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第3章 接近
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肝心の浩大はというと、僕らが到着して数分後に姿を現した。それは珍しいことに、待ち合わせ時間キッカリ。親は揃って仕事だったらしく、それなのにしっかりと自力で起きて電車を三つ乗り継いでやって来たと言うのだから、そこからもコイツの本気度がうかがえる。服装は普段と変わりなく、小さめの白シャツに灰色のスウェット、白のスニーカーという、まあ割とよく見るコーデだ。僕的には田舎のヤンキーって感じがしてあまり好きではない。
「おい明希、二人ともめちゃめちゃ可愛いなおい」
改札に向かう途中、ニヤニヤしながら囁く浩大に「そうだな」と呆れつつも同意した。
「河西さんはあれ、絶対勝負服だぜ?ワンチャンあんじゃね?」
「何が『ワンチャン』なのか僕にはよく分からないけど」
「疎いなあ明希。彼氏がおるのにあんなオシャレな服着てくるってことは、もしかしたらチャンスあるかもってことだよ。これまで見た中でも今日のは過去一だわ」
そういえばコイツ、最近は無いものの以前はたまにその求めてもいないデート報告を一方的に送ってきていた。僕はその過去の服装を知らないけど、差し詰め今日は都心部に来るからオシャレしてるってだけだろう。目撃現場の大半を占める“隣町”とは訳が違うんだから。
改札を抜けると既に電車が来ていたので、僕たちはその電車に乗り込んだ。ここからおよそ一時間半、電車とバスを乗り継ぎ目的地へと向かう。距離的にも金銭的にも他県なんてまるで違う国のような感覚だったけれど、案外行けてしまうという事実に改めて驚かされる。
「にしても、久々に『遊ぶ』って感じするなあ。なあ明希?」
四人席に腰を下ろすと、浩大は横からやや興奮気味に同意を求めてくる。僕は「まあ、そうだな」と答えて窓の外を眺めた。
「田中君は、割と遊んでそうだけど。ねえ、しーちゃん?」
「んー、そうかなあ?」
思いがけず放たれた麻美ちゃんの、その口調に胸が一瞬だけチクリとした。
「いやいやいや!この夏なんて、サッカー部の奴らと海行ったくらいだから!あとはコイツと東区の夏祭り行っただけ。女子と遊ぶのはほんと久々だよ」
「ふーん。明希君はどうなの?」
「えっ、何が?」
「相変わらず人の話聞いてないなあ。プライベートで女子と会うこと」
少し細くなった目と僅かに上がった口角は、明らかに僕を試していた。
「まあ……久々、かな」
そのやや改変された質問の答えは、当然彼女は知っている。けれど、もうここまで来てしまったら素直にそれを言えるはずはない。浩大が想像以上に本気らしいことと、この展開の速さ。おまけに目の前には栞ちゃんがいる——つまり、僕はこの場でささやかな嘘を強要されたわけだ。
電車に揺られる中で、僕たちは色々な話題に触れた。今日の服装から始まり、買い物はどこでするだとか、どこで遊ぶだとか。まあ、これに関してはほぼ選択肢が無いわけで、麻美ちゃん以外三人の答えはほぼ分かりきっている。未知数なのは、最近越して来た麻美ちゃんだけ——。
「そういや立石さんは、どの辺から引っ越して来たんだ?」
「中央区だよ」
中央区……となればそれこそ、今日の集合場所周辺地域がそこにあたる。
「え、めっちゃ都会じゃん!道理で制服も上品なわけだ」
「そうかな?まあ、一応女子中だったからね」
「「え!?」」
思わず、僕らは揃って声を漏らした。確かにあの制服……言われてみれば、ただの公立中にしてはお上品すぎる。でもまさか、女子中だったとは。
「てことは、もしかして彼氏出来たことなかったり?」
浩大が平生を装いつつ(と言っても内心興奮はしているだろう)尋ねると、彼女はまた僕に視線だけを向けて「まあ、そうかなあ」とつぶやく。「へえ、めっちゃ意外」と驚きを隠せない返答をする浩大の横顔は、今度こそ興奮は隠せていなかった。
その後も、小学生の時はどんな子だったか、引っ越す時はどう思ったか、勉強はできるのか、そんな感じのことをマシンガンのように訊いては時々僕の肩を意味もなく叩いた。
およそ一時間揺られ、乗り換えの駅に着くと十分も経たずして今度はバスが到着した。既に未知の田舎ではあるのに、地元と同じ白基調に赤ラインのレトロな外装なのが謎の安心感を与えてくれる。
ここからは割とすぐだった。四人横並びで座った隣が栞ちゃんだったせいもあってか、体感では十分もかかっていない。浩大はさっき興奮し過ぎたせい(あくまで推測)で窓にもたれ掛かって寝ていたし、かといって程よく麻美ちゃんが話を振ってくれたおかげで気まずくもならなかった。
「気になってたんだけどさ、明希君って生徒会の副会長だよね?どうしてなったの?」
「どうして……?」
