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第48話『スイーツで酔っ払って』
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最初に取り組む物理の課題は、今日の授業で習った内容を使って解く復習プリントだ。
多くの問題は基本的な内容で、教科書やノートを見れば難なく解ける。ただ、いくつかの問題は応用問題であり、問題文を読み取ってきちんと図を描くことが必要になる。
俺は特に物理は苦手ではないし、現在習っている力学では図を書く癖があるため、応用問題を含めてスラスラ解けた。6人の中では最初にプリントを終えることができた。俺は次にやる数Ⅱの課題のプリントを進めていく。
ただ、6人の中で物理を特に苦手に思っていないのは俺だけなので、みんなから質問されることが多い。
「白石君。問5を教えてもらっていいかな。ちょっと分からなくて」
「私は解けたけど、不安があるから洋平の解説を聞きたいな」
「いいぞ」
物理がちょっと不安な千弦と星野さんからは応用問題で質問される。ただ、2人は基本的な内容の問題ができているので、図を書いて説明するとすぐに理解してもらえた。ちなみに、千弦は問5は合っていた。
「洋平、すまん。問2が分からねえ。教えてくれないか?」
「あたしも問2が分からない~」
「あたしも白石に問2を教えてほしいわ」
「いいぞ。そっちに行くから」
物理に苦手な琢磨と吉岡さんと神崎さんは基本的な問題から質問することがある。こちらについても、図を書いて丁寧に説明することで、3人には分からない問題について理解してもらった。
また、基本的な問題については、千弦や星野さんが教えることもあった。
「よしっ! 俺も最後まで終わったー!」
琢磨も終わったことで、これで全員が物理の課題プリントを終わらせることができた。
「お疲れ、琢磨。みんな物理は終わったし、勉強会を始めてから時間が経っているから、ちょっと休憩するか」
「賛成だ!」
琢磨が食い気味にそう言い、女性陣4人も賛成したので休憩を取ることに。
まだ1教科だけだけど、物理が苦手な琢磨と吉岡さんと神崎さんはちょっと疲れた様子に。分からない問題があったから疲れたのかもしれない。
「あぁ、疲れたぜ。でも、洋平達に教えてもらったから充実した感じがする」
「分からない問題も解けたもんね。千弦や彩葉も上手いけど、白石君はさすがだなって思う」
「早希の言うこと分かるわ。早希と坂井が白石と一緒に勉強したがるのも納得だわ」
「応用問題も分かりやすく教えてくれたもんね」
「洋平がいると安心するよ。ありがとう」
「いえいえ。全員から褒められると何だか照れくさいな。……みんなからの質問に答えると、俺も理解が深まるし、いい勉強になってるよ。こちらこそありがとう」
みんなの顔を見てお礼を言うと、みんなはいい笑顔で俺のことを見ていた。
今のところ、苦手な教科やつまずいている教科はない。なので、去年までと同じく先生役になることが多くなりそうかな。もちろん、この前の千弦とのお家デートのときのように、分からない問題に出くわしたときには誰かに訊いて分からないことを解消するようにしよう。
俺はコンビニで買ったボトル缶の微糖コーヒーを一口飲む。みんなに教えてたくさん喋った後なので、凄く美味しく感じられる。
コンビニで買ったお菓子を食べながら、今日の学校のことなどで談笑する。すると、
――コンコン。
と、部屋の扉がノックされた。俺達以外に家にいるのは母さんだけなので、ノックをしたのは母さんだろう。
はい、と返事をして、俺はクッションから立ち上がる。
扉を開けると、そこには母さんの姿が。母さんはラタン製のボウルを持っており、ボウルには個別包装されたパウンドケーキと思われるものがいくつか入っている。
「母さん、どうした? パウンドケーキみたいなものを持っているけど」
「実はお昼頃に、学生時代の友達からレーズンパウンドケーキを送られてきてね。その友達の住む家の近所に、評判のスイーツ店がオープンして。私がスイーツ好きなのを知っているから、家族と一緒にどうぞってたくさん送ってくれたの」
