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第八話 疑念
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ガイザックの視線が私に突き刺さる。
応対は丁寧ながら、変なことは何もさせないぞといった威圧感を感じる。
完全に警戒されている。
けれど怖気付いていたら何も始まらない。
私は意を決して、ガイザックに話を切り出す。
「コチラのギルドへ冒険者登録をお願いしたくお伺いさせて頂きました。お願い出来ますでしょうか?」
「ほう……冒険者登録ですか」
ガイザックは私の話を聞くと眉をひそめる。
そしてあご髭を右手でさわり、少し考える様子を見せる。
すると言った。
「それは何故?」
恐らく教団員が冒険者登録へ来たのを疑問に思っているのだろう。
冒険者になろうという教団員はまずいない。
なので、何か裏があるのではないかと勘繰っているのだと感じる。
けれど私は、ただ純粋に冒険者へとなりに来た。
ここは正直に理由を言うべきだろう。
「伝道師の役を行う傍ら、歴史の研究を行いながら世界を巡ろうと考えています。それで色々とお金も必要になるので、冒険者になろうと考えております」
「ほう……、ですが教団の方からも資金提供は有るのではないですかな」
「確かに給与は頂けますが、それだけでは心許なく……」
「ふむ……」
ガイザックは納得していない様子だ。
私を見つめる鋭い眼光は変わらない。
けれど私も本当の事を言っている。
どうすれば納得してもらえるか考えなければ。
そんな私の様子を見たガイザックは、突然笑顔を見せた。
「分かりました。では一先ず私の部屋へ。そちらで話をしましょう」
そう言ってガイザックは二階への階段へと歩き出した。
「あ、はい!」
私も急いで付いて行く。
何だか面倒なことになりそうだ。
けれど何とか登録させてもらえるようにしなければ……。
――私はガイザックに連れられてギルドマスターの部屋へとやって来た。
部屋へ入ると、奥にギルドマスターの机があり、その手前に応接の為のソファーが向かい合って置いてある。
私はソファーに促されてそこへ座ると、ガイザックが向かいのソファーへドカッと座る。
「……で、何故冒険者へとなりたいのですかな?」
ガイザックは変わらず鋭い眼光を私へと向けて来る。
明らかに不審がっている。
「先程申した通り、歴史研究の為です」
「……本当のことを言ってください」
「本当です。嘘は言っていません」
「ワシにはそうは思えません。教団員が歴史研究を行うなど、聞いたことがありません」
ガイザックは、私の言葉を信用していないようだ。
けど嘘は言っていない。事実なのだから。
「ですが、事実です」
「……そうですか、事実ですか」
「はい」
私は真摯にガイザックの目を見て話す。
信じてほしい、その一心で。
するとガイザックは少しの間を置き、言った。
「では、どうすれば諦めて頂けますかな?」
……諦める?
一体何を?
「あの……、諦める……とは?」
「冒険者登録をです」
明確な拒絶。
ガイザックは何が何でも私を冒険者にしたくないらしい。
それ程までに教団員が嫌われている。
どうしてそこまで嫌われているのだろうか……。
「何故……諦める必要があるのですか?」
「伝道師様、意地の悪い事を聞かれますね。貴女も教団員ならばお分かりになるでしょう?」
「分かりません。なのでお教え願えますか?」
私がそう聞くと、ガイザックは一つ息を吐き、頭をポリポリと掻く。
そして眉間にシワを寄せ、鋭い目で睨みつけてきた。
「いい加減にしてもらえますか。我々は教団へ従属などしない」
「え……?」
従属? 何を言い出すの?
「とぼけないでもらえますか。散々介入してこようとしてきたじゃないですか。今度は中から懐柔しようという算段でしょう?」
「待ってくださいガイザックさん! 一体何を言っているのですか?」
「違うとでも言うのか!」
ガイザックの語気が強くなる。
過去に教団と確実に何かあった。
嫌悪感を隠さなくなった。
私はガイザックの強い語気にたじろんでしまう。
「私には何が何だか……」
私はそう言葉を返すのが精一杯で、後に続く言葉が出なかった。
すると、ガイザックの険しい表情が少し緩んだ。
「……本当に?」
ガイザックの疑念が揺らいでいる。
ここで言わなければ!
