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「何をしているのかな?」
ドアの方から静かな声が聞こえ、千秋は振り返った。
「四宮様……」
「ん? 呼び方を間違っているよ。まだ混乱しているんだね。ほら、こっちにおいで。もう少し休もう?」
静かで、穏やかな四宮の声でそう言われ、千秋の心にはここを出て行きたくないという感情が湧き上がった。
ーーでも、僕は、四宮様を裏切った。四宮様以外の男に、あんなことを言った……
「四宮様、僕……」
四宮はなおも穏やかな笑みを浮かべていた。
「1人にさせてしまってごめんね。不安になってしまったんだね。千秋が寝ている間に、少しだけ事件の事後処理をしていたんだ。だけどそれももう少しで終わるし、千秋とゆっくりできるよ」
「四宮様……僕、は、四宮様を裏切った……から、ここを」
「千秋は俺を裏切ってないでしょう?」
「で、でも、聞いたでしょ……? 僕が、し、四宮様以外を求めるのを」
自分で言っていて、胸がギュッと苦しくなった。
ーー僕だったら、いくら薬を盛られていても、四宮様が他の人間に欲情するところなんて見たくない
「千秋は何も悪くないよ? 俺は千秋を幻滅したりなんかしていないし、今だってずっと変わらず千秋のことが大好きなんだから」
「でも……僕は、四宮様に相応しくない」
四宮は、千秋をそっと包み込むように抱擁してきた。
千秋の背中を優しく叩きながら千秋の肩越しに、四宮が低く優しい声で語りかけてくる。
「あれは薬のせいだって分かっているよ。俺がもう少し早く行動していれば千秋はあんな目にあうこともなかったんだよ。だけどそれ以外に千秋が相応しくないと思ってしまう部分なんてあったかな? どうして相応しくないなんて思ったの?」
なんでも許してくれそうな雰囲気を出されて、千秋はポロリポロリと考えていることが口から出た。
「だって、僕、四宮様と番になったのに、赤ちゃんがいないんだ」
「赤ちゃん? ああ、番った時の性交渉はほぼ100パーの妊娠率みたい話をしているのかな?」
四宮の問いに千秋はコクリとうなずいて返す。
「あれは迷信みたいなものだよ。信じている人も多いし確かに妊娠率は高くなるけれど、100パーセントなんて数字じゃないよ。それに、どうして出来ないのかはお医者さんに見てもらわないと分からないでしょう? もしかしたら俺に原因があるかもしれないのに」
「……四宮様に原因、なんて、ないでしょう?」
「そんなのは調べてみないと分からないよ。ずっと強い抑制剤を服用していたし、そんな風な副作用があってもおかしくない。もし、調べてみて俺に原因があったら、千秋は俺を捨てるの?」
「そ、そんな訳ない! 僕は、四宮様がいてくれたらそれで」
「俺だってそうだよ」
四宮の即答に、千秋はドキリと胸が跳ねた。
「で、でも、街で会って、ホテルで、その、そう言うことをした時、僕に孕んでって言ってたから、四宮様は子供が欲しいんだと思って」
「ああ。それで悩ませてしまったのか。ごめんね。あの時は、本当にごめん。だけど、千秋がいてくれたらそれだけで俺は本当に満足なんだよ。あの時は、千秋に好きなアルファが居ると思っていたから、俺との子供が居たら千秋は俺に絆されて、ずっと一緒に居てくれると思ったんだ。本当に自分勝手な考えだったよ。子供は、実際のところ居ても居なくてもいいと思っているんだよ。居たらかわいがるだろうし、大切にするけれど、居なかったらその分、千秋が俺を構ってくれる時間が増えるでしょう?」
「四宮様……」
「もう、晴臣とは呼んでくれないの?」
「だって僕が、呼んでも、いいの?」
「千秋にはそう呼んで欲しいんだよ」
「はるおみ」
「うん。やっぱりそっちがいいね。もうここを出ていくなんて言わないよね?」
「……うん」
四宮は、心の底から安心したようにはぁと息を吐いた。
「じゃあ、もう少し休もうか。腰も体力もきついでしょう?」
そう言って、四宮は千秋をそっと抱き抱え、ベットまで運んで、それから一緒に布団に入った。
