クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ

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続編

第29話『七夕祭り①-みんなで-』

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『調津駅です。ご乗車ありがとうございました』

 午後5時47分。
 俺達の乗る電車は定刻通りに会場の最寄り駅である調津駅に到着した。特に遅延したり、運転見合わせをしたりすることなく到着して良かった。

「調津駅まであっという間だったね、洋平君」
「そうだな。洲中駅から10分だし、みんなと話していたからな」

 千弦達と話すのは楽しかったし、途中で吉岡さんと神崎さんと合流したからな。あっという間の10分間だった。
 俺達は改札口へと向かい始める。
 七夕祭りがあるからか、ホームには俺達のように浴衣姿や甚平姿の人が多い。まだ会場には着いていないけど、お祭り気分をちょっと味わえる。
 改札口を出て、会場の調津北ちょうつきた公園に一番近い北口から調津駅の外を出る。
 調津駅の周りは洲中駅の周りと同じくらいに栄えており、多くの人が行き交っている。毎年、調津市に来ると思うことだ。
 調津の七夕祭りには何度も行ったことがあるし、スタッフの方の案内や浴衣や甚平姿の人々の流れもあり、迷うことなく会場である調津北公園の入口前まで辿り着いた。
 入口からはたくさんの屋台が見える。遠くには笹も見えて。今はまだ短冊があまり飾られていないけど、これからたくさん飾られていくのだろう。
 既にお祭りが始まっているので、美味しそうな匂いが香ってきたり、祭り囃子の音が聞こえてきたりしている。

「あの。みんなでお祭りに来た記念にみんなで写真を撮りませんか?」

 スマホを持った吉岡さんがそんなことを言ってきた。
 みんなで写真か。そういえば、去年も琢磨や吉岡さん達とお祭りに来たときにも写真を撮ったな。吉岡さんの言う通り、記念を撮るのにいいだろう。

「おっ、いいじゃねえか!」

 最初に琢磨が賛成する。それもあり、吉岡さんは嬉しそうな笑顔になる。
 その後、俺や千弦達も賛成したので、調津北公園の入口近くで、スマホを使って写真撮影会となった。
 8人での自撮り写真はもちろん、千弦&俺、琢磨&吉岡さんのカップルのツーショット写真、俺と琢磨の男2人のツーショット写真、千弦達女性6人の写真など様々な写真を撮影した。
 写真は8人のグループトークに送信された。俺はそれらの写真を全て自分のスマホに保存した。

「では、中に入りましょうか」

 俺達は調津北公園の中に入る。
 まずはみんなで屋台を楽しみながら会場を廻り、いくつか屋台を楽しんだら千弦&俺、琢磨&早希は一旦デート。最後にみんなで短冊コーナーで願い事を書いて笹に飾ろうという予定になっている。
 会場内はたくさんの屋台が並んでおり、たくさんの人が屋台の食べ物や飲み物を楽しんでいたり、遊びを楽しんだりしている。来場客の中には浴衣姿や甚平姿の人も結構いて。小さい頃から変わらない光景だ。ただ、今年は千弦という恋人とも一緒に来ているから、ちょっと新鮮に思えた。

「小学生の頃から彩葉ちゃんと一緒に毎年来てるけど、今年は洋平君がいるからちょっと新鮮に感じるよ」
「同じことを思ったよ、千弦」
「そっか。嬉しい」

 ふふっ、と千弦は楽しそうに笑う。今は浴衣姿で髪型も違うのもあって、千弦の笑顔もまた新鮮に感じられる。もちろん、可愛いのはいつもと変わらないけどな。
 ――ぐううっ!
 すぐ近くからとても大きな音が鳴ったぞ。
 音が鳴った方に視線を向けると、そこには腹をさすっている琢磨がいて。

「腹鳴っちまったぜ! 屋台で色々食うために昼飯以降は何も食ってないから腹減ったし、美味そうな匂いがするしな!」

 わははっ! と、琢磨は明るく豪快に笑い飛ばす。それもあって、俺達は笑いに包まれる。
 やっぱり、腹の音の発信源は琢磨だったか。中学時代から、琢磨は七夕祭りに来ると屋台でたくさん食べるからなぁ。