「一つだけ言わせて下さい。私の行動は教団の意思ではありません。これは私自身の意思で行っている事です」
「………………」
ガイザックは腕を組み、顔を伏せ考え込む。
私の言葉を信じようとしてくれているのだろうか。
お互い黙り込み、長い長い沈黙が部屋を支配する。
何時間もの時間が過ぎているかのように感じられるほどの、長い沈黙。
そして――ガイザックは口を開く。
「――聞こう」
そう言ったガイザックは、真っ直ぐ私の瞳を見つめる。
「貴女は、何故歴史研究を行おうと思った」
理由……か。
何故そこが気になるのかは分からない。
けれど、恐らくそれも重要な事。
そのキッカケも正直に話すべきなのだろう。
「……分かりました。お話しします」
――そして私は、これまでの過去を全て話した。
五歳で故郷が滅んだこと、ロードリックに助けられ一年間共に過ごしたこと、その後修道院に預けられて今まで過ごしたこと、ロードリックと再び会う為に歴史学者を志し修道院を出たこと――。
「――私は、もう一度ロードリックに会いたい。その為に、彼と同じ道を辿りたい。そう心の底から願っているのです」
「……なるほど」
ガイザックはとても真摯に私の話を聞いてくれて、心に響いたのか腕を組んで何度も頷いていた。
彼の顔からは、もうそれまでの険しい雰囲気は消えている。
果たしてガイザックはどう返してくるんだろうか……。
「――貴女はロードリック殿と同じ道を行こうと考えているのですね。いやはや、それは何とも……」
ロードリック殿……ロードリック殿って言った?
え、もしかして彼を知っている?
「ロードリックを……知っているのですか?」
私がそう聞くと、ガイザックは頷いた。
「ええ、勿論。冒険者界隈では有名なお方ですし、当ギルドへも来たことありますからね」
「え! 来たんですか!」
ロードリックがこのギルドへ来た。
それは初めて知る私と別れた後の彼の足跡。
私は、ロードリックを追う旅の第一歩が始まった気がした。
応対は丁寧ながら、変なことは何もさせないぞといった威圧感を感じる。
完全に警戒されている。
けれど怖気付いていたら何も始まらない。
私は意を決して、ガイザックに話を切り出す。
「コチラのギルドへ冒険者登録をお願いしたくお伺いさせて頂きました。お願い出来ますでしょうか?」
「ほう……冒険者登録ですか」
ガイザックは私の話を聞くと眉をひそめる。
そしてあご髭を右手でさわり、少し考える様子を見せる。
すると言った。
「それは何故?」
恐らく教団員が冒険者登録へ来たのを疑問に思っているのだろう。
冒険者になろうという教団員はまずいない。
なので、何か裏があるのではないかと勘繰っているのだと感じる。
けれど私は、ただ純粋に冒険者へとなりに来た。
ここは正直に理由を言うべきだろう。
「伝道師の役を行う傍ら、歴史の研究を行いながら世界を巡ろうと考えています。それで色々とお金も必要になるので、冒険者になろうと考えております」
「ほう……、ですが教団の方からも資金提供は有るのではないですかな」
「確かに給与は頂けますが、それだけでは心許なく……」
「ふむ……」
ガイザックは納得していない様子だ。
私を見つめる鋭い眼光は変わらない。
けれど私も本当の事を言っている。
どうすれば納得してもらえるか考えなければ。
そんな私の様子を見たガイザックは、突然笑顔を見せた。
「分かりました。では一先ず私の部屋へ。そちらで話をしましょう」
そう言ってガイザックは二階への階段へと歩き出した。
「あ、はい!」
私も急いで付いて行く。
何だか面倒なことになりそうだ。
けれど何とか登録させてもらえるようにしなければ……。
――私はガイザックに連れられてギルドマスターの部屋へとやって来た。
部屋へ入ると、奥にギルドマスターの机があり、その手前に応接の為のソファーが向かい合って置いてある。
私はソファーに促されてそこへ座ると、ガイザックが向かいのソファーへドカッと座る。
「……で、何故冒険者へとなりたいのですかな?」
ガイザックは変わらず鋭い眼光を私へと向けて来る。
明らかに不審がっている。
「先程申した通り、歴史研究の為です」
「……本当のことを言ってください」
「本当です。嘘は言っていません」
「ワシにはそうは思えません。教団員が歴史研究を行うなど、聞いたことがありません」
ガイザックは、私の言葉を信用していないようだ。
けど嘘は言っていない。事実なのだから。
「ですが、事実です」
「……そうですか、事実ですか」
「はい」
私は真摯にガイザックの目を見て話す。
信じてほしい、その一心で。
するとガイザックは少しの間を置き、言った。
「では、どうすれば諦めて頂けますかな?」
……諦める?
