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第5章
39.忍び寄るのは
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「誰も強制昇天にならなくて良かったこと」
「ええ、本当に」
「今回ばかりは駄目かと思ったよ」
祐奈とルルアージュ、当利が話している。
「こちらのお菓子をオーネリア様方に持って帰りませんこと? 皆様、お腹が空いておられるかもしれませんわ。焔神様、邪神様、ご許可をいただけませんでしょうか?」
「おー、持ってけ持ってけ」
「ふふ、幾らでもどうぞ」
テーブルに置かれた大きな菓子皿を示す恵奈に、フレイムとラミルファが快諾した。聖威で容器や袋を出現させたアリステルも加わり、皆で手分けして菓子を詰めていく。それを横目に、アマーリエはそろりと口を開いた。
「フルード様、アシュトン様。すみませんが、私は少しだけ大神官補佐室に行きます。今日の朝一で確認と押印をお願いされていた仕事がありまして」
昨日の終業間際に舞い込んだ仕事だ。その晩に遊運命の神襲撃が連続し、夜は大部屋に泊まってそのまま天堂に来てしまったため、まだ処理できていないのが気になっていた。こうなると分かっていたなら、昨日の内にさっさと済ませておいたのだが。
「属国の神官府に下った神託に関わる内容で、神にも関係している事柄なので、後回しにはできないのです。といっても、書類一枚だけの簡単なものですのから、すぐに戻れます」
(ざっと読んだ限り一瞬で終わる内容だったから、明日で良いと思って今日に回してしまったのよね)
常であれば、仕事がある状態で急件が入れば、手が空いている他の聖威師にパスすることもできる。だが現状に限っては、全員がこの棟に集合しているため、代わりを頼める者がいない。
「分かりました。先に天堂に行っているかもしれません」
「ありがとうございます、フルード様。終わったら私も向かいます。神々にきちんとご挨拶しなくてはなりませんから」
「ユフィー、俺も一緒に行こうか?」
『主、我らも付いて行く』
『ええ、お供いたします』
フレイムと聖獣たちが申し出てくれた。だが、アマーリエはやんわりと断る。
「いいえ、大丈夫よフレイム。遊運命神様の誤解も解けたみたいだし、強硬派の神々もお還りになったのならもう安全だもの。ラモスとディモスも、フルード様と天堂に戻ってちょうだい。私もすぐに合流するつもりだけれど、万一遅れてしまったら、私の名代で神々にお礼を申し上げて欲しいの」
二頭は火神の従神であり、今はアマーリエ付きとして出向している立場だ。名代として不足はないだろう。フレイムが頷き、聖獣たちが納得したように下がる。
「じゃあお願いね」
軽く手を振り、アマーリエは大神官補佐室へと移動した。
「ええと、これだわ。……はい、確認終了」
本当に瞬く間に終わった。手早く確認印を押し、始業時刻と同時に担当霊威師の手元に届くよう転送設定を行う。そして、すぐに天堂がある棟の中に再転移した。
降り立った場所は、磨き抜かれた廊下だ。神格を持つ者たちが使うこの棟は、細部に至るまで精緻に造り込まれている。
(この短時間なら、皆まだ天堂に移動してもいないわよね。会議室に戻った方が良さそうだけれど……一応気配を探ってみましょう)
上質な絨毯が敷かれ、高価な装飾品が並ぶ廊下を尻目に、フルードたちの気配がどこにあるか探ろうとした時だった。
『見ぃつけた』
『ここにいたのだな』
上から声と影が落ちて来る。翻るのは、オレンジとターコイズブルーの髪。手に握ったままのサーベルと方天戟の刃が、鈍い輝きを放っている。アマーリエは軽く目を見開いた。
「ええ、本当に」
「今回ばかりは駄目かと思ったよ」
祐奈とルルアージュ、当利が話している。
「こちらのお菓子をオーネリア様方に持って帰りませんこと? 皆様、お腹が空いておられるかもしれませんわ。焔神様、邪神様、ご許可をいただけませんでしょうか?」
「おー、持ってけ持ってけ」
「ふふ、幾らでもどうぞ」
テーブルに置かれた大きな菓子皿を示す恵奈に、フレイムとラミルファが快諾した。聖威で容器や袋を出現させたアリステルも加わり、皆で手分けして菓子を詰めていく。それを横目に、アマーリエはそろりと口を開いた。
「フルード様、アシュトン様。すみませんが、私は少しだけ大神官補佐室に行きます。今日の朝一で確認と押印をお願いされていた仕事がありまして」
昨日の終業間際に舞い込んだ仕事だ。その晩に遊運命の神襲撃が連続し、夜は大部屋に泊まってそのまま天堂に来てしまったため、まだ処理できていないのが気になっていた。こうなると分かっていたなら、昨日の内にさっさと済ませておいたのだが。
「属国の神官府に下った神託に関わる内容で、神にも関係している事柄なので、後回しにはできないのです。といっても、書類一枚だけの簡単なものですのから、すぐに戻れます」
(ざっと読んだ限り一瞬で終わる内容だったから、明日で良いと思って今日に回してしまったのよね)
常であれば、仕事がある状態で急件が入れば、手が空いている他の聖威師にパスすることもできる。だが現状に限っては、全員がこの棟に集合しているため、代わりを頼める者がいない。
「分かりました。先に天堂に行っているかもしれません」
「ありがとうございます、フルード様。終わったら私も向かいます。神々にきちんとご挨拶しなくてはなりませんから」
「ユフィー、俺も一緒に行こうか?」
『主、我らも付いて行く』
『ええ、お供いたします』
フレイムと聖獣たちが申し出てくれた。だが、アマーリエはやんわりと断る。
「いいえ、大丈夫よフレイム。遊運命神様の誤解も解けたみたいだし、強硬派の神々もお還りになったのならもう安全だもの。ラモスとディモスも、フルード様と天堂に戻ってちょうだい。私もすぐに合流するつもりだけれど、万一遅れてしまったら、私の名代で神々にお礼を申し上げて欲しいの」
二頭は火神の従神であり、今はアマーリエ付きとして出向している立場だ。名代として不足はないだろう。フレイムが頷き、聖獣たちが納得したように下がる。
「じゃあお願いね」
軽く手を振り、アマーリエは大神官補佐室へと移動した。
「ええと、これだわ。……はい、確認終了」
本当に瞬く間に終わった。手早く確認印を押し、始業時刻と同時に担当霊威師の手元に届くよう転送設定を行う。そして、すぐに天堂がある棟の中に再転移した。
降り立った場所は、磨き抜かれた廊下だ。神格を持つ者たちが使うこの棟は、細部に至るまで精緻に造り込まれている。
(この短時間なら、皆まだ天堂に移動してもいないわよね。会議室に戻った方が良さそうだけれど……一応気配を探ってみましょう)
上質な絨毯が敷かれ、高価な装飾品が並ぶ廊下を尻目に、フルードたちの気配がどこにあるか探ろうとした時だった。
『見ぃつけた』
『ここにいたのだな』
上から声と影が落ちて来る。翻るのは、オレンジとターコイズブルーの髪。手に握ったままのサーベルと方天戟の刃が、鈍い輝きを放っている。アマーリエは軽く目を見開いた。
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