「琢磨らしいな」
「そうだね、白石君。まずは何か食べ物系の屋台に行くのはどうですか?」
「賛成だぜ!」
「俺も賛成だ。お腹空いてきたし」
「私も賛成。洋平君と同じでお腹空いてきたから」
「夕食時に差し掛かっているもんね。私も賛成だよ」
「あたしも賛成。美味しそうな匂いがするし、何か食べたいわ」
「あたしも何か食べたいです!」
「先生も賛成よ」
「では、まずは食べ物系の屋台に行きましょう!」

 俺達はみんなで屋台が並ぶエリアに。
 近くに食べ物系の屋台がいくつもあるので、美味しそうな匂いがより濃く香ってくる。食欲がそそられるなぁ。琢磨のお腹が大きく鳴ってしまうのも納得だ。
 男性中心に俺達を見てくる人が多い。女性陣はみんな可愛かったり、美人だったりするし、浴衣姿がよく似合っているからかな。ただ、琢磨と俺という男が2人いるからか声を掛けてくる人はいない。

「焼きそばはどうっすか?」

 そう言い、琢磨は近くにある焼きそばの屋台を指さす。
 焼きそばの屋台を見ると……ハチマキを巻いた中年の男性が鉄板で焼きそばを作っている。ソースをかけると、美味しそうな焼きそばの匂いが香ってきて。焼きそばは屋台の定番だし、これまでも七夕祭りでは焼きそばを食べることが多かったっけ。

「焼きそばいいね、琢磨君!」

 吉岡さんが最初に賛成する。それもあって、琢磨は嬉しそうな様子に。

「俺も賛成だ」

 屋台の焼きそばは美味しいし、お腹が空いているからがっつり食べたい。
 その後、千弦達もみんな焼きそばを食べることに賛成した。

「じゃあ、先生がみんなに焼きそばを奢るよ。このお祭りに誘ってくれたり、浴衣姿や髪型を褒めてくれたりしたお礼と、期末試験を頑張ったご褒美に」

 山本先生は優しい笑顔でそんなことを言ってくれた。今の理由からして、もしかしたら七夕祭りに誘われた時点で俺達に何か奢ろうと考えてくれていたのかもしれない。

「山本先生あさっす!」

 琢磨はとても嬉しそうにお礼を言い、山本先生に向かって体が直角になるほどに頭を下げた。見ていて気持ちがいいな。

『ありがとうございます!』

 俺や千弦達も声を揃えて山本先生にお礼を言った。

「うん。じゃあ、焼きそばを買ってくるね」

 その後、佐藤先生は焼きそばの屋台に行き、俺達に焼きそばを奢ってくれた。
 ちなみに、焼きそばは1つ500円。7人いるので奢るのに3500円か。なかなかの金額だ。平日放課後のバイトは3時間の日が多いので、だいたい平日放課後1日分か。
 また、浴衣姿の山本先生が綺麗だからか。それとも、8つ注文したからか。はたまた両方か。山本先生から注文を受けた焼きそばの屋台のおじさんはとても嬉しそうな様子で接客し、焼きそばのパックと割り箸が入った袋を先生に渡していた。
 焼きそばを奢ってもらった俺達は、他の人の邪魔にならないように広いスペースになっている場所まで移動して食べることに。また、焼きそばの入った袋は2つあったので、琢磨と俺で持つことにした。
 休憩スペースに到着して、琢磨と俺はみんなに焼きそばのパックと割り箸を渡した。
 パックの蓋を開けると、湯気がモクモクと上がってくる。湯気に乗って焼きそばの美味しそうな匂いが香ってきて。美味しそうだ。

「山本先生、どうもありがとうございます! じゃあ、いただきまーす!」
『いただきます!』

 琢磨の号令で俺達は焼きそばを食べ始める。
 湯気がモクモクと上がるほどだから結構熱そうだ。なので、割り箸で麺を掬い、何回か息を吹きかけた後に食べる。
 ソースの味加減が絶妙で、麺とよく合っている。豚肉とキャベツと紅ショウガという王道でシンプルな具材なのもいい。あと、鉄板で作ったからか、麺のところどころにパリッとした部分があって。個人的にはそこもいいなと感じられる。