「そうなんだ」
母さん、とても嬉しそうだ。母さんはスイーツ好きだし、友達から送られてきたからかな。
「洋平の部屋から話し声が聞こえたから、今は休憩中かなと思って持ってきたの」
「そうだったんだ。今は休憩中だよ」
「良かったわ。さっき食べたけど、甘くて、ラム酒の香りがするレーズンが美味しいパウンドケーキよ。はい、洋平」
と、母さんはバウンドケーキが入っているボウルを俺に渡してきた。
「ありがとう」
『ありがとうございます!』
俺がお礼を言った後、千弦達5人が母さんに向かってお礼を言った。打ち合わせをしたわけではないだろうに、声がほとんど揃っていて凄いな。振り返ると、みんなは嬉しそうな様子で母さんを見ている。
「ふふっ。みんな試験勉強頑張ってね」
『はーい』
6人で返事をすると、母さんは優しく微笑みながら手を振って、部屋の外から立ち去っていった。
「じゃあ、母さんが持ってきてくれたこのパウンドケーキを食べながら休憩するか」
そう言って、俺はローテーブルの真ん中にボウルを置き、さっきまで座っていたクッションに腰を下ろした。
ボウルを置いた直後、みんなは個別方法されているパウンドケーキを一つずつ取っていく。
「そういえば、母さんがラム酒の香りがするって言っていたけど、みんなはアルコールって大丈夫か? 琢磨と吉岡さんとはお酒が使われているスイーツを一緒に食べたことがあるけど、千弦と星野さんと神崎さんとはないから気になってさ」
特に千弦は。今の中性的な雰囲気は意識して作り出しているものだ。スイーツに使われている程度のものだけど、アルコールが体に入ったらポロッと素が出てしまうのではないかという不安がある。
「あたしは大丈夫よ。気分が結構良くなるわ」
「私は体がポカポカするくらいかな」
「私も彩葉と同じで体がポカポカするね。あと、気分がちょっと良くなるかな」
千弦達はそう言った。また、千弦は俺と目が合うと小さく頷いた。おそらく、俺がアルコールは大丈夫なのかと問いかけた理由を察したのだろう。気分がちょっと良くなって、体がポカポカする程度なら、洋酒が使われているこのパウンドケーキを食べても大丈夫そうか。
ちなみに、俺もスイーツやチョコに使われているお酒程度なら、体が少し熱くなる程度だ。
「分かった。じゃあ、みんなで食べよう」
「そうだな! いただきまーす!」
『いただきます』
琢磨の元気な号令で、俺達はレーズンパウンドケーキを食べることに。
包装を明けると、パウンドケーキの甘い匂いやレーズンの芳醇な匂いが香ってくる。とてもいい匂いだけど、きっと洋酒が使われているからなんだろうな。
レーズンパウンドケーキを一口食べる。
パウンドケーキは優しい甘みで、レーズンの甘酸っぱさがアクセントになっていてとても美味しい。
あと、レーズンを噛むと、口の中に独特の風味が広がる。飲み込むと口から喉を中心に体がちょっと温かくなって。ラム酒のアルコールによるものだろう。
「甘くて美味しいな」
「美味しいよね、洋平。ラムレーズンが好きだから嬉しいよ」
「俺にアイスを奢ってくれたとき、千弦はラムレーズンを食べていたもんな」
「千弦ちゃん、ラムレーズンが好きだもんね。このパウンドケーキ美味しいね。さっそく体がポカポカしてきた」
「私もだよ。ちょっと気分良くなってきた」
千弦は嬉しそうな笑顔で、星野さんは柔らかい笑顔でそう言う。2人とも可愛いな。
あと、今の話もあって、アイスを奢ってくれたときに、美味しそうにラムレーズンを食べていた千弦のことを思い出した。
「うめーっ!」
琢磨は大きな声でそう言い、パウンドケーキをパクパクと食べている。いつも、琢磨の食べっぷりは見ていて気持ちがいいな。あと、琢磨はスイーツに使われる程度のお酒では酔っ払わない。
「本当に美味しいよねぇ、琢磨く~ん」
いつもよりも甘い声色ででそう言うと、吉岡さんは琢磨に寄りかかる。吉岡さんはとても柔らかい笑顔になってパウンドケーキを食べている。そう、何の変化もない琢磨とは対照的に、吉岡さんはいつもより甘えっぽくなって、琢磨に寄り添うのだ。
「ねえ、琢磨く~ん。脚開いて~。琢磨君の間に座ってケーキ食べた~い」
