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第6章
70.来たるその時に向けて
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神器の暴走と大規模災害、諸脅威への対応。聖威師が寿命ギリギリまで地上に留まっていた元々の理由であるそれらは、どうやって解決するつもりなのだろうか。
『だから500年の期間を設けたんだよ』
山吹色の瞳がアマーリエに据えられる。力強く輝く、前進と生命力の象徴のような眼差し。
『聖威師がいなくなっても人間が困らないよう、今から言う二つのことをやるんだ。一つ目は、神器の暴走を鎮める神器を可能な限り拡充強化する。今あるヤツだと不十分で、結局聖威師が出る羽目になることも多かっただろ。二つ目は、天災や地下世界の奴らへ対処するための神器を創生する。対暴威用の神器だな。神器の創生は天の神じゃなきゃできねえから、俺たちが協力する』
ただし、天の神は人間の味方ではない。基本的には地上の人間も、動植物も昆虫も鉱物も、地下世界の存在も区別しない。かつて、地下に住む者が神の心を掴み、神格を授かったこともある。
従来は、強力な古代の魔族や邪霊が地上へ侵攻して来た際は聖威師が討伐して来たが、それとてやり過ぎれば、人間への肩入れが過ぎるとして天から警告を食らう。
それらも踏まえ、地下世界の存在へ対抗する神器に対しては、攻撃よりも結界や強制送還などの防衛機能が中心になるそうだ。一方的に先方を蹂躙・殲滅できるほどの力まで付与してしまえば、あまりに人間に有利すぎる。地下の存在が襲撃して来たとしても、正当な理由があったり、人間側に非がある場合もあるのだ。
『今後の500年の間に顕現した聖威師は、その二つに力を注ぐのだよ。突貫工事ではなく、500年の時間をかけて念入りに行うんだ。アマーリエたちがその第一陣として土台を築くが良い』
フレイムとラミルファの言葉に続き、フルードが唇を動かした。
『私も協力します。ローナや当真君、恵奈さん、アリステル、さらに先達の方々も皆、助力を惜しまないと言っています。ここには代表で私が来ました』
さらに先達とは、ライナスや当波、オーネリアに佳良たちのことだろう。
『神器鎮静用の神器、及び災害対処用の神器の件については、歴代の聖威師も考えを巡らせて来ました。しかし、代々の先達の多くは色持ちではないため力が足りず、私たちの時は高位神器の暴走が頻発しており、時間が捻出できませんでした』
透明な碧眼が、キラキラと輝きながら現役の聖威師たちを見る。ほんの5年前まで、彼はアマーリエたちの側に座っていた。
『その点でも、現在は好機なのです。神器の暴走が激減していると聞きました。神の怒りが消えれば、神鎮めも少なくなるでしょう。任務が減れば時間が大幅に空きますから、鎮静神器の強化などの件にもじっくり取り組めます』
『色持ちの聖威師という特別な存在であるユフィーたちが、初期段階でしっかり基礎を構築しとけば、それなりに強力な神器でも鎮めることが可能な神器を創れるはずだ。悪神の神器用の鎮静神器も創った方が良いから、ラミルファやアリステルに協力してもらうんだ。後は、かなりの規模の災害にも対応できる神器とかも作れると思う』
「フレイム、秘奥の神器はどうするの? あれは聖威師でなければ暴走を止められないわ。四大高位神や選ばれし神の神器なども、聖威師でなくては対応が厳しいはずよ」
正確に言えば、そのレベルの神器になれば、高位の神格を持つ特別な聖威師でなければ対処が難しい。ミンディや大樹、歴代聖威師の多くは通常の聖威師――色無しの神格なので、アマーリエが今挙げた神器が暴走すれば手に負えない。
逆に考えれば、そのような規格外の神器が次々に暴走していたフルードやライナス、オーネリアたちの時代は、本当に過酷な状況だったのだ。
『そういう別格の神器に関しては、500年後に聖威師が昇天する際、人間たちに選ばせる予定だ。該当の神器を所持する者に余さず神託を降ろし、暴走したら止められる存在がいなくなることを伝えて、どうするか判断させる。危険性を考慮して手放すなら天の方で引き取る。リスクがあっても力を持ち続けていたいなら、自己責任で所持を継続させる』
元々、神器にはそう言ったリスクがあることが事前に説明され、授かる側がそれに納得した上で、管理責任も含めて与えられている。ゆえに、改めて再確認する必要も、選択の機会を与える必要もない。それでももう一度説明して選ばせるのは、かなりの配慮と言えた。
『聖威師が還る時が近付けば、適宜選択をさせるつもりだ』
地上に少なからず干渉することになるが、聖威師の滞留終了という重大事案に関連しての行為であるため、大目に見られるだろうと、ブレイズや葬邪神様も太鼓判をくれたという。
