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第4章 罪と罰
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「またあの美女二人と遊べるとか、羨ましい奴だな。どこ行くんだ?」
「プール」
「プール!?おまっ、プール!?頼む、写真撮って送ってくれ!」
「無茶言うな。浩大の写真なら送ってやるよ」
「浩大君を撮ってるテイで麻美ちゃんも上手いこと収めてくれたらいいから!」
「それは盗撮って言うんだよ」と言いかけて、やっぱりやめた。そもそも、自分もそれ以上にアウトなことをやってるわけで、説教できる立場じゃない。それより、翔一が『麻美ちゃん』と限定したことに、ちょっとだけ興味をそそられた。
「お前、栞ちゃんと麻美ちゃんだったら、麻美ちゃんの方が良いのか?」
「おお。絶対麻美ちゃん。胸大きいからな」
わざわざ腕を組んでまで何を語るのかと思えば、やっぱり首から下の話で、僕は呆れた。
「じゃあ、もし栞ちゃんより小さかったら、栞ちゃん派になるのか?」
「いや、それはない。あれは間違いなく隠れ巨乳だ」
どこから湧いて出た自信だよ、と思いつつ問い詰めると、翔一は妙に真剣な顔で続ける。
「お前、あれ見てわからねえの?お尻の形とか、もう体できあがってるって。家でも筋トレとかしてんじゃねえか?」
聞いているうちに、僕は「コイツ、本当に盗撮してるんじゃ……?」と疑いたくなってきた。確かにスタイルは良いけど、制服姿だけでそこまで分かるか?水泳の授業はもう終わってるし、体操服だって長袖派だったはずだ。
「まあ、一番のソースは麻美ちゃんのお母さんだけどな。あのエッロい体つき、今でもはっきり覚えてるわ」
そこまで言われて、僕もようやく納得した。
要するに、裸体を見たわけじゃないけど、遺伝的に彼女もその“エッロい体”になってるはずだっていう、ただの妄想らしい。……ていうか、小学校低学年の時点でどこ見てんだよ。
「お前、口が裂けても絶対そんなこと他人に言うなよ?特に『お母さんがエロかった』ってところ!」
「え、なんでよ?麻美ちゃんに聞いてもええか?」
「それだけは絶ッッッッ対やめろ。言ったら最期、二度と顔合わせられないからな」
翔一は「よくわかんねえなあ」と言いながら、椅子の背にもたれた。悪びれた様子はなかったけど、コイツにも一応人の心はある。だから僕は、このタイミングで例の話はしなかった。
「にしても、あのお前が女子とプール、ねえ。中学になってから、まるで女子に興味なさそうだったのに」
「別に。興味ないんじゃなくて……話したい相手がいなかっただけだよ」
「おうおう、お目が高いこと。で?その話したい相手の麻美ちゃんはどうしたんだ、最近。全然見ないけど?」
「……余計なお世話だっての」
その何気ない一言は、今の僕が一番、気にしていることでもあった。
麻美ちゃんと一緒に帰ったのは、結局、最初の二日だけ。元々あれは“お願い”というより、罰みたいなものだった。暗黙のうちに、例の写真が人質になっていて、僕はそれに従っていた。でも、少しおかしいのは、それを僕が「苦」だとも「罰」だとも、思っていなかったってこと。だからこそ、今の距離感に、何とも言えないもどかしさが残っていた。
——そんな、矢先だった。
夜の九時を少し過ぎた頃、スマホが不意に震えた。
そのとき僕は、リビングで面白くもないテレビを眺めながら、明日栞ちゃんにどうやって彼氏の話を切り出そうかと考えていた。でも、通知画面に『麻美』の名前が浮かんだ瞬間、僕は反射的に自室へと引き返していた。
【木曜日って、学校十四時半に終わるよね?放課後空いてる?】
それは、初めて“一方的じゃない”メッセージだった。
彼女の言う通り、今週の木曜は先生たちの会議か何かで、いつもより早く終わる。
彼女のメッセージしかない、空白のようなトーク画面に、僕は初めて返信を打ち込んだ。
【空いてます】
なぜだか緊張してしまって、その緊張が、なぜか敬語という形で表れる。
送信時刻『21:13』の上に、すぐさま『既読』の文字が浮かび上がった。そして画面を閉じる間もなく、返信が届く。
【じゃあ、公民館前に私服で集合ね。自転車ありで】
最後に、間髪入れず『おやすみ』の文字と、あの例のスタンプが立て続けに届いた。
「あれ、もう来たの? 早かったね」
約束の木曜日。坂道を登りきったところで、彼女の姿が視界に飛び込んできた。公民館の玄関脇、小さな階段に腰をかけている。ネイビーのオーバーサイズTシャツに、白のプリーツスカート。足元は白のクロッグサンダル。全体的にシンプルだけど、それがかえって目を引いた。
ただ、そのスカートの位置がやけに高くて、座った姿勢では太ももがかなり露わになっている。正面から見たら……いや、思わず目を逸らした。自分でも驚くほど、脳が勝手に“危ない”と判断していた。
「それは、こっちのセリフなんだけどな」
なんとか平静を装って言うと、彼女はくすっと笑った。
「ふふ。私は家に帰ってないからね」
……帰ってない? どういうことだ? と眉をひそめながら近づくと、彼女の背後に見覚えのある通学カバンがあった。あの、いつも妙に軽そうに持っているカバン。今は中身が詰まっていて、膨らんでいる。