ドアの方から静かな声が聞こえ、千秋は振り返った。
「四宮様……」
「ん? 呼び方を間違っているよ。まだ混乱しているんだね。ほら、こっちにおいで。もう少し休もう?」
静かで、穏やかな四宮の声でそう言われ、千秋の心にはここを出て行きたくないという感情が湧き上がった。
ーーでも、僕は、四宮様を裏切った。四宮様以外の男に、あんなことを言った……
「四宮様、僕……」
四宮はなおも穏やかな笑みを浮かべていた。
「1人にさせてしまってごめんね。不安になってしまったんだね。千秋が寝ている間に、少しだけ事件の事後処理をしていたんだ。だけどそれももう少しで終わるし、千秋とゆっくりできるよ」
「四宮様……僕、は、四宮様を裏切った……から、ここを」
「千秋は俺を裏切ってないでしょう?」
「で、でも、聞いたでしょ……? 僕が、し、四宮様以外を求めるのを」
自分で言っていて、胸がギュッと苦しくなった。
ーー僕だったら、いくら薬を盛られていても、四宮様が他の人間に欲情するところなんて見たくない
「千秋は何も悪くないよ? 俺は千秋を幻滅したりなんかしていないし、今だってずっと変わらず千秋のことが大好きなんだから」
「でも……僕は、四宮様に相応しくない」
四宮は、千秋をそっと包み込むように抱擁してきた。
千秋の背中を優しく叩きながら千秋の肩越しに、四宮が低く優しい声で語りかけてくる。
「あれは薬のせいだって分かっているよ。俺がもう少し早く行動していれば千秋はあんな目にあうこともなかったんだよ。だけどそれ以外に千秋が相応しくないと思ってしまう部分なんてあったかな? どうして相応しくないなんて思ったの?」
なんでも許してくれそうな雰囲気を出されて、千秋はポロリポロリと考えていることが口から出た。
「だって、僕、四宮様と番になったのに、赤ちゃんがいないんだ」
「赤ちゃん? ああ、番った時の性交渉はほぼ100パーの妊娠率みたい話をしているのかな?」
四宮の問いに千秋はコクリとうなずいて返す。
「あれは迷信みたいなものだよ。信じている人も多いし確かに妊娠率は高くなるけれど、100パーセントなんて数字じゃないよ。それに、どうして出来ないのかはお医者さんに見てもらわないと分からないでしょう? もしかしたら俺に原因があるかもしれないのに」
「……四宮様に原因、なんて、ないでしょう?」
「そんなのは調べてみないと分からないよ。ずっと強い抑制剤を服用していたし、そんな風な副作用があってもおかしくない。もし、調べてみて俺に原因があったら、千秋は俺を捨てるの?」
「そ、そんな訳ない! 僕は、四宮様がいてくれたらそれで」
「俺だってそうだよ」
四宮の即答に、千秋はドキリと胸が跳ねた。
「で、でも、街で会って、ホテルで、その、そう言うことをした時、僕に孕んでって言ってたから、四宮様は子供が欲しいんだと思って」
「ああ。それで悩ませてしまったのか。ごめんね。あの時は、本当にごめん。だけど、千秋がいてくれたらそれだけで俺は本当に満足なんだよ。あの時は、千秋に好きなアルファが居ると思っていたから、俺との子供が居たら千秋は俺に絆されて、ずっと一緒に居てくれると思ったんだ。本当に自分勝手な考えだったよ。子供は、実際のところ居ても居なくてもいいと思っているんだよ。居たらかわいがるだろうし、大切にするけれど、居なかったらその分、千秋が俺を構ってくれる時間が増えるでしょう?」
「四宮様……」
「もう、晴臣とは呼んでくれないの?」
「だって僕が、呼んでも、いいの?」
「千秋にはそう呼んで欲しいんだよ」
「はるおみ」
「うん。やっぱりそっちがいいね。もうここを出ていくなんて言わないよね?」
「……うん」
四宮は、心の底から安心したようにはぁと息を吐いた。
「じゃあ、もう少し休もうか。腰も体力もきついでしょう?」
そう言って、四宮は千秋をそっと抱き抱え、ベットまで運んで、それから一緒に布団に入った。
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