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するりと千秋の指に指輪が通された。
「え?」
千秋の指には、1年前四宮と共に婚姻届を出しに行った帰りに、2人で選んで注文し、購入した指輪がすでに付けられていたので、薬指に2つ指輪がついていた。
「婚姻届を出してから、昭仁が生まれたりなんだりでバタバタしていて、結婚式を挙げてないでしょう?」
「えっと、うん」
「千秋と挙げたいんだ、結婚式。どうかな」
「……うれしい……もちろん。僕も挙げたいよ。だけど、晴臣はいいの?」
千秋は目を逸らした。
結婚式を挙げる場合、両親が参加することになるけれど、千秋の両親は今塀の中だ。
石崎の家からは籍を抜かれていたので、両親と言えるのかは千秋には分からなかったけれど。
「ご両親のことだよね。俺は、千秋のご両親として呼びたい人たちが居るんだけど」
「それって」
「うん、結衣斗のご両親。誓って、千秋の前世の話を俺から言った訳ではないんだけど、千秋と一緒に結衣斗の墓に行ってから一月後くらいにね、結衣斗のご両親から俺に連絡が来たんだ」
「え……、どんな?」
「手紙を読んだと。そこには、千秋の事は書かれていなかったけど、結衣斗の人生の時の思い出や、ご両親への想いがたくさん書かれていて……でも、結衣斗のお骨を入れる時は、そんな手紙は入ってなかったって。それで、俺に連絡してきてくださったんだよ」
ーー後ろの方に隠すように入れたのに、見つかったんだ。でも……
「なんで晴臣に?」
「何か知っていることはないかって。千秋のことは書かれていなかったけど、所々で今の生活の話が分かるようなことが書かれてあったから、結衣斗は生まれ変わってどこかで生きているのかもって」
「それで僕のことを?」
「俺もその時は千秋から直接教えてもらったわけではないけど、その手紙を書いたのはおそらく今の俺のパートナーの可能性が高いですと……勝手にごめんね」
「や、僕が、手紙を書いたんだから晴臣が謝ることじゃないよ。でも、父さんも母さんも僕が結衣斗の生まれ変わりだって信じてくれてるの?」
「千秋、最近公園でよく結衣斗のご両親と話すでしょう?」
「えっ」
「ご両親は、手紙を読んで、結衣斗だと思っていたけれど、実際に千秋と話してみて確信したと言っていた」
「そう……なんだ」
「ご両親も、千秋が話してくれるまで待つと言っていた。千秋が一生話さないと決めたとしても、それなら公園でたまに話す人でもいいと。千秋が元気で過ごしているのを見られればそれでいいと」
「そっか」
千秋はなんだか胸が詰まって涙が出そうになった。
一生千秋が話さない可能性を考えても、それでも千秋が元気で過ごしているならいいのだという考えは、千秋にとって抱え切れないほどの大きな愛に感じた。
それがとても心地良く嬉しい。
今生での両親には愛されなかったけれど、千秋には千秋を愛してくれる両親がちゃんといた。
ーー
それから1年後に挙げた2人の結婚式には、四宮の両親と千秋の両親が2人の結婚をお祝いした。
2歳になった昭仁は、リングボーイを立派に勤めあげた。
泉や熊井も参加して人数は少ないけれど、本当に2人の結婚を心から祝ってくれる人たちに祝われて暖かくて千秋が望んだ全てのものが詰まったような結婚式だった。
完
「え?」
千秋の指には、1年前四宮と共に婚姻届を出しに行った帰りに、2人で選んで注文し、購入した指輪がすでに付けられていたので、薬指に2つ指輪がついていた。
「婚姻届を出してから、昭仁が生まれたりなんだりでバタバタしていて、結婚式を挙げてないでしょう?」
「えっと、うん」
「千秋と挙げたいんだ、結婚式。どうかな」
「……うれしい……もちろん。僕も挙げたいよ。だけど、晴臣はいいの?」
千秋は目を逸らした。
結婚式を挙げる場合、両親が参加することになるけれど、千秋の両親は今塀の中だ。
石崎の家からは籍を抜かれていたので、両親と言えるのかは千秋には分からなかったけれど。
「ご両親のことだよね。俺は、千秋のご両親として呼びたい人たちが居るんだけど」
「それって」
「うん、結衣斗のご両親。誓って、千秋の前世の話を俺から言った訳ではないんだけど、千秋と一緒に結衣斗の墓に行ってから一月後くらいにね、結衣斗のご両親から俺に連絡が来たんだ」
「え……、どんな?」
「手紙を読んだと。そこには、千秋の事は書かれていなかったけど、結衣斗の人生の時の思い出や、ご両親への想いがたくさん書かれていて……でも、結衣斗のお骨を入れる時は、そんな手紙は入ってなかったって。それで、俺に連絡してきてくださったんだよ」
ーー後ろの方に隠すように入れたのに、見つかったんだ。でも……
「なんで晴臣に?」
「何か知っていることはないかって。千秋のことは書かれていなかったけど、所々で今の生活の話が分かるようなことが書かれてあったから、結衣斗は生まれ変わってどこかで生きているのかもって」
「それで僕のことを?」
「俺もその時は千秋から直接教えてもらったわけではないけど、その手紙を書いたのはおそらく今の俺のパートナーの可能性が高いですと……勝手にごめんね」
「や、僕が、手紙を書いたんだから晴臣が謝ることじゃないよ。でも、父さんも母さんも僕が結衣斗の生まれ変わりだって信じてくれてるの?」
「千秋、最近公園でよく結衣斗のご両親と話すでしょう?」
「えっ」
「ご両親は、手紙を読んで、結衣斗だと思っていたけれど、実際に千秋と話してみて確信したと言っていた」
「そう……なんだ」
「ご両親も、千秋が話してくれるまで待つと言っていた。千秋が一生話さないと決めたとしても、それなら公園でたまに話す人でもいいと。千秋が元気で過ごしているのを見られればそれでいいと」
「そっか」
千秋はなんだか胸が詰まって涙が出そうになった。
一生千秋が話さない可能性を考えても、それでも千秋が元気で過ごしているならいいのだという考えは、千秋にとって抱え切れないほどの大きな愛に感じた。
それがとても心地良く嬉しい。
今生での両親には愛されなかったけれど、千秋には千秋を愛してくれる両親がちゃんといた。
ーー
それから1年後に挙げた2人の結婚式には、四宮の両親と千秋の両親が2人の結婚をお祝いした。
2歳になった昭仁は、リングボーイを立派に勤めあげた。
泉や熊井も参加して人数は少ないけれど、本当に2人の結婚を心から祝ってくれる人たちに祝われて暖かくて千秋が望んだ全てのものが詰まったような結婚式だった。
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ねむちゃん様
コメントありがとうございます。
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鈴様
こちらにもコメントありがとうございます^^
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