「そういうことか。……あれ? でも、じゃあどこで着替えたの?」
「この裏だけど?」
「この裏? えっ、公民館の裏!?」
驚きに声が裏返る。彼女は「そうだよ」と、あっけらかんと答えた。
「プール」
「プール!?おまっ、プール!?頼む、写真撮って送ってくれ!」
「無茶言うな。浩大の写真なら送ってやるよ」
「浩大君を撮ってるテイで麻美ちゃんも上手いこと収めてくれたらいいから!」
「それは盗撮って言うんだよ」と言いかけて、やっぱりやめた。そもそも、自分もそれ以上にアウトなことをやってるわけで、説教できる立場じゃない。それより、翔一が『麻美ちゃん』と限定したことに、ちょっとだけ興味をそそられた。
「お前、栞ちゃんと麻美ちゃんだったら、麻美ちゃんの方が良いのか?」
「おお。絶対麻美ちゃん。胸大きいからな」
わざわざ腕を組んでまで何を語るのかと思えば、やっぱり首から下の話で、僕は呆れた。
「じゃあ、もし栞ちゃんより小さかったら、栞ちゃん派になるのか?」
「いや、それはない。あれは間違いなく隠れ巨乳だ」
どこから湧いて出た自信だよ、と思いつつ問い詰めると、翔一は妙に真剣な顔で続ける。
「お前、あれ見てわからねえの?お尻の形とか、もう体できあがってるって。家でも筋トレとかしてんじゃねえか?」
聞いているうちに、僕は「コイツ、本当に盗撮してるんじゃ……?」と疑いたくなってきた。確かにスタイルは良いけど、制服姿だけでそこまで分かるか?水泳の授業はもう終わってるし、体操服だって長袖派だったはずだ。
「まあ、一番のソースは麻美ちゃんのお母さんだけどな。あのエッロい体つき、今でもはっきり覚えてるわ」
そこまで言われて、僕もようやく納得した。
要するに、裸体を見たわけじゃないけど、遺伝的に彼女もその“エッロい体”になってるはずだっていう、ただの妄想らしい。……ていうか、小学校低学年の時点でどこ見てんだよ。
「お前、口が裂けても絶対そんなこと他人に言うなよ?特に『お母さんがエロかった』ってところ!」
「え、なんでよ?麻美ちゃんに聞いてもええか?」
「それだけは絶ッッッッ対やめろ。言ったら最期、二度と顔合わせられないからな」
翔一は「よくわかんねえなあ」と言いながら、椅子の背にもたれた。悪びれた様子はなかったけど、コイツにも一応人の心はある。だから僕は、このタイミングで例の話はしなかった。
「にしても、あのお前が女子とプール、ねえ。中学になってから、まるで女子に興味なさそうだったのに」
「別に。興味ないんじゃなくて……話したい相手がいなかっただけだよ」
「おうおう、お目が高いこと。で?その話したい相手の麻美ちゃんはどうしたんだ、最近。全然見ないけど?」
「……余計なお世話だっての」
その何気ない一言は、今の僕が一番、気にしていることでもあった。
麻美ちゃんと一緒に帰ったのは、結局、最初の二日だけ。元々あれは“お願い”というより、罰みたいなものだった。暗黙のうちに、例の写真が人質になっていて、僕はそれに従っていた。でも、少しおかしいのは、それを僕が「苦」だとも「罰」だとも、思っていなかったってこと。だからこそ、今の距離感に、何とも言えないもどかしさが残っていた。
——そんな、矢先だった。
夜の九時を少し過ぎた頃、スマホが不意に震えた。
そのとき僕は、リビングで面白くもないテレビを眺めながら、明日栞ちゃんにどうやって彼氏の話を切り出そうかと考えていた。でも、通知画面に『麻美』の名前が浮かんだ瞬間、僕は反射的に自室へと引き返していた。
【木曜日って、学校十四時半に終わるよね?放課後空いてる?】
それは、初めて“一方的じゃない”メッセージだった。
彼女の言う通り、今週の木曜は先生たちの会議か何かで、いつもより早く終わる。
彼女のメッセージしかない、空白のようなトーク画面に、僕は初めて返信を打ち込んだ。
【空いてます】
なぜだか緊張してしまって、その緊張が、なぜか敬語という形で表れる。
送信時刻『21:13』の上に、すぐさま『既読』の文字が浮かび上がった。そして画面を閉じる間もなく、返信が届く。
【じゃあ、公民館前に私服で集合ね。自転車ありで】
最後に、間髪入れず『おやすみ』の文字と、あの例のスタンプが立て続けに届いた。
「あれ、もう来たの? 早かったね」
約束の木曜日。坂道を登りきったところで、彼女の姿が視界に飛び込んできた。公民館の玄関脇、小さな階段に腰をかけている。ネイビーのオーバーサイズTシャツに、白のプリーツスカート。足元は白のクロッグサンダル。全体的にシンプルだけど、それがかえって目を引いた。
ただ、そのスカートの位置がやけに高くて、座った姿勢では太ももがかなり露わになっている。正面から見たら……いや、思わず目を逸らした。自分でも驚くほど、脳が勝手に“危ない”と判断していた。
「それは、こっちのセリフなんだけどな」
なんとか平静を装って言うと、彼女はくすっと笑った。
「ふふ。私は家に帰ってないからね」
……帰ってない? どういうことだ? と眉をひそめながら近づくと、彼女の背後に見覚えのある通学カバンがあった。あの、いつも妙に軽そうに持っているカバン。今は中身が詰まっていて、膨らんでいる。
「そういうことか。……あれ? でも、じゃあどこで着替えたの?」
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