「おう、いいぞ」
吉岡さんの言う通りに琢磨が脚を開くと、吉岡さんは「ありがと~」とお礼を言って、琢磨の脚の間に座る。
パウンドケーキを食べて「う~ん!」と可愛い声を上げる吉岡さん。琢磨は優しく微笑みながら吉岡さんの頭を撫でる。
「パウンドケーキが美味しくて、琢磨君に頭を撫でられて幸せだよ~」
「ははっ、そっか。そう言ってくれて嬉しいぞ」
琢磨が笑顔でそう言うと、吉岡さんは「えへへっ」と声に出して笑う。琢磨の頬にキスもしていて。微笑ましい光景だ。
「早希は酔っ払うと甘えっぽくなるんだね」
「可愛いね、早希ちゃん」
「恋人の琢磨がいるからかもしれないけどな。今までも吉岡さんはこういう感じだった」
俺の知っている中では、スイーツに使われる程度のお酒でここまで酔っ払う人は吉岡さんくらいしか見たことない。ラム酒が使われたパウンドケーキでこの酔い方だから、大人になってお酒を呑んだらどうなってしまうのか。特に、強いお酒だと。
「いい光景ねぇ。早希、可愛いわぁ」
うふふっ、と神崎さんはニコニコしながら吉岡さんのことを見ていた。酔っ払うと気分が結構良くなると言っていたから、今は酔っ払っている状態なのだろう。
「玲央、ニコニコしてるね」
「そうだね。玲央ちゃんも可愛いよ」
「本当に上機嫌になるんだな」
「このパウンドケーキが美味しいからね。結構気分いいわぁ。……ねぇ、千弦。今の早希を見たら頭を撫でてもらいたくなっちゃった。千弦は恋人じゃなくて友達だけど、千弦に頭を撫でてほしいなぁ」
神崎さんは今までで一番と言っていいほどの甘い声色でそう言い、千弦のことを上目遣いで見ている。ここまで甘える神崎さんは見ないので可愛いな。神崎さんも結構酔っ払う体質だったか。
吉岡さんは今も琢磨に頭を撫でられて幸せそうにしている。そんな吉岡さんを見て羨ましくなったのかも。あとは、頭を撫でられるのが好きなのかな。千弦は近くに座っているし、王子様な雰囲気もあるから撫でてもらおうと思ったのかもしれない。
「ふふっ。可愛いお願いをしてくるね、玲央は。おねだりする玲央も可愛いけどね。頭を撫でるくらいならいつでもお安いご用だよ」
千弦は落ち着いた笑顔で快諾して、神崎さんの頭を撫でる。
千弦に頭を撫でられた瞬間、神崎さんは「あぁっ」と可愛い声を漏らす。
「気持ちいい。幸せ……」
神崎さんは言葉通りの幸福感溢れる笑顔でそう言い、千弦を見つめている。
「玲央がそう言ってくれて嬉しいな。いつも可愛いけど、酔っ払った今の玲央も可愛いよ。玲央を見た人全員が可愛いって言うんじゃないか思えるくらいにね。凄く魅力的だよ」
「そこまで言われると照れちゃうわぁ。でも……ありがとう。千弦にそう言ってもらえて凄く嬉しい」
千弦のとても甘い言葉にキュンときたのだろうか。千弦に向ける神崎さんの表情がうっとりとしたものに変わる。
それにしても、千弦の王子様の演技……いつもよりも磨きがかかっているような。アルコールが入った影響だろうか。
「玲央ちゃん……千弦ちゃんに可愛いって言われて、頭を撫でられて幸せそうだね。可愛い」
「そうだな、星野さん」
「可愛いよねぇ」
「そうだなぁ。まあ、早希が一番だけどな」
「ふふっ。……私も玲央ちゃんを撫でようかな」
そう言い、星野さんはクッションから立ち上がり、神崎さんのところに行って神崎さんの頭を撫でる。星野さんの撫で方も気持ちいいのか、神崎さんは幸せそうな笑顔になっている。いつまでも見ていられる光景だ。個人的には正面でイチャついているバスケビッグカップルも。
それからも、ラム酒を使ったレーズンパウンドケーキを食べて休憩の時間を過ごす。
俺、千弦、星野さん、琢磨はパウンドケーキを食べ終わるとすぐに勉強会を再開した。ただ、吉岡さんと神崎さんは酔いが覚めるまで休んだ。
吉岡さんと神崎さんの酔いが覚めたのは俺達が勉強始めてから10分経ってから。吉岡さんは琢磨とイチャつき、神崎さんは千弦と星野さんに頭を撫でられていたけど、2人は恥ずかしそうにはしていなかった。吉岡さんは学校でも琢磨とイチャつくほどだし、神崎さんは2人に撫でられて幸せな気持ちになったからかな。
