かつて世界を救った英雄は、いつの間にか女神にされてやさぐれてました ~世間知らずの修道女が、物理で殴る最強魔術師と共に偽りの神話を暴く~

青山茜

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第六話 シュラインの街

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 修道院を出て三日。
 ようやく私達はシュラインの街へと辿り着いた。

 シュラインの街は平原の真ん中に存在し、街道が街の中を貫いていて物流の要所ともなっている。街は大きな防壁で囲まれ、出入りは東西にある大きな門から行う。
 そして門では検問が行われており、出入りする人を厳しくチェックしている。

 私達は街へと入る為に検問の列へと並ぶ。
 そして私達の順番になると、私達は衛兵の前へと並び立つ。
 
 衛兵はとても険しい表情でコチラを睨みつけ、威圧感を放っている。
 怪しい者は絶対に入れないという断固たる意志を感じる。

 その威圧感に私は圧倒され恐怖を感じるけど、衛兵からしたら当然の態度でもある。
 何とか耐えて乗り切らなければ……!
 
「次! 身分証を出せ!」

 衛兵はそう怒鳴るように叫び、まずはアルシアへ身分証の提示を求める。そしてアルシアは平然と衛兵に冒険者ギルドの会員証を提示、次に手荷物検査を受ける。
 そしてアルシアの検査は問題なく終わると、衛兵は「通って良し! 次!」と怒鳴るように言い、アルシアは一足先に門の向こう側へ向かう。

 次にテオの番。
 こちらも先ほどと同じように冒険者ギルドの会員証を提示し、手荷物検査。
 そして問題なく終了し、門の向こう側へ。

 やっぱり二人は慣れているからか、衛兵の激しい剣幕を意に介す事もなく淡々と済ました。
 
 次は私の番だ。
 緊張する……怖い……。
 
「次!」
「は、はいぃ!」

 私は衛兵の恐ろしい険相に怯えながら、首から下げている天玲の鎖を外す。
 怖すぎて天玲の鎖を持つ手が震える。
 今にも泣き出しそう。
 けれど勇気を出して、私はその震える手で衛兵にそっと差し出す。
 
 これには私の名前と教団の所属、そして伝道師の役目が記されていて、私がルクナ教団員であるという身分を証明するものだ。

 衛兵は渡された天玲の鎖をジッと見ると、次に私へと視線を移す。

 な、何ですか?
 めちゃくちゃ怖いんですけど……。
 
 すると衛兵は突き返すように天玲の鎖を私へと差し出してきた。
 
「通って良し! 次!」
「……え?」

 私は一瞬何が起きたか分からなかった。
 通って良いって言った?
 手荷物検査は?

 私は言っている意味が理解できずキョトンとする。
 すると、衛兵はこちらをギロリと睨みつけてきた。
「通って良し!!!」
「は、はいぃぃぃぃ!」
 衛兵の怒号に震え上がった私は、逃げるように門の先へと走りだした。

 怖い、怖すぎる……!

 私は瞳に涙を浮かべながら、一足先に向かった二人へ向かって全力で走る。

 そして門を走り抜けた先に二人の姿が見えると、テオの笑い声が聞こえてきた。
 二人をよく見るとアルシアがニマニマとした表情を浮かべ、テオはお腹を抱えてメチャクチャ爆笑している。

 人が怖がっているというのに、それを笑うなんて何て人達!
 
「ちょっと! なに笑ってるんですか! めちゃくちゃ怖かったんですよ!」

 私はそう涙ながらに訴える。
 するとテオが思いっきり噴き出した。

「いや、だってよ! ガッハッハッ――腹痛ぇ! ――ッ――ハッハッハッハッ!」
「笑いすぎです!」
「ハッハッハ! ――おめぇビビり過ぎだろ! 通って良いって言われても固まってたしよ!」
「いやだってそれは、手荷物検査も有ると思ってたので、それ無しに通って良いって言われてビックリして……」
「カッカッカ! まあオメェは知らねえわな。教団員は検査緩ぃなんてな」
「えぇ!? 何で教えてくれないんですか!」
「そりゃ面白そうだったからな。最高のリアクションだったぜ」
「もぉ~!」
「ま、あの衛兵も内心気が気じゃなかっただろうな。この街も教団の息が掛かってるんだ。教団員にイチャモンつけたとなっちゃ首が飛びかねねぇ」
「そうなんですか?」
「ああ。オメェが首から下げてる天玲の鎖それは、オメェが思っている以上にヤベェ代物なんだぜ――」

――私はテオの言葉で、ルクナ教団がどういった存在なのか、その片鱗に触れた気がした。
 
 やはりルクナ教団は恐れられている。
 私も教団が凄い力を持っているというのは知っている。ただ、それは皆が畏敬の念を持っているからであって、決して恐怖から来るものではないと思っている。
 けど皆の反応を見ていると、それは少し違うような気がする。
 まずは冒険者ギルドへ行ってみよう。
 そうすれば、きっとわかるはずだ――


 私達は検問を終えると、その足でこのシュライン冒険者ギルドへと向かう。

 シュラインの街は思っていた以上に広い。
 街の中を街道が貫いているので道は広いし、道を挟んで商店などが立ち並んでいて、人も多くて繁盛している。ギルドへ向かう道中も武具や防具、魔道具などの色んなお店がある。冒険者の姿もチラホラ見える。

 ギルドへ向かう道を歩いていると、冒険者とすれ違う。冒険者達は私を見ると、皆すぐに視線を逸らし私達から離れていく。アルシアもテオも、仕方がないなという感じで諦め顔だ。やはり良くは思われていない。
 私は自分の胸の内に、なにかモヤモヤとしたものが生まれるのを感じた。

――しばらく歩き進めると、大きな木造の建物が見えてきた。
 外観は造りこそ木造だが三階建てで横に広い。
 近づくと、大きな正面玄関の上に『シュライン冒険者ギルド』と書かれた看板が見える。
 
 私は初めて見る冒険者ギルドの建物を見ると、それまでの胸の内のモヤモヤは吹き飛んだ。
 私の顔に、心躍る気持ちが溢れ出る。
 
「これが……冒険者ギルド!」
 
 私の無邪気な顔を見たテオは、少し誇らしげにフフンと笑う。
 
「ああ。ここが俺達冒険者が拠点とするシュライン冒険者ギルドだ!」
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