『その結果、それでも神器の所持継続を選んだなら、後はソイツらの自己責任だ。どこまでも面倒を見ることはできねえ。神は人間の保護者でもお守り役でもねえし、人は神から独立したんだしな』
すげなく言い切ったフレイムは、双眸を和らげて続けた。
『ま、今言ったのはあくまで大雑把な予定だから、今後調整をしていく中で修正する可能性もある。最終的にどうするかは、500年後に地上にいる聖威師たちが決めることだ。だから、俺たちは今やるべきことをやろう』
大きな手が差し出される。いつでもアマーリエを優しく導いてくれる、どこまでも一緒に歩んでくれる者の手。彼と一緒なら、どんな道にでも臆せず進むことができる。
『少しでも高性能で強力な神器を創るんだ。それが暴走破損したとかいうオチにならねえように、複数創るとか、専用の特製ストッパーを付けるとか、これから色々と考えていけば良い。色無しの聖威師……並の聖威師の代わりができるくらいの、安心安全な神器を、500年かけて創り上げようぜ』
世界を守り続けて来た聖威師にとって代われる神器を作製する。難しいことだが、有色ではなく通常の聖威師の代替であり、500年の期間があり、高位神であるフレイムたちがこぞって注力してくれるならば、不可能ではない。
『俺たちが協力する。尊重派の神々や歴代聖威師たちの主神も力を貸すと言ってくれてる。一緒にやろう。お前たちの代で最初の一足を踏み出すんだ』
ラミルファが飄々と笑い、フルードが頷き、狼神は慈愛深い眼差しを向けている。彼の後ろには、多くの神々が連なってくれている。
アマーリエは他の聖威師たちと視線を合わせた。リーリア、ランドルフ、ルルアージュ、当利、祐奈。皆、賛同を示して首肯している。その意を受け、フレイムの手を握った。
「ええ。最善を尽くせるよう努力するわ。どうかよろしくお願いします」
『おう。任しとけ!』
三千年続いていた問題に終止符が打たれようとしている。代わりに目の前に広がったのは。これからの道筋。
(皆で力を合わせれば、きっとできるわ。最初の私たちが少しでも基盤を固めておいて、次の代に繋ぐのよ)
そして、昇天してからは、後代を支える先達神として神器作製に携われば良い。フルードやアシュトンたちのような立ち位置で。
(やれるわ……フレイムと一緒なら、皆がいるのなら、大丈夫よ)
力強く結んだ手の感触を感じながら、ふと目線を上に向ける。どっしりとした木がサヤサヤと揺れ、満開の花が美しい花弁を零して舞っていた。つられて同じ方を見たフレイムが表情を緩ませる。
山吹色の双眸が温かな色を宿すのを見ながら、自然とアマーリエの顔も綻んでいた。
『だから500年の期間を設けたんだよ』
山吹色の瞳がアマーリエに据えられる。力強く輝く、前進と生命力の象徴のような眼差し。
『聖威師がいなくなっても人間が困らないよう、今から言う二つのことをやるんだ。一つ目は、神器の暴走を鎮める神器を可能な限り拡充強化する。今あるヤツだと不十分で、結局聖威師が出る羽目になることも多かっただろ。二つ目は、天災や地下世界の奴らへ対処するための神器を創生する。対暴威用の神器だな。神器の創生は天の神じゃなきゃできねえから、俺たちが協力する』
ただし、天の神は人間の味方ではない。基本的には地上の人間も、動植物も昆虫も鉱物も、地下世界の存在も区別しない。かつて、地下に住む者が神の心を掴み、神格を授かったこともある。
従来は、強力な古代の魔族や邪霊が地上へ侵攻して来た際は聖威師が討伐して来たが、それとてやり過ぎれば、人間への肩入れが過ぎるとして天から警告を食らう。
それらも踏まえ、地下世界の存在へ対抗する神器に対しては、攻撃よりも結界や強制送還などの防衛機能が中心になるそうだ。一方的に先方を蹂躙・殲滅できるほどの力まで付与してしまえば、あまりに人間に有利すぎる。地下の存在が襲撃して来たとしても、正当な理由があったり、人間側に非がある場合もあるのだ。
『今後の500年の間に顕現した聖威師は、その二つに力を注ぐのだよ。突貫工事ではなく、500年の時間をかけて念入りに行うんだ。アマーリエたちがその第一陣として土台を築くが良い』
フレイムとラミルファの言葉に続き、フルードが唇を動かした。
『私も協力します。ローナや当真君、恵奈さん、アリステル、さらに先達の方々も皆、助力を惜しまないと言っています。ここには代表で私が来ました』
さらに先達とは、ライナスや当波、オーネリアに佳良たちのことだろう。
『神器鎮静用の神器、及び災害対処用の神器の件については、歴代の聖威師も考えを巡らせて来ました。しかし、代々の先達の多くは色持ちではないため力が足りず、私たちの時は高位神器の暴走が頻発しており、時間が捻出できませんでした』
透明な碧眼が、キラキラと輝きながら現役の聖威師たちを見る。ほんの5年前まで、彼はアマーリエたちの側に座っていた。
