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夢を見ていた。
夢の中では、いつもの夢だと分かるのに、起きたら全て忘れてしまうのだと夢の中の千秋は知っていた。
その夢の中では千秋は千秋でなく、ベータで高校生の年齢だった。
けれど体が弱いらしく学校へはあまり通えず、病院に居ることが多くて、千秋はその病院で1人の少年と親しくしていた。
少年は千秋のことを由衣斗と呼び、「今日は何してるの?」「一緒に遊ぼう」と嬉しそうな顔で慕ってくれていた。
「恋人という意味で付き合って」と告げられることも多くて結衣斗はとても嬉しい気持ちだった。
けれどその子は3歳も年下の男の子で優秀な遺伝子を持つといわれるアルファだった。
千秋は“もしも自分がオメガだったら”あるいは“もしも自分が女性だったら”みんなから祝福されて、少年を好きだと堂々と言えて、少年を幸せにできて結婚だってすることができるのにと思いながら、少年の気持ちにうなずきそうになるのをグッと堪え断るのだ。
そのもしもが叶ったとしても、結局は結衣斗の体では先が長くない。
そうして結衣斗はいつもこっそりとため息をつく。
男の子は何度も病院に通ってきた。
道端に生えていた綺麗な花や、河原で拾った面白い形の石などを渡してくれる。
「一緒に遊ぼう」といつも笑顔で。
夢の中の千秋はその子といる時間が何よりも大好きだった。
何よりも大切だった。
夢の中では、いつもの夢だと分かるのに、起きたら全て忘れてしまうのだと夢の中の千秋は知っていた。
その夢の中では千秋は千秋でなく、ベータで高校生の年齢だった。
けれど体が弱いらしく学校へはあまり通えず、病院に居ることが多くて、千秋はその病院で1人の少年と親しくしていた。
少年は千秋のことを由衣斗と呼び、「今日は何してるの?」「一緒に遊ぼう」と嬉しそうな顔で慕ってくれていた。
「恋人という意味で付き合って」と告げられることも多くて結衣斗はとても嬉しい気持ちだった。
けれどその子は3歳も年下の男の子で優秀な遺伝子を持つといわれるアルファだった。
千秋は“もしも自分がオメガだったら”あるいは“もしも自分が女性だったら”みんなから祝福されて、少年を好きだと堂々と言えて、少年を幸せにできて結婚だってすることができるのにと思いながら、少年の気持ちにうなずきそうになるのをグッと堪え断るのだ。
そのもしもが叶ったとしても、結局は結衣斗の体では先が長くない。
そうして結衣斗はいつもこっそりとため息をつく。
男の子は何度も病院に通ってきた。
道端に生えていた綺麗な花や、河原で拾った面白い形の石などを渡してくれる。
「一緒に遊ぼう」といつも笑顔で。
夢の中の千秋はその子といる時間が何よりも大好きだった。
何よりも大切だった。
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