コンビニで買ったお菓子だけでなく、レーズンパウンドケーキも食べたのもあり、それからは集中して勉強会に取り組み、みんな今日の授業で出た課題を終わらせることができた。
多くの問題は基本的な内容で、教科書やノートを見れば難なく解ける。ただ、いくつかの問題は応用問題であり、問題文を読み取ってきちんと図を描くことが必要になる。
俺は特に物理は苦手ではないし、現在習っている力学では図を書く癖があるため、応用問題を含めてスラスラ解けた。6人の中では最初にプリントを終えることができた。俺は次にやる数Ⅱの課題のプリントを進めていく。
ただ、6人の中で物理を特に苦手に思っていないのは俺だけなので、みんなから質問されることが多い。
「白石君。問5を教えてもらっていいかな。ちょっと分からなくて」
「私は解けたけど、不安があるから洋平の解説を聞きたいな」
「いいぞ」
物理がちょっと不安な千弦と星野さんからは応用問題で質問される。ただ、2人は基本的な内容の問題ができているので、図を書いて説明するとすぐに理解してもらえた。ちなみに、千弦は問5は合っていた。
「洋平、すまん。問2が分からねえ。教えてくれないか?」
「あたしも問2が分からない~」
「あたしも白石に問2を教えてほしいわ」
「いいぞ。そっちに行くから」
物理に苦手な琢磨と吉岡さんと神崎さんは基本的な問題から質問することがある。こちらについても、図を書いて丁寧に説明することで、3人には分からない問題について理解してもらった。
また、基本的な問題については、千弦や星野さんが教えることもあった。
「よしっ! 俺も最後まで終わったー!」
琢磨も終わったことで、これで全員が物理の課題プリントを終わらせることができた。
「お疲れ、琢磨。みんな物理は終わったし、勉強会を始めてから時間が経っているから、ちょっと休憩するか」
「賛成だ!」
琢磨が食い気味にそう言い、女性陣4人も賛成したので休憩を取ることに。
まだ1教科だけだけど、物理が苦手な琢磨と吉岡さんと神崎さんはちょっと疲れた様子に。分からない問題があったから疲れたのかもしれない。
「あぁ、疲れたぜ。でも、洋平達に教えてもらったから充実した感じがする」
「分からない問題も解けたもんね。千弦や彩葉も上手いけど、白石君はさすがだなって思う」
「早希の言うこと分かるわ。早希と坂井が白石と一緒に勉強したがるのも納得だわ」
「応用問題も分かりやすく教えてくれたもんね」
「洋平がいると安心するよ。ありがとう」
「いえいえ。全員から褒められると何だか照れくさいな。……みんなからの質問に答えると、俺も理解が深まるし、いい勉強になってるよ。こちらこそありがとう」
みんなの顔を見てお礼を言うと、みんなはいい笑顔で俺のことを見ていた。
今のところ、苦手な教科やつまずいている教科はない。なので、去年までと同じく先生役になることが多くなりそうかな。もちろん、この前の千弦とのお家デートのときのように、分からない問題に出くわしたときには誰かに訊いて分からないことを解消するようにしよう。
俺はコンビニで買ったボトル缶の微糖コーヒーを一口飲む。みんなに教えてたくさん喋った後なので、凄く美味しく感じられる。
コンビニで買ったお菓子を食べながら、今日の学校のことなどで談笑する。すると、
――コンコン。
と、部屋の扉がノックされた。俺達以外に家にいるのは母さんだけなので、ノックをしたのは母さんだろう。
はい、と返事をして、俺はクッションから立ち上がる。
扉を開けると、そこには母さんの姿が。母さんはラタン製のボウルを持っており、ボウルには個別包装されたパウンドケーキと思われるものがいくつか入っている。
「母さん、どうした? パウンドケーキみたいなものを持っているけど」
「実はお昼頃に、学生時代の友達からレーズンパウンドケーキを送られてきてね。その友達の住む家の近所に、評判のスイーツ店がオープンして。私がスイーツ好きなのを知っているから、家族と一緒にどうぞってたくさん送ってくれたの」
「そうなんだ」
母さん、とても嬉しそうだ。母さんはスイーツ好きだし、友達から送られてきたからかな。
「洋平の部屋から話し声が聞こえたから、今は休憩中かなと思って持ってきたの」
