23 / 27
迅英が病院へ駆けつける前
しおりを挟む
菜月くんが薬を使うのを病院まで止めに行く途中、春樹が俺の前に現れた。
「迅! そんな急いでどこ行くの!」
「春樹……、もう俺に話しかけるな」
俺はそう言って春樹の横をすり抜けようとしたが春樹に道を塞がれた。
「ねぇ、何でそんなに急いでるの?」
「お前には関係ない」
「何で。俺のこと好きだったんじゃないの?」
「俺は今は菜月くんのことが好きだ。春樹のことは好きだと思っていたが、今はもう好きじゃない」
「そんなの嘘だよ。だって俺のこと好きじゃないαなんていない」
「ああ。お前がそう言うならそうなのかもな。だったらそのお前を好きになる相手を当たってくれ。今の俺には菜月くんしかいない」
「ダメだよ。αはみんな俺のこと好きじゃないとダメだ」
「話が通じないな。とにかく俺は急いでいるんだ。そこをどいてくれ」
俺はイライラしたけれど、春樹のお腹には赤ん坊がいる。子供に罪はない。
もしも春樹を押して道を通りでもして春樹が転んだら子供が危ないかも知れない。
「春樹ちゃ~ん、こんなところで何してるんだい?」
その声に振り向くと俺たちの後ろから薄らハゲたおじさんが下卑た笑みを浮かべて立っていた。
「い……石川さん……どうしてここに?」
「そんなの~、春樹くんを迎えに来たからに決まってるでしょ?」
「お、俺は石川さんとは付き合えないって言っただろ!」
「またまた、ツンツンしちゃって可愛いんだから。君のお腹の子も僕の子なんだから、僕と君が結婚するのは決まったことなんだよ? いつまでも逃げ回って僕の気を引こうとするのはいい加減やめなよ」
「俺は石川さんの気を引こうとしてるんじゃない!! それに俺は面食いなんだよ! 石川さんじゃ……というか一回もやってないのに石川さんとの子な訳ないだろっ」
「なぁに?」
石川という男がニチャっとした笑顔のまま春樹に聞くと春樹は青い顔をして俯いた。
「あ……いや」
春樹は石川という男にビクビクと怯えていた。
俺はこれ幸いと春樹の横をすり抜けて病院へと向かうことができた。
後から噂で聞いたところによると、春樹はあの後やはり石川という男と結婚したらしい。
見た目もさることながらかなりの変態趣味で有名なおっさんだったらしく、春樹が子供を産んだ後は、番のいない不特定多数のαの相手をさせられているらしい。
春樹は弱みを握られているらしく、いつもビクビクと石川の言うことを聞いていると聞いた。
まぁ、春樹はαは全員俺に惚れてるなんていうやつだ。
多くのαに抱かれて本望なんじゃないかと思う。
俺はというと菜月くんがもう謝らなくていいと言ってくれたので必死に愛を伝えている最中だ。
6年目の記念日にして俺たちはようやく番になることができたし、菜月くんとの子供ができるのが楽しみだ。
だが、菜月くんが子供にかかりっきりになったら俺は少し嫉妬してしまうかもな。
いや、菜月くんとの子なら絶対に可愛いし愛せるのだけど、俺の菜月くんが……いや。こんなことは子供ができてから悩めばいいな。
俺はそう結論付けて菜月くんの待つ家へ仕事からウキウキと帰宅した。
「迅! そんな急いでどこ行くの!」
「春樹……、もう俺に話しかけるな」
俺はそう言って春樹の横をすり抜けようとしたが春樹に道を塞がれた。
「ねぇ、何でそんなに急いでるの?」
「お前には関係ない」
「何で。俺のこと好きだったんじゃないの?」
「俺は今は菜月くんのことが好きだ。春樹のことは好きだと思っていたが、今はもう好きじゃない」
「そんなの嘘だよ。だって俺のこと好きじゃないαなんていない」
「ああ。お前がそう言うならそうなのかもな。だったらそのお前を好きになる相手を当たってくれ。今の俺には菜月くんしかいない」
「ダメだよ。αはみんな俺のこと好きじゃないとダメだ」
「話が通じないな。とにかく俺は急いでいるんだ。そこをどいてくれ」
俺はイライラしたけれど、春樹のお腹には赤ん坊がいる。子供に罪はない。
もしも春樹を押して道を通りでもして春樹が転んだら子供が危ないかも知れない。
「春樹ちゃ~ん、こんなところで何してるんだい?」
その声に振り向くと俺たちの後ろから薄らハゲたおじさんが下卑た笑みを浮かべて立っていた。
「い……石川さん……どうしてここに?」
「そんなの~、春樹くんを迎えに来たからに決まってるでしょ?」
「お、俺は石川さんとは付き合えないって言っただろ!」
「またまた、ツンツンしちゃって可愛いんだから。君のお腹の子も僕の子なんだから、僕と君が結婚するのは決まったことなんだよ? いつまでも逃げ回って僕の気を引こうとするのはいい加減やめなよ」
「俺は石川さんの気を引こうとしてるんじゃない!! それに俺は面食いなんだよ! 石川さんじゃ……というか一回もやってないのに石川さんとの子な訳ないだろっ」
「なぁに?」
石川という男がニチャっとした笑顔のまま春樹に聞くと春樹は青い顔をして俯いた。
「あ……いや」
春樹は石川という男にビクビクと怯えていた。
俺はこれ幸いと春樹の横をすり抜けて病院へと向かうことができた。
後から噂で聞いたところによると、春樹はあの後やはり石川という男と結婚したらしい。
見た目もさることながらかなりの変態趣味で有名なおっさんだったらしく、春樹が子供を産んだ後は、番のいない不特定多数のαの相手をさせられているらしい。
春樹は弱みを握られているらしく、いつもビクビクと石川の言うことを聞いていると聞いた。
まぁ、春樹はαは全員俺に惚れてるなんていうやつだ。
多くのαに抱かれて本望なんじゃないかと思う。
俺はというと菜月くんがもう謝らなくていいと言ってくれたので必死に愛を伝えている最中だ。
6年目の記念日にして俺たちはようやく番になることができたし、菜月くんとの子供ができるのが楽しみだ。
だが、菜月くんが子供にかかりっきりになったら俺は少し嫉妬してしまうかもな。
いや、菜月くんとの子なら絶対に可愛いし愛せるのだけど、俺の菜月くんが……いや。こんなことは子供ができてから悩めばいいな。
俺はそう結論付けて菜月くんの待つ家へ仕事からウキウキと帰宅した。
133
あなたにおすすめの小説
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
【本編完結】αに不倫されて離婚を突き付けられているけど別れたくない男Ωの話
雷尾
BL
本人が別れたくないって言うんなら仕方ないですよね。
一旦本編完結、気力があればその後か番外編を少しだけ書こうかと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる