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第十一話 無茶な約束
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チャラチャラした男は、テオを見ると露骨に嫌な顔をした。
「……何だよ?」
するとテオも睨み返した。
「嫌がってるだろ」
テオはそう言うと、そのままチャラチャラした男の首根っこと私を抱き寄せている腕も掴み、そのまま私から引き剥がして投げ飛ばした。
チャラチャラした男は床に転がった。
「くっ……てめぇ……!」
チャラチャラした男は、テオを怒りの形相で睨みつける。
「テオ、邪魔すんじゃねえよ! てめぇはあの魔力無しと乳繰り合ってろ!」
負け惜しみというか何というか、ここまであからさまな小物臭がする人も居るもんなんだな。
テオはチャラチャラした男の言葉を意に介す事もなく、憐れな視線を男へ向けている。
そこへ、アルシアが私へと歩み寄ってくる。
アルシアは床へ転がるチャラチャラした男の横を通り過ぎながら、男へまるで虫けらでも見るような冷たい視線を向けた。
そして、そのままボソッと言葉を吐く。
「……下衆」
そのアルシアの言葉に、チャラチャラした男はキレた。
「てめぇ!」
そう叫ぶと、一気にアルシアへと飛びかかった。
だがアルシアはそれをヒラリとかわすと、チャラチャラした男はその勢いのまま近くのテーブルへと突っ込んだ。
するとそのテーブル席に居た冒険者達がチャラチャラした男にブチギレた。
そのまま取っ組み合いの喧嘩に発展する。
「……馬鹿な奴」
アルシアは、その喧嘩に発展したのを冷徹に見つめながらそう言った。
テオも馬鹿だなといった表情で見つめている。
周りの冒険者達は取っ組み合いの喧嘩を『ヤレヤレ!』と囃し立てている。
こんなのも愉しんでいるみたいだ。
本当にロクでもない。
こんな人達ばっかしなんだな。
そんな様子を私が立ち尽くして見ていると、テオが言葉をかけてきた。
「おい、大丈夫か?」
テオの顔からは先ほどまでの厳しい表情が消え、優しさが浮かんでいた。
「あ、はい。ありがとうございます」
そこへアルシアも歩み寄ってきて、傍に居るテオへジトーっと視線を送る。
「アンタ本当にお節介を焼くわね」
「うるせぇ。ほっとけねぇだろ」
「まぁね……」
アルシアはそう言うと、私に視線を移す。
「アンタもされるがままにしちゃ駄目よ。冒険者の中には、女ときたらすぐに言い寄ってきたり性欲の捌け口としか考えてないヤツだっているんだから」
「は、はい……」
「男の喰い物にされたくなかったら、軽くあしらえるくらいになりなさい」
「……はい」
アルシアの厳しい言葉。けれどその言葉の中に優しさが詰まっている。
これからこんな人たちとも付き合わねばならないのだ。
気を引き締めねば。
そこでテオが言った。
「とりあえずココじゃアレだ。外へ出よう」
――私達三人はギルドを出て、ギルドから少し離れた裏道へと隠れるように移動した。
そしてテオが「この辺で良いだろう」と言うと、私へ聞いてきた。
「……それで、Dランクの認定試験を受けるんだって?」
そういえば、この二人も私の話を聞いていたんだ。
私が冒険者になれるかどうか気になるのは当然だろう。
「はい、筆記と実技の試験があるそうで。試験官はガイザック様が」
そう答えると、テオは溜息をついた。
「おいおいマジかよ……」
何かマズイのだろうか。
アルシアも眉をひそめている。
私はその様子を見て不安になる。
「何か問題でも?」
「大ありだ。ギルドマスターは元Aランク冒険者の実力者だ。筆記は勉強すれば良いとして、実技の試験では試験官との模擬戦だ。そして、実力を測る相手がギルドマスターという事になる」
「という事は……」
「引退した今でもギルドマスターに勝てる奴は、このギルドにほとんど居ない。そんなやつ相手に『参った、認める』と言わせられるのか?」
「………………」
無理だ。
それは想像もしていなかった試験内容。
淡く抱いていた希望を打ち砕かれた気分だ。
魔物とまともに戦ったことの無い私が、ガイザックに認めると言わせられるとは思えない。
実績も全く無い。