『その点でも、現在は好機なのです。神器の暴走が激減していると聞きました。神の怒りが消えれば、神鎮めも少なくなるでしょう。任務が減れば時間が大幅に空きますから、鎮静神器の強化などの件にもじっくり取り組めます』
『色持ちの聖威師という特別な存在であるユフィーたちが、初期段階でしっかり基礎を構築しとけば、それなりに強力な神器でも鎮めることが可能な神器を創れるはずだ。悪神の神器用の鎮静神器も創った方が良いから、ラミルファやアリステルに協力してもらうんだ。後は、かなりの規模の災害にも対応できる神器とかも作れると思う』
「フレイム、秘奥の神器はどうするの? あれは聖威師でなければ暴走を止められないわ。四大高位神や選ばれし神の神器なども、聖威師でなくては対応が厳しいはずよ」
正確に言えば、そのレベルの神器になれば、高位の神格を持つ特別な聖威師でなければ対処が難しい。ミンディや大樹、歴代聖威師の多くは通常の聖威師――色無しの神格なので、アマーリエが今挙げた神器が暴走すれば手に負えない。
逆に考えれば、そのような規格外の神器が次々に暴走していたフルードやライナス、オーネリアたちの時代は、本当に過酷な状況だったのだ。
『そういう別格の神器に関しては、500年後に聖威師が昇天する際、人間たちに選ばせる予定だ。該当の神器を所持する者に余さず神託を降ろし、暴走したら止められる存在がいなくなることを伝えて、どうするか判断させる。危険性を考慮して手放すなら天の方で引き取る。リスクがあっても力を持ち続けていたいなら、自己責任で所持を継続させる』
元々、神器にはそう言ったリスクがあることが事前に説明され、授かる側がそれに納得した上で、管理責任も含めて与えられている。ゆえに、改めて再確認する必要も、選択の機会を与える必要もない。それでももう一度説明して選ばせるのは、かなりの配慮と言えた。
『聖威師が還る時が近付けば、適宜選択をさせるつもりだ』
地上に少なからず干渉することになるが、聖威師の滞留終了という重大事案に関連しての行為であるため、大目に見られるだろうと、ブレイズや葬邪神様も太鼓判をくれたという。
『その結果、それでも神器の所持継続を選んだなら、後はソイツらの自己責任だ。どこまでも面倒を見ることはできねえ。神は人間の保護者でもお守り役でもねえし、人は神から独立したんだしな』
すげなく言い切ったフレイムは、双眸を和らげて続けた。
『ま、今言ったのはあくまで大雑把な予定だから、今後調整をしていく中で修正する可能性もある。最終的にどうするかは、500年後に地上にいる聖威師たちが決めることだ。だから、俺たちは今やるべきことをやろう』
大きな手が差し出される。いつでもアマーリエを優しく導いてくれる、どこまでも一緒に歩んでくれる者の手。彼と一緒なら、どんな道にでも臆せず進むことができる。
『少しでも高性能で強力な神器を創るんだ。それが暴走破損したとかいうオチにならねえように、複数創るとか、専用の特製ストッパーを付けるとか、これから色々と考えていけば良い。色無しの聖威師……並の聖威師の代わりができるくらいの、安心安全な神器を、500年かけて創り上げようぜ』
世界を守り続けて来た聖威師にとって代われる神器を作製する。難しいことだが、有色ではなく通常の聖威師の代替であり、500年の期間があり、高位神であるフレイムたちがこぞって注力してくれるならば、不可能ではない。
『俺たちが協力する。尊重派の神々や歴代聖威師たちの主神も力を貸すと言ってくれてる。一緒にやろう。お前たちの代で最初の一足を踏み出すんだ』
ラミルファが飄々と笑い、フルードが頷き、狼神は慈愛深い眼差しを向けている。彼の後ろには、多くの神々が連なってくれている。
アマーリエは他の聖威師たちと視線を合わせた。リーリア、ランドルフ、ルルアージュ、当利、祐奈。皆、賛同を示して首肯している。その意を受け、フレイムの手を握った。
「ええ。最善を尽くせるよう努力するわ。どうかよろしくお願いします」
『おう。任しとけ!』
三千年続いていた問題に終止符が打たれようとしている。代わりに目の前に広がったのは。これからの道筋。
(皆で力を合わせれば、きっとできるわ。最初の私たちが少しでも基盤を固めておいて、次の代に繋ぐのよ)
そして、昇天してからは、後代を支える先達神として神器作製に携われば良い。フルードやアシュトンたちのような立ち位置で。
(やれるわ……フレイムと一緒なら、皆がいるのなら、大丈夫よ)
力強く結んだ手の感触を感じながら、ふと目線を上に向ける。どっしりとした木がサヤサヤと揺れ、満開の花が美しい花弁を零して舞っていた。つられて同じ方を見たフレイムが表情を緩ませる。
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