「そうだったんだ。今は休憩中だよ」
「良かったわ。さっき食べたけど、甘くて、ラム酒の香りがするレーズンが美味しいパウンドケーキよ。はい、洋平」
と、母さんはバウンドケーキが入っているボウルを俺に渡してきた。
「ありがとう」
『ありがとうございます!』
俺がお礼を言った後、千弦達5人が母さんに向かってお礼を言った。打ち合わせをしたわけではないだろうに、声がほとんど揃っていて凄いな。振り返ると、みんなは嬉しそうな様子で母さんを見ている。
「ふふっ。みんな試験勉強頑張ってね」
『はーい』
6人で返事をすると、母さんは優しく微笑みながら手を振って、部屋の外から立ち去っていった。
「じゃあ、母さんが持ってきてくれたこのパウンドケーキを食べながら休憩するか」
そう言って、俺はローテーブルの真ん中にボウルを置き、さっきまで座っていたクッションに腰を下ろした。
ボウルを置いた直後、みんなは個別方法されているパウンドケーキを一つずつ取っていく。
「そういえば、母さんがラム酒の香りがするって言っていたけど、みんなはアルコールって大丈夫か? 琢磨と吉岡さんとはお酒が使われているスイーツを一緒に食べたことがあるけど、千弦と星野さんと神崎さんとはないから気になってさ」
特に千弦は。今の中性的な雰囲気は意識して作り出しているものだ。スイーツに使われている程度のものだけど、アルコールが体に入ったらポロッと素が出てしまうのではないかという不安がある。
「あたしは大丈夫よ。気分が結構良くなるわ」
「私は体がポカポカするくらいかな」
「私も彩葉と同じで体がポカポカするね。あと、気分がちょっと良くなるかな」
千弦達はそう言った。また、千弦は俺と目が合うと小さく頷いた。おそらく、俺がアルコールは大丈夫なのかと問いかけた理由を察したのだろう。気分がちょっと良くなって、体がポカポカする程度なら、洋酒が使われているこのパウンドケーキを食べても大丈夫そうか。
ちなみに、俺もスイーツやチョコに使われているお酒程度なら、体が少し熱くなる程度だ。
「分かった。じゃあ、みんなで食べよう」
「そうだな! いただきまーす!」
『いただきます』
琢磨の元気な号令で、俺達はレーズンパウンドケーキを食べることに。
包装を明けると、パウンドケーキの甘い匂いやレーズンの芳醇な匂いが香ってくる。とてもいい匂いだけど、きっと洋酒が使われているからなんだろうな。
レーズンパウンドケーキを一口食べる。
パウンドケーキは優しい甘みで、レーズンの甘酸っぱさがアクセントになっていてとても美味しい。
あと、レーズンを噛むと、口の中に独特の風味が広がる。飲み込むと口から喉を中心に体がちょっと温かくなって。ラム酒のアルコールによるものだろう。
「甘くて美味しいな」
「美味しいよね、洋平。ラムレーズンが好きだから嬉しいよ」
「俺にアイスを奢ってくれたとき、千弦はラムレーズンを食べていたもんな」
「千弦ちゃん、ラムレーズンが好きだもんね。このパウンドケーキ美味しいね。さっそく体がポカポカしてきた」
「私もだよ。ちょっと気分良くなってきた」
千弦は嬉しそうな笑顔で、星野さんは柔らかい笑顔でそう言う。2人とも可愛いな。
あと、今の話もあって、アイスを奢ってくれたときに、美味しそうにラムレーズンを食べていた千弦のことを思い出した。
「うめーっ!」
琢磨は大きな声でそう言い、パウンドケーキをパクパクと食べている。いつも、琢磨の食べっぷりは見ていて気持ちがいいな。あと、琢磨はスイーツに使われる程度のお酒では酔っ払わない。
「本当に美味しいよねぇ、琢磨く~ん」
いつもよりも甘い声色ででそう言うと、吉岡さんは琢磨に寄りかかる。吉岡さんはとても柔らかい笑顔になってパウンドケーキを食べている。そう、何の変化もない琢磨とは対照的に、吉岡さんはいつもより甘えっぽくなって、琢磨に寄り添うのだ。
「ねえ、琢磨く~ん。脚開いて~。琢磨君の間に座ってケーキ食べた~い」
「おう、いいぞ」
吉岡さんの言う通りに琢磨が脚を開くと、吉岡さんは「ありがと~」とお礼を言って、琢磨の脚の間に座る。
パウンドケーキを食べて「う~ん!」と可愛い声を上げる吉岡さん。琢磨は優しく微笑みながら吉岡さんの頭を撫でる。