それは、この試験が最初から認定する気がない、ただの出来レースに過ぎないことを意味している。
私は、ガイザックにまんまとしてやられたのだろう。
テオとアルシアも、その事に気付いている。
「どうする?」
テオの短い言葉に、私を心配している気持ちが溢れている。
アルシアは、そんな様子のテオを無言でジッと観察するように見ている。
自分はどうしようかと考えているようにも見える。
そしてアルシアは、フッと言葉を漏らす。
「諦めるんなら今のうちじゃない?」
その言葉は、私とテオ、どちらに言ったのかは分からない。
けれど本心ではあるのだろう。
アルシアの言葉を聞いたテオも言葉を漏らす。
「まぁ、それで良いなら良いけどよ」
それも手ではあるのだろう。
無謀と言えるのは分かりきっている。
しかし――
「それは出来ません」
私は、拒否をする。
「ガイザック様と約束したのです。私がこのギルドを教団から守ると。一度した約束を反故にすることは出来ません」
私の言葉を聞いた二人は、信じられないかのように固まった。
私が何を言っているのか理解するのに時間がかかっているよう。
そして――
「お前……そんな無茶な約束までしたのか」
「アンタ、自分が何を言っているのか分かってるの?」
二人は私にそう言って詰め寄って来た。
確かにその通り。
今になって思えば馬鹿みたいな約束だ。
けれど、あの時は何とか認めさせようと必死になっていた。
冒険者になりたい――ロードリックを追いたい一心で。
「――確かに無茶な約束ですね」
「そうよ。下手するとアンタ、冒険者になれないどころか教団と敵対するわよ」
「ですが、それでも、やれるだけの事はやってみるつもりです」
「出来るわけ無いでしょ」
「それでも、やります」
「……頑固ね」
アルシアは、呆れたように口をへの字に結んだ。
私は頑固、その通り。
一度口にしたことを安易に変えたくない。
嘘をつきたくないから。
テオも同じように呆れ顔だ。
けれど「それじゃ、どうするんだ?」と言って心配はしてくる。
私を放ってはおけないんだろう。
心配をさせているのは大変申し訳なく思う。
けれどここまで来たら、とことん付き合ってもらおうかな。
私は、やれるだけの事はすると言った。
だから――
「二人にお願いがあります」
二人を巻き込む!
「私を冒険へ連れて行って下さい!」
「……何だよ?」
するとテオも睨み返した。
「嫌がってるだろ」
テオはそう言うと、そのままチャラチャラした男の首根っこと私を抱き寄せている腕も掴み、そのまま私から引き剥がして投げ飛ばした。
チャラチャラした男は床に転がった。
「くっ……てめぇ……!」
チャラチャラした男は、テオを怒りの形相で睨みつける。
「テオ、邪魔すんじゃねえよ! てめぇはあの魔力無しと乳繰り合ってろ!」
負け惜しみというか何というか、ここまであからさまな小物臭がする人も居るもんなんだな。
テオはチャラチャラした男の言葉を意に介す事もなく、憐れな視線を男へ向けている。
そこへ、アルシアが私へと歩み寄ってくる。
アルシアは床へ転がるチャラチャラした男の横を通り過ぎながら、男へまるで虫けらでも見るような冷たい視線を向けた。
そして、そのままボソッと言葉を吐く。
「……下衆」
そのアルシアの言葉に、チャラチャラした男はキレた。
「てめぇ!」
そう叫ぶと、一気にアルシアへと飛びかかった。
だがアルシアはそれをヒラリとかわすと、チャラチャラした男はその勢いのまま近くのテーブルへと突っ込んだ。
するとそのテーブル席に居た冒険者達がチャラチャラした男にブチギレた。
そのまま取っ組み合いの喧嘩に発展する。
「……馬鹿な奴」
アルシアは、その喧嘩に発展したのを冷徹に見つめながらそう言った。
テオも馬鹿だなといった表情で見つめている。
周りの冒険者達は取っ組み合いの喧嘩を『ヤレヤレ!』と囃し立てている。
こんなのも愉しんでいるみたいだ。
本当にロクでもない。
こんな人達ばっかしなんだな。
そんな様子を私が立ち尽くして見ていると、テオが言葉をかけてきた。
「おい、大丈夫か?」
テオの顔からは先ほどまでの厳しい表情が消え、優しさが浮かんでいた。
「あ、はい。ありがとうございます」
そこへアルシアも歩み寄ってきて、傍に居るテオへジトーっと視線を送る。
「アンタ本当にお節介を焼くわね」
「うるせぇ。ほっとけねぇだろ」
「まぁね……」
アルシアはそう言うと、私に視線を移す。
「アンタもされるがままにしちゃ駄目よ。冒険者の中には、女ときたらすぐに言い寄ってきたり性欲の捌け口としか考えてないヤツだっているんだから」
「は、はい……」
「男の喰い物にされたくなかったら、軽くあしらえるくらいになりなさい」
「……はい」
アルシアの厳しい言葉。けれどその言葉の中に優しさが詰まっている。
これからこんな人たちとも付き合わねばならないのだ。
気を引き締めねば。
そこでテオが言った。
「とりあえずココじゃアレだ。外へ出よう」
――私達三人はギルドを出て、ギルドから少し離れた裏道へと隠れるように移動した。
そしてテオが「この辺で良いだろう」と言うと、私へ聞いてきた。
「……それで、Dランクの認定試験を受けるんだって?」
そういえば、この二人も私の話を聞いていたんだ。
私が冒険者になれるかどうか気になるのは当然だろう。
「はい、筆記と実技の試験があるそうで。試験官はガイザック様が」
そう答えると、テオは溜息をついた。
「おいおいマジかよ……」
何かマズイのだろうか。
アルシアも眉をひそめている。
私はその様子を見て不安になる。
「何か問題でも?」
「大ありだ。ギルドマスターは元Aランク冒険者の実力者だ。筆記は勉強すれば良いとして、実技の試験では試験官との模擬戦だ。そして、実力を測る相手がギルドマスターという事になる」
「という事は……」
「引退した今でもギルドマスターに勝てる奴は、このギルドにほとんど居ない。そんなやつ相手に『参った、認める』と言わせられるのか?」
「………………」
無理だ。
それは想像もしていなかった試験内容。
淡く抱いていた希望を打ち砕かれた気分だ。
魔物とまともに戦ったことの無い私が、ガイザックに認めると言わせられるとは思えない。
実績も全く無い。
それは、この試験が最初から認定する気がない、ただの出来レースに過ぎないことを意味している。
私は、ガイザックにまんまとしてやられたのだろう。
テオとアルシアも、その事に気付いている。
「どうする?」
テオの短い言葉に、私を心配している気持ちが溢れている。
アルシアは、そんな様子のテオを無言でジッと観察するように見ている。
自分はどうしようかと考えているようにも見える。
そしてアルシアは、フッと言葉を漏らす。
「諦めるんなら今のうちじゃない?」
その言葉は、私とテオ、どちらに言ったのかは分からない。
けれど本心ではあるのだろう。
アルシアの言葉を聞いたテオも言葉を漏らす。
「まぁ、それで良いなら良いけどよ」
それも手ではあるのだろう。
無謀と言えるのは分かりきっている。
しかし――
「それは出来ません」
私は、拒否をする。
「ガイザック様と約束したのです。私がこのギルドを教団から守ると。一度した約束を反故にすることは出来ません」
私の言葉を聞いた二人は、信じられないかのように固まった。
私が何を言っているのか理解するのに時間がかかっているよう。
そして――
「お前……そんな無茶な約束までしたのか」
「アンタ、自分が何を言っているのか分かってるの?」
二人は私にそう言って詰め寄って来た。
確かにその通り。
今になって思えば馬鹿みたいな約束だ。
けれど、あの時は何とか認めさせようと必死になっていた。
冒険者になりたい――ロードリックを追いたい一心で。
「――確かに無茶な約束ですね」
「そうよ。下手するとアンタ、冒険者になれないどころか教団と敵対するわよ」
「ですが、それでも、やれるだけの事はやってみるつもりです」
「出来るわけ無いでしょ」
「それでも、やります」
「……頑固ね」
アルシアは、呆れたように口をへの字に結んだ。
私は頑固、その通り。
一度口にしたことを安易に変えたくない。
嘘をつきたくないから。
テオも同じように呆れ顔だ。
けれど「それじゃ、どうするんだ?」と言って心配はしてくる。
私を放ってはおけないんだろう。
心配をさせているのは大変申し訳なく思う。
けれどここまで来たら、とことん付き合ってもらおうかな。
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