「だって、別に『副会長』ってキャラじゃなくない?どちらかと言えば、みんなを引っ張るとか面倒臭いって思ってそう」
「ああそういう……まあ、簡単に言うと部活サボれるから」
「ふふっ。そっかだから明希くんの姿あまり見なかったのか」
納得したように栞ちゃんは笑った。
「おい明希、二人ともめちゃめちゃ可愛いなおい」
改札に向かう途中、ニヤニヤしながら囁く浩大に「そうだな」と呆れつつも同意した。
「河西さんはあれ、絶対勝負服だぜ?ワンチャンあんじゃね?」
「何が『ワンチャン』なのか僕にはよく分からないけど」
「疎いなあ明希。彼氏がおるのにあんなオシャレな服着てくるってことは、もしかしたらチャンスあるかもってことだよ。これまで見た中でも今日のは過去一だわ」
そういえばコイツ、最近は無いものの以前はたまにその求めてもいないデート報告を一方的に送ってきていた。僕はその過去の服装を知らないけど、差し詰め今日は都心部に来るからオシャレしてるってだけだろう。目撃現場の大半を占める“隣町”とは訳が違うんだから。
改札を抜けると既に電車が来ていたので、僕たちはその電車に乗り込んだ。ここからおよそ一時間半、電車とバスを乗り継ぎ目的地へと向かう。距離的にも金銭的にも他県なんてまるで違う国のような感覚だったけれど、案外行けてしまうという事実に改めて驚かされる。
「にしても、久々に『遊ぶ』って感じするなあ。なあ明希?」
四人席に腰を下ろすと、浩大は横からやや興奮気味に同意を求めてくる。僕は「まあ、そうだな」と答えて窓の外を眺めた。
「田中君は、割と遊んでそうだけど。ねえ、しーちゃん?」
「んー、そうかなあ?」
思いがけず放たれた麻美ちゃんの、その口調に胸が一瞬だけチクリとした。
「いやいやいや!この夏なんて、サッカー部の奴らと海行ったくらいだから!あとはコイツと東区の夏祭り行っただけ。女子と遊ぶのはほんと久々だよ」
「ふーん。明希君はどうなの?」
「えっ、何が?」
「相変わらず人の話聞いてないなあ。プライベートで女子と会うこと」
少し細くなった目と僅かに上がった口角は、明らかに僕を試していた。
「まあ……久々、かな」
そのやや改変された質問の答えは、当然彼女は知っている。けれど、もうここまで来てしまったら素直にそれを言えるはずはない。浩大が想像以上に本気らしいことと、この展開の速さ。おまけに目の前には栞ちゃんがいる——つまり、僕はこの場でささやかな嘘を強要されたわけだ。
電車に揺られる中で、僕たちは色々な話題に触れた。今日の服装から始まり、買い物はどこでするだとか、どこで遊ぶだとか。まあ、これに関してはほぼ選択肢が無いわけで、麻美ちゃん以外三人の答えはほぼ分かりきっている。未知数なのは、最近越して来た麻美ちゃんだけ——。
「そういや立石さんは、どの辺から引っ越して来たんだ?」
「中央区だよ」
中央区……となればそれこそ、今日の集合場所周辺地域がそこにあたる。
「え、めっちゃ都会じゃん!道理で制服も上品なわけだ」
「そうかな?まあ、一応女子中だったからね」
「「え!?」」
思わず、僕らは揃って声を漏らした。確かにあの制服……言われてみれば、ただの公立中にしてはお上品すぎる。でもまさか、女子中だったとは。
「てことは、もしかして彼氏出来たことなかったり?」
浩大が平生を装いつつ(と言っても内心興奮はしているだろう)尋ねると、彼女はまた僕に視線だけを向けて「まあ、そうかなあ」とつぶやく。「へえ、めっちゃ意外」と驚きを隠せない返答をする浩大の横顔は、今度こそ興奮は隠せていなかった。
その後も、小学生の時はどんな子だったか、引っ越す時はどう思ったか、勉強はできるのか、そんな感じのことをマシンガンのように訊いては時々僕の肩を意味もなく叩いた。
およそ一時間揺られ、乗り換えの駅に着くと十分も経たずして今度はバスが到着した。既に未知の田舎ではあるのに、地元と同じ白基調に赤ラインのレトロな外装なのが謎の安心感を与えてくれる。
ここからは割とすぐだった。四人横並びで座った隣が栞ちゃんだったせいもあってか、体感では十分もかかっていない。浩大はさっき興奮し過ぎたせい(あくまで推測)で窓にもたれ掛かって寝ていたし、かといって程よく麻美ちゃんが話を振ってくれたおかげで気まずくもならなかった。
「気になってたんだけどさ、明希君って生徒会の副会長だよね?どうしてなったの?」
「どうして……?」
「だって、別に『副会長』ってキャラじゃなくない?どちらかと言えば、みんなを引っ張るとか面倒臭いって思ってそう」
「ああそういう……まあ、簡単に言うと部活サボれるから」
「ふふっ。そっかだから明希くんの姿あまり見なかったのか」
納得したように栞ちゃんは笑った。
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