「美味しいなぁ」

 一口食べ終わると、自然とそう口にしていた。

「焼きそば美味しいね、洋平君」

 俺の隣で食べている千弦は笑顔でそう言った。
 美味しいよな、と俺が言うと、千弦はニコッと笑って「うんっ」と首肯した。可愛いな。

「焼きそば凄く美味えっ!」
「本当に美味しいよね、琢磨君!」

 琢磨と吉岡さんも焼きそばにご満悦の様子。特に焼きそばを提案した琢磨は。琢磨はモリモリと食べており、見ていて気持ちがいいくらいだ。
 そういえば、これまでも琢磨は屋台で買った食べ物を今みたいに美味しそうに食べていたっけ。

「焼きそば美味しい!」
「美味しいわよね、彩葉! 屋台の焼きそばだから、ちょっとパリッとしているのもいいわ」
「分かります、玲央さん! あたし、このパリッとした部分好きですっ!」
「いいわよねっ、結菜ちゃん! とても美味しい焼きそばを奢ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます、飛鳥先生」
「いえいえ。みんなに美味しく食べてもらえて嬉しいよ。みんなの言う通り、この焼きそばは本当に美味しいわ」

 星野さん、神崎さん、結菜、山本先生もこの焼きそばに満足している様子だ。山本先生は嬉しそうにもしていて。
 焼きそばをもう一口食べる。……本当に美味しいな、この焼きそば。山本先生が奢ってくれたおかげでタダでいただけて有り難い限りだ。

「ねえ、洋平君」
「うん?」
「焼きそば一口食べさせ合わない?」
「おっ、いいな。やろうか」
「ありがとう!」

 千弦は嬉しそうにお礼を言った。

「じゃあ、お願いした私から食べさせてあげるね」
「うん、分かった」

 千弦は箸で焼きそばを一口分掬い上げ、何度か息を吹きかける。ふー、ふー、と吹きかける姿も可愛いな。

「はい、洋平君。あ~ん」
「あーん」

 俺は千弦に焼きそばを一口食べさせてもらう。
 千弦が息を吹きかけてくれたから、焼きそばがちょうどいい熱さになっている。
 同じ焼きそばなのに、俺が自分で食べる焼きそばよりも美味しいな。これも千弦が息を吹きかけて、俺に食べさせてくれたからだろうか。

「凄く美味しいよ、千弦。千弦のおかげでちょうどいい熱さだし」
「良かった。結構熱いから、洋平君が食べやすいように何度も息を吹きかけたの」
「そうだったんだ。ありがとう」

 自分で食べる焼きそばよりも美味しい一番の理由は、千弦の優しさなのかもしれない。

「食べさせてくれてありがとう。じゃあ、今度は俺が食べさせるよ」
「うんっ」

 俺は焼きそばを一口分掬い上げる。
 買ってからそこまで時間が経っていないから、湯気がまだまだ出ている。なので、息を何度か吹きかけた。

「このくらいで大丈夫そうかな。じゃあ、千弦。あーん」
「あ~ん」

 千弦に焼きそばを食べさせる。
 焼きそばが美味しいからか、千弦は美味しそうにモグモグと食べている。笑顔で食べているからとても可愛くて。食べさせたのもあって、小動物のような可愛らしさもあって。ずっと見ていられる。

「凄く美味しいね、洋平君。洋平君が息を吹きかけてくれたおかげで、食べやすい熱さになっていたし」
「良かった」
「食べさせてくれてありがとう」
「いえいえ。喜んでくれて良かった」
「ふふっ、今日もいい光景を見させてもらいました」

 星野さんはいつもの優しい笑顔でそう言ってくる。これまで、学校の昼休みとか三者面談期間で千弦の家で冷やし中華を食べたときとかに、千弦と俺は星野さん達の前で食べさせ合うことを何度もしているからな。
 星野さんが優しい笑顔で言ってくれたのもあり、特に恥ずかしい気持ちはない。千弦も同じ気持ちなのか、特に顔を赤くすることなく笑みを見せている。
 それからも、千弦達と一緒に焼きそばを食べていく。とても美味しい焼きそばだけど、千弦に食べさせてもらった焼きそばが一番美味しかった。
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