1つ貼られているだけでも、掲示板全体の印象が変わるんじゃないだろうか。
さあ、次で最後の質問用紙だ。どんな質問が書かれているのかな。
『質問:沙奈会長と庶務の男の子が恋人として付き合っているそうですね。もし、庶務の子が浮気をしたらどうしますか?
質問者:2年・女子』
「……愚問ね。この2年女子の正体を突き止めて口頭で伝えたいね」
「最後に物凄い質問が来ちゃいましたね」
「生徒会メンバー同士で付き合っていると、こういった質問が来るのかぁ。こういった状況は初めてだから、この手の質問も初めてだよ」
「そうなんですね、副会長さん。これは会長が答えないと」
「そうね」
『回答:そんなことを許すわけがないし、そもそも玲人君が浮気をするような人間だとは思いません。万が一、そんなことになったら、どんな手段を使っても、私だけの恋人だと約束させます。浮気相手にも玲人君に関わらせないように誓わせますよ、絶対に。あと、浮気しないでね? 玲人君。
回答者:会長・如月沙奈』
愚問を投げかけた怒りをぶつけるかのごとく、物凄い筆圧で一気に書いていったぞ。この文面を見ると、会長の深い愛情だけでなく狂気すら感じるほどだ。あと、回答の最後の部分が質問者じゃなくて僕への言葉になっているよ。
「さあ、質問に全部答えたし、この質問用紙を掲示板に貼りに行こうか」
「そうね。背の高い逢坂君がいると助かるな」
「こういうことは僕に任せてください」
生徒会室に近い掲示板へと向かい、古い質問用紙を剥がして、今日答えた質問用紙を掲示していく。
その際に古い質問用紙を見たら、新年度早々に答えたのか、新入生のことや部活のこと、お花見などの質問に答えていた。あとは2人で生徒会をやっていけるのか……とか。思ったよりも月野学園には面白い生徒がいるようだ。まあ、生徒会長が沙奈会長だもんな。
ちなみに、今回答えた質問は生徒だけでなく職員にも好評であり、質問箱の横に置いてある質問用紙の減りが以前よりも早くなったという。
番外編 おわり
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