「パウンドケーキが美味しくて、琢磨君に頭を撫でられて幸せだよ~」
「ははっ、そっか。そう言ってくれて嬉しいぞ」
琢磨が笑顔でそう言うと、吉岡さんは「えへへっ」と声に出して笑う。琢磨の頬にキスもしていて。微笑ましい光景だ。
「早希は酔っ払うと甘えっぽくなるんだね」
「可愛いね、早希ちゃん」
「恋人の琢磨がいるからかもしれないけどな。今までも吉岡さんはこういう感じだった」
俺の知っている中では、スイーツに使われる程度のお酒でここまで酔っ払う人は吉岡さんくらいしか見たことない。ラム酒が使われたパウンドケーキでこの酔い方だから、大人になってお酒を呑んだらどうなってしまうのか。特に、強いお酒だと。
「いい光景ねぇ。早希、可愛いわぁ」
うふふっ、と神崎さんはニコニコしながら吉岡さんのことを見ていた。酔っ払うと気分が結構良くなると言っていたから、今は酔っ払っている状態なのだろう。
「玲央、ニコニコしてるね」
「そうだね。玲央ちゃんも可愛いよ」
「本当に上機嫌になるんだな」
「このパウンドケーキが美味しいからね。結構気分いいわぁ。……ねぇ、千弦。今の早希を見たら頭を撫でてもらいたくなっちゃった。千弦は恋人じゃなくて友達だけど、千弦に頭を撫でてほしいなぁ」
神崎さんは今までで一番と言っていいほどの甘い声色でそう言い、千弦のことを上目遣いで見ている。ここまで甘える神崎さんは見ないので可愛いな。神崎さんも結構酔っ払う体質だったか。
吉岡さんは今も琢磨に頭を撫でられて幸せそうにしている。そんな吉岡さんを見て羨ましくなったのかも。あとは、頭を撫でられるのが好きなのかな。千弦は近くに座っているし、王子様な雰囲気もあるから撫でてもらおうと思ったのかもしれない。
「ふふっ。可愛いお願いをしてくるね、玲央は。おねだりする玲央も可愛いけどね。頭を撫でるくらいならいつでもお安いご用だよ」
千弦は落ち着いた笑顔で快諾して、神崎さんの頭を撫でる。
千弦に頭を撫でられた瞬間、神崎さんは「あぁっ」と可愛い声を漏らす。
「気持ちいい。幸せ……」
神崎さんは言葉通りの幸福感溢れる笑顔でそう言い、千弦を見つめている。
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「そこまで言われると照れちゃうわぁ。でも……ありがとう。千弦にそう言ってもらえて凄く嬉しい」
千弦のとても甘い言葉にキュンときたのだろうか。千弦に向ける神崎さんの表情がうっとりとしたものに変わる。
それにしても、千弦の王子様の演技……いつもよりも磨きがかかっているような。アルコールが入った影響だろうか。
「玲央ちゃん……千弦ちゃんに可愛いって言われて、頭を撫でられて幸せそうだね。可愛い」
「そうだな、星野さん」
「可愛いよねぇ」
「そうだなぁ。まあ、早希が一番だけどな」
「ふふっ。……私も玲央ちゃんを撫でようかな」
そう言い、星野さんはクッションから立ち上がり、神崎さんのところに行って神崎さんの頭を撫でる。星野さんの撫で方も気持ちいいのか、神崎さんは幸せそうな笑顔になっている。いつまでも見ていられる光景だ。個人的には正面でイチャついているバスケビッグカップルも。
それからも、ラム酒を使ったレーズンパウンドケーキを食べて休憩の時間を過ごす。
俺、千弦、星野さん、琢磨はパウンドケーキを食べ終わるとすぐに勉強会を再開した。ただ、吉岡さんと神崎さんは酔いが覚めるまで休んだ。
吉岡さんと神崎さんの酔いが覚めたのは俺達が勉強始めてから10分経ってから。吉岡さんは琢磨とイチャつき、神崎さんは千弦と星野さんに頭を撫でられていたけど、2人は恥ずかしそうにはしていなかった。吉岡さんは学校でも琢磨とイチャつくほどだし、神崎さんは2人に撫でられて幸せな気持ちになったからかな。
コンビニで買ったお菓子だけでなく、レーズンパウンドケーキも食べたのもあり、それからは集中して勉強会に取り組み、みんな今日の授業で出た課題を終わらせることができた。
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