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3章:重過ぎるプレゼントと二度目のキス
3-3
しおりを挟む「はぁ⁉ ななななにいって……! だめに決まってるでしょう⁉」
「この前のキス、俺は何度も思い出してたよ。思い出しただけでたまらなかった」
先輩の笑う息が耳にかかる。私はその瞬間、あのキスを思い出す。
全部奪うような、そんなキスだった。
「みゆの中、気持ちよかった」
(言い方―――――――!)
私が真っ赤になっていると、先輩は続ける。
「あのエレベータで強引にキスしてくれた日、やっぱりみゆしかいないって確信した。だからもうみゆと結婚するしかないって思って指輪を買ったんだ」
「勝手に確信して、こんなもの勝手に買わないでください! ……ひゃっ!」
羽柴先輩の手が私の頬に触れそうになった瞬間止まって、突然私の唇をなぞる。驚いて固まっていると、
「ねぇ、みゆ。お願い。俺の愛を受け取ってくれないかな」
お酒のせいもあるのか先輩の目は熱っぽくて、私はその目に絆されそうで、目をそらす。すると、先輩はまたエレベータの時のように私の顔を無理やり自分の方に向けた。
「目をそらさないで」
「……」
「ねぇ、この部屋に入った時、少しも、この可能性を考えてなかった? みゆには『未必の故意』があったと思ったんだけど」
「……そんなわけない」
私は首を横に振る。でも、先輩の目は、全部お見通しとばかりにこちらを見ていた。
ちがうちがうちがう!私がキスを思い出していたのは、先輩がヘンなことしたからで、
先輩を思い出したのは、あの事があったから先輩に会うのが怖かったからで……!
先輩の手が私の手を握る。する、と指を這わされると、ぎゅう、と熱を持った指が手に絡みついてきた。
「みゆ。もう一度だけ、キスさせて」
「なんで……」
「みゆだって、自分の気持ち、確かめたいでしょ。本当は自分がどう思ってるか」
もうやだ、もうやだ。こんなの、やだ!
私は先輩を睨みつける。しかし、先輩は、私の目を捉えて、そして優しく目を細めた。
なんで、この人はいつも……。
泣きそうになって、でも、絶対目の前の相手はそのまま帰してくれそうにも思えなくて……私は勢いよく縦に首を振る。
「もう帰りたいだけですから……! 一回だけで……」
言いかけた時、唇が触れる。そのまま何度も角度を変えてキスを交わして、でも先輩の唇は離れなくて、口内をからめとられると、先輩はそのまま歯列をなぞる。
「んんっ……!」
一瞬唇が離れて、
「キスだけでヤバイな」
先輩がつぶやく。
(やばいのはこっちですが……!)
生理的な涙か、心理的な涙か……分からないものが頬に伝う。先輩はそれも舐めとって、妖艶に微笑むと、またキスをした。ちゅ、ちゅ、と何度もキスをされて、やっと唇が離れたと思ったらまた口内にするりと舌を差し込まれて激しいキスを何度も繰り返す。
一回って言ったのに! 先輩の嘘吐き!
やっぱり、私は先輩なんて嫌いだ。今、それがはっきりわかった!
唇の端から飲み切れなくなった唾液が伝って、それも先輩は舐めとると、私を抱きしめ、私の頭を優しく撫でる。先ほどのキスの激しさとは違う、その柔らかな温かさに、なんだかまた泣きそうになる。
「先輩、これ以上は、もうだめ……。もうわかった。私、もう先輩とこういうこと、したくない。先輩のこと嫌い、大嫌い!」
「うん」
先輩は私と額を合わせるとクスリと楽しそうに笑って、
「でも、みゆ?」
と私の頬を優しく撫でる。「さっきから俺の服をずっと掴んだままだよ?」
え、そんなわけない、と思って自分の手の先を見ると、私の手は、先輩のスーツの背中部分を強く、強く、握りしめていた。
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