一体何を?
「あの……、諦める……とは?」
「冒険者登録をです」
明確な拒絶。
ガイザックは何が何でも私を冒険者にしたくないらしい。
それ程までに教団員が嫌われている。
どうしてそこまで嫌われているのだろうか……。
「何故……諦める必要があるのですか?」
「伝道師様、意地の悪い事を聞かれますね。貴女も教団員ならばお分かりになるでしょう?」
「分かりません。なのでお教え願えますか?」
私がそう聞くと、ガイザックは一つ息を吐き、頭をポリポリと掻く。
そして眉間にシワを寄せ、鋭い目で睨みつけてきた。
「いい加減にしてもらえますか。我々は教団へ従属などしない」
「え……?」
従属? 何を言い出すの?
「とぼけないでもらえますか。散々介入してこようとしてきたじゃないですか。今度は中から懐柔しようという算段でしょう?」
「待ってくださいガイザックさん! 一体何を言っているのですか?」
「違うとでも言うのか!」
ガイザックの語気が強くなる。
過去に教団と確実に何かあった。
嫌悪感を隠さなくなった。
私はガイザックの強い語気にたじろんでしまう。
「私には何が何だか……」
私はそう言葉を返すのが精一杯で、後に続く言葉が出なかった。
すると、ガイザックの険しい表情が少し緩んだ。
「……本当に?」
ガイザックの疑念が揺らいでいる。
ここで言わなければ!
「一つだけ言わせて下さい。私の行動は教団の意思ではありません。これは私自身の意思で行っている事です」
「………………」
ガイザックは腕を組み、顔を伏せ考え込む。
私の言葉を信じようとしてくれているのだろうか。
お互い黙り込み、長い長い沈黙が部屋を支配する。
何時間もの時間が過ぎているかのように感じられるほどの、長い沈黙。
そして――ガイザックは口を開く。
「――聞こう」
そう言ったガイザックは、真っ直ぐ私の瞳を見つめる。
「貴女は、何故歴史研究を行おうと思った」
理由……か。
何故そこが気になるのかは分からない。
けれど、恐らくそれも重要な事。
そのキッカケも正直に話すべきなのだろう。
「……分かりました。お話しします」
――そして私は、これまでの過去を全て話した。
五歳で故郷が滅んだこと、ロードリックに助けられ一年間共に過ごしたこと、その後修道院に預けられて今まで過ごしたこと、ロードリックと再び会う為に歴史学者を志し修道院を出たこと――。
「――私は、もう一度ロードリックに会いたい。その為に、彼と同じ道を辿りたい。そう心の底から願っているのです」
「……なるほど」
ガイザックはとても真摯に私の話を聞いてくれて、心に響いたのか腕を組んで何度も頷いていた。
彼の顔からは、もうそれまでの険しい雰囲気は消えている。
果たしてガイザックはどう返してくるんだろうか……。
「――貴女はロードリック殿と同じ道を行こうと考えているのですね。いやはや、それは何とも……」
ロードリック殿……ロードリック殿って言った?
え、もしかして彼を知っている?
「ロードリックを……知っているのですか?」
私がそう聞くと、ガイザックは頷いた。
「ええ、勿論。冒険者界隈では有名なお方ですし、当ギルドへも来たことありますからね」
「え! 来たんですか!」
ロードリックがこのギルドへ来た。
それは初めて知る私と別れた後の彼の足跡。
私は、ロードリックを追う旅の第一歩